5ちゃんねる ★スマホ版★ ■掲示板に戻る■ 全部 1- 最新50  

■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています

【スパ】俺をシンジと呼ぶな弐【シン】

1 :lobster ◆javCW0ivB. :04/01/29 00:37 ID:3ueM5iDK
SSがあったりネタがあったりキャラハンがあったりダラダラと続くスレッド二本目。
前スレ
http://comic3.2ch.net/test/read.cgi/eva/1022938806/l50

いい機会だから言うけど、前スレのSSって、全部書いたのアタシなのよね。
ま、そんな訳で元気よくいわよん。

2 :tomoタン=シソジ_ ◆xgSWdejH02 :04/01/29 00:38 ID:WQS477RE
当然2gets

3 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:04/01/29 00:51 ID:KTK27r3/
きっとこの文体はtomoタンだろうと以前から睨んでいた俺が3ゲッツよ。

4 :tomoタン=シソジ_ ◆xgSWdejH02 :04/01/29 00:52 ID:WQS477RE
「あー、うー。なんつーの? さっきまではさー、どっちかつったら僕が悪いわけで。真面目に
やってなかったからな。これからは真面目にやるからよー、泣くなって。な?」
「でも・・・全然上手く合わないし」
「やりゃできるって。何とかなるって。この間の使徒だって何か上手いこと倒せたじゃん?何と
かなるんだって。絶対真面目にやるから! な?」
僕は必死に身振り手振りを交えて「真面目にやる」「がんばる」と生まれてこのかた三回くらい
しか使ったことのない誓いを何度も口にした。ようやく泣き止んだアスカにほっとしながら、僕
はやっぱり女ってすぐ泣くから苦手だなぁと思った。男だったら有無を言わせずぶん殴ってお仕
舞いにできるのに、面倒くさいったらありゃしない。
アスカを何とか宥めすかして帰った頃には、もうすっかり暗かった。子分二人と綾波は帰宅して
ミサトは酔っ払ってがーがー寝ている。僕は静かになった居間にでんと置いてある巨大な筐体に
初めて積極的に足を乗せた。言ったからには男に二言はない。
「さぁ、やるか」
アスカはコクンと頷いた。
ようやく、アスカがこっちに合わせるようになってからは、僕も順調に進歩した。段々照れも無
くなってきて、深夜になって初めてユニゾンOKのサインが点灯する。僕もアスカも飛び上がって
喜んだ。そこからはとんとん拍子でお互いに上達した。真面目にやれば何とかなるものだ。寝る
ことにしたのは、深夜二時過ぎだった。この数日で二人とも振り付けだけは完璧だったので、も
うほとんどユニゾンは完璧だった。

5 :tomoタン=シソジ_ ◆xgSWdejH02 :04/01/29 01:04 ID:WQS477RE
朝・・・と言うか昼前に起きると、ミサトは既にネルフに出勤した後だった。書置きに、「今日は明
日の出撃準備があるから本部泊り込みになります。シンちゃん、アスカ襲うときはちゃんと優しく
しないと駄・目・よ?」と、ふざけた内容が書き込まれていた。それを見たアスカが警戒を露わに
して近寄ってこなかったので、結局午前中は煙草をすってるだけで終わってしまった。
午後になって練習を再開し、もう百回に一回くらいしかミスしないくらいユニゾンができているこ
とを確認してから、僕とアスカはラーメンを食べにいった。何だかんだ言ってミサトが料理しない
とこの家に飯を作成できる人材はいない。ミサトの料理は不味くない程度だが、暖かいしそれなり
に努力の後が見えるので嫌いじゃあない。これで掃除ができればミサトはいつでも嫁にいけるのに、
と常々思う。そしてできるだけ迅速に嫁に行って欲しいと願うばかりだ。一緒に住んでると確実に
寿命が減っていく。
ラーメンを食って戻ると、僕もアスカも何となくダレた気分で、三回踊って全部成功したところで
特訓は切り上げることにした。もう自信満々になるくらい大丈夫だ。明日は決戦なのだし、体を休
めることも重要だろう。適当にバラエティー番組を見、風呂の順番で争い、寝る準備が整ったとこ
ろで、今日は早めに休むことにした。
「ほんとに絶対こっち来ないでよ! 来たらその時点で110番するからね!」
「あいあい、わーってるよ」
「絶対の絶対のホントの絶対よ!」
「大丈夫だって・・・」
「絶対絶対ホントに絶対?」
「うるせー早く寝れ馬鹿!」
アスカが来てから、僕は居間で寝ている。アスカは僕の私物を全部物置部屋につっこんでとっとと
自分の部屋に作り変えてしまっていた。僕もそのうち物置部屋を片して自分の部屋にしないといけ
ないだろうが、まぁ今日までの辛抱だ。僕は居間の真ん中に広げたお布団に寝そべって、先週買っ
たSDATを耳にはめた。


6 :tomoタン=シソジ_ ◆xgSWdejH02 :04/01/29 01:18 ID:WQS477RE
適当に買ったCDの適当に耳に残る曲がシャカシャカ鳴って眠気を誘う。最初の日はさすがに同年代
の女が同じ屋根の下にいることにドキドキムラムラしたもんだが、一週間も続けば慣れたもんだ。
僕はごろんと寝返りを打って窓の外を見上げた。綺麗なお月様がぼんやり浮かんでいる。満月かと
思ったが、微妙に欠けているようにも見えた。ここハコネは気候的にあんまり雨は降らない。だか
ら夜は星や月が綺麗に見えていい。雨ばっかりの仙台とは大違いで、夜の空は好きだった。
まどろみつつ、ぼけっと月を見上げる。居間は大きな窓があってベランダと繋がっているから、空
が良く見える。このままずっとここで寝るのもいいかもしれない。そんなことを考えていると、ガ
ラっと扉が開く音がして、ぺたぺた素足で歩く音が聞こえてきた。何気なく時計を見ると、僕は大
体二時間くらいぼけっと空を見ていたことになる。苦笑してシーツを被りなおした。ジャーっとト
イレを流す音。ああ、今の足音はアスカか・・・と、眠りに入る一歩手前の状態で思った瞬間、バサっ
と何かが目の前に降ってきた。薄く目を開けて前を見ると、パンツとTシャツ姿のアスカがむにゃむ
にゃ言いながら僕のシーツを奪い取る。途端に僕の心臓がばっくんばっくん激しく胸の内側を叩き
出した。
「おーい、アスカ?」
返事はなく、すーかすーか寝息だけが僕の声に返ってきた。この天然野郎、寝ぼけて布団間違えやが
った。思わず生理現象の僕は、ぐぅと唸って怯んだ。あんだけ絶対こっちくんなとか訴えるとかわ
めいてた癖に、自分から来るなんて何考えてんだ。僕は生唾を飲み込んだ。僕の中で悪魔シンジと
天使シンジが激しく剣と剣をぶつかり合わせている。
「据え膳って奴だ。食っちゃえよ!」
「駄目だよ! 駄目だよ! そんなことできるはずがないじゃないか!」
普段はヘタレな天使くんも今日ばかりはなかなか手ごわく、僕は思い切れなかった。

7 :tomoタン=シソジ_ ◆xgSWdejH02 :04/01/29 01:31 ID:WQS477RE
しかし悪魔シンジは巧妙だった。
「わかってる、そりゃ確かに犯罪さ。でもよ、チューするくらいはいいんじゃねえの? それなら
バレやしねえって!」
天使シンジも応戦するが、この時の悪魔シンジは強すぎた。
「バレねぇから問題ねぇんだよ! 死ね!」
天使くん敗北。僕は生唾を飲み込みまくりつつソーっとアスカに顔を近づけた。アスカの髪はシャ
ンプーのいい匂いがする。アスカの寝息が僕の前髪を揺らした。自分の唾を飲み下す音にびっくり
してしまう。距離は少しずつ、少しずつ迫ってゆき、あと3センチほど。
「・・・や・・・いや・・・」
ヤベ! おきちまったか!? 僕はアスカの声にビビって海老のようにぴょんとアスカから離れた。
僕のシーツをかぶったアスカは涙をこぼしながら、「いや、降りるのはいや」と繰り返している。
寝言か・・・ビビった。真剣にビビった。苦しげな顔で、アスカはうなされている。その寝顔を見てい
ると、段々気が静まってきた。生理現象バリバリだった股間は萎縮し、ついでに眠気も吹っ飛んだ。
「アスカ、おきろよ。アスカ」
あんまりうなされているものだから、僕はアスカを起こすことにした。目を擦りながらおきたアスカ
は、僕の顔を見るなりひきつって後ずさりしたが、ここが居間であることに気付いて、自分で寝ぼけ
てここに来たのだ、と気付いて顔を伏せた。まぁ、明るかったら真っ赤になったアスカが拝めたこと
だろう。
「なんか魘されてたぜ。怖い夢見たか?」
「え・・・うん・・・ちょっと」
「あんまりウンウン唸ってっから思わず起こしちまった。悪いな。もう三時だぜ? 早く寝よう」
「うん・・・」
「おやすみ!」
気分的に眠れそうも無かったが、僕はアスカの掴んでいるシーツをひったくってそれを頭からかぶり、
寝転んだ。あー、何か損した気分。でもまぁ、これでよかったような気がしないでもない。チューし
てたら自分を保てた自信が無いからだ。でも、アスカは動こうとせず、すぐにその場で横になった。
「ここで寝ても、いい?」
「は? ・・・ああ、まぁ、いいよ。別に。勝手にしろよ」
どうやら相当怖い夢を見たようで、アスカは少し怯えているようだった。全くビビりな奴だ。でも、
これで僕は朝まで眠れそうにないな、と苦笑するしかなかった。


8 :tomoタン=シソジ_ ◆xgSWdejH02 :04/01/29 02:04 ID:WQS477RE
「シンジ!」
「おーよ!」
天高く舞い上がった初号機と弐号機は、空中の同じ高さで一回転し、落下する勢いをあわせて
思いっきりキックを使徒のコアにぶちこんだ。必殺ライダーキックならぬエヴァキックだ。エ
ヴァの洒落にならない体重と筋力のすべてをつぎこんだこの蹴りは改造人間ごときとは比較に
ならない威力で使徒のコアを踏み砕く!
足に、コアがばきりと割れる感触が伝わってきた。勝ちを確信した瞬間、使徒はびくんびくん
と二体同時に痙攣し、そしてくたりと力を失って倒れるや否や、最後の力を振り絞ったのか
大爆発して自爆した。慌ててATフィールドを展開してその爆風を避けるが、僕もアスカもラス
トの爆発は想定外だった。着地できずに爆風に巻き上げられ、そして空中で激突してからみあ
うように、使徒の爆発でクレーター状となった地面に落下する。
「いぃっでぇ! アスカどけ! はやく! 足が!」
「いたたたた! し、シンジがどいてよ! 手踏んでるって! 手!」
互いにナチュラルなサブミッション状態。たまらず僕はシンクロを解除して外に出た。こんな
ことまでシンクロしなくてもいいのに、アスカも同じように外に出てくる。
「こらぁ! 何してくれんだアスカ、いてえじゃねえかよ!」
「それはこっちのセリフよ!! あんたが着地ミスるから悪いのよ! 馬鹿!」
「うるせー! 無茶言うんじゃねえ! パンツ一枚で寝てたくせに!」
「ッッ!! えっちばかへんたい! あんたこそ寝てるアタシにキスしようとしてたでしょ!
この卑劣漢!」
「ぅ・・・き、気付いてたのかょ・・・」
「ええ! マジでやったの!? イヤー!!」
「ば、馬鹿、未遂だって! やってねぇ、誤解だ!」
「最悪ー! 死んじゃえバカー!」
「いやその、ほんとやってないって!」
ちなみにこの時の会話は全部司令部に筒抜けだったらしく、僕は副司令のじーさんと親父に恥
をかかせるなって後でコッテリ絞られたのであった。

9 :tomoタン=シソジ_ ◆xgSWdejH02 :04/01/29 02:05 ID:WQS477RE
>>8 と順番間違えた。

「さぁ! いよいよね! ・・・って、どしたのシンちゃん。目の下すごいクマになってるわよ?」
「ああ、ちっとな・・・」
二時間くらいしか寝れなかった僕は欠伸をかみ殺しながら初号機とシンクロした。今回の作戦で
はエヴァットは使えない。また、ATフィールド放射攻撃も使えない。エヴァットは僕にしか扱え
ないとこの間発覚し、ATフィールド放射攻撃は僕にはできそうにない芸当だ、と言うこともまた
発覚している。だから、ユニゾンしてちんたらATフィールドを侵食しつつ同時攻撃をかけるしか
ない。一体一体だとエヴァットの前にゴミのようなその使徒は、不死身じゃなけりゃ大したこと
はないし、僕とアスカのユニゾンはこの二日の特訓で完璧に仕上がっている。負ける要素は無い。
「しゃー!気合いれていくぞおらー! 52秒でアイツぺったんこだ!」
「・・・ぅ」
「んーだよその気合抜けまくりの声はよ。またビビってんじゃないだろな」
「だ、大丈夫よ」
朝からアスカはちょっと変だ。顔赤くしてこっち近づいてこないし・・・まぁ、パンツ姿で爆睡して
るところを僕に見られてるわけだからそれも仕方ないか、と僕は意地悪く笑った。ビビってない
ならそれでいい。
最初の一小節はパレットライフルだ。この役立たず銃は全然使徒に効かないが、それなりに牽制
の効果はある。使徒がライフル弾を嫌がってジャンプしてくるところを、僕とアスカは息ピッタ
リのダブルバク転で華麗に避ける。ミサトが曲にあわせて防御壁をエヴァの前にそそり立たせ、
そこからさらにパレットライフル連射で第二小節まで完了。第三小節では相手の反撃に対して
バク転、空転で後方に避けて距離を開ける。ここまでも完璧。第4小節の主役はミサトだ。ミサ
トの号令と共に兵装ビルが火を噴き、ミサイルの雨あられが使徒の足を止める。ダメージになん
て期待してない。足が止まればいいのだ。その間に距離を詰めた僕とアスカはATフィールドを一
気に侵食して中和する。第六小節のミサイルの途切れ目に一気に踏み込んだ初号機と弐号機の
同時アッパーカットが綺麗に使徒の顔面(?)をぶったたき、その体を浮かせる。練習しまくった
回し蹴りが同時に使徒に炸裂し、使徒は勢い良くぶっ飛ばされた。
さぁ、仕上げだ!


10 :tomoタン=シソジ_ ◆xgSWdejH02 :04/01/29 02:08 ID:WQS477RE
以上、本日のお話ですた。

アスカびいき丸出しですが何か?

11 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:04/01/29 03:13 ID:X6S6FQhM
tomoたんと海老タンて、黄金コンビだな。
とりあえず感想。

おもしれー。
アスカ、カワユイ・・・。
シンジはもうちょっと下品でもいいと思う。
綾波の約束は?じらさないでね。

海老タン、フラットノイズと珪素生命のやつも気長に待ってるよん。


12 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:04/01/29 08:17 ID:MumnU5/R
音楽に映画、あとSSに世界線とかあったからのぅ。
まあ、こっちから聞くのは無粋だと思ったしな。

13 :tomoタン=シソジ_ ◆xgSWdejH02 :04/01/29 22:40 ID:VYCRFWP1
前スレの最後のほうで海老のこと聞いてる香具師がいるが、本人に直接
聞くがよろしいよ

14 :tomoタン=シソジ_ ◆xgSWdejH02 :04/01/29 23:33 ID:VYCRFWP1
「修学旅行に行っちゃ駄目ってどういうこったこの野郎!」
僕が勢いよく机を叩くと、アスカがテレビを見ていたビクっと肩を震わせて何事かと怪訝
そうな顔をした。僕はアニメに見入っているアスカにイライラしながらさらにバンバン机
を叩いた。
「おぅおぅ! 何とか言えよミサトこるぁ! アスカもぼけっとテレビッ子やってんじゃ
ねえ! 修学旅行行くなとか言ってんだぞこのババァッあぐっ」
空になったビール缶が思いっきり眉間に命中し、僕は椅子ごと後ろにひっくり返った。し
まった、熱くなってババァとか言ってしまったようだ。寒気がするほど微笑んでいるミサ
トに、咳払いしながら「このお姉さんがそう言う青少年の夢を壊すようなこと言うんだ」
と言い直す。中腰になったミサトがまた椅子に座りなおすのを確認してから、僕は再度ヒ
ートアップした。
「よー納得いく理由を聞かせてもらおうじゃねえかよ作戦部長さんよー」
「あのねぇ、あんた達が沖縄行ってる間に使徒来たらどうすんのよ? 責任取るの私なん
だからね、戦闘待機は当然でしょ?」
「ウルセー! 使徒なんか帰るまで待たせとけ!」
ミサトが無茶言うなボケ! と叫びながら今度は中味入りの缶を投げつけてきたので、さ
すがの僕もちょっと黙らざるを得ない。あんまり怒らせると逆効果だからだ。
大体、修学旅行に行けない、なんてのは殺生すぎる。一週間分のヘアスプレーを買い込み、
床屋で眉毛も整えてもらって準備万端だっつーのに何が悲しくて戦闘待機なんざしないと
いかんのだ。その日の為に用意した旅行グッズの数々が僕の倉庫と貸した部屋で期待のオ
ーラを放っている。例えば花火セットとか。
僕は厳重抗議したが、ミサトは全く取り合わなかった。それどころか、「まぁ本部のプー
ル自由に使っていいから」何て生殺しで中途半端な提案をしやがる。僕は不貞腐れて居間
のど真ん中でお布団広げて寝てやった。

15 :tomoタン=シソジ_ ◆xgSWdejH02 :04/01/29 23:34 ID:VYCRFWP1
修学旅行がポシャったにも関わらず姦しいアスカが静かにそれを受け入れていたのには実
は理由があった。あの野郎、ミサトから金で買収されていやがったのだ。最低な奴だ。ホ
クホク顔で買い物をするアスカに殺意すら抱いたが、まぁ、こいつは親が不気味な眼鏡か
けた権力者でもなければ、特に金持ちの娘でもない。僕のように自由になる金は案外少な
いらしく、よくボヤいていた。何でも、エヴァに乗ることに対する報酬は当然あるが、年
齢を考えて・・・と言う意味不明の理由で月額五万以上引き出せないようになっているらしい
のだ。それをミサトが掛け合って10万まで引き上げるのが、アスカの、修学旅行を諦める
代償だった。くっそー安い奴め!
不機嫌丸出しの僕を尻目に、昨日買いこんできたらしい結構きわどい水着を綾波に自慢し
ている姿に僕は舌打ちした。楽しそうなのがまた腹が立つ。僕はプールサイドで三角座り
しながら、今頃沖縄で楽しみまくりな子分二人を思い浮かべて泣きそうになった。仲間は
ずれにされたみたいで超寂しい。お土産山のように買ってこいと十万渡したが、あの二人
ではロクなものを買ってこないだろう。あんまり期待もできそうにない。
ブルーになっている僕の横にアスカがプールの水を滴らせながら寄ってくる。僕はシッシ
と手で払う仕草をしてこの悲しみに浸リ続けようとした。だが、アスカは首をかしげて僕
の顔を覗き込んだ。

16 :tomoタン=シソジ_ ◆xgSWdejH02 :04/01/29 23:36 ID:VYCRFWP1
「シンジ泳がないの?」
「僕は今傷心なんだ。傷ついてんだ。ブロークンハートだ。なんつーかトラウマ? だか
らほっといてくれ・・・」
「仕方ないじゃない、使徒がホントに来ちゃったら不味いんだし。諦めて今を楽しむのが
吉だと思うわよ」
「ふん、負け犬め。そんなんだからすぐビビっちゃうんだよ馬鹿」
でも、修学旅行にいけずにスネている僕はもっと負け犬だって実は知ってる。うう、本当
に泣けてきた。だから僕はうがーっと叫んでプールに飛び込んだ。ぷかぷかプールに浮い
ていた綾波にしぶきがかかり、綾波は嫌そうな顔をした。でもアスカは普通に楽し
そうに僕についで飛び込んできた。綾波が物凄く嫌そうな顔をしてすいーっと反対側に泳
いでいってしまった。ええい、どいつもこいつも僕のこの傷ついたギザギザハートをヤス
リでごりごりしやがって! 僕は思いっきりアスカに水をかけまくり、反撃で水をかけら
れて憤慨し、そのうちブルーだったことを忘れてアスカと水のかけあいに夢中になってい
た。ビビりで能天気で馬鹿のアスカは嫌いだ。でも、何だかんだいって今を楽しんでしま
っている僕は自分がもっと嫌いだ。くっそう楽しいよう。修学旅行で弾けてたらもっとも
っと楽しかっただろうに。他校の修学旅行生と揉めたり、海辺でロケット花火打ち合いし
たり、お土産屋さんで大人買いしまくったり・・・僕は泣き顔でその日は体がふやけるまで
アスカとプールで遊んだ。綾波は終始迷惑そうだったが。
さすがに疲れてプールから上がった頃にはすっかりブルーな気分を忘れてしまっていた。
僕は前向きに考え直した。まぁ、楽しかったから良し。明日はビーチボールも持ってこよ
う!・・・とか考えていたら、警報が鳴った。来るわけねぇと思ってたのに本当に使徒が来て
しまった。


17 :tomoタン=シソジ_ ◆xgSWdejH02 :04/01/29 23:54 ID:VYCRFWP1
風邪ひいて熱あるわけでもないのに修学旅行に行けないわ、使徒が来るわ、今日は最低な
日だ。僕はげんなりしながらミサトの生き生きした様子に溜息を吐き、ブリーフィング中
ずっとアスカの髪の毛を引っ張ったり綾波をからかったりして全然話を聞いてなかった。
まぁでも、何しなきゃいけないのか知らないのは不味いのでアスカに後で聞いたところ、
何やら今回の使徒は火山の火口の中にいるらしい。使徒って奴は目的も意味不明ながらそ
の行動もわけがわからん。火山の火口で何がしてぇんだ?
で、どうやら今回はそいつを捕獲しようって作戦らしい。まだ使徒の赤ちゃん状態らしい
ので、がんばったら捕まえられそうだからだ。めんどくせー! どうせ殺すんだから火山
から出てくるまでほっときゃいいのに・・・。僕はいまいち納得いかなかった。
「つーかよ、火山の火口に飛び込むってことはアレだろ、溶岩どろどろの中に入るわけだ
ろ? めちゃくちゃ熱そうだなオイ・・・」
「それ用の装備があるらしいわよ。でも、弐号機にしかつけらんないんだって・・・」
僕はさっそくビビり始めてるアスカの髪の毛をぐいっと引っ張った。
「やる前からビビってんじゃねえよ」
「び・・・ビビってないもん」
「顔ひきつってるぜ」
「え、嘘!」
「ウッソーン。何焦ってんだよバーカ」
「キィ!」
とっととプラグスーツに着替え、ケイジにぼけっとしていると、ミサトが爆笑する声が聞
こえた。そしてアスカの悲鳴。あいつら何やってんだ? 同じくボーっとして目の焦点の
あってない綾波の横を通り過ぎ、声の方向へ歩く。そこで僕はとんでもないものを見た。
「ぷ・・・うぎゃはははははは! なんだそりゃー!」
球体に手足と頭が生えたような不恰好極まりない物体がよちよち歩いている。その頭の形
状から察するに、どうやらそいつはアスカらしい。あまりのインパクトに、僕は立ってら
れないくらいに笑い転げた。

18 :tomoタン=シソジ_ ◆xgSWdejH02 :04/01/30 00:06 ID:qoo6qv/z
「あ、あ、アスカ、それ反則、反則だょ、ギャハー腹いてぇ!」
「ぅぅ・・・」
情けなさと恥ずかしさで真っ赤になったアスカは顔を手で隠そうとするが、その手はぶく
ぶく膨れたスーツの腹に邪魔されて顔まで届かない。ヤバイ、これはヤバイ。これを見て
笑わない奴は綾波ばりの醒めた面白くない奴だけだ。
リツコは顔を伏せて肩を震わせ、ミサトはもう床に転げてびくんびくんと痙攣している。
僕はいまだかつて無い腹筋の酷使に涙を流しながらヒーヒーと苦しく息をした。まぁでも
五分も見てれば慣れてきた。段々冷静になった僕らはその赤いまん丸なアスカを囲んで口
々に感想を述べた。
「しかしブッサイクだなぁコレ」
「失礼ね。確かに不恰好かもしれないけど、冷却効果は結構なものよ?」
「見た目まで結構過ぎるわよねぇ・・・」
「国連の連中がまたネルフはふざけてるとか言うぜ、絶対」
「そりゃあコレ見たら・・・ぶふッ ごめんアスカこっち向かないでキャハハ」
「もう! イヤ! アタシ帰って寝る!!」
ついにアスカがぶち切れて半泣きになってしまった。でも、泣きそうな顔でぶよぶよされ
たらまた笑いのツボに・・・でも、僕らがまた爆笑の坩堝に飲み込まれてしまう前に、この場
にそぐわないほど冷静な、と言うか冷たい声で綾波が言った。
「じゃあ、弐号機には私が乗るわ」
その言葉に、アスカが目を剥いて綾波をにらみつけた。弐号機にかわりに乗るとか、そう言
う話題はアスカの逆鱗であり、禁句だ。案の定、アスカは綾波をひっぱたこうとするが、
スーツに邪魔されてごろんと転がってしまう。でも、転がったままアスカは金切り声で叫ん
だ。
「嫌よ! 弐号機にアタシ以外が乗るなんて絶対嫌! アタシがやるわよ! やればいい
んでしょう!?」
一瞬、綾波が満足そうに頷いたように見えた。でもそれは一瞬で、瞬きすると綾波は元の
無表情になっていた。ああ言うことでたき付けたわけだ。ああ、なかなか役者だなぁ、綾
波は。僕はちょっと感心した。


19 :tomoタン=シソジ_ ◆xgSWdejH02 :04/01/30 00:33 ID:qoo6qv/z
今日はもう無理ポ
続きは明日で 明日はこの続き+汁使徒

20 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:04/01/31 12:05 ID:Ih7uVDwp
超絶期待sage

21 :tomoタン=シソジ_ ◆xgSWdejH02 :04/01/31 12:49 ID:8DHGLOZT
火口は微妙な熱気と変な緊張感に満ちていた。大昔の海底探査ロボみたいな格好をした弐
号機がまるで引き上げられてるドザエモンみたいにブラーンとクレーンで吊るされており、
その足元にボコボコとオレンジの気泡を上げている溶岩がたゆたっている。変な絵だ。
僕は初号機で火口の淵に腰掛、ミサトの指示をボンヤリ聞いていた。足を踏み入れた瞬間
溶けてしまいそうな溶岩に入っていくなんて、ちょっと想像できなかった。
「国連の飛行機・・・?」
空でぐおんぐおん言いながら旋回し続けている国連の爆撃機を見つけて僕が呟くと、アス
カが「手伝ってくれるの?」と少し期待して言った。だがミサトは冷たく言い返した。
「失敗したときの保険よ。N2で熱処理ってわけね」
「おいおい、僕たちごとか?」
「仕方ないじゃない?」
情けない声でミサトが言い、アスカが露骨にビビった顔でげんなりした。
「僕は初号機乗ってるからN2くらいどうでもいいけどよ、それじゃミサトとかも全滅しち
まうんじゃねえの? それってヤバくねえ?」
「そうね。でも、エヴァが無事なら他は代りがいんのよ」
「・・・弐号機とセカンドチルドレンは失っても構わないってことかよ。納得いかねえな」
「そんだけのリスクがあって尚、魅力的なチャンスなのよ。人類にとって、ね?」
「そこがわかんねえ。何でだ? 使徒なんか捕まえてどうすんだ? 食うのか?」
「謎ってとこが最大の脅威なのよ、使徒は。これは使徒を知るための最初で最後のチャン
スかもしれないの。そろそろ時間ね」
議論を一方的に打ち切って、ミサトが号令をかけた。僕は納得できない。危険を冒す必要
性が全然わからない。毎度僕は使徒と生きるか死ぬかの殺し合いをしてる。だから捕まえ
ることは潜在的な脅威をネルフに内包するだけなんじゃないのか? と思えてならなかっ
た。何より、アスカと弐号機を場合によっては見捨てることを含んだ作戦だ。僕は子分を
見捨てるような、そんなヘタレヤンキーじゃない。だからミサトの言葉に大きな反発しか
覚えなかった。

22 :tomoタン=シソジ_ ◆xgSWdejH02 :04/01/31 12:50 ID:8DHGLOZT
「シンジ・・・あのさ、失敗したら・・・」
「うるっせぇ」
アスカが何かを言いかけたが、僕はその言葉を遮った。ビビりがビビった言葉を吐けば、
自分の言葉にもっとビビってゆくものだ。強気な発言は自分を強くしてくれるが、その
逆もまた然りなのである。だから僕はアスカの現場での弱気な発言を許したことは無か
った。
「おいおいアスカさんよ。お前こっち来てから今までロクな実績がねえんだ。そこ自覚
してんなら、弐号機降ろされないようにやってみせろや」
アスカの顔が強張る。人類にとってのチャンスとかそんなのはどうでもいいが、これは
アスカが来日して初のアスカ単独の作戦となる。これを成功させれば、アスカは弐号機
パイロットとして初めて不動の実績を手に入れることができるのだ。その意味でアスカ
にとってチャンスではあるのだ。案の定、「降ろす」と言う言葉に反発してアスカは真
剣な顔で「もちろん、やってみせるわ」と断言した。僕はその言葉に満足した。
ヤンキーの世界でもモノをいうのは実績である。結局、誰それは何々と言うことをやっ
た・・・と言う過去形でしかその力は評価されない。やるかもしれない、やる力はある、何
て言う未来系では何の評価もない。だから通り名がつく程にならなければ何時までも木っ
端扱いなのだ。そこは厳しい実力社会。エヴァにしてもそうだ。毎月恐ろしい金額が口
座に振り込まれている。何の仕事をしたわけでもなく、だ。それはこういう時に命を張
る代金である。先陣切って危険な乱闘に突っ込んでバットで人を躊躇なくぶん殴れるか
らこそ、一目置かれる。「俺は三人相手でも勝てるぜ」とか言うだけで実際手を出さな
いヘタレ野郎は軽蔑されるだけだ。僕は仙台で「バットマン」と呼ばれた。今は「初号
機パイロット」と呼ばれている。アスカが「弐号機パイロット」ときちんと認識される
為の、これは試練なのだ。
「いいか、失敗したらケツは僕が拭いてやっから、とりあえずやってこいや」
どうやって後始末するかなんて全然考えずに、僕は偉そうに言った。アスカは少し安心
したように頷いた。子分二人とアスカと綾波は僕の舎弟みたいなもんだ。だから僕は連
中のボスとしてケジメをとらなきゃいけないのだ。いざとなったら・・・国連の爆撃機ぶっ
潰してやる。

23 :tomoタン=シソジ_ ◆xgSWdejH02 :04/01/31 13:03 ID:8DHGLOZT
アスカと弐号機が溶岩に沈んでいって10分たった。僕はイライラしながらオペレーター
とミサトとアスカのやり取りを聞いていた。どうやら、順調に使徒を発見するところま
では終わったようだ。後は捕獲用のケイジに使徒の赤ちゃん突っ込んで上がってくるだ
けである。僕はほっと一息ついた。まだ油断はできないが、第一段階はクリアしたと見
て間違い無さそうだからだ。そして、捕獲に成功した、と言う報告が聞こえて、僕はや
っと溜息を吐いた。現場にも緊張感の緩みが感じられた。
「ふぅ・・・見てるだけってのもなかなかしんどいな」
「そうね。私なんか毎度それよ? あんたが指示無視しまくるから」
「うるせー馬鹿。現場の判断って奴だ。今までそれで不味いことになった試しねぇだろ」
「まぁね。そう言う意味じゃ信用はしてるわよ。ま、今回は何事も無くてよかったわ。
終わったら、温泉にでも行きましょうか?」
「ジジくせーなー。まぁいいけどよ。温泉つったら卓球だな、卓球やろうぜ卓球」
「あら、私は強いわよ?」
「上等!」
もう後一分かそこらすれば弐号機が溶岩の中から姿を現すだろう。僕とミサトはようや
く安心して軽口をたたき始めた。だが、一分たっても弐号機の姿は現れない。オペレー
ターのロンゲが鋭い声で警告した。
「使徒が活性化しています! 捕獲ケイジが・・・破られました!」
ついで聞こえてくるアスカの悲鳴。何事も無かったと安心したらこれだ。だから使徒なん
か見つけ次第殺しちまえば良かったんだ。僕は火口で中腰になった。
「アスカ! まだ生きてるか!?」
「何とか。でも、プログナイフ落としちゃった! きゃあああ!」
「おい! 何が起こってんだ!?」
「使徒が!」
よくわからんが、使徒が急にでかくなって捕獲ケイジをぶち破り、今まさに弐号機に襲い
掛かっているらしい。僕は肩のナイフを火口に投げ入れた。
「ナイフ入れたぞ!」
「・・・きた! サンキュ!」
珍しくビビってないアスカは、きっちり僕の投げ入れたナイフを受け取ったらしい。今回
は状況が状況だけに、アスカもビビるだけの余裕が無いのか。逆に僕は危機感を感じてき
た。何かやばい。国連の爆撃機が旋回するのが見えた。


24 :tomoタン=シソジ_ ◆xgSWdejH02 :04/01/31 13:20 ID:8DHGLOZT
「ミサトぉ! 国連の馬鹿共下がらせろ! 気が散る!」
「無茶言わないで! 熱処理されたくなかったら何とかしなさい!」
ミサトこそ無茶言うぜ。モニタごしにアスカの様子見る以外に僕に何ができるって言う
んだ。僕はリツコにさらに改造を施してもらったジェット噴射機能付エヴァットを背中
から取り出して構えた。使徒の攻撃でアスカを支えるワイヤが二本切られ、引き上げ速
度は亀の歩みよりもトロ臭くなっている。早く上がって来い! そうすればこの新型エ
ヴァットで僕がかわりに戦ってやれるのに!
アスカは必死で戦っているようだった。でも僕は何もできない。見てることしかできな
い。下でアスカが喧嘩してるってのに!
「うぅぅうう・・・うっがあ! チキショームカついてきたあ!」
ああもう、こう喧嘩を見てるだけってのはストレスだ。僕は我慢できなくなりつつあっ
た。モニタごしではアスカの顔しか見えなくて、どんな状況になっているのかさえわか
らない。下を見るとボコボコ沸き立つ溶岩。僕は生唾をゴクリと飲み込んだ。
「ああ・・・熱いだろな・・・」
一瞬の躊躇。ミサトは僕が何をしようとしているのか気付いて鋭く静止の言葉を吐いた
が、それは僕は既に火口から飛び込みを敢行した後だった。もう我慢なんかできない。
初号機でATフィールド張れば多分、多少は耐えられるはずだ。僕はワイヤを片手に、エ
ヴァットを振り上げて溶岩の中に特攻した。
「あぢー!! あぢぢぢッ」
さすがにLCLの加熱までは至らなかったが、全力でATフィールドを張っているにも関わら
ず初号機に恐ろしい熱気が迫っているのが文字通り肌で感じられた。ATフィールドは万
能バリアじゃない。どういう理屈か知らないが、熱の伝播は防げないのだ。
視界はほとんどない。程なくして弐号機の背中までたどり着く。
「おら! 使徒はどこだ!」
「シンジ!」
嬉しそうなアスカの声。僕はケツを拭いてやると言った。男に二言は無いのだ。弐号機
を覆う耐熱装甲をガンと一発エヴァットで軽く叩いて、僕は弐号機の背中にぴったりく
っついた。アスカの背中を狙っていた使徒らしき怪物の姿がようやく見えてくる。

25 :tomoタン=シソジ_ ◆xgSWdejH02 :04/01/31 13:37 ID:8DHGLOZT
そいつは溶岩の中をすいすい泳ぎながらやってきた。オエ! キモッ! 
見た目は深海魚か何かのようにグニグニした魚みたいな姿だ。中央に爛々と輝く赤い瞳。
・・・アレがコアか!僕は弐号機の肩に足を乗せてエヴァットを大上段に構えた。
「アスカ、道作れ!」
基本的に頭がいいアスカは、僕の言葉をすぐに理解した。背中ごしに弐号機のATフィー
ルドが放射状に広がってゆき、僕は一瞬弾き飛ばされそうになったが、ATフィールドの展
開をやめて足を踏ん張り、弐号機の頭を足で挟み込むことでそれに抗した。溶岩が初号機
の装甲を焼き、灼熱の苦痛に涙が出そうになる。永遠の一瞬の後、溶岩が徐々にATフィー
ルドに押しのけられ、空白の空間が生まれる。勢いよく突っ込んできていた使徒はその
空間で宙に浮いたままこちらに突っ込んでくる。思いっきり振りかぶったエヴァットの
頭が火を噴き、エヴァの筋力とジェットで加速したエヴァットの先が使徒が慌てて展開
したATフィールドごと使徒の頭をぶったたいた。使徒の上半身がぐしゃりと潰れた。使徒
は突っ込んできた勢いそのままに反対側の溶岩に突っ込み、ぐずぐずと音を立てながら溶
けて消えた。エヴァット攻撃の衝撃に耐えられず、ワイヤがぶちりと切れた。
僕は慌ててそれを掴み、弐号機の無事を確かめる。ATフィールドの全力展開で耐熱装甲の
あちこちに亀裂が入っていたが、弐号機は無事だった。
「アスカ、大丈夫か?」
「・・・あづい」
「あー、大丈夫みてーだな」
耐熱装甲は既に役に立たなくなっていたようで、アスカは顔を歪めてその熱に耐えていた。
「ううう・・・怖かったよぅ」
「バカヤロ、僕のが見てて怖かったっつーの。もっとこう、ちゃちゃっと倒せよ使徒なんか」
「だって、ナイフ効かなかったんだもん」
「気合が足りねえからだ、気合が。つうかあっちいな、早く上げろよミサト」
僕はエヴァの姿勢をロックしてLCLの中でふわふわ浮かんだ。暑さに体中が弛緩する。
温泉なんか行かなくても十分汗かけそうだ。僕は犬みたいに舌を出してヘェヘェ息をした。
「シンジ・・・」
「あ?」
「助けてくれて・・・アリガト」
アスカが、暑さで苦しそうにしながらはにかんだ。
「へッ・・・冷たいチョコパ奢れよな」
僕も、ちょっと照れながらはにかんだ。

26 :tomoタン=シソジ_ ◆xgSWdejH02 :04/01/31 13:57 ID:8DHGLOZT
「必殺のドライブスマーッシュ!」
「にぎゃっ」
ミサトの強烈なスマッシュが眉間に命中し、アスカがひっくり返る。これで僕とアスカ合わ
せて八連敗。ミサト卓球強すぎ。あまりに勝てなくてムカついてきていた僕はもうフルーツ
牛乳飲みながら不貞腐れコースで煙草をすっていた。
「ちっきしょう、使徒に負けた時より悔しいぜ」
「ちょっとは手加減しなさいよ!」
僕とアスカがブーブー言うと、ミサトは爽やかに汗を拭きつつ、「いつでも勝負事には真剣
なのがポリシーよ」といった。あんまりムカついてきて、卓球はもうやる気がしないので、
汗をもう一度流そう、と、また風呂にいくことにした。
浴衣をとっとと脱ぎ捨てて露天風呂に首まで浸かって100数えている最中に、壁の向こう側か
らミサトとアスカの声が聞こえてきた。何か楽しそうな声。温泉は気持ちいいのだが、一人
で入っててもなんかつまらない。向こうは楽しそうでいいなぁ、今度来るときは子分共も連
れてこよう。
「ミサトってスタイルいいわよね・・・」
「アスカはこれからでしょ? 16の割には結構発育してるほうじゃない」
「ちょっと! 胸揉まないでよ! きゃあ!」
「この弾力、なかなかの揉み応え・・・やっぱ若いっていいわねぇ〜」
「アタシにその気な無いわよー! えぃ」
「いたっ やーだ、そんな強く握んないでよ」
「仕返しよ!」
・・・。一体何をやってんだ。僕は鼻まで温泉に浸かってぶくぶくと息を吐いた。自分自身が
元気になってきてしまった。薄い壁一枚隔てて、夢のレズクサプーンの世界が・・・広がって
いるのか? 反射的に鼻の下がべろんと伸びた。
・・・まぁ、ちょっとくらい・・・僕は音を立てないようにそーっと湯から出て、桶をそっと重ね、
足場を作る。足場は少し不安定だったが、まぁ、乗れないこともない。あとちょっとで、壁
の向こうが見える。もうちょっと・・・僕は背伸びした。背伸びした瞬間、足場が崩れ。。
「ぐべっ んおおおおお!?」
「シンジー! 今まさか覗こうとしてたんじゃないでしょうね!? サイテー」
本当最低だ・・・僕はにじんできた涙をそのままに硬い石の上で背中の痛みに耐えながら、次の
壁を超える手段を考えていた。結局、覗けそうになった瞬間に飛んできた石鹸で目を痛打され
るまで、僕の努力は続いた。

27 :tomoタン=シソジ_ ◆xgSWdejH02 :04/01/31 14:04 ID:8DHGLOZT
以上、マグマ使徒の回ですた。
次回、汁。

28 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:04/01/31 14:05 ID:Ih7uVDwp
リアルタイムハァハァ
体育座りで次回待ちまっ!

29 :tomoタン=シソジ_ ◆xgSWdejH02 :04/01/31 14:33 ID:8DHGLOZT
「大体なぁ、綾波はちょっとクール過ぎるっつうか。スカして見えんだよ。男寄ってこねえぞ」
「そう?」
「シンジ、ファーストのは素だから仕方ないわよ。こないだなんか、せっかくチョコパ奢っ
てやってんのにもくもくと食べるだけでさ。もー他見えてないの」
「礼は言ったわ」
「だからな、その辺が駄目なんだよワカル? ちゃんと脳みそ入ってる? ノックノック入っ
てマスカ? あーいい音するわ、こりゃカラッポだなギャハハ」
「・・・? そう・・・駄目なのね」
今日は起動実験の日だ。起動実験だけはサボるとリツコが鬼のような面で怒鳴るので、これだ
けは僕も二回しかサボったことがない。まぁ、最近は学校帰りにアスカと綾波と一緒に外で
飯食ってネルフ直行と言う生活が続いているので、ネルフ関係のことはサボってない。
綾波とアスカは中味はともかく外見はなかなかなので、連れて歩くのは気分がいい。子分二人
は露骨に羨ましがっている。それは快感だった。
でも、実際この二人は彼女にするならどうかと考えると微妙なところだった。アスカとは
同居しててもう身内感覚で女を感じないし、綾波は性格がアレ過ぎる。僕は結構一人にのめ
り込むタイプなので、いざ付き合うとなるとずっと先のことまで考えてしまう為に、案外
気安く付き合ったりできないほうだった。仙台で一度浮気されて相手の男を半殺しにしてから
そう言えば女性関係はさっぱりだ。
でも、今のこの状況が楽しくないか、といわれたら楽しいと自信を持って応えるだろう。
アスカは出来の悪い妹みたいだけどそれなりに懐いているし、綾波はそもそも静か過ぎて気
に障るようなことはない。今の関係がこの三人にはぴったりなのだ、と僕は思っていた。
程なくしてネルフの正門までたどり着いた。カードを機械に読ませ・・・アレ? 扉は反応
しなかった。どういうことだ? 怪訝な顔で僕ら三人は顔を見合わせた。
「正門メンテするって話、あったっけか」
「んなの知らないわよ。故障してんのかしら?」
「碇くん・・・非常灯が点灯しているわ」
「・・・停電?」
裏門も同じように反応しなかった。手動の非常口まで回ってみるが、そこも硬く閉ざされて
いて通電している様子は無い。間違いない、ネルフは停電しているのだ。

30 :tomoタン=シソジ_ ◆xgSWdejH02 :04/01/31 14:46 ID:8DHGLOZT
手動の非常口を三人がかりでこじ開け、中に入るとそこは暗闇だった。こんな中を進むなん
て面倒臭いことしたくなかったので一瞬サボっちまうか、なんて思ったが、内部の電源が
生きていてリツコが待ってたら後が怖い。しゃーねぇなと呟きながら僕は回れ右した。
「シンジどこいくの?」
「懐中電灯買ってくる。あとついでにアイス食いてえ」
「非常事態だっていうのに暢気ね、あんた・・・その神経ちょっと羨ましいわ」
「おめーがちっちぇえだけだこのビビり女」
コンビニまで行き、懐中電灯とアイスを買って三人で食べていると、凄まじい轟音が聞こえ
た。耳が痛くなるようなその爆音は、ビルが崩された音だった。その崩れたビルの向こう側
に巨大な蜘蛛が見える。いや、蜘蛛に見えるが幾何学的な模様とどこか金属チックでありな
がらぬらぬらしたその見た目にはよーく覚えがある。
「お・・・おい、アレって使徒じゃねえ?」
「うん・・・使徒っぽいわね」
思わず食べかけのアイスを落としてしまったアスカが口をあんぐり開けてそれを眺めた。綾
波が黙ってきびすを返す。
「行きましょう」
「んあ・・・そだな。早くいかねえとヤベエな」
これは本当の非常事態だ。停電してるってことはもしかしたらエヴァ動かないんじゃないか?
でも、とりあえずケイジまでは行かないと。エヴァ一機でも動かせるなら初号機とエヴァット
がある。どちらにせよパイロット三人がこんなとこでアイス食ってる場合じゃないのは確かだ
った。非常口に戻って懐中電灯をつけ、中を進む。所々に光っている非常灯を逆に辿りつつ、
僕らはケイジを目指した。
「し、シンジぃ・・・」
案の定、暗さにアスカがビビり始めた。僕の制服の裾をぎゅっと握ってキョロキョロしている。
「おい、んな引っ張ったら服伸びるだろ」
「だって・・・」
「あああ泣きそうな顔すんな馬鹿。わかったから、そんなに引っ張るな」
全く根性が据わってねえなぁ相変わらず。僕は溜息を吐いて、暗闇を進んだ。

31 :tomoタン=シソジ_ ◆xgSWdejH02 :04/01/31 15:02 ID:8DHGLOZT
僕にとっての使徒はもはや日常の延長でしかなかった。だが、停電したネルフの、暗闇を進
むのはそれなりに非日常でドキドキする。平気でスタスタ歩いていく綾波の背中を追いつつ
僕はへっぴり腰のアスカを引っ張って歩き続けた。
「なぁ綾波。思ったんだけど道わかって歩いてんの?」
「方向はあってるわ」
「・・・じゃ、道はわかんねーのか・・・しかしこう暗いと全然わけわかんねえな」
「道は方向さえあっていればそのうちつくわ。でも、カードキーが使えないから」
「あん? ああ、そうだな。で、どうすんだ?」
「通風孔を使うわ」
「通風孔?」
綾波は一瞬めんどくさそうな顔をしたが、すぐに表情を元に戻して説明を始めた。ネルフ
本部には通風孔が縦横無尽に走っている。ケイジの階層まで階段で降りたら、その通風孔
でカードが無いと開かない扉をパスしようってことらしい。何かスパイ映画のノリだ。ちょ
っとテンションの上がってきた僕は、拳銃かなんかあればもっとそれっぽいのに、と考えた。
二十分くらいかかって階段を下りた頃には、もうすっかり闇に目が慣れていた。
「ここがケイジまで繋がってんのか?」
「すべての通風孔は繋がっているわ。距離的にここからが一番近いはず」
「さっすが綾波、ガキの頃からここに住んでるだけはあるな。じゃ、行きますかね」
「え、ええ〜こんな中進むのぉ?」
「大丈夫大丈夫、綾波さまが大丈夫つってんだぜ?」
僕が通風孔の金網をあけると、綾波がもそもそと通風孔にもぐりこんでいった。僕はごねるア
スカをさっさとその通風孔の入り口に蹴りこんで、それに続く。四つんばいにならないと進
めないくらいの高さの通風孔は長く、段々膝小僧が痛くなってくる。アスカはしばらくごちゃ
ごちゃブー垂れていたが、そのうち諦めて黙った。僕らは黙って闇を進んだ。


32 :tomoタン=シソジ_ ◆xgSWdejH02 :04/01/31 15:19 ID:8DHGLOZT
綾波が突然止まり、アスカもとまったので僕は思いっきりアスカのお尻に顔をうずめてしま
った。アスカが悲鳴をあげ、鋭すぎる後ろ蹴りを連発する。使徒より先に殲滅されそうにな
った僕はようやくアスカの蹴り足を引っつかんで落ち着けって叫んだ。
「あ、ゴメン・・・」
「いてぇ・・・ったくよーゴメンじゃねえぞコラ。で、綾波先生は何立ち止まってんだ?」
「この下がケイジ」
「おお、ついたんか。で、どうやっており・・・まさか降りる方法考えてなかったとか?」
「・・・ええ、誤算だったわ」
綾波は悪びれる様子もなくあっさり認めた。
「ふざけんなこのチンカス! たまに頼りになるなと思ったらオチ付きかよ!」
「悪かったと思っているわ」
「全然誠意がねえ! 誠意を感じねえ! あー・・・しゃんねぇ・・・戻るか・・・」
後ずさりを始めたその瞬間、ネルフ全体が大きく揺れた。使徒の攻撃? ゆれはますます
酷くなってゆき、僕らはその場から動けなくなった。いきなりの浮遊感にアスカが小さく悲
鳴を上げる。今僕らがいる通風孔の配管パイプが足元で折れたのだ。僕らはそのまま落下し、
「うぎゃあッ」「いった〜ぃ!」
僕の上にアスカと綾波が落下する。ぐえ・・・あまりの激痛に僕は悲鳴を上げながらごろごろと
転げまわる。顔を上げると、唖然としているミサトと、親父ゲンドウの姿があった。


33 :tomoタン=シソジ_ ◆xgSWdejH02 :04/01/31 15:28 ID:8DHGLOZT
「おおおおお・・・お? あ、ミサトじゃん」
「あんたたち、どっから来たのよ・・・」
結果オーライ。痛い目は見たが、通風孔からケイジに降りることには成功した。
どうなることかと思ったが、まぁ結果よければすべてよしだ。
「あいてて ・・・まぁ見ての通り通風孔から」
「行動力があるのはいいんだけど・・・一歩間違えたら大怪我よ! 少しは考えなさいよ・・・」
「アホかてめぇ、使徒来てんだぜ!? 駆けつけた僕らに大いに感謝しやがれボケ!」
腰をとんとん叩いていたゲンドウが歩み寄ってくる。ミサトが言うには、総出でエヴァに電池
を取り付けしていたらしい。人力で、だ。ゲンドウも電源ボックスを押したらしい。珍しい
こともあるもんだ。でも、ミサトは小声で、司令はあんた達が来るのを信じてたのよ、と耳
打ちした。ウゼーそんなの知るか! でも、まぁ、汗まみれのゲンドウの姿を見てぐっと来
たのは確かだ。何だよ、熱いじゃんか! 顔合わすたびに碇家の面汚しだとか穀潰しとか母
さんがあの世で泣いてるとかぐちゃぐちゃうるさい奴だが、やることはキッチリやってくれる
じゃないか。僕はニヤリと親父そっくりに笑った。
「よー親父。何機出せんだ? 初号機は動かせんのか?」
「ああ。全機15分は稼動できる状態だ。出撃しろ」
「へ・・・しゃーねぇな! 今日はてめぇの顔立ててやるよ」
「お前のような馬鹿息子はこんなとき以外何の役にも立たん。負けたら勘当だ」
「使徒なんざに負けるかよハゲ。てめぇは座って茶でも飲んでな」
「・・・頼んだぞ」
「後は任せな。いくぜぇ、アスカ、綾波」
僕らはリツコが用意したプラグスーツに着替え、エヴァに乗り込んでシンクロを開始した。
「カタパルトは動かないわ。シャフトから直接外に出て」
「あぁ!? アレよじのぼれってのかよ!」
「しょうがないでしょ!」
「ミサトーお前しょうがないで流しすぎだ馬鹿! いっつもじゃねえか! 人事だと思いや
がって・・・テヘって言うんじゃねえ!」
「シンジぃ・・・上見て・・・」
「あん? うおッ」
アスカの言葉に上を向くと、巨大な瞳がシャフトを見下ろしていた。もうこんなところまで
使徒が入りこんできていたのだ。僕はエヴァットを構えた。

34 :tomoタン=シソジ_ ◆xgSWdejH02 :04/01/31 15:37 ID:8DHGLOZT
元はといえば停電してる時に使徒がタイミングよく来るのが悪いのだ。つまり使徒が何も
かも悪い。僕はそう考えてぶんぶんエヴァットを振った。ここの所、状況的に自由にエヴ
ァット振り回せる機会が無くてフラストレーション溜まっていたところだ。ジェット噴射
の弱点をさらに改良し、強力な電磁石の反発力を利用した新生エヴァットは青い血を欲し
ている。アスカは巨大で不気味な瞳にビビっていたが、僕の怒りの気配を感じ取ってナイ
フを構えた。一丁しかない役立たず銃パレットライフルは綾波が持つことになった。
「じゃあ、上っててあのおメメをぶん殴るとしますかー!」
エヴァットをもう一度背中にしまってどっこしょ、と壁の出っ張りをひっつかみ、僕とア
スカはぐいぐいその壁を登っていった。途中上を見ると、なぜか巨大な目はうるうると潤
んできていた。僕に喧嘩を売ったことを早くも後悔してんのか? なんてそんなことはあ
るはずもなく、ボトっと落ちてきた粘性の高い液体がアスカの弐号機を直撃する。
「にぎゃっ」
アスカは猫みたいな悲鳴を上げてさかさまに落下していった。
「こらー! 涙かぶったくらいで落ちてんじゃ・・・」
今度は僕のところにボトっと涙が落ちてくる。その涙は初号機の肩に触れてジュウっと言
う嫌な音をたてた。ついでやってきた激痛に、僕も思わず壁の出っ張りを手放しそうにな
ってしまった。
「いってぇぇぇええ! なんだこれ!」
「・・・溶解液?」
肩が焼け焦げて煙を上げている。ヤベエ、これ頭から被ったらショック死しそうだ。僕は
小刻みに体を左右に振って的を絞らせないようにしながら少しづつ上っていった。
綾波のライフルが火を吹くが、使徒のATフィールドがその弾丸を通さない。でも、その
援護射撃のお陰で溶解液が降ってくることは無くなった。使徒が銃撃を嫌がってシャフト
の入り口から離れる。チャーンス! 僕は一気にシャフトを上りきった。ついで、最初か
ら上りなおしていたアスカが僕においついてくる。電源は残り七分少々。
「手間かけさせやがって・・・ぶっ殺す!」
僕とアスカは一斉に、蜘蛛のような使徒に襲い掛かった。

35 :tomoタン=シソジ_ ◆xgSWdejH02 :04/01/31 15:50 ID:8DHGLOZT
僕のエヴァットが長い足の1本をへし折る。アスカのATフィールド放射がもう1本足をもぎ
取った。平地で遠距離攻撃手段の無い使徒なんか、僕らの敵じゃない。使徒はぶぴゅっと
汁を飛ばす下品な攻撃で抵抗するが、足を二本失って自由に動けない使徒の攻撃なんかト
ロ過ぎてあたるわけがない。
「なんかよーこいつよえーなぁ」
「見た目のきちゃなさは最強クラスよ」
背後に回って残った足を粉砕すると、使徒はもう動けずにただ汁を前に向かってぴゅっぴゅ
と飛ばし続けていた。その姿はちょっと哀れで、そして哀愁たっぷりで思わず笑えた。
しかし、油断していた僕らに使徒は最後の抵抗を試みた。全面から狙いを絞ろうともせずに
がんがん汁を撒き散らしはじめたのだ。全方位にとんだ汁をすべて回避するのは容易ではな
く、攻めあぐねて僕とアスカは少し下がる。電源残り時間は三分。もうあまり時間がない。
「アスカ、フィールドで汁全部飛ばしてくれよ。一発で決めるからよ」
「了解。ちょっと離れて」
まぁ、何にせよ強敵ではない。汁に触れると熱いので嫌だったが、あの程度でエヴァを倒
そうなんて片腹痛いにも程がある。アスカが放射したATフィールドが撒き散らされる汁を
弾き飛ばして1本の道を作った。この一瞬で僕には十分過ぎた。エヴァットを振り上げ、使
徒に殺到した僕はまず汁がぴゅーぴゅー吹き出る穴を叩き潰し、返すバットで半円上の頭
をぐしゃりとへこませる。使徒は途中で折れた足を振り回そうとするが、僕は構わずエヴ
ァットでガンガン殴りまくる。コアが露出してない分倒すのに回数が必要だったが、まぁ
頭をぐちゃぐちゃにしてしまえば関係ない。原型が無くなるまで殴ったところでエヴァの
電源が切れた。使徒は当然、もう動かなくなって自分で撒き散らして汁で溶けてしまった。
「停電なかったらもっと楽勝だったな」
「こんなんばっかりだったら楽なのに・・・」
僕とアスカはエヴァから出て、ぶすぶすと煙を上げている使徒の残骸を見ながら呟いた。
「つうか超焦げくせぇッ 早く帰ろうぜ、甘いもん食いてえ」
「そーね。そろそろ停電終わってんじゃない?」
結局、停電の原因はわからなかったらしい。だが、まぁよわっちい使徒で助かった。アスカ
の言葉どおり、毎度こんなもんなら楽なのにな、と僕は呟いた。

36 :tomoタン=シソジ_ ◆xgSWdejH02 :04/01/31 15:51 ID:8DHGLOZT
汁終わり。次は落下か。これ工夫難しいなぁ・・・どうしよかねぇ

37 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:04/01/31 16:21 ID:DIymvm/x
エヴァSSに出てくる落下はちゃんとネルフ本部めがけて正確に落ちてくる奴ばっかでつまんないと思います

あとバスターホームランってご存知?

38 :tomoタン=シソジ_ ◆xgSWdejH02 :04/01/31 16:24 ID:8DHGLOZT
バスターホームランは考えたけど、微妙じゃね?

>エヴァSSに出てくる落下はちゃんとネルフ本部めがけて正確に落ちてくる奴ばっかでつまんないと思います

これイタダキで。小一時間後から再開する。

39 :tomoタン=シソジ_ ◆xgSWdejH02 :04/01/31 17:17 ID:8DHGLOZT
「受け止める〜!? アホか貴様冗談は寝顔だけにしとけよこの無能部長が!」
思わず出てしまった素直な感想には、ミサトの右ストレートがかえってきた。僕は鼻血
を吹き出して倒れた。アスカが慣れた手つきでティッシュを差し出す。
「ぬぐ・・・で、でもよ、あんなの受け止められるわけねーじゃんよ」
ティッシュを鼻に詰めながら立ち上がった僕に、ミサトは珍しく苦しげな表情で頷いた。
「ええ・・・正気の沙汰じゃないってことはわかってるわ。でも、本部を失ったら次の使徒
を倒すことは難しくなる・・・」
「言いたいことはわかるぜ。確かに第二じゃ電源も無いし結局エヴァ動かせやしねえもん
な。でもよ、もうちょっとマシな作戦はないのかよ?」
ていうか作戦と呼べるかどうかも微妙だぜ。使徒が落ちてくる場所が逸れたらアウト、
エヴァが受け止め切れなくてもアウト、受け止められたとしても、即座に殲滅できなきゃ
アウト。今までもナイナイ尽くしで戦ってきたが、今回はそれらとは次元が違う。完全
に運だよりだ。今日ばかりは僕も大丈夫大丈夫とは言えなかった。
「だから、この作戦には拒否権が認められ」
「僕は降りた。まだ死にたかねえ」
「アタシもヤダ。無理に決まってるもん」
言い切る前に即座に拒否った僕とアスカに、ぐぅ・・・とミサトが唸った。だが、綾波だけ
は何も言わない。そしていつもどおり、事も無げに言った。
「私がやるわ」
「ハァ? お前脳みそマジで鼻から抜けちまったのか? ほぼ確実に死ぬぜコレは」
「・・・私には代りがいるもの」
はい出た出ました必殺のお言葉。綾波の後ろ頭を僕はパコンと叩いた。綾波は少しよろめ
いてたたらを踏み、振り向いて僕を恨めしげに見つめる。
「相変わらずアホだな綾波は。お前に代りがいても零号機に代りはねえっつうの。命賭け
るにしても勝算がなきゃただの犬死に無駄死にだろが。んなこともわっかんねぇのかボケ!
大体なぁ、ミサトもだぜ。ここでエヴァ失ってもおんなじじゃんかよ。頭に何か沸いたか?」
ミサトは苦笑した。そして「そうね、これは私のわがままかもしれない」と悲しそうに言
った。別にミサトのわがままに付き合ってやるのは吝かじゃないが、それならもっとマシ
なことを考えろよ、と僕は思った。

40 :tomoタン=シソジ_ ◆xgSWdejH02 :04/01/31 17:24 ID:8DHGLOZT
使徒が宇宙から降ってくる。はっきり言ってとんでもなくお馬鹿な状況だ。全く使徒って
奴は意味わからない。自爆覚悟でくるその気合は評価できるが、自分が死んだら意味ない
だろうに。使徒がなぜそこまでネルフ本部を敵視し、攻めてくるのかさっぱり理解に及ば
ない。ミサトは黙っていた。他に作戦は考え付かなかったようだった。
「まぁ・・・無理に行けとはいえないわ。今回ばかりはね」
「私が・・・」
「うっせ綾波黙ってろ。ミサト、何でだ?」
僕はまだ諦めてない綾波をもう一回はたいて、ミサトに向き直った。
「何でそんなこだわるんだ?」
「このままじゃ世界が滅亡してしまうから・・・」
「んな大層な理由は聞いてねえよ。あの使徒はドカっと落ちてきて自爆って死ぬんだろ、
なら、生きてりゃ次もなんとかならぁ。わざわざコンマの可能性にかけたい理由って何だよ?」
「・・・地下のアダムに使徒が接触すればサードインパクトが起こるわ」
「そいつも知ってる。でも今回に限っちゃ大丈夫だろ? なんせあの使徒は落ちて死ぬ
んだ。次の奴から守ればいいんじゃん。だから今考えるのは、ここを放棄して次どうす
るか、じゃねえかよ。違うか?」
アスカが「シンジって実は頭いいね」とか呟いたので、僕は「当然だろ?」って胸を張った。
つうか「実は」って何だ、普段馬鹿だと思ってんのかこの野郎。ちょっと腑に落ちないぜ。
ミサトはしばらく黙っていたが、ようやく口をひらいて語りだした。
「私はね、セカンドインパクトで父を亡くしてるの。身勝手で、家庭を顧みないで、
仕事だ研究だって言って逃げてばかりの人だった・・・でも、最後に私を助けてくれたの。
大丈夫だよって笑ってくれたのよ」
セカンドインパクトは第二使徒が原因だったらしいという話はアスカから聞いたことが
あった。僕はボリボリ頭をかいた。
「乗れるものなら、私が初号機に乗って戦いたいわ。でも・・・」
「自分の手で倒したいってことか? 仇に自殺されちゃ立つ瀬がねえ」
「そう言うこと。これが私の戦う理由」
ふん。気にくわねー。僕は吐き捨てた。実際命張って使徒と切った張ったしてんのは僕
であり、アスカであり綾波だ。こんなお涙頂戴に乗るなんて真っ平だぜ。でも、ミサト
の表情は泣き顔で、僕は少し考え込んでしまう。

41 :tomoタン=シソジ_ ◆xgSWdejH02 :04/01/31 17:43 ID:8DHGLOZT
「いいぜ、やってやらー」
考え込んだ末に僕は決断した。別にミサトに同情したわけでもなければ自殺願望があるわ
けでもない。アスカがエー!と不満を漏らしたが、僕の一瞥ですぐに黙る。
「ミサト。正直、気にくわねー。でもよーあんたにゃ世話になってるからな、今回は折れ
てやるよ。でも綾波と二人じゃちときついからな、アスカ、お前もだ。いいよな?」
「えぇ! 嫌よぅ」
「うっせ、僕がやるつって駄目だったことがあんのか!? あぁ?」
「無い・・・けどぉ」
「じゃあ大丈夫だ、僕に任せとけ。何とかなるなる!」
まだ何か言いたそうにするが、アスカは結局何も言わずに肩を落とした。綾波だけが満足
そうに頷く。何か最近、実は綾波も僕と同じくらい好戦的なだけなんじゃないかって疑念
を感じる。まぁ、いいけど。ミサトは涙を堪えるような表情で、ありがとう、と呟いた。
「規則じゃ、遺書を書くことになってるけど」
「書くかそんなもん! 縁起でもネェこというな」
「死んだらシンジに責任とってもらうからいい・・・」
馬鹿アスカが意味不明なことを言う。死んだら責任も何もないだろうに。最後に綾波が
クールに言った。
「私も必要ありません」
「・・・ごめんね、私にわがままにつき合わせちゃって。でも、どうして?」
ミサトが不思議そうに僕のほうを向いた。
「あー。まぁよ、死にたかねぇし成功しそうもねぇとは思ってんだけどな。ぶっちゃけ僕
らは多分エヴァに乗ってんから死にゃしねえと思うんだわ」
「そうね、ATフィールドがあなた達を守るわ」
「ん。だからよ、ミサトの覚悟に乗るぜ。成功すりゃあ、本部丸ごと無事で済むんだ。や
る前に諦めちまって、後で後悔したかねえ。アンタの復讐なんてどうでもいいし勝手に死
ぬまでやってろって感じだけどよ、まぁ、考えてみりゃ悪くねぇ賭けだと思ってな」
今から逃げても、失敗しても、大差ない気がする。なら、やってみても損は無いというの
が僕の考えだった。ミサトは、ポロリと涙を一筋こぼした。
「死ぬまでやってろ・・・か。手厳しいわね。でも、今はありがたいわ」

42 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:04/01/31 17:50 ID:cNUOsYuX
なんだかこのミサトはかわいいッスね。
あとシンジがなんだかんだ言ってもやるときはやるヤツなのがいいなー

43 :tomoタン=シソジ_ ◆xgSWdejH02 :04/01/31 18:18 ID:8DHGLOZT
「使徒、降下を開始しました! 距離、36000!」
「みんな、距離7000まではMAGIが誘導するわ。後は目視で走って」
「あいよ! いくぞオラー!」
僕らはMAGIの誘導に従って真っ直ぐに走った。電線を飛び越え、家屋を踏み潰し、風圧で
ビルの窓ガラスをばりばり割りながら全力疾走。エヴァで走っているだけだから本当は息
なんか切れないはずなのに、なぜか息苦しい。
「距離15000! 使徒、降下軌道を変更! ナビゲーション調整します!」
ぬお! 僕は急ブレーキをかけて反転し、またナビゲーションに従って走り出した。ええ
い、さっさと落ちてきやがれ! イライラしてくる。オペレーターが距離10000を切ったこ
とを告知した。最初の緊張感はもう薄れ、今はただテンションが上がりきった興奮状態、
ランナーズハイな状態でひたすら走る。ナビゲーションが終わる。雲の境目にオレンジと
赤の趣味の悪い目玉が落ちてくるのが見えた。まだ距離がある。もっと、もっと早くだ!
気がつくと、隣に弐号機が走っているのが見えた。その向こうに零号機の姿も。結局三人
とも集まってしまった。これなら、三機同時に受け止められる。勝機が出てきた。僕らは
一気にテンションを上げて前傾姿勢をとり、邪魔するものすべてを吹き飛ばしながら走り
抜けた! いつしか市街を抜け、緑の平野を走りぬけ、海が見えてくる。ハコネの端から
端まで走り続けたのか。使徒はまだ遠い。不味い、このペースじゃ追いつけない。僕の焦
りを感じ取ったのか、弐号機と零号機がさらに速度を上げようと高く高く足を上げた。
「ぷあッ ・・・あれ?」
いつの間にか海まで到達し、エヴァ三機はばしゃーんと派手に海に突っ込んでいた。使徒
はまだまだ遠い。って、どういうこったこれは?


44 :tomoタン=シソジ_ ◆xgSWdejH02 :04/01/31 18:18 ID:8DHGLOZT
「ミサト、使徒、どうなってんだ?」
「えーっと・・・狙い外して海に落ちてったわ・・・」
「海ってお前、俺らの全力疾走は・・・ぬおあっ」
ついで巨大な波がエヴァ三機を浜まで押し流す。海面に炸裂した使徒の自重を使った特攻
爆弾は高さ百メートル近い津波を起こし・・・まぁ、沿岸はそれなりに被害受けたろうけど、
この辺ってダレも住んでねえし・・・
「オイオイ・・・前回といい今回といい・・・使徒って段々頭悪くなってきてねえ? あんなの
が仇なんかよ、大変だなミサト」
「言わないで・・・」
ミサトはモニタごしに涙を流していた。
だが、綾波の鋭い警告の声に、僕は反射的に使徒が炸裂したと思われる外洋の方向を見た。
そこには、宇宙から落ちてきた時と何ら代らぬ姿で、その巨大な目玉を露わにした使徒が
浮かんでいるのが見えた。左右の突起が多少減っていたし、最初に見た時の半分ほどの大
きさまで縮んでいたが、それでも十分巨大な威容で、使徒はゆっくり浮上を始める。
「あのやろ、水に落ちたせいで生き残りやがったか!」
「シンジ! また空に上がろうとしてる!」
「にがさねぇぞ! もっかい走るなんてごめんだ! アスカ、打ち落とせ!」
今僕はエヴァットを持っていないし、綾波も徒手空拳だ。最もATフィールドが強力で、し
かもそれを遠距離兵器にできるのはアスカだけだ。しかし、それでも距離が遠すぎる。僕は
アスカの弐号機を担ぎ上げた。
「ちょっとぉ、シンジ何すんのよ!」
「アスカ、おめーは風になるんだ。綾波ちょい手伝ってくんね?」
「風って・・・意味わかんな・・・」
「綾波は右足な。うっし、アスカ歯ぁ食いしばれぇ!」
「ま・・・まさか・・・ちょ、シンジ、やめ・・・」
「おんどりゃあああああああ!」
僕の初号機と綾波の零号機に思いっきり投げられた弐号機は素晴らしい速度で空を飛び、
風になった。


45 :tomoタン=シソジ_ ◆xgSWdejH02 :04/01/31 18:20 ID:8DHGLOZT
アスカの泣き叫ぶ声が聞こえる。だが、アスカは泣きながらもATフィールドを放射し、上
昇しつつあった使徒のど真ん中、コアの付近を切り裂く。そのまま弐号機と激突し、使徒
は再び海に落下して大きな水柱を立てた。僕と綾波は使徒にとどめを刺すためにクロール
で海をばっさばっさ泳ぎ、使徒と格闘しているアスカに合流する。内部電源は残り少ない。
だが、三体でタコ殴りにされ、三本のプログナイフで寸断された使徒は徐々にその動きを鈍
くしてゆき、やがて、泣きながらナイフを振り回すアスカの一撃をコアに受けて沈んでいっ
た。魚に食われてろ、ボケが!
海底をえっちらおっちら歩いている最中に、エヴァの電源が切れた。津波でもなければ重い
エヴァの体が波に流されるはずもなく・・・僕らは海底に立ち往生する羽目になってしまった。
二時間後にネルフのダイバーに救助された僕らは半泣きのミサトに一人づつ抱きしめられ、
よくやったって誉められた。それから、携帯にかかってきた電話で親父が街を壊しすぎだっ
て小言を始めたが、最後にはよくやってくれたって僕を認めたので、気分は悪くない。
その後、ミサトと、僕とアスカと綾波、それにリツコで海水浴を楽しみ、充電が済んだエ
ヴァに乗って第三新東京市に引き上げることになった。
「シンジくん・・・」
「んー? ミサトどったの?」
帰りのバスの中でミサトが僕にそっと耳打ちした。
「今回は・・・ほんとにありがとう・・・」
僕は返事をせずにバスのリクライニングシートをばたっと倒して狸寝入りした。
人に本気で感謝されるのには、僕はあまり慣れてなかったのだ。

46 :tomoタン=シソジ_ ◆xgSWdejH02 :04/01/31 18:23 ID:8DHGLOZT
落下使徒完。リク通り狙いを外してみますた。
次はウイルス使徒らしいが、コレはシンジに関係ないので飛ばす方向で。。

47 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:04/01/31 19:37 ID:cNUOsYuX
めっちゃええやん。
今後も超期待age!だけどスレはsageで。

48 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:04/02/01 04:09 ID:/Vab87pB
tomoタン乙
そーいや高CQスレでは話がでないけど
もう高CQ卒業なのか?

49 :tomoタン=シソジ_ ◆xgSWdejH02 :04/02/01 10:19 ID:sEM6XQRq
>>48
ザケンナ(゜Д゜)!!
誰が好んで叩かれるか〜(;´Д`)<勘弁汁

50 :tomoタン=シソジ_ ◆xgSWdejH02 :04/02/02 23:35 ID:hyR2Up3V
「ガハハ、ついにシンクロ率でも抜いちったぜ僕天才すぎ!」
「・・・ぬぅぅ・・・」

もう何十回と行っているシンクロテストでアスカに勝ったのは初めてだった。
アスカは馬鹿でビビりで能天気な駄目女だが、シンクロ率だけは異常に高い。
常時90%近い数値を保っている。僕が今回たたき出した数字は93%。
もちろんこれはエヴァパイロットのレコードであり、ギネスであり、新記録
である。我ながら自分の才能が怖い。さすがにアスカは悔しそうにしていた
が、そのアスカも今日は過去最高の89%と言う90の大台が狙える数字を出して
おり、それ程落ち込んでいる様子には見えなかった。
「ふほほ、アスカさんよ、約束通りチョコパ奢れよ。あの千五百円のでかい奴な」
「くッ・・・次は負けないわよ」
「ひゃはは無理無理、開眼した僕はもうなんつーか国宝? チミみたいなパンピーにはこれ以上の数字は無理ですよあっはっは」
「む・・・むかつく〜! じゃあ今度のテストでアタシが買ったら向こう一ヶ月テレビ権は頂くわよ!」
「いいのかな〜? そんな約束しちゃっても?」
「むむむ・・・次は絶対勝つ!」
とは言え、やはり最も強力なATフィールドと、その放射能力を持っているのはアスカだけだ。
僕はリツコと何度も打ち合わせしてさらにエヴァットの改良を進めてはいるが、
単発の攻撃力ではやはりアスカが最強である。
これは特質的なもので、綾波も僕も真似ができないし、その出力をはじき出す
ことも夢のまた夢だ。アスカの余裕はその辺から生まれている。綾波は命中精
度の高い射撃能力で一芸に秀でており、シンクロ率の低さはその戦法ゆえにあ
まり関係が無い。最近の僕らは完全な分業方式で、近距離の僕、中距離のアス
カ、遠距離の綾波、と言う風に特化していた。

51 :tomoタン=シソジ_ ◆xgSWdejH02 :04/02/02 23:37 ID:hyR2Up3V
だからアスカが恐れているように弐号機を降ろされる、と言うような事態は恐らく
発生しない。それはミサトの戦力構想、戦術構成からもう考えられないことだから
だ。・・・なのに、アスカはまだ降ろすという言葉に過敏に反応する。アスカはいくら
聞いても、その理由を僕に話さなかった。僕はそれが気に食わなかった。一緒に暮
らしていて、もうアスカとミサトが僕の身内みたいなものだ。
だから身内に隠し事をされるのは気分が良くない。
「アスカ、テレビ権もいいけどよ、次僕に負けたらアレ話せよ」
「アレ?」
「弐号機に乗らなきゃいけない理由」
「・・・それは関係ないじゃん」
「気になんだよ。そうやって隠されると余計気になって眠れねんだよ」
「ごめんシンジ。それだけは話したくないんだ・・・」
「・・・くそ、何だよ! 馬鹿! 馬鹿アスカ!」
僕が癇癪を起こして罵倒しても、アスカは悲しそうに顔を伏せたまま、言い返して
こなかった。それがまた気に食わなくて、僕は溜息を吐いた。これ以上無理に聞い
て困らせるのはあまり格好良くないことだろう。
諦めるのは癪だったが、きっとそのうち話すかもしれないと思い直して僕はそれ以
上の追及を辞めた。
「わーった。わかったよ。もう聞かねぇ。泣きそうな顔すんな馬鹿」
「・・・ごめんね」
「ちッ・・・何か辛気くせー。チョコパ食いに行こうぜ」
僕はアスカの背中をドンと叩いてそれ以上しゃべらずに口をつぐんだ。


52 :tomoタン=シソジ_ ◆xgSWdejH02 :04/02/02 23:55 ID:hyR2Up3V
「おいミサト何だありゃ」
「使徒のことなんか聞かないでよ、知るわけ無いじゃない。本人に聞いてくれば?」
「ほんっと無能だな、お前。何の為にそこにいんの?」
「そりゃあ、この美しさで現場の士気を上げる為よ」
「死ね三十路ババア。笑えねんだよ」
「まだ29よ! アンタ・・・帰ってきたら殺すわ」
「ぐ・・・えっと言い過ぎました。ゴメンナサイユルシテクダサイ」
「誠意を感じないッ」
親父が漫才はいい加減にしろとキレて怒りだしたので、僕は前を向いて使徒を照準した。
使徒は縞々ゼブラな球だった。それ以外に表現のしようがない。ただ、ほわほわ浮いてい
るだけで何の被害もいまだ出ておらず、だから発見が遅れて戦場は市街となってしまった。
ここ最近、第三新東京市は本部と市街に被害が出ていなかったので、ビルの修復はあらか
た終わっており、ようやく迎撃都市としての本来の姿を取り戻している。
エヴァ三機完調で、電源があり、しかも迎撃施設が万全。何時になく準備完璧で迎えた迎
撃である。負ける要素はあまり感じられない。それでも、相手は使徒である。何をしてく
るかわからない、と言うことで、そそっかしいミサトにしては珍しく最初は様子見と言う
消極的な作戦を立てていた。
アスカ、綾波と共にビルの脇を抜けて使徒と少しずつ間合いを詰める。アスカが今回使用
する武器はソニックグレイブというプログナイフを先っぽにつけた槍みたいな奴だ。綾波
は低反動ライフルで射撃位置につく。僕は電磁反発式の第三世代エヴァットを構えている。
アスカはドン臭いことにアンビリカルケーブルをビルに引っかからせて、繋ぎなおしてお
り、展開が遅れている。僕ははやくもイライラし始めた。

53 :tomoタン=シソジ_ ◆xgSWdejH02 :04/02/03 00:05 ID:FKnp20+5
「ミサト、一発ぶん殴ってみるぜ」
「アスカがまだよ、待ちなさい」
「大丈夫だってイケるイケる」
「こら、また指示無視して・・・」
「綾波ー、僕が一発ぶん殴るから使徒がまだ生きてたら追い討ちよろしくぅ。アスカは使徒が逃げたら追っかけて
トドメさすってことで。はい作戦決まりーぃ初号機いっきまーす」
「もう、馬鹿!」
ミサトを無視して僕はエヴァットを大上段に構えた。電磁石の反発力を蓄え、ギリギリ我慢できる限界まで貯めた
あと、僕は一気に走り出した。そして、僕の制動を離れて炸裂しようと暴れるエヴァットを振り上げ、僕は天まで
届けと大ジャンプ。軽々と使徒より高い位置まで飛び上がった僕は、抑えきれないほどとなったエヴァットの反発
力を一気に解放した。エヴァットは音速を超え、空気を切り裂きながら使徒に向かって振り下ろされた。僕は勝利
の一撃となることを確信した。
だが、手ごたえは無かった。ふっと使徒の体・・・縞々の球体が消えうせ、今までで最高の反動でぶん回したエヴァッ
トの勢いで、僕は空中でそのまま三回転してしまった。そして何とか着地する。その瞬間、地面に足がズボっとは
まった。使徒の影? 黒い地面は陽光を遮ったような黒だ。だが、肝心の使徒は見当たらない。どういうことだ?
その間にも足はどんどん地面に沈む。ようやく、これが使徒の反撃なのだと気付いた時には、初号機は腰まで地面
に飲み込まれていた。
「な、なんだよコレ! ちきしょう放せ!」
僕はエヴァットを振りかぶり、地面に向かって思いっきりその反動を開放した。しかし、エヴァットは空を切った
かのような頼りない手ごたえと共に地面に飲み込まれた。ぐるんと回転しそうになるが、地面に飲み込まれた瞬間、
その反動までもが消えた。何か飲み込まれていると言うよりも、手の先が唐突に消えたみたいな感覚。
僕は怖気を覚えた。
「なんか・・・ヤベエ!」

54 :tomoタン=シソジ_ ◆xgSWdejH02 :04/02/03 00:20 ID:FKnp20+5
アスカの弐号機がようやく来た。そして影に向かってソニックグレイブを振り下ろす。しかし、
グレイブの先が僕がやった時と同じように何の抵抗もなく影に沈むのを感じたか、アスカが驚い
て飛び下がった。
「シンジ! 何よこれ!」
「わかんねぇ・・・わかるのは僕はもう駄目で、アスカはまだ無事で、この野郎ぶっ殺すには一端
退却すべきだってことだけだな。昨日は悪かったな、無理に聞こうとしてよ」
「シンジ、何諦めてんのよ!」
「もう腕まで動かなくなってんだ。まぁ・・・アレだな、一斉攻撃してたら全員イカれてたかもな。
やっぱ俺の作戦は正しかったぜ。天才さまと呼べよ」
「馬鹿、ふざけてる場合じゃ・・・」
「やべ、もう首まで来た。・・・仇はとってくれよ?」
「シンジ、ちょ・・・やだ、シンジ!」
「こっちくんなよ、あぶねえぞ。 ・・・じゃあな」
「シンジ、あんたビビってん・・・」
アスカの言葉は最後まで聞こえなかった。僕は頭まですっぽり影に飲み込まれた。視界が真っ暗
になって何も見えない。死ぬかと思ったが、まだ僕は死んでないようだ。でも、初号機の体は粘
土で固められたみたいに動かない。このままじゃ、まぁ普通に考えても死ぬっぽい。
アスカには強がってかっこつけてみせたが、今更ながらしみこんでくるような恐怖を感じてきた。
ついに死ぬのか。思えば長いような短いような人生だった。好き勝手してきたし、結構楽しかっ
た。しょーがねぇなぁ・・・と僕は恐怖と戦いながら笑ってみた。
けど、引きつったように表情の筋肉が動こうとしなかった。歯がLCLの中でカチカチ鳴る。
死ぬ・・・死ぬのか。死ぬってどうなるんだ? 死んだらどうなんだよ僕は。こええ・・・こええよ・・・。
こえーけど、でも。僕は歯を食いしばった。戦いには負けたみたいだが、心まで負けるわけには
いかなかった。それは僕の意地であり、そしてそれこそがこれまでの生だったからだ。

55 :tomoタン=シソジ_ ◆xgSWdejH02 :04/02/03 00:35 ID:FKnp20+5
「シンジあんたビビってんじゃないの!? 使徒なんかご自慢のエヴァットでギタギタに・・・
くっ、シンジ・・・」

シンジはアタシの目の前でずぶずぶと沈んでいった。強がって笑っていたシンジの顔が、モニ
タからぶちんと消え失せる。シンジを飲み込んだ影を避けて後ろに下がりながら、アタシは身
を焼き焦がすような無力感に打ちのめされた。まただ。また、アタシのミスで失敗した! 
アタシは下がりながらATフィールドの放射を影に向かって浴びせ続けた。だが、何も起こらな
い。あのガラが悪くて怒りっぽくて少しスケベで意外にガキで・・・そしてちょっとだけ優しいシ
ンジが顔を出すことは無かった。
最強のATフィールド? 誰にも真似できない放射攻撃? それが何だって言うの? こんなに何
度も何度も、それこそ渾身の力を込めて連発してみても、使徒に何のダメージも与えられていな
い。今までだって、すべての使徒はほとんどがシンジが何とかしてくれたのだ。アタシは駄目だ。
シンジが勝てなかった使徒に、敵うはずもないではないか。涙がにじむ。シンジ、ごめん、アタ
シじゃ無理だよ。ファーストがライフル弾を打ち込んでも、やはり影はその弾丸すら飲み込んで
しまう。ようやくわかった、この使徒はこの影が本体なんだって。
「・・・アスカ、撤退よ」
「でもまだ、シンジが・・・」
「いいから撤退よ! ・・・帰還しなさい。まだ、終わったわけじゃないわ」
ミサトの強い言葉を、実はアタシは待っていた。ずるい女だ、アタシ。だってシンジが勝てなか
った相手に戦いを挑むなんて、アタシにはできそうもない。足が震えてる。シンジを助けたいの
に、足の震えがとまらない。「ビビってんじゃねえ!」ってシンジが怒らなきゃ、アタシは恐怖
一つ自分では屈服させることができないのだ。何て無力なアタシ。アタシは不甲斐なくて、情け
なくて、でも、少しだけホっとしながら弐号機のシートに頭を押し付けて泣いた。
ごめんね、弐号機。こんな弱虫がパイロットだなんて。

56 :tomoタン=シソジ_ ◆xgSWdejH02 :04/02/03 00:51 ID:FKnp20+5
ミサトは厳しい顔をしていた。アタシは責められるんじゃないかってびくびくしていたけど、ミサトは
アタシを責めずに、「あんたとレイだけでも無事で済んでよかったわ」と言ってアタシの頭を撫でた。
アタシは泣き顔のままミサトに抱きついてもう一度泣いた。ようやく落ち着いてミサトから離れると
ファーストが珍しく心配そうな顔をして使徒である黒い染みのような影を見つめているのが見えた。
「ファースト、シンジ、まだ大丈夫だよね?」
「わからないわ」
「大丈夫って言ってよ・・・」
「すべての反応が途絶えた・・・もう死んでいる可能性もあるわ。いえ、むしろ・・・」
「やめて!」
アタシは耳をふさいだ。ファーストになんか聞くんじゃなかった。胸が締め付けられる。アタシがちゃん
と位置についていれば、初号機が飲み込まれる前に助けられたかもしれないのに。シンジが死んじゃった
ら、それはアタシのせいだ。ファーストもミサトも自分を責めている気がして、アタシはどこか遠い国に
逃げ出したくなった。
「それは違うわ。シンジくんは私の命令を無視して攻撃をかけたから、負けたのよ。アスカが悪いわけ
じゃない」
「でも・・・」
「安心なさい、シンジくんはきっとまだ生きてるわ。あの馬鹿、調子乗ってるからこういうことになん
のよ。でもまぁ、身内だし、助けてやんないとね?」
「ん・・・うん」
「そんで、一回バシっとシメないとね」
ミサトは無理に笑った。何の根拠も無い言葉だったが、少し気が楽になってアタシも無理に微笑んだ。
まだ、笑おうと思えば笑い顔が作れる。なら大丈夫だ。アタシは唇を軽く噛んだ。シンジが言ってた。
ビビりのビビった言葉で余計ビビるって。
だから、無理にでも笑って強がったほうがいいんだって。アタシもそうしよう。


57 :tomoタン=シソジ_ ◆xgSWdejH02 :04/02/03 01:04 ID:FKnp20+5
実際、ミサトは本心では頭を抱えている。シンジが三人のパイロットで、最も優れたエース
だったと言うことは疑うことができない事実だ。シンジは最初からずっと使徒をほとんど一
人の力で倒してきた。アタシもファーストも結局お荷物か、ちょっとした手伝いしかできて
いない。シンジは普段はろくでもない不良だけど、ことエヴァに関してだけは誰の追随も許
さないスペシャリストだった。アタシはあいつの足元にも及ばない。ファーストなんてもっ
と駄目だ。ミサトは常にシンジをメインとする戦術を構築してきた。アタシとファーストだ
けで、あの途方も無い使徒をどう倒す? 無理だ。そんなの想像もつかない。また弱気がア
タシを支配し始める。しかし、アタシの弱気を感じ取ったかのようにファーストが言った。
「普通なら、死んでてもおかしくない。でも、碇くんは死なないわ」
「・・・ファースト」
「私はまだ、約束を守ってもらってないもの」
「約束?」
「ええ。約束したわ。私の願いを一つだけ、叶えるって言ったわ。碇くんは約束を、破った
ことないもの」
そう、そういえばそうだ。シンジはろくでもない不良で、すぐ人を殴るし、酷いことを平気
で言うし、お風呂を覗こうとするけど、でも今まで約束したことを破ったことなんて一度も
無い。性格悪いくせに、変に義理堅いところがあるのだ。アタシは、ファーストに向き直っ
て「そうね、あいつが約束破るなんて、考えられない」って言った。そう、考えられない。
いつぞやだって、助けてくれたではないか、火口に何の装備もなく飛び込んでまで。
次に飛び込むべきなのはアタシだ。もう何度シンジに助けられているのか数える気もしない。
少なくとも、一度くらい命を張ってもいいくらい、あいつには借りがある、と言うのだけは
確かだ。弱気なんか吹き飛ばせ、とアタシの脳裏のシンジが意地悪い笑みを浮かべながら吐
き捨てるのが見えた。わかってるわよ。アタシは脳裏のシンジに言い返す。前に進むのは難
しい。でも、後ろに下がることだけはやってはいけないのだ。それがシンジに教えられた戦
いの哲学だった。

58 :tomoタン=シソジ_ ◆xgSWdejH02 :04/02/03 01:14 ID:FKnp20+5
「ミサト。シンジを助けるわ。どうすればいいの?」
「リツコが今解析してる。もうすぐ救出作戦もまとまるわ。あんたには後で働いてもら
うから・・・今は少し休みなさい」
「そんな・・・休んでなんて! いいえ、いいわ。そうする。作戦が決まったらすぐ呼んでね」
休んでなんていられない、と叫びそうになったが、今アタシにできることなんて祈ることく
らいだ。なら、今はミサトやリツコの邪魔をしてはいけない。アタシは強く唇を噛んだ。涙
は堪えた。少し血の味がしたけど、痛みは感じなかった。
待っている時間は焦燥感との戦いだった。いつもなら、使徒との戦いへ向かう恐怖感との戦
いだ。でも、今は焦りだけがアタシの心を削っていく。不思議と使徒を見ても恐怖感は全く
と言っていいほど湧き上がってこなかった。ただ、感じるのは寒々しいほど醒めて乾燥して
いる怒りの感情だった。どうして使徒なんかいるんだろう。弐号機共にある為に、戦わなけ
ればならないのは使徒が存在する故のことだ。使徒なんかがいるから怖い思いをしなければ
ならない。シンジを失うことを怯えなければならない。認めがたいことだが、アタシはあの
不良野郎なしの生活なんてさっぱり考えられなかった。シンジは、今まで欲しい欲しいと願
って、そしてポロリと転がり込んできた幸福・・・家族だった。恐怖にへし折れそうな心を支え
てくれるのは、いつもあいつの汚い言葉遣いの罵声だった。シンジがいなければ、きっとこ
の先弐号機には乗り続けられない。望んでも、乗せて貰えなくなる。戦えない弐号機なんか、
ただの肉の塊だから。それはアタシにとって何よりも耐え難いことだった。
「アスカ」
「決まったの!?」
「ええ。でも・・・」
「はっきり言って。可能性はあるの?」
「ええ。この間の使徒を受け止める作戦の十倍くらいはね」
心細い数字だ。だが、やらねばアタシに未来は無いのだ。アタシは歯を食いしばった。


59 :tomoタン=シソジ_ ◆xgSWdejH02 :04/02/03 01:32 ID:FKnp20+5
アタシが感じたとおり、あの影が使徒の本体だった。数ミクロンと言う極薄の黒い皮膜が本体であり、
空中の縞々の球体が、使徒の影なのだ、と言うことらしい。でも、今のアタシにそんな情報はどうでも
よかった。知りたいのは、どうすればシンジを救えるのか、と言うことだけだ。
「結論から言うと、N2地雷992発を同時起動して、その爆圧のエネルギーで一瞬だけ使徒の向こうの世界
に干渉する・・・それしか方法は無いわ。少なくとも、人類にはね」
「N2地雷992発って・・・箱根がなくなっちゃうわよ。シンジだって・・・」
「無事には済まない可能性のほうが高いわね」
「それじゃ、意味ないじゃない!」
「でも、初号機は回収できる可能性が高いわ」
リツコの冷たい言葉にアタシは愕然とした。コンマ以下の確率とは、シンジの生還の確率のことだった。
ミサトが苦々しげに舌打ちする。徐々に忍び寄る恐怖感。それは戦いへの恐怖ではなく、シンジを、家族
を失うかもしれないと言う恐怖感だった。アタシは金切り声で叫んだ。
「そんなの、やれるわけないじゃない!」
「これはもう司令に了承された作戦よ」
「馬鹿! リツコの馬鹿! あんた、最低よ! シンジが死んでもいいって言うの!?」
「いいわけ・・・ないでしょう。でもねアスカ。結局使徒を倒す手段がそれしかない以上、やるしかないのよ。
でなければ、人類そのものが・・・」
そんなの大人の理論だ。アタシは強く反発した。シンジも助けられないで、何が人類だ。アタシの叫びに、
リツコもミサトも応えなかった。アタシは再びにじんできた涙をゴシゴシと強くこすった。だが、涙はとめ
どなく溢れてきた。

60 :tomoタン=シソジ_ ◆xgSWdejH02 :04/02/03 01:49 ID:FKnp20+5
「アスカ、一つだけ、何とかする方法があるわ」
「・・・ッ! それを先に言いなさいよ! で、何? 何だってやるわ」
「危険よ?」
「そんなの・・・いつもよ。今更、怖気づいたりしないわよ!」
「いい? 992発のN2地雷のエネルギーには方向性が無いわ。使徒が内包する空間・・・ディラックの海
全体に破滅的な熱衝撃を与えるでしょうね。無限なんてものは無いわ、いかに使徒の内包する空間だ
としても許容量を越えて自壊する。・・・シンジくんのフィールド出力ではプラグは一瞬で沸騰するわね。
でもね、その爆圧に方向があれば、空間を破綻させるだけで、全体に熱衝撃を拡散させずに使徒を倒せ
る可能性が高いわ」
「それでシンジは助かるの?」
「空間は元に戻ろうとする力を持っているわ。恐らく・・・」
「どうすればいいの?」
「あなたのフィールドで爆圧が志向性を持つよう、押さえ込むのよ。失敗すればプラグのLCLが沸騰し
てアナタは即死するわ」
「失敗したらどうなるの?」
「今言った通りよ、一瞬でプラグが沸騰してアナタは死ぬ。素体までダメージを受けたエヴァはオー
バーホールね。まぁ、弐号機が消滅するようなことは無いわ」
「方向性を持ったエネルギーが初号機に直撃する可能性は?」
「無いとはいえないわ。でも、このまま作戦を実行すればほぼ確実にシンジくんは死ぬわ・・・」
では、迷うコトなど何もなかった。アタシが死んでも次のチルドレンが弐号機に乗るだろう。弐号機
は存続する。アタシが生きているのに弐号機に他の人間が乗るなんて、死を選んだほうが絶対マシだ。
それなら、ここでシンジを救う為にこの命を使うほうがいい。死ねば悲しみを感じることはないだろう
し、アタシはアタシがやれるベストを尽くして名誉な死を得るだろう。アタシの中に迷いは一片も残ら
なかった。
「・・・やるわ」
「死ぬかもしれないわよ?」
「このまま見てるだけなんて、死んだほうがマシよ」
「そう。じゃあ、止めないわ。・・・ミサト、技術部は弐号機の作戦参加を提案します」
アタシは強く自分の体を抱いた。死ぬ・・・もんか。絶対、何とかしてやるんだから。

61 :tomoタン=シソジ_ ◆xgSWdejH02 :04/02/03 02:14 ID:FKnp20+5
もう何時間経ったのかもわからなくなってきた。LCLは濁りはじめ、徐々に息苦しさを感じる。
餓死はしないで済みそうだ。その前に窒息して死ぬだろうから。僕はタハハと力なく笑った。
心は擦り切れる寸前だった。
もしかしたら助けが来るかもしれない、そんな希望に縋って僕はすぐに内部電源をセーフモー
ドに切り替え、ただひたすらその助けを待つことにした。ここでじたばたすれば電源が切れて
すぐに窒息死してしまう。アスカの「諦めんの?」と言う言葉が耳に残っていた。そうだ、諦
めるなど僕らしくない。最後まで、死のその瞬間まで、僕は諦めるべきでない。それが僕の使
徒に対して示すことができる最後の意地であると僕は思っていた。

だが、音もなく、外も見えず、ただ徐々に磨り減っていく神経の磨耗に耐えるのは、実際厳し
いものがった。死の恐怖は時が経つほどに僕に抜き足差し足迫ってくる。死神が僕の隣に腰掛
けているのがわかる。時折その魂を狩る鎌を僕の喉に突きつけては離し、僕の心が折れ曲がる
のを待っているのだ。

僕は腕を振り回してその幻覚を追い払おうとした。しかし死神はひらりひらりと僕の力の抜け
たヘボパンチを避けてケケケと笑う。ムカついてきたが、精神に肉体が追いつかない。お前み
たいな不気味なドクロ野郎に魂持っていかれるのは癪でしょうがないが、こうなっちまったら
仕方ねぇ、好きにしやがれ。僕は大の字に体を開いて最後の息を吐き出した。もう、酸素はほ
とんど消費してしまった。


62 :tomoタン=シソジ_ ◆xgSWdejH02 :04/02/03 02:24 ID:FKnp20+5
ると死神は首を傾げた。「不気味なドクロはお嫌い?」とささやいてくる。僕は当たり前だバカヤロ!っとうめいたが、
もう息苦しくて馬鹿ドクロの相手をするのも億劫になってきていた。ドクロはその虚ろな眼窩を歪めてニヤリと笑う。
「なら、君が望むのはこんな姿?」ドクロがぐにゃりと変形し、茶髪で青い目の女になった。何を、ふざけてやがるんだ。
この野郎、ぶっ殺すぞ!もう声が出ないので、僕は心の中で怒鳴りつける。ドクロは困った顔をした。「じゃあ、こんなの
はどうだい?」今度は赤い瞳の女に化けた。「いやいや、どうやら君はやっぱりこっちのほうがいいみたいだ」また変形し
たドクロは、茶色い髪の・・・それはアスカだった。アスカとなったドクロはケケケと下品に笑った。こんな奴アスカじゃない。
こいつは何て意地悪な奴なんだ。最後に会いたいとほんの少しだけ心の底で思った僕の弱気を形にする。涙がにじむ。
息が詰まる。心が折れかける。
だが、そんなの許せない。僕は最後まで僕であり続けるべきだ。僕は渾身の力で拳を突き出した。アスカの顔をした死神の胸
に、ずぼんと穴が開いた。ざまーみろ、クソドクロ野郎。僕はお前みたいな弱気の使者に負けたりしない。僕が負けるのは肉
体の限界に、だ。僕の精神はこの瞬間何者も凌駕し、侵されることのない堅牢な砦となる。僕は死ぬ。あと何分か、もしかし
たら数秒先か。僕は電池が切れたラジオのように音を小さくしていき、そして最後にノイズをジジっと鳴らして死ぬだろう。
でも、僕の精神は最終的に屈服することを由とはしなかった。これは僕の未だかつてない大勝利であり、光栄な死の序曲であ
る。死神は去るといい、僕の誇りを侵すことは下品な骨野郎にはちょっと無理だぜ。僕は僕の道を完遂する。最後まで意地を
張り通すこと、それが僕の・・・僕の最後の思考はするりと、闇に溶けた。

63 :tomoタン=シソジ_ ◆xgSWdejH02 :04/02/03 02:36 ID:FKnp20+5
「N2起爆!」
鋭いミサトの声と共に、膨大な熱と激しい嵐のような衝撃の奔流がアタシのATフィールドの上で炸裂した。
フィールドを貫通する熱がアタシの弐号機の装甲を焦がし、痛みがアタシの顔を歪ませる。しかし、それは
肉体の反射的な動きでしかなく、アタシはこの時苦痛を全く自覚していなかった。強い意志と、そして意地
が、アタシのフィールドを厚く分厚くし、層を織り成して展開されてゆく。
「あああああああああああああ!」
アタシは自覚せずに喉が裂けるほど叫んでいた。凶悪な衝撃の坩堝がアタシを屈服させようと猛威を振るう。
手のひらの毛細血管が細かく破裂し、内出血を起こす。鼻血がLCLに溶け出した。額に血管が浮き出てくるの
がわかった。まだ、まだだ、まだ足りない。アタシはもっともっと叫んだ。声なんて枯れていい。耳からも血
が出ているのがわかる。このままだとアタシは熱衝撃でLCLを沸騰させられなくともクモ膜化出血かなにか起こ
してしまいそう。だが、不思議と苦痛は感じない。ただ、熱い。体中が、内側から沸騰している。負けられな
い、負けられないのだ。
黒い影に、亀裂が走る。黒い皮膜の使徒は、不気味な叫びを上げて苦悶する。使徒とアタシの我慢比べだ。
アタシは踏ん張った。その場に踏ん張った。前に出るのは難しい。でも、下がっちゃ駄目だ。それがシンジの、
アタシ達エヴァパイロットの、戦士の哲学。黒い影は亀裂から真っ赤液体を吹き上げて崩れ落ちてゆく。永遠
にも感じられたN2の爆圧はそのすべてが使徒の胎内に飲み込まれ、そして使徒をばらばらに切り裂いた。
「ぁぁぁぁ・・・あぁッ! が・・・ああ・・・はぁ、はぁ・・・」
熱衝撃の嵐から開放された瞬間、使徒は赤い血溜まりとなって四散した。

64 :tomoタン=シソジ_ ◆xgSWdejH02 :04/02/03 02:46 ID:FKnp20+5
「シンジ!・・・初号機は!?」

アタシはようやく感じ始めた苦痛に顔を顰めながらあたりを見回した。使徒は赤い血の海に
なっている。視線を上に向ける。使徒の影が徐々に縮み、そして消え去った。使徒は倒せた。
しかし、初号機の姿が見えない。そんな・・・!

使徒を倒したって、シンジが助からなければ意味が無い。アタシは目を皿のようにして血の
海の一滴すら逃さないよう、辺りを見回した。





突然、最後の力を振り絞ったかのように初号機がシンクロを回復する。僕は酸欠で朦朧とし
ながら、開けていくエヴァの視界を呆然と見た。おいおい、せっかくかっこよく死のうと思
ってたのに。ゴキブリ並にしぶといなぁと自分で苦笑してしまう。赤いエヴァがこちらに向
かって走ってくるのが見えた。あ、赤い液体に足をとられて転んだ。アスカらしいなー、あ
のマヌケな姿は・・・モニタが回復する。泣き顔のアスカがうつった。
「ジンジイィィ」
「はは、なんつー顔してんだよ。アスカが助けてくれたのか?」
「ジィィンジィィィぶええ・・・」
「くく・・・ブッサイクな顔・・・そっか・・・お前に助けられたんか、僕は。・・・ありがとな・・・」
礼の言葉と、感謝の気持ちは、自然と、素直に湧き上がってきた。助かった、のか、僕は。
その日の記憶はそこまでしかない。僕は、初号機ごと弐号機に抱きつかれた時点で、気を失った。

65 :tomoタン=シソジ_ ◆xgSWdejH02 :04/02/03 03:10 ID:FKnp20+5
もう三年くらい、墓参りなんかには来てない。母さんの命日は、親父と顔をあわせなきゃいけ
ないから、僕はそれを避けていた。でも、今日は母さんに報告することがあった。だから、まぁ
親父の小言も我慢してやるかって気持ちだったのだ。
墓には、既にゲンドウがいた。立派な花束を供え、そして黙ってその墓碑を見つめている。親父
がどれだけ母さんのことが好きだったのか、僕はよくしっている。三歳頃の記憶の中の親父は、
泣き顔だ。ただ黙って、声を押し殺して泣く姿が強烈に印象に残っている。妻を殺した男だと
言われているのも知ってる。だけど、真相はそんなんじゃあないってことも勿論知ってる。親
父が敢えて反論しなかったのは、自責からだってことも・・・知っていた。
僕は子供だった。今も子供だ。だから、理不尽に片親が居なくなったことを許せなかった。僕は
親父を責め、恨み、嫌った。今は違う。小言がウザい親父だが、やはりこいつは僕の親父なんだ
なと素直に認めることができる。
「よう、親父。早いな」
「シンジか。ここに来るのは三年ぶりか?」
「そうだな、前は途中で逃げちまって・・・その足で仙台戻ったからな」
親父は、少し口元を緩めた。昔はわからなかった。いつも顰め面で、偉そうで、押し付けがまし
くて、そして傲慢だと思っていた。でも、親父も同じ人間で、表情があるのだと言うことを僕は感じた。
「体のほうはどうだ?」
「ただの酸欠だからな、一晩入院してすっかりだ」
「そうか」
僕と親父は少しの間たわいもない話を続けた。会話が途切れてから、僕は親父に聞いてみた。


66 :tomoタン=シソジ_ ◆xgSWdejH02 :04/02/03 03:11 ID:FKnp20+5
「親父さ、母さんと出逢った時ってどんなだったんだ? どんな気持ちになったんだ?」
「ユイ・・・母さんは・・・素晴らしい人だった。出逢った瞬間、私は恋に落ちていた。私は顔がこの通りだからな、いつもただ遠くから見ているだけだったよ・・・」
「よくまぁその不味い顔で母さんモノに出来たなぁ? どんな弱味握ったんだよ」
「・・・貴様と一緒にするなロクでなしが。母さんは私の不器用な所がいいと、そう言ってくれたのだ」
「そうか。辛いよな、親父」
「ああ、辛い。命日は特にな・・・だが、人は前を向かねばならん」
「また説教かよ?」
「馬鹿者、今日ぐらい素直に聞けんのか」
「いいや、いいぜ。別に、聞いてやってもいいって気分なんだ今日は。で、続きは?」
「・・・いや、いい。お前はもうよくわかっているはずだ」
「そうだな。後ろ見てたら転んじまうからな。僕ももう、見ないことにすんよ」
「だが、忘れてはならんこともある」

親父は遠い目をして言った。僕は何も応えずに頷いた。

「僕さ、惚れたかもしんねぇ」
「誰にだ。私にか?」
「親父、冗談はその髭だけにしろよ? んなわけねえだろ」
「ふん、青春と言う奴か」
「僻むなよ、あんたはもう枯れてんだからよ」
「私はまだまだ現役だ」
「はいはい・・・初めてかもしんねぇんだ、本気なのは。そんで、そのことを母さんに話しに来たんだ。」
「・・・そろそろ時間だ。シンジ、たまには司令室にも顔を出せ」
「考えとくよ」


67 :tomoタン=シソジ_ ◆xgSWdejH02 :04/02/03 03:26 ID:FKnp20+5
僕は流行の歌を口ずさみながらボーっと上を見ていた。アスカはいない。何やら委員長の顔を立てて遊園地で
おデートらしい。非常に面白くない。こんな昼間に、ミサトもいるわけがない。一人、沈黙の空間で歌を口ず
さむ。カラッポの墓で母さんに向かって話しかけた内容を、歌いながら反芻する。ああ、間違いなく惚れたっ
ぽい。絶対ありえない、近すぎて女を感じないと思っていたあいつに。泣き顔のブッサイクな面に、九死に一
生を得た僕の心は震えた。僕の為に泣く女の髪の毛を、僕は撫でたいと思った。

だから今はとても面白くない気分だ。何であいつが他の男とデートなんぞするのだ。僕は相手の男を頭の中で
三十回くらい半殺しにしながら、ただ静かな空間で歌をくちずさむ。

「めちゃくちゃ音痴ねーアンタ」
「僕の神々しい美声にケチをつける馬鹿は誰だ・・・っつうかデートは?」
「つまんないから帰ってきちゃった」

アスカが立っていた。

68 :tomoタン=シソジ_ ◆xgSWdejH02 :04/02/03 03:30 ID:FKnp20+5
ぼーっと目をあけて視界に入るもの全部をぼんやり見ていた僕の前に、アスカが割り込んでくる。
僕は笑った。楽しくないから帰ってきちゃった、か。そりゃあいい。僕は嬉しくなって笑った。

「何笑ってんのよ?」
「くく・・・いや、こっちのこと。で、この真昼間に二人で暇すんのもどーかね?」
「そーね、せっかくオメカシしてるんだし、どっか行くのもいいわね、アンタの奢りで」
「図々しい奴だな、お前」
「お金持ちなんだからケチケチしないでよ。こっちは命の恩人様よ? 恩を忘れたってーの?」
「いいぜ、奢ってやるよ」

アスカが驚いた顔をする。

「・・・珍しいわねぇ、素直に奢るなんてさ」
「いいんだ。幾らだって奢ってやるよ。何だって買ってやらーお前が満足すんだったらな!」
「・・・??? 何? 何か悪いもの食べた?」
僕は満面の笑顔で立ち上がった。
「いいだよ、今日は。決めたんだ。僕は決めたー!」
「はぁ? 何を?」
「ふふふ・・・ふはははは! 秘密じゃー! がはは」

そして僕は強引にアスカの手をとって上機嫌で歩き出した。


69 :tomoタン=シソジ_ ◆xgSWdejH02 :04/02/03 03:35 ID:FKnp20+5
以上・・・ディラックの海編

70 :lobster ◆javCW0ivB. :04/02/03 03:37 ID:PnZuW89s
青春って嫌ねぇ。

71 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:04/02/03 03:37 ID:hQMzAih8
おもろおもろ
tomoタン大好き

72 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:04/02/03 03:38 ID:xycmS/CQ
綾波をもっと描写してくだちぃ。
このアスカ好きめ。萌えるじゃねーか。乙。

73 :tomoタン=シソジ_ ◆xgSWdejH02 :04/02/03 03:56 ID:FKnp20+5
俺の恋愛観はシンプルなのでストレートにしか愛情表現できない。
文章創作物は(二次でも)作者の生体験が色濃く出るものだと思ってる。
だから俺は無理してドロドロ関係とか書かないょ。つか書けネェよw

綾波は綾波専用のお話があるじゃんYO その時に。
約束とか伏線も張ってあんしな。融合とEOEは綾波。

74 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:04/02/04 03:25 ID:vXsVUJ5B
鯖復活したら、まっさきにこのスレ読んじゃったじゃん。
いいじゃん、いいじゃん。アスカかわいいじゃん。

75 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:04/02/04 18:42 ID:0T+Wn64P
やばい、やばいよ。
涙で、顔がくしゃくしゃのアスカ、マジ萌える。
もうあれ、シンジやめて、
俺のところに飛び込んで来いって感じ。




・・・・・・・・コネーカ。
ソウデスカ、ハイ。

76 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:04/02/05 00:34 ID:yAU9e4Qn
見たので、いろいろ提案してみるテスト

次、思い切ってダミー使わんとか言うのどうよ?
影薄いケンスケちょい役で使ってみるのはどうよ?
オペレーターズとの交流が少しあるといいなあという希望はどうよ?

三つぐらい言ってみた。

77 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:04/02/05 19:51 ID:CmGvor1k
青葉はともかく日向辺りが族上がりとか・・・

78 :tomoタン=シソジ_ ◆xgSWdejH02 :04/02/05 20:04 ID:pytiI2tQ
脇は名前すら出てこねぇ。藁 人が増えるとメンドイからな。
加持も出てきてねぇよヒャヒャ 15分以内くらいに一発目投下するわ。
本日 バルディエル編

79 :tomoタン=シソジ_ ◆xgSWdejH02 :04/02/05 20:09 ID:pytiI2tQ
ケンスケは朝から少し変だった。僕が命じたイカ焼きを買い忘れるし、コーラ買ってこいというと間違えて
豆乳を買ってくる始末。飲めるかこんなもん! ずっときょろきょろ落ち着きが無いし、階段で派手に転ん
でカメラを破損したっていうのに落ち込む様子が無い。一体何なんだ? 僕は昼休みにケンスケを屋上に呼
び出した。子分が何か悩んでいるとしたら、ちゃんと相談に乗ってやるのが大将の勤めと言うものである。
いやぁ、僕っていい奴だ。ケンスケは僕の呼び出しから二分と遅れずやってきた。相変わらず落ち着きがな
く、なぜかでっかいカバンを持っている。一体なんなんだ? 僕は首をかしげて尋ねた。
「よぅ、今日はどうしたってんだ? 突然笑い出したりよ。サバイバルごっこで変なキノコでも食ったんか?」
「ああ・・・碇。俺はさ、碇にどうしても聞きたいことがあるんだよ」
「何だよ、言ってみな」
「笑わないでくれよな」
「いいから言えって水くせえ」
ケンスケは満面の笑みを浮かべる。そしてゴソゴソと端末をカバンから取り出し、何やらカチャカチャと操作
し始めた。そして、ニヤニヤしながらその画面を僕に見せた。そこには、クレーターのような映像が映ってお
り、それが何を意味しているのか僕には少しの間わからなかった。ようやくそれが何なのかわかって納得した
瞬間に、ケンスケは身を乗り出してきた。

80 :tomoタン=シソジ_ ◆xgSWdejH02 :04/02/05 20:11 ID:pytiI2tQ
「こりゃ四号機の事故画像だな。何でお前がこんなもんもってんだ?」
「パパの端末からちょっとね」
「お前なぁ、情報窃盗は案外重罪なんだぜ。ネルフに見つかったらとっ
捕まって尋問コースだぞ」
「大丈夫だよ、俺のパパだってネルフなんだからさ」
「しょーがねぇ奴だなぁ・・・で、これがどしたんだ?」
「四号機の事故のせいで・・・アメリカ支部は参号機の所有権を手放すん
だろ?」
「ああ・・・ミサトが何かそんなこと言ってやがったなぁ。こっち送られ
てくるらしいから今チルドレンの選別を・・・」
「それだよ! うぐっ」
うお。鼻先二センチくらいのところに、鼻息の荒いケンスケがいきなり
迫ってきたもんで、僕は思わずケンスケを殴り倒してしまっていた。
端末がケンスケの手から飛び跳ね、危うく地面に落ちる瞬間に僕が慌て
てそれをナイスキャッチする。
「わりわり、チューされるかと思ってよ、思わず殴っちまったアハハ」
「いてて・・・ひでぇなあ・・・」
「いや、悪気はねんだ、メンゴメンゴ」
「メンゴって古いなぁ。ま、いいけどさ。で、それなんだ」
「えーっと何だっけ?」
「参号機の候補者の話だよ!!」
「お、おう。お前ちょっと落ち着けよ」

81 :tomoタン=シソジ_ ◆xgSWdejH02 :04/02/05 20:13 ID:pytiI2tQ
「俺は冷静だよ! 冷静に熱いんだ!」
僕はお前のちょっと危ない姿を見て寒々しい。と、言う言葉は抑えて、
ああそうかいと頷く。ふぅふぅと鼻息の荒いケンスケは握り拳を熱く
掲げて何やらトリップ中だ。こいつこんな奴だっけ・・・ああ、ミリタリ
関係はこんなもんだったな。
何か疲れを感じた僕は軽くこめかみを揉んだ。
「でさ、碇。お願いがあるんだ!」
「何だよ。何かもう想像つくけど一応言ってみ?」
「俺を参号機のパイロットに推薦してくれ!!」
「えー・・・ヤダ」
「な、何でだよ!!」
「だってよー・・・アスカの近くに男が増えるのヤダもんよ。女ならいいけど」
「惣流なんかどうでもいいよ!! 問題は参号機に乗れるかもしれないってこ、
あぐっ ・・・何で殴るんだよ碇」
「アスカがどうでもいいってのは聞き捨てならね。
貴様喧嘩売ってマスカ?」
「うぅ・・・。えー・・・ま、まぁそれはともかく・・・俺が碇を裏切るような
ことをすると思うか!?」
「あー。んー。そうだなぁ、イケメンな奴とか新しくチルドレンになっ
たらヤだしなぁ。まだマシっちゃマシだよなぁ」
「だろ!? 俺なら安心だろ!? なぁ、頼むよ!」
ケンスケの熱意は留まることを知らず、逃げ損ねた僕は殴られて鼻血をたら
しながらも諦めないケンスケの熱量に徐々に押され始めた。うう・・・この僕が
気圧されるなんて。なかなかの気合に僕は徐々に感心し始めた。いいね、こ
ういう奴、嫌いじゃない。うん、気合が入ってる。こんだけ根性据えて僕に
迫れるのだから、エヴァに乗っても案外やるかもしれない。僕は段々、本気になってきていた。

82 :tomoタン=シソジ_ ◆xgSWdejH02 :04/02/05 20:30 ID:pytiI2tQ
「よっしゃ、わかった! ケンスケ、お前の気持ちはビンビン伝わってきたぜ! ミサトに推薦しまくってやる」
「ほ・・・本当か!!」
「おうよ。その代わり、参号機に乗ることになったらビビった瞬間殺すからな。二回殺す! いいな!?」
「勿論だ! ああ・・・ああああああ!! ようやく・・・ようやくこの日が来たのか!! うおおおお!」
「ちなみに僕が言ってもミサトが駄目つったら駄目だ。そのときは諦めろな」
「うおっうおっうおおおおお!! 俺はやるぞおおおおお!!」
「いやだから、えーっと、相手ミサトだからよ・・・絶対とは」
「やぁぁってやるあああぁぁぁぁ!!」
「・・・」

最後の僕のセリフは多分聞こえてない。まぁいいか。僕が推薦すれば多分、ミサトはケンスケを推すだろうし。
これは一般には秘密にされていることだが、僕の通う高校の、僕の所属するクラスはチルドレン候補者が集めら
れたクラスなのである。これは特定の資質を必要とするチルドレンを一箇所に集めることで、候補者が誘拐され
たり他支部に囲われたりするのを防ぐ防犯上の理由や、もしも今のチルドレンに欠員が生じた場合(ありえねぇ
とは言えない。実際この間僕は死にかけた)に即座に補充ができるよう、近くに置かれている、と言う大人な理
由もある。だから僕もアスカも綾波も都合よく同じクラスなのだ。ここはネルフでは「牧場」と言う隠語で表現
されている。初めてそれを知った時、当然反発を覚えたものだが、今はアスカと必ず同じクラスでいられるとい
う強力な利点の前に感謝すら捧げたい。「牧場」最高!


83 :tomoタン=シソジ_ ◆xgSWdejH02 :04/02/05 20:42 ID:pytiI2tQ
その、「牧場」の一員であるケンスケは、要するにエヴァに乗る資質有りってことだ。結局新人なんてどれでも
一緒(僕は違ったけどな!)だと語っていたミサトなのだ、僕がコイツ気合入ってる、必ずやるって言えばそれは
重要な意思決定のファクターとなるだろう。僕はその夜、さっそくミサトに提案した。

「ケンスケって覚えてるか?」
「ああ、あのミリタリオタクの子でしょ? あんた、虐めてないでしょうね」
「舎弟としてかわいがってやってるだけでぃ。で、アイツな」
「うん、その子がどうしたのよ」
「参号機の候補者リストに入れてやってくれよ」
「何で? つうか何であんた参号機のこと知ってんのよ!」
「お前一昨日酔っ払って泣きながら話してたじゃんよ」
「!! ・・・う、嘘よ、覚えてないわ」
「アホほど飲むからだ馬鹿。まぁ、精神的にキツい役目だっつのはわかるけどよ。
無理強いするわけじゃねんだからもうちょい気楽にいけや」
「うっさいわね! 私はナイーブなのッ で、あんたがわざわざ推薦するってのはどういうことなの?」
「嫌々乗る奴より、ずっと使えると思うからだ。あいつな、エヴァ乗りたがってんだ」

ミサトは渋い顔をした。なぜ渋るのか、僕はわからなかった。


84 :tomoタン=シソジ_ ◆xgSWdejH02 :04/02/05 20:48 ID:pytiI2tQ
「あのね、シンジくん。その子はきっとエヴァと言う兵器にカタルシスを感じているだけよ」
「語る・・・寿司? なんだそりゃ。食えるのか?」
「・・・聞き流して。難しい言葉使ってごめんねシンジくん・・・」
「今ちょっと馬鹿にしただろ。馬鹿にしただろ! オイ!」
「うっさい。黙って最後まで聞きなさい。噛み砕いて言うとね、エヴァがかっこいいから乗りたいって
動機なんだと思うのよね、私は。でも、そんな気持ちで乗れるものだと・・・あんたは思うの?」
「ああ、乗れると思うぜ。僕は乗れたしな」
「あんたは脳味噌カラッポだっただけじゃない。普通はアンタと違ってお味噌が詰まってんの。
だからね、きっとエヴァに乗るってことをナメてるわ。エヴァに乗れるのは、乗らなきゃならない理由
がある奴よ。アスカも、レイにだって理由がある。あんたにも今は理由があるでしょう? 
それから・・・鈴原くんとかね?」
「トウジが? あの馬鹿に何の理由があるってんだ。体育の後、自分の靴下匂って悶絶してるような馬
鹿だぞアイツは」
「彼には事情があんのよ。これは個人的なことだから言えないけど・・・彼なら、やるわ。守るべきモノ
があるからね」
僕にはさっぱり理解できなかった。だってあんなアホよりも、乗りたくてたまらないケンスケのほうが
よっぽど肝も根性も据わって見えるからだ。僕は納得いかなかった。しかし一つだけはわかる。ミサト
はトウジを乗せる気だってことだ。委員長の家から帰ってきたアスカが居間にやってくる。「何? 何
の話してんの?」と尋ねてきたが、僕もミサトも応えなかった。アスカは「牧場」のことを知らない。
あいつの友達である委員長もチルドレンだと知ったら、アスカは複雑だろう。だから僕は教えてないし、
ミサトも同じような考えでアスカに気を使っていた。僕は首をすくめた。
「アスカ、ミサトの奴、昨日寝ゲロしたらしいぜ」
「げっ きったな〜ぃ!」
「だよな! 最悪だー酒減らせこの無能ぶちょー」
僕はわざとおちゃらけて笑った。ミサトも苦笑した。ミサトの気持ちはわかった。どうやらケンスケを
乗せる気は無いってことだけは確かだ。明日、奴に残念な結果を伝えねばならないだろう。それでもケ
ンスケが納得しなければ、次は直談判でもさせるしかないな・・・と僕は思った。


85 :tomoタン=シソジ_ ◆xgSWdejH02 :04/02/05 21:10 ID:pytiI2tQ
「ってわけで、ミサトはお前乗せる気ねぇみたいだぜ」

ケンスケが気の毒な程肩を落として呻き声を上げた。僕は多少昨日の内容を脚色し、実は既に適正無し
でシンクロできないという理由をでっち上げてケンスケに伝えることにしていた。真実を告げるのは幾
らなんでも残酷に思えたからだ。ミサトは要するにケンスケの心のほうに適正が無いと断じていたのだ。
僕には気合たっぷりに見えるケンスケだが、ミサトはそうは思えないらしい。僕自身納得いかないもの
があったが、仕方ないといえば仕方がない。決める権限を持っているのはミサトであり、ミサトの決断
が無ければ僕が暴れようが叫ぼうがケンスケをチルドレンにすることはできない。
まぁ所詮他人事なので僕はさっぱりその辺はどうでもよくなっていた。ケンスケにはトウジが選ばれそ
うだと言うことは伏せた。それもショックが大きいだろう。何で僕がこんな気を使ってやらにゃならん
のだという気持ちも手伝って、僕はすっかりケンスケをチルドレンにしてやろうと言う熱意を失っていた。
「ま、仕方ねぇわな。どうしても戦争やりたかったら戦略自衛隊にでも志願しな」
「戦自には18歳以上でないと志願できないんだ・・・でも本当に頼んでくれたんだよな。ありがとな、碇・・・」
「ま、気にすんなよ。駄目だったんだしよ」
そう言って僕はケンスケが買ってきたコロッケパンを齧った。しばし無言の時間が続く。何となく次の
授業に出る気がしなくて、チャイムが鳴っても僕とケンスケは屋上でボーっと時を過ごしていた。
すると、授業中にも関わらず屋上のドアが開かれた。僕は慌てて煙草を投げ捨てて振り返る。屋上に出て
きたのはトウジだった。
「んっだよ! 驚かせんな馬鹿ジャージ!」
「んあ、一服中やったんか。そりゃスマンのう」
「次停学食らったら僕はミサトに殺されちまうんだよタコ・・・あービックリした・・・」
「センセがガッコで煙草吸うから悪いんや。ちょっとは我慢しぃや」
「我慢できたら煙草なんざハナっから吸ってねぇよ。辞めらんねーから仕方ねーっつうんだ」
「ほうか・・・まぁ、丁度ええわ。センセに話したいことがあるんや」

86 :tomoタン=シソジ_ ◆xgSWdejH02 :04/02/05 21:21 ID:pytiI2tQ
そう言ってトウジはケンスケをチラっと見た。ああ。何となくその用件がわかってしまって、僕は溜息を吐いた。
まぁ、ケンスケには悪いが、どうせ長くは隠せる問題じゃない。僕は首をすくめて言った。

「エヴァに乗れって言われたんだろ? ミサトと金髪のねーちゃんによ」
「・・・! 何でわかったんや?」
「昨日な、あっこでしょぼくれてる奴をミサトに推薦してやったんだ。そしたら、もうトウジに決めたんだって言ってたからよ」
「ほうか。ほな、ケンスケには悪いことしたのぅ」
「気にスンナ。ケンスケ、お前も気にしてねぇよな?」
「あ・・・ああ。おめでとう、トウジ・・・」

ケンスケは苦しげに、だがやっとのことでそう言った。うんうんと僕は大きく頷いた。よしよし、偉いぞケンスケ。
それでこそ男だ。今度カメラ新しいの買ってやるからな。ウジウジしたってどうしようもないことは笑い飛ばせばい
いんだ。わざわざグタグタした態度で人様を不愉快にすることなんか無い。胸を張ってりゃいいのだ。
だが、ケンスケの言葉に、トウジは悲しげに顔を歪めた。

「おめでとう・・・かぁ。わしよりケンスケのほうがよっぽど適任や思うんやけどなぁ」
「ミサトの考えるこったからな、何か理由があんだろうぜ。つうかこの僕と同じ立場に立ったっつーのに浮かねー面だな。
どったんだ? 給料アホほどもらえるぜ?」
「金か。金もええけどな。ワシ、ケンスケには悪いんやけどホンマはあんま気が進めへんたんや」
「なんでだよ?」
「死ぬかも・・・しれへんやん?」

それは実に正直な吐露で、僕は神妙に頷いた。

87 :tomoタン=シソジ_ ◆xgSWdejH02 :04/02/05 21:27 ID:pytiI2tQ
死ぬかもしれない。確かにそうだ。僕が前回の使徒戦で死にかけたことは勿論この二人も知っている。
ケンスケが聞きたがるから、僕は毎度使徒襲来の度にその体験を面白おかしく話してやっているからだ。
しかし前回の奴はさすがの僕もおちゃらけて脚色交えて話すことはできなかった。ケンスケはそれでも
能天気に喜んでいたが、そう言えばトウジは神妙な表情だったことを覚えている。
エヴァに乗る、と言うことは使徒と命の奪い合いをすると言うことに他ならない。僕は実際に何匹も使
徒を殺してきた。前回も、運がもう少し悪ければ今度は僕が死ぬ番だったのは疑う余地が無い。
負ければ全人類を巻き添えにする・・・と言う事実が、僕の個人の死の重さを軽く感じさせていた。だが、
僕も前回の戦いで思い知ったのだ。そんな感覚的な「全人類」など、結局のところ自らの危機に比べれ
ばかなりどうだっていいってことだ。そうか。僕はようやくミサトの言葉の真意に気付いた。自分の命
と秤にかけれるだけの理由が無ければ・・・エヴァに乗るのは難しい。

僕には理由がある。恥ずかしいから絶対誰にも言わないが、親父が結構がんばってることを知ってる。
アスカに死んで欲しくない。ミサトも僕は何だかんだ言って頼りにしてる。綾波が使徒との戦いに嬉々と
して飛び込んでいるのに、僕が怖気づくなんて考えられない。使徒とかいうバケモンに屈するのは意地と
誇りが許さない。それらは命の危険があるかもしれない、と言う事実よりも僕の中で比重が大きく、恐怖
をねじ伏せるだけの重みがある。しかしケンスケはどうだ? 何か守るべきものがあるのか? 
戦いに望む覚悟が果たして理由もなくできるものか? 
ああ、そうか。僕はとても合点がいった。なるほど、ミサトの言う通りだ。
兵士は訓練を通して恐怖をねじ伏せる術を手に入れるのだ、とミサトは僕を白兵戦技の訓練でボコボコに
した後に言っていた。僕やアスカのように、いきなり実戦に出て、それに「慣れる」ことは確かに恐怖へ
の抵抗手段に成り得る。しかし本当の兵士は、感情を廃し、命令に服従し、すべてを徹底することを叩き
込まれるからこそ、戦えるのだ、と。



88 :tomoタン=シソジ_ ◆xgSWdejH02 :04/02/05 21:39 ID:pytiI2tQ
そこで訓練を通して生まれる「覚悟」のかわりになるのが、戦う理由なのだろう。戦わざるを得ない、
戦う必然があるならば、恐怖と向き合うことができる。アスカなんてまさにそれで、あいつは未だに
話さないが、何らかの命よりも大事な「理由」を持っているのである。ケンスケにはそれすらも無い。
ああ、無理だ。僕は頷いてケンスケの肩をとんとんと叩いた。では、トウジにはどんな理由があるの
だろうか。恐らくそれなりに抜き差しなら無い理由があるのだろう。
「トウジよーお前なんで乗ることにしたんだ?」
「まだ、返事はしてへんねん・・・センセに話聞いてもうて、それから決めよ思ってな。イマイチ覚悟で
けへんっちゅーかやっぱり怖いんや。せやから・・・センセに聞いて欲しかったねん」
「いいぜ、何でも聞いてやる。言ってみな」
トウジは深呼吸して、つかえつかえ話はじめた。
「あんな、わし、妹いるねんか」
「知ってるぜ。それで初日に喧嘩売ってきたんだろ?」
「せやぁ。わしんとこ、親父もじーさんもネルフで忙ししとって、妹の面倒ずーっとわしが見ててん。
せやからな、妹が怪我してしもうた時に逆上してもたっちゅーか・・・あん時はスマンかったのう」
「それはもうケジメつけたろ。で?」
「ほんでな・・・妹、このままやと歩かれへんようなるかもしれへんねん・・・」
「そんな重傷だったんか?」
「足の組織がえし?かなんか起こしかけてるらしいねん。でも、ネルフの病院やったら助かるかもしらん。
もし・・・エヴァに乗るんやったら・・・ミサトさんが妹をネルフに入院させてくれるらしいんや・・・」
「・・・そっか。お前んとこも大変だな」
「正味の話・・・妹が怪我したんはわしのせいやねん。わしが目ぇ離したからはぐれてしもて・・・せやから、
わし妹助けたらなあかんねん。まだ小学生やねんで、わしのせいで歩かれへんようなったらかわいそやんか
・・・わし申し訳ないやん・・・」
トウジは、顔をくしゃくしゃにして泣いた。

89 :tomoタン=シソジ_ ◆xgSWdejH02 :04/02/05 22:01 ID:pytiI2tQ
「おう、トウジ。エヴァに乗るのは半端ねぇぞ。死ぬかもしんねぇぞ。すげえ痛いしな。それでも妹助けたいんかよ?」
「わしは・・・怖いんや。せやけど、アキコのためや。わしは命賭けてでも償いせないかんと、そう思うんや」
「じゃあ、助けてやれよ、エヴァに乗ってよ。ケジメつけるってことだろ? ビビってねぇで根性入れろや」
「センセに迷惑かけてまうかもわからんで」
「お前みたいな新米が、僕に迷惑も何もねぇよ。今から生意気な心配すんなよケツ拭いてやるっつーの」
「おおきに・・・おおきにな。わし、やるわ」
「おう、やってみりゃ何でも意外と何とかなるもんだ。僕がきっちり教えてやんよ」

僕とトウジは握手した。トウジは鼻水を垂らして泣いた。ケンスケはじっと僕らのやり取りと会話を
見ていたが、どうやら自分でケンスケが駄目な理由に気付いたらしく、今度は違うショックを受けて
肩を落とした。興味本位の、ただの憧れのような気持ちで「死ぬかもしれない」と言う恐怖に立ち向
かうことの困難さを思い知ったのかもしれない。この後、ケンスケがエヴァに乗りたいと言うことは
一切無かった。僕らは表面上、いつもの三人でつるんでいたが、トウジはいつも不安感に苛まれたよ
うな表情を隠しきれていなかったし、ケンスケは僕とトウジの両方に気を使った。そして、参号機が
日本に搬入され、トウジは起動実験を行うことになった。

起動実験は松代の第二発令所で行われるらしい。万が一四号機と同様の事故が起こった場合でも、松
代なら失うものはあまりない、と言う毎度のことながら腹の立つ理由からだ。でも、リツコが言うに
は事故の可能性はずっと低いらしい。四号機事故の原因となったS2機関(なんか使徒のエネルギー源
と同じ理屈のエンジンみたいなものらしい)を搭載していないからだそうだ。



90 :tomoタン=シソジ_ ◆xgSWdejH02 :04/02/05 22:15 ID:pytiI2tQ
「ねぇ、シンジ。あいつ今頃起動実験中よね」
「そだな、そろそろだろうな」

アスカはトウジが参号機のパイロットに選ばれた、と言う事実を知って怒った。なぜ自分のクラスの
クラスメートから都合よくチルドレンが見つかるのだ、そんな偶然はおかしい、と怒った。
それで僕はせがまれて「牧場」の真実を話した。話したくなかったけど、どんな事実でも構わないか
ら話せというアスカのしつこさに負けて、僕はしゃべってしまった。アスカはショックを受けてその
日は口を聞いてもらえなかった。
次の日からようやくある程度機嫌を直したアスカは、半泣きで委員長じゃなくてトウジで良かったっ
て思ってしまったって告白した。そして、そのトウジのことを委員長は好きなのだ、と言うことも口
を滑らせた。だから自分は最低なのだ、とアスカは落ち込んでいた。僕はどう慰めればいいのかわか
らなかったので、ただ黙って話を聞いた。委員長にはとてもじゃないが言えなかったらしい。でも、
すぐ知れ渡ることだし、それはトウジ自身が言ったほうがいいと僕は思ったので、アスカに言わなく
てもいいんだって言った。それから、トウジにはやらなきゃいけない理由があるからアスカと同じな
んだって言うと、アスカは妙に納得していた。僕はこの話の流れでアスカが自発的に弐号機に乗る理
由を話してくれるんじゃないかと期待したけど、そんなことにはならなくて少しガッカリだった。
「起動しなかったりしてな」
「そのほうがいいわよ・・・ああ、でも、鈴原は妹さんが・・・」
「そんなもん、起動しなかったとしても何とかしてやれってミサトに言うぜ、僕は」
「そうよね、アタシも言うわよ。バシっと言うわ」
「ぶっちゃけ、トウジが乗れようが乗れまいがどっちだっていいんだ。でもさ、殺生にも程があるだろ? 
一大決心して妹のために命かけようつってんのに・・・乗れなかったからって助けないのはよー・・・
生殺しじゃん? そう言うの嫌れー」
「武士の情けが無いわよね」


91 :tomoタン=シソジ_ ◆xgSWdejH02 :04/02/05 22:25 ID:pytiI2tQ
今日今この瞬間、予定通りなら起動実験が行われている最中のはずだ。ミサトもリツコも松代に出てしまった。
今日はだからアスカと二人きりで物凄い幸せな気分のはずなのだが、アスカは僕の気持ちを知らないでズーンと
落ち込んでいるので僕としては逆に居心地の悪さすら感じる。僕は未だにアスカに告れないでいる。
大体だ、一緒に住んでたら余計にそう言う機会がねぇよ。いつもミサトがいるし、顔つき合わせてマジになんの
は照れくさいのなんのって・・・。今日はミサトがいねぇから期待してたのに、トウジの件で空気悪すぎ。トウジめ、
無事に参号機パイロットになって帰ってきたら訓練にボッコンボッコンにしてやる。僕が後ろ向きな決意をした
時だった。突然、僕の携帯とアスカの携帯が鳴った。
「・・・召集・・・ね」
「使徒か! ミサトがいねぇっつうのに。めんどくせー時にきやがったな・・・」
「シンジのパパが指揮ってことになるわよね」
「ウゼー! あの親父は小言がうるさすぎんだ、自由に戦わせてもらえそうもねぇよ・・・かったりいなぁ」
「使徒が来てるのにかったるいって・・・あんたバカぁ? 悠長すぎるわよ。使徒・・・また、戦いになるのよね」
「まさか既にビビってきてんじゃないだろうな? あ?」
「そんなこと! ・・・ちょっとだけ」
「ビビってんじゃんッ」
「だって、怖いもんは怖いわよぅ・・・」
でも大分余裕でてきたな、コイツ。N2爆弾900発くらいフィールドで抑えきったらしいし、それなりに自信ついて
きてんのかもしれない。まぁ、そんだけ死ぬ確率が下がるってことで、それ自体はいいことだ。僕はアスカには
死んで欲しくない。ほんとはもうエヴァにだって乗って欲しくないくらいなのだ。でも、それを言うとこの女は
拗ねるので、言わないだけである。ミサトとトウジは松代で悠長に実験中だ。まぁ、トウジにこれぞパイロット
ってとこでも、見せてやるとしますか。僕は拳をバキバキと言わせた。


92 :tomoタン=シソジ_ ◆xgSWdejH02 :04/02/05 22:45 ID:pytiI2tQ
僕の気合は、使徒と呼ばれたそいつを見た瞬間に霧散してしまっていた。漆黒の強面と、しなやかな人体を思わせ
るボディ。滑らかな動作で歩くそいつはどう見ても「エヴァ」だった。普段見慣れているそれを使徒と呼ばれても、
いまいちピンと来ない。僕は首を傾げた。
「親父・・・あれ、エヴァに見えるのは気のせいか?」
「お前の視力が正常である証拠だな。あれはエヴァだ。しかし、使徒でもある」
「意味わかんねぇぜ。エヴァで使徒ってどういうことだよ」
「本部のMAGIが使徒に乗っ取られた件、聞いているだろう」
「ああ。リツコがやっつけたんだろ? 生身でよくやるぜ」
「それと同じだ。今度はエヴァが乗っ取られた。そう言うことだ」
「な・・・なんだと・・・じゃあ、あれは・・・」
「そう、参号機だ」
アスカが嘘!と叫んだ。でも、この状況を見るにつけ、それは疑いようが無い事実だと僕は思い始めた。大体、親父
が嘘をつく理由なんかない。事実、あれは使徒に乗っ取られたエヴァなのだろう。そして、問題はトウジが乗ってい
る参号機だ、と言うことだ。親父も難しい顔をして歯を食いしばっている。なるほどね、確かに難しいわな。僕はエ
ヴァットを抜き放った。外部電源から大量の電力がエヴァットに流れ込み、帯電するエヴァットが紫電の閃きを弾か
せ始める。僕はそれを振り被っていつでも走り出せるよう腰を落とし、迎撃体制を整えた。
「ちょ・・・シンジ! あれには鈴原が乗ってんのよ!」
「だから何だよ」
「じゃあ! 戦えるわけないじゃない!!」
「綾波、バックアップは?」
「射撃位置についたわ。射線は七時方向。弐号機、邪魔」
「ファースト! あんたも戦う気!? アンタ達、見損なったわよ! あれには鈴原が乗ってんのに!」
「親父。いつでもオッケーだぜ。弐号機以外はな」
「シンジ!」

93 :tomoタン=シソジ_ ◆xgSWdejH02 :04/02/05 22:50 ID:pytiI2tQ
「うるさい、黙れ! お前、トウジに死ねっつーのかよ!」
「あんたが殺そうとしてるんじゃない!」
「バカヤロウ!! さっさとプラグ引っこ抜かないとトウジがどうなるかわかんねぇだろうが!!
 ・・・わり、喧嘩してる場合じゃねえな。アスカ、フィールド放射すんじゃねえぞ、トウジに当た
ったらヤベエ」
「・・・ご、ごめん・・・」
「いいんだ。親父、作戦はあんのか?」
アスカはキレる寸前だったが、僕の絶叫でようやく僕の意図に気付いて項垂れた。こんな言い争い
の時間も惜しい。アスカには悪いが、フォローしてやるつもりは今は無かった。そう言うのは後で
いい。僕は人命尊重とかそんなのどうだっていい。僕と関係ないところで人が何万人死んでも心は
さっぱり痛まない。でも、ダチが死ぬかもしれないなら・・・話は別だ。
「シンジ、まず機動力を奪え。相手は腐っても元エヴァだ。お前達と同等か・・・いや、使徒なのだ、
それ以上と考えてもいいだろう。プラグを抜くには足を止めることだ。動いている目標に下手なこ
とをすればプラグを傷つける恐れがある」
「要するに足を狙えってことだな。了解だ、綾波、バックアップよろしく」
「了解。射線には入らないで。ためらわないわ」
「お前にそんな高等な機能期待してねぇ。アスカは俺と反対の足狙ってくれ。トウジがシンクロし
たままだったらいてぇだろうけどな、死にゃしねぇよ」
「う・・うん。わかったわ」
僕は静かに頷いた。今までで一番難しい戦いになるだろう。僕は緊張せざるを得なかった。ふざける
余裕もない。一つのミスでトウジは死ぬ。エヴァのパワーでぶん殴ったら、肉がひしゃげるどころじゃ
ない。生身の体なんてゴミ屑のように一瞬で血の煙に化けるだろうし、エヴァットやフィールド放射
の衝撃は直撃すればプラグごしでも人間くらい殺せるに違いない。もう僕はトウジを五体満足で助け
ようとも思わない。ただ、死なないようにやるだけだ。命あってのモノダネ、多少は覚悟しろや。
と僕は呟いた。親父が迎撃開始と叫ぶ。僕は駆け出した。


94 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:04/02/05 22:52 ID:8mpB+XQF
うーん。面白れえなあ。
こういうの書けるのって正直妬ましいわな。

ところで、読んでてなんか既視感を憶えるなあ…と思ったら、あれだ。
アスカ→シンジの感情の変化が構造的にメルヘンと同じっぽい。

ファクターとしてのシンジがアスカ側から見ると同じつーか。
今回はシンジ→アスカの感情をはっきり書いてて、恋愛要素が前面にでてっから
物語としては別物だし、着地点も違うベクトルだけど。なんか親戚?って感じだ。

95 :tomoタン=シソジ_ ◆xgSWdejH02 :04/02/05 23:03 ID:pytiI2tQ
参号機・・・いや、使徒は恐ろしく俊敏だった。僕らのエヴァが人の動きを超えないのに対し、奴は確実に人間では
不可能な動作で体を捻り、腕の関節を外して延ばし、ブリッジの状態でしゃかしゃかと走る。間抜けな姿だが、
恐ろしく早く、僕のエヴァットもアスカのグレイブも中々使徒の足を捉えることができない。綾波の放つ弾丸は
案の定と言うか毎度のことというか、ATフィールドに阻まれて牽制以外の役には立たない。僕はアスカが左に回
りこんだのを確認してから、退路を断つように使徒に襲い掛かった。使徒はまたもや不自然な方向に足をぐにゃり
とまげて僕のバットを空振りさせ、あり得ない方向に曲げたままの腕を振り回して初号機を跳ね飛ばした。
久しぶりの直接的な苦痛は大したダメージではなかったが、一瞬僕の動きを止めるのには十分過ぎた。足の止まっ
た僕に、参号機が予備動作無しでジャンプニーパッドを直撃させる。横隔膜の辺りを痛打された僕は胃袋が飛び出
しそうな痛みに膝をつき、そこに待っていたかのようなアッパーカットを合わせられて後頭部から思いっきり地面
に倒れ伏した。激痛で目がひっくり返りそうだ。参号機は僕を休憩させるつもりは全くなく、倒れる僕に向かって
踵を振り下ろした。体をよじって何とかかわすも、右腕が直撃されて初号機の腕は簡単に折れた。当然、骨折の痛
みが僕を襲う。一瞬のうちに起こった参号機のラッシュに成す術もなく、僕は絶叫した。やりづらいのは確かだが、
それを除いたとしても強い。こいつ、強いぞ!?
アスカがグレイブを横なぎにふるって僕にのしかかっていた参号機を追い払う。そこに零号機の銃撃が浴びせられ、
参号機は飛び跳ねながらそれをかわした。僕は激痛に耐えながら無事な左腕でもう一度エヴァットを掴んだ。
「シンジ、大丈夫!?」
「いってぇ・・・右腕がイカれちまった。ちくしょう、あいつ普通に強いぞ。手加減してらんなくなってきた」
「でも、鈴原が」
「わーってる。もう一回いくぞオラー!」
次こそ。そう思って突撃するも、ひょいひょいとまるでバカにされているかのように攻撃はかわされていく。
くそ、足しか狙えないってことに気付いてやがる・・・僕は下唇を噛んだ。


96 :tomoタン=シソジ_ ◆xgSWdejH02 :04/02/05 23:18 ID:pytiI2tQ

「このままじゃ、トウジ助けるどころか負けちまう。アスカ、次で決めるぞ、外すなよ?」
「シンジ・・・どうする気?」
「僕が足を止めてやる。あのムカつくうねうねの足をぶった切れ!」
「え、えと、うん。やってみる」
「いち、にのサンで行くぞ。いち・・・にの・・・さん!」

僕はエヴァットを振り上げ、そして十分に反発力を溜めたそれを思いっきり参号機に投げつけた。
例によってこちらをバカにしたかのようにそれをヒョイっとかわす、が! 僕が狙っていたのはそ
の油断だ。使徒にもいろいろいるが、こんだけこっちを舐めてバカにして油断するような奴は今ま
でにいなかった。僕を心底ムカつかせるには十分過ぎる。もう、自分の苦痛や死の危険をどうでも
良いと思わせるだけのふざけた態度こそ、こいつの敗因となるだろう。僕はエヴァットを投げると
同時に、それを追って走ったのだ。そして使徒が案の定、馬鹿にしたかのように避けたその瞬間、
エヴァットを追って走った僕のタックルが参号機の腰にがっちり食い込む。こうなったら体を捻ろ
うが腕を延ばそうが関係ない! 僕はそのまま参号機を押し倒し、じたばたと暴れる参号機を押さ
え込んだ。同じエヴァだ、単純な力では体勢有利のこちら側に分がある。僕は叫んだ。
「いまだ、やれ!」
ATフィールドを展開しようとする参号機を押さえ込み、発生しかけていたフィールドは僕の発生さ
せたフィールドと反応して溶けて消える。今、参号機を守る壁は何も無い。綾波の銃撃がようやく
参号機の右足に命中する。左足は、アスカの振り下ろしたグレイブが綺麗に両断した。そして動け
ないことを確認した僕が、右腕に向かって思いっきり左の拳を打ち込んだ。参号機の腕は全体重を
かけたその一発でぐしゃりとひしゃげた。

「どうだ、これでオアイコだぜ。両足は釣りだとっとけ! アスカ、プラグ引っこ抜いちまえ!」

97 :tomoタン=シソジ_ ◆xgSWdejH02 :04/02/05 23:23 ID:pytiI2tQ
だが、甘かった。使徒はしぶとい。それは知っていたはずなのに、両足と片腕を奪った時点で戦闘不能
だろうと僕は決め付けてしまっていた。それは人間の流儀、もしくはエヴァの流儀であって使徒の流儀
ではないのだ。参号機が無事な左腕だけで僕を押しのけ、そして初号機にのしかかる。僕は跳ね飛ばし
てやろうとするが、ぐちゃぐちゃになった足の腿と、肘までの腕の力で押さえつけられてしまう。そし
て参号機の口から流れ出した透明な粘液が、初号機の装甲の隙間に入り込んだ。

「ぐ・・・ぎゃあああああああああ!」

僕は意識せずに悲鳴を上げていた。それは灼熱感であり、今までで最高の苦痛だった。無数の長い針で
徐々に串刺しにされるような、そんな拷問のような激痛は僕の神経と言う神経を焼ききろうとした。
そこには意地も気合も根性も通用せず、僕はただ体が反応するそのままにビクンビクンと体を跳ねさせて
絶叫し続ける。この苦悶を冷静に見つめる自分を客観視する自分が、いつもの冷静な仮面を外してさすが
に痛すぎだよね、と呟いた。それ程痛い、ただ痛い。僕は腕をめちゃくちゃに振り回し、使徒を押しのけ
ようとする。だが、振り回したつもりの腕はピクリとも動かない。くそ、くそ、こんな隠し技持ってたの
か、この野郎! だが、苦痛の時間はすぐに終わった。

弐号機が放射したフィールドが。




参号機の上半身を吹っ飛ばしてしまったのだ。
そこにはトウジが乗っている、エントリープラグも含まれていた。

98 :tomoタン=シソジ_ ◆xgSWdejH02 :04/02/05 23:34 ID:pytiI2tQ
僕の内部に浸透しようとする針の塊のような苦痛の液体は、参号機が活動を止めた瞬間、僕の中で苦痛を
発するのを止めた。僕は荒い息を吐いてしばらくその苦痛の残滓に自分自身の体を抱きしめて耐える。
ようやく冷静になった時、アスカが泣いていることに気付いた。
「アスカ・・・どうなった?」
「ごめん、ごめんシンジ。アタシ、アタシ・・・ごめん」
「ごめんごめんじゃわかんねぇ。トウジは?」
「・・・ごめんね、ごめん・・・」
「ゴメンじゃわからねぇって言ってんだ!」
アスカは僕の叫びに、ビクっと身を震わせて、そして顔を伏せる。そして声を出さずに泣き続けた。僕は
舌打ちして外の様子を見回す。上半身がなくなってしまった参号機の残骸は、片足がちぎれ、もう片方の
足が蜂の巣になって膝をつき、その体勢のまま沈黙している。上半身の残骸は少し離れたところに見えた。
アスカの全開のATフィールド放射によってずたずたに引き裂かれ、頭部は目玉を飛び出させて首吊死体の
ように舌をベロンとはみ出させている。生きているようには見えない。この様子では、プラグは・・・僕は
思いっきり操縦桿をぶん殴った。六発ぶん殴って、手の痛みでようやく冷静さを再び取り戻すことができた。
「アスカ・・・助かった」
「シンジが・・・シンジが死んじゃうって・・・シンジが死んじゃうと思ったから・・・」
「ああ。また、命の恩人だな・・・」
「でも・・・でも、鈴原が! ごめん、ごめんなさい、ごめん・・・」
「・・・綾波、初号機動かせねぇ、回収は頼むわ」
「了解」
「わりいな」
僕は初号機を降りて、ATフィールド放射の体勢のまま固まっている弐号機に向かって歩いた。アスカも、
弐号機を降りてきた。アスカは僕に抱きついて、そして泣き続けた。僕にはかける言葉が無かった。アスカは、
親友の好きな奴を殺してしまった。僕を救う為に。仕方無いとはいえ・・・僕も、泣きそうだった。


99 :tomoタン=シソジ_ ◆xgSWdejH02 :04/02/05 23:49 ID:pytiI2tQ
「惣流・・・センセもや。勝手に殺さんどってくれるか・・・ほんまえらい目会おたわ・・・」
「は? ・・・はぁ?」
硬直する空気。僕とアスカは抱き合うような姿勢のまま、氷となった。白い菌糸のようなものを体中に
巻きつけ、ずりずり引きずって歩いてくるそいつは、いまやATフィールド放射で血の袋に化けたはずの、
トウジだった。さすがに無事ではいられなかったのか、右足を引きずっており、左腕で抱くようにかば
っている右腕はあり得ない方向に曲がってトウジが一歩歩く度にぷらんぷらんとゆれている。それが痛
いのか、トウジは顔を歪めていた。
「て・・・てめ、生きてたんか!」
「アホぅ、わしが死んだら誰がアキコの面倒見るんじゃーアキコが嫁行くまでは誰が死ぬかーボケー!」
「うわ・・・よく見たらその足潰れてねぇ? いったそ・・・」
「痛いわぃ・・・めっちゃ痛かったわぁ・・・何や知らんけどいきなり勝手に動きよるし・・・センセやら惣流に
は容赦なくやられるし・・・何やねんな・・・」
「なんやねんじゃねーよ・・・よくまぁ、使徒の腹ン中で無事でいれたもんだ・・・」
アスカは口をパクパクさせ、そしてまた僕に抱きついて今度はびーびー声を上げて泣き出した。トウジが
痛みに顔を顰めながらも困った顔をする。僕も困る。何なんだこの幕切れは。辺りを見回すと、壊れてひ
しゃげたエントリープラグが見えた。ATフィールド放射に巻き込まれてひしゃげるだけで済むはずがない。
僕が殴った時点でプラグは抜けていたのだ。そして、プラグをひしゃげさせたのは参号機の最後の足掻き
に巻き込まれたからのようだった。
「人騒がせな野郎だ・・・あとで三回は殺す!でも、まぁ・・・生きててくれて助かったぜ」
「何や、それ」
「てめーが死んでたら洒落で済まなかったんだよ、僕も、アスカもな」
「ほうか。まぁ、何や生きてるしええがな」
「へ・・・タコ。迷惑かけるかもってホントにかけてくれやがったな。ほんっと迷惑だぜ!」
救護班がトウジを拉致りに来るまで、僕は抱きついて泣いているアスカの髪を触っていた。
ああ・・・まぁ、役得だ。今回は勘弁してやるか、と、僕は沈静剤を打たれて強制的に寝かされたトウジを眺めながら思っていた。

100 :tomoタン=シソジ_ ◆xgSWdejH02 :04/02/05 23:53 ID:pytiI2tQ
バルディエル編 完

ゼルエルは到底無理や。
生き残らせてしまった甘い俺。だってさー後味悪いと何かさー。
板SSは気楽に読もうぜ。

353 KB
■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています

★スマホ版★ 掲示板に戻る 全部 前100 次100 最新50

read.cgi ver 05.04.00 2017/10/04 Walang Kapalit ★
FOX ★ DSO(Dynamic Shared Object)