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☆魔法先生ネギま!☆73時間目

1 :T.K.%奈落のクイズマスター ◆TIxnZF5ceo :04/04/21 00:48 ID:WEqxfwyQ
さい[sage] 投稿日:04/04/21 00:45 ID:IC8wvIaK
週刊少年マガジンで好評連載中!
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◆早売りのネタバレは「厳禁」です。
◆ネタバレ解禁は水曜日の午前0時からです。遅売りの人は耐えて下さい。
◆950番を越えたら、950の人が新スレを立てて下さい。
◆雑談はほどほどに・・・

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☆魔法先生ネギま!☆72時間目
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スターチャイルド「魔法先生ネギま!麻帆良学園中等部2-A」
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424 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 20:47 ID:1L4CvAyS



  夢 に 向 か っ て 一 生 懸 命 努 力 し て い る の は 、 ガ キ だ ろ う が な ん だ ろ う が 嫌 い じ ゃ な い ・ ・ ・



第一話

「う……うーん……」

明朝から修学旅行明け最初の新聞配達だというのに、明日菜は全然寝付けない様子である。
楽しんだり、普段の勤労学生な身分にすればよい息抜きになるはずの修学旅行が、
友人の親族のいざこざに巻き込まれる形で、日常ではありえない大冒険をする破目となり
度を超した肉体・精神の疲れによって、タフさが身上の彼女でも却って眠れなくなるのも無理はない話。
しかし……。

(……あー、まただ……またネギの事を意識してる…別に今特別に心配してるでもないのに……。)

今の明日菜が寝付けない理由は、前述のとは違う物がありそうな雰囲気である。

(そりゃ確かにカモに言われた手前勢いで本音を吐露しちゃったけどさ……何でだろ、
 別に変な事言ったわけじゃないのに……まだ子供なのに凄い勢いで酷い目にあうネギが心配なだけなのに……。)

とくんっ……

(そんな……何で、何で、ネギのこと考えただけで、こんなに心臓がドキドキいうの……。
 今まで、高畑先生と会っている時ぐらいしか、こんなにドキドキする事なかったのに……。
 今でこそ、ネギのことそんな嫌いじゃなくなったけど……なんかコレじゃいいんちょと同じだよ……。)


425 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 20:47 ID:1L4CvAyS
いくらなんでも子供を嗜好するのは自分としては如何なものか、そう思った明日菜は
気を紛らわそうとして、ベッドの棚に置いてあるタカミチの写真をじー、と凝視した。
一通り網膜に焼き付けた後は、修学旅行のときに木乃香の実家から貰った
関西呪術協会会長=木乃香の実父の写真を同じように眺めた。
駄目押しにと、パルに奨められて少しずつ読んでいる「○文字D」や「○岸ミッド○○ト」、「ゴ○ゴ○」「バ○」
を物凄い勢いで読み進めたりもした。

(いやだ、もう……こんなに忘れようとしても、ネギの笑ったり、泣いたり、怒ったり、落ち込んだりする顔が出てくる……。
 確かに笑っているときは、何か事が成功したのか、素直に嬉しいと思うし、泣いたり怒ったり、落ち込んだときは
 自分の剣呑な態度に落ち度でもあったか、クラスの連中に変な話題の肴にされたか、
 また何かクラスを巻き込ませたくない事が起きたのか心配になるわよ。でも、でも……本屋ちゃんみたいな感情までは……。)

じゅん……

(!!)

心でネギにそんな感情を抱くのは違うと言い聞かせても、体の方が、正直なのかひねくれ者なのか、
ネギの失敗魔法で毎度白日に曝される薄い布切れの奥にある深淵は熱く疼きだし、快楽の証を湛え始めている。


426 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 20:47 ID:1L4CvAyS
(嘘……私……濡れてる……ネギのこと考えて……感じてる!?
 でも……違う!ネギに抱いているの良い感情は、まだ子供じみた面こそあれど人としてどうかであって、
 男としてどうかじゃない!あ、いや、そりゃ何気に美形だとは思うけど……そうじゃなくて!もう頭にきた。自分に。意地でも吹っ切る!)

…………

ネギに対して何かと突っかかっていた2年末期の如き鉄の意志を、ネギに対する感情の突然変異を
抑止するために全て使い込み、何とか深い眠りに付こうとしていた。しかし、それを嘲笑うかのように、体は余計に熱を帯びていった。

(駄目だ……。余計に変なこと考えちゃう……。
 …………そーいえば……奴があんなこと言ってなければ、
 こんな、自分の発言に苦しむことなんかなかったんだ。よーし……ネギには悪いけど、ちょっとお仕置きしちゃえ♪)

「zzzzz..........兄貴ぃ、もう勘弁してつかぁさい..........あ、いや、彼女たちが嫌いってぇ訳じゃないスけど、
 もうお腹(?)いっぱいで..........ぐげ!あ、姐さん!もうしないから赦して..........
 て、あれ、夢か..........ど、どうしたんです姐さん、深刻さと悪巧みが渾然一体と化した顔しちゃって?」
「何か凄いおめでたい夢の途中悪いんだけどさ……ねぇカモ、ちょっと手貸してくんない?手どころか足全部と尻尾も使うと思うけど♪」

427 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 20:48 ID:1L4CvAyS
「このちゃん、こっちやよ。一人で早く、ウチのところに来てな―――」
 突然目の前に現れた「ちびせつな」に導かれ、木乃香はループ結界をオートにして、焦ったような顔で階段を駆け上がっていた。
「せ、せっちゃん、何があったんやろう……」
 「立入禁止」と書かれた壊れたドアを破ると、涼しい夜の風が木乃香の頬を撫ぜた。


 学園・屋上―――


「せっちゃん!」
 木乃香のオレンジ色の着物と、長い髪が風に靡く。
 桜咲刹那は屋上の中央で、一糸纏わずにしなやかな裸体を夜の闇に晒していた。
 片手には闇を映して鈍く輝く愛刀、もう片方には呪符の束が握られている。
「このちゃん」
 刹那が微笑んで木乃香を出迎える。
「せっちゃん……」

 二人が向かい合い、距離が縮まり、そして―――



 麻帆良学園の放送網―――スピーカーは学園の広域に及び、学園都市メンテナンス時の停電前の放送などに用いられている設備である。
 他人の心を歌で惑わし、操る美砂のアーティファクト『傾国のマイク』を使うならば、その設備を利用しない手はないだろう。
「さーて、ストレス解消もかねて、思いっきり歌っちゃうよぉ―――」


428 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 20:48 ID:1L4CvAyS
 円から「ネギ君逃走」との知らせを受けた柿崎美砂はパチッ、パチッ、と放送機材のスイッチをリズムよくONにしながら、カードを「♪」を逆さまにしたような形状のマイクに変え、大きく息を吸い込んだ。
「――――――――――――――――――――――――っ!!!!」

 ネギ君を捕まえて―――
 その願いが込められた美砂の歌声は、麻帆良学園を巨大なコンサート会場に変えながら響き渡り、学園を警備している奴隷化した生徒100人以上に、命令としてその鼓膜を震わせる……。

          *

「危ないっ! や、止めてください―――っ!」
 大音量の歌が響き渡る中、ネギとカモが乗った杖はふらふらと低空飛行で学園の敷地内をさ迷っていた。
 歌声に操られた生徒たちはハルナが創りばら撒いた武器、魔法銃や弓矢などを空に向けて嵐の如き攻撃でネギを撃ち落そうとし、二重、三重の防衛ラインを成して逃亡を阻んでいる。
「兄貴、もっと速く、いや、高く飛んでくれっ! 矢が尻尾に刺さっちまう!!」
「今の力じゃ、これが精一杯だよぉ! え? う、うわああ―――っ!?」
 新手の追手が真上から現れる。その生徒たちはリュックサックのように背負える翼を装備し、ネギの杖に急降下してネギを羽交い締めにし、呪文を唱えられないよう口を塞いだ。
「ラス・テル・マ・ステむぐう! むぐぐ……む、むぅ――っ! ん、ん―――!?」
 杖はジグザグに飛びながら高度を下げ、まるで地獄に引きずり込まれていくように美砂の兵隊が群がる地上へと落下していく。

 その時、ブツン! と美砂の歌声が突然止まった。

 生徒たちの動きには精彩がなくなり、ネギを羽交い締めにしていた手の力が緩む。地上の生徒たちも、目的を無くしたようにバラバラな行動をし始めていた。
「何か分かんねーけど、今がチャンスだ兄貴!」
「う、うん!」
 ネギは力を振り絞って杖を飛ばし、そのまま美砂の兵隊の包囲を破って逃げていった。


429 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 20:48 ID:1L4CvAyS

          *

「あの生徒たちの翼、ハルナたちが飛ぶのに使ったのと同じモノ……。ふーむ、存在し得ないアイテムを創造し、それを量産する能力―――思ったより厄介でござるな」
 深く茂った樹の枝葉に隠れながら、黒装束の少女は穏やかな、しかし鋭い光を宿した目を開く。
「放送設備は使用禁止に設定したけど、それで良かったのか?」
 携帯から聞こえてくる女声に、黒装束は満足げに肯定の返事を返した。
 歌声が消えると、群がっていた生徒たちは統率を失って虚ろな目で徘徊し始めた。歌がなければ「怪しい者に遭遇すれば阻止せよ」程度の命令しか受けていないのだろうか?
 しゅた、と黒装束の少女が地上に降り立ち、そのまま統制を失った生徒たちに襲いかかる。
 矢や魔法銃が発射されるが命中しなかった。黒装束は闇の中で16人になり、生徒たちを幻惑しながら一人、また一人と敵の数を減らしていく。
 しかし、圧倒的な黒装束の少女の胸中では、ある思いが大きくなっていた。

 ――――身体が、あの時のように動かない

 黒装束の少女は以前、女子寮で吸血鬼になった事があった。
 身体はあの時の感覚を鮮明に覚えている。肉体は羽のように軽くなり、力は身体中に満ち溢れてコンクリも簡単に砕け、ヘリを易々と落とせたあの感覚を―――
 もっとも力は朝には失われてしまい、少女も最初はそれが良い事だと信じて疑わなかった。少女にとって力とは、修行を積み重ねて手に入れるものであり、魔法に頼るなどしてはならないという答えに至る。
 しかしあれから数日、木乃香たちの動きを探る過程で少女は、強力な魔法の力を見せつけられてしまった。
 人を操る力、心を読む力、創造する力……それらは普通に修行するだけでは到達できない場所にある力だった。
 きっかけは何か分からない。いざという時は双子などを守らなければならないので、力が欲しかったのか―――それとも単に、さらに強くなりたかったのか。
 ただ、まるでコインが回転するように、いつの間にか気持ちは裏返った。

430 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 20:49 ID:1L4CvAyS
 全滅した生徒がそこら中に転がっている。
 黒装束の少女はゆっくりと携帯を取り出すと、再び通話ボタンを押した。
「もう終ったのか? 早いな」
「千雨、お主に一つ問う」
「……え?」

「お主、魔法の力を欲しくないでござるか―――?」

 黒装束の少女はぞっとするような低い声で、携帯の向こうにそう伝えた。
 それは両者間で無意識の内にタブーになっていた問いかけだった。

「………………………………………………………」

 黒装束の少女は何も答えずに、携帯の向こうで沈黙した仲間の返事をずっと待った。
 女子寮を救った少女たち。真相に最も近い少女たち。魔法に近づき過ぎた少女たち。そして、仲間を救おうとここに至った少女たち。
 魔力で操られた生徒たちは既に動かず、少女たちは何も言わない。
 ただ闇は静寂を好むのだろうか、色濃い闇がさらに深く黒装束を包んでいく。
 そして、返事は―――

          *

「ひう……ふうう…ふうう…ふう……」
 占い研究会の部室は、喉を震わせたエヴァの呼吸音が聞こえるほど静かになった
 エヴァを床に倒しての平らな胸を踏み付け、弱々しく開かれた脚の間から生えているモップで、幼い少女と違わない淡い色の性器をごりごり抉っていた円は、訝しげに眉を寄せた。
「美砂の歌が止まった? もうネギ君を捕まえたのかな……でも、ちょっと早過ぎる……」
「ふううぅ……痛い…痛い…抜いて、くれ……」

431 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 20:49 ID:1L4CvAyS
「うるさいなあ。そんなに痛いなら、気持ち良くしてあげる」
 円はモップをエヴァから抜くと、ネギが監禁されていた檻から尿のような黄色い液体が入ったフラスコを拾ってきてエヴァの顔に近づけて、ゆっくりと振って見せた。黄色い液体に泡が混じる。
「これが何か分かる?」
「………性交に用いる初歩的な魔法薬……媚薬だな。驚いた。ジジイの孫はもう、魔法薬の調合までできるようになったのか……」
 円はにっこりと嗤ってフラスコのゴム栓を外し、手で扇ぐように香りを嗅いだ。
「正解ぃ。ネギ君はこの薬少しで勃起が治まらなくなって、一日中本屋ちゃんと檻の中でセックスしてたんだよ。じゃあさ、これ全部飲んだらどうなるんだろね?」
「な、に………まさか貴様、それを私に………バカな真似は止めろっ! 魔法薬の素人が! うぐう!」
 円の片方の手が、エヴァの無惨に腫れた人形のような顔に伸びて顎を掴んで口をこじ開け、もう片方に持ったフラスコをエヴァの、血で汚れた小さな口にねじ込んでいった。
「マスター!」
「んん―――っ!」
 従者の茶々丸の見ている前で、エヴァの目から何度目か分からない涙が零れ落ちる。エヴァの口に押し込まれた出口から泡だった黄色い液体が口内に充満し、嗚咽する狭い喉を流れ落ちていく。
 口から垂れ落ちた黄色い涎は内出血で蒼くなった乳房にぼたぼた滴り、淡い色の突起や肌を黄色く汚しながら凹凸の少ない身体のラインを伝い落ち、咽るような臭気が場に立ち込めた。
「ゔゔゔ――――――――――――――――――――――っ!」
 西洋の人形のような体躯をガタガタ震わせて手足をばたつかせ、用量を大量オーバーしている媚薬を注ぎ込まれるエヴァが痙攣するように悶え始めた
 胃に流れ込んだ媚薬が吸収され、皮膚を伝った媚薬が肌に染み込んでくる。外と内から溶け込んだ過剰な媚薬は瞬く間に効果を発揮し、少女の幼い身体を溶鉱炉のように熱くさせる。
 エヴァの身体の至る部分から汗が噴き出してきた。おでこや首筋、乳房や背中、脇の下や膝の裏、そして股間や尻の割れ目の間から、水滴がみるみる溢れ出して滝のように伝い落ちる。

432 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 20:49 ID:1L4CvAyS
「ゔあ゙っ、あ゙あ゙ぁ――――――――身体がぁ――――――っ!」
 口から涎を垂らし、目から涙を垂らし、頬を紅く染めながらエヴァが叫んだ。未成熟な胸は相変わらずだったが、淡い色の突起がピンと張り詰めてその存在感をアピールしていた。
「マスター! しっかりしてください!」
 従者の呼びかけは耳に届かなかった。乳房がドロドロした欲の塊に変わる。恥部からは血を洗い流すように愛液が染みだして濡れていき、男根に飢えたむず痒い悲鳴を上げてエヴァを苛ませる。
 全身が敏感になり、神経が研ぎ澄まされて性感に繋がっていく。狂っていく身体をどうする事もできないままエヴァはガクリと膝を折って床に崩れ落ち、自らの火照った身体を自分で抱き締めて悲鳴を上げた。
 しかし、焦点が狂いかけた目はまだ光を失っておらず、焼き尽くされようとする理性の最後の抵抗を思わせる。その必死な瞳が円の嗜虐心を増幅させた。
 円は陥落寸前のエヴァに跨って手首を縛って平らな胸を捏ねまわし、勃起した乳首を爪先でこりこりと弄んで反応を愉しんだ。
「はひぃ、ひっ、ひいぃ……や、めてぇ、頭、、変になる……ひっ……ひいい……」
 理性で我慢できる快楽の限界は超えていた。100年を超える時を生きていた闇の女王が、20年も生きていない少女に乳首を弄ばれるだけで無様な牝の声を上げ、股間を更に濡らしていく。

433 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 20:50 ID:1L4CvAyS
「んじゃあ、トドメをさしてあげる。ループ空間もだいぶ狭くなって時間もないし。これで最後、押し潰される前に……」
 円はポケットからペニスバンドを取り出してエヴァに見せる。ただしそれはベルトに本物の生々しい男根を接着したような不気味な代物だったが、エヴァはそれを見て歓声に近い悲鳴を上げた。
「これはねー、ハルナちゃんがアーティファクトで作った玩具なんだけど、実は射精とかできたりする優れもの。みんなに試供品として配られてるの」
「ふうぅ―――ふうぅ―――ふうぅ―――ふうぅ―――」
 エヴァの顔に屈辱と渇望、期待と恐怖が入り乱れる。そのペニスバンドは長さ・太さ共に怪物級であり、エヴァのサイズに合っているとは言い難かったが、エヴァは股間の疼きを押さえられない。
 円はエヴァの顔を見て征服欲を刺激されたのか、立ち上がるとカチャカチャと学ランのベルトを外しズボンを緩め、淡いブルーの下着を下げる。そこには赤黒く充血した巨根が堂々と聳え立っていた。
「手間取らせないよ。最初から装着してるし」
「はひ、ひいぃ―――っ!」
 突然の事に思わず後退するエヴァ。しかし円はエヴァを脚を掴むと、そのまま自分の身体をエヴァの脚の間に滑り込ませた。そしてエヴァの飢えた股間に特大の餌を押し込む。

434 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 20:50 ID:1L4CvAyS
「う、ぁ………!?」
「くふふふふ」
 オモチャにされたエヴァの性器に、敵対する関係にある者が結合する。
 膣を押し広げて突き進んでくる巨根を、欲情したエヴァの肉体はしっかりと受けとめていた。体内に突き入れられた肉の棒が前後し子宮を小突くたびに、押し寄せてくる快楽の波に翻弄される。
「あ゙あ゙っ! ああっ! あっ! あっ!」
 エヴァは惚けたような顔で身体を揺らしながら、外見に似合わない艶のある声を上げた。縛られた手がバタバタ暴れ、噴き出た汗でべとべとした肉体が淫靡に震えた。
「へえ、いい声で鳴くじゃん」
「はああ、はあ、はあ、も、もっと……」
 円が微かに頬を赤くしてエヴァを見、薄っすらと嗤う。
「もっと激しくしてあげる」
 エヴァの反応を見て気をよくした円が、ペースを速めてエヴァの幼い身体を犯していく。動きに合わせてエヴァは、悲鳴と悦びが混ざったような声を断続的に上げてそれに応えた。
「あっ、あっあっあっあっ、はあ、ああ、あっあ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ―――」
 男根の破壊力にエヴァの理性が吹き飛んでいく。ピストンの度に思考は真っ白になり、ただ快楽で満たされていった。


(サウザンド・マスター………お前とこのように交わりたかった―――)


 崩れ去る寸前のエヴァの意識が、わずかに震える。
 あの男。
 もう会えない。話せない。いっしょにいる喜びも、安心感も、あの胸が高鳴る想いも、もう二度と戻ってこない。
 帰ってきてくれるって、言ったのに。

435 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 20:50 ID:1L4CvAyS
 どれだけ絶望したか。その当時は毎晩のように枕を涙で濡らしていた。
 何が残った……? 何も残らなかった!
 どうして、どうして私を置いて死んでしまったのだ―――
 帰ってきてくれるって言ったのに!
 帰ってきてくれるって言ったのに…
 帰って………
 …

 うそつき…。

 こんな小娘に弄ばれて、結界に押し潰されて死ぬのか……
 まあ、それもいい。
 向こうで奴に会えるかもしれん。
 どうせ行く先は同じ、地獄だろうし……


 ………心残りは、和泉亜子の事だ。
 人間に戻れない吸血鬼を作ってしまった。
 真祖の魔力を奪い取りながら、自ら吸血鬼になった真祖とは対極の存在。
 もし亜子が生きていたら、必ずこいつらとぶつかるだろう。
 守ろうとするモノを壊そうとするこいつらと。
 近衛木乃香は、私が仕掛けた桜咲刹那の罠にかかって弱体化するはず。
 ジジイの孫は一筋縄ではいかんだろうから、できればここで仕留めてやりたかったが……無理か。

 まあ、もういい。
 私は、もうすぐお前のところへ行くぞ。
 サウザンドマスター………
 …………
 ……


436 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 20:51 ID:1L4CvAyS
 快楽に喘ぐエヴァの目から、一筋の涙が流れ落ちていった。
 占い研の部室に水音が響き、窓からの月明かりが交わる二人のシルエットを壁に映し出す。
「……………………………………」
 茶々丸は何も言わず、泣くエヴァの姿を眺めながら、最早無駄な抵抗に近い結界解除作業を続けていた。従者のすぐ前で主人は淫らな声を上げて絶頂に向っていく。
「は、ああぁ………!」
 絶頂に達したエヴァの肉体がビクン! と震えた。その顔に真祖の面影は一片もなく、ただ性的な欲望に満たされた幸せな、そして哀れな少女の微笑みがそこにあった。
 巨根が限界に達し、エヴァの蜜壷にどくどくと大量の精液を注ぎ込んだ。エヴァは抵抗もすることなく、まるで締めているようにその行為が終わるのを待っていた。
「な、なんか調子狂うなー」
 円は逆に興醒めしたようで、エヴァをぽい、と乱暴に茶々丸の方に投げた。茶々丸はそれを受けとめるとハンカチを出してエヴァの股間を拭き、そして懐から試験管を出してエヴァに飲ませる。
「………うう」
 解毒作用がある薬のようで、エヴァの理性が少しづつ戻り始める。それを確認すると茶々丸は、その事に関しては何も言わずに陵辱された主人の脇に控える。
「忠実だねー。茶々丸さん」
 嗤う円が立っている場所を、ループ結界の境界線が透り抜けていく。
 エヴァと茶々丸を中心にしたループ結界の球が、どんどん縮んで小さくなっていく。。
 結界の半径は3メートルを切った。
 エヴァは何も言わずに立ちあがる。
 結界が縮む。
 2メートルを切った。
「ぷはははははは、お別れだね。エヴァちゃん。茶々丸さん」
 円が歪んだ笑みを浮かべる。
「これから邪魔する全ての者は奴隷にされる。麻帆良は木乃香ちゃんと桜咲さんのモノになる―――」
 半径は茶々丸の身長より小さくなった。結界の中でしゃがむ茶々丸。
 エヴァと茶々丸は身を寄せ合い、押し潰されるのを待つだけになった。

437 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 20:51 ID:1L4CvAyS
「茶々丸。頼む」
 エヴァが静かに言った。
 茶々丸は無言で、持っていた銃をエヴァの頭に向ける。
「わお」
 円が目を丸くして、見届けようと少し前に出る。


 と、その時、それは起こった―――


「あ」「む?」
 茶々丸とエヴァは同時に声を上げた。それとほぼ同時に廊下の方からバタバタと、複数の足音が聞こえてきた。
「円! やばい! ネギ君に完全に逃げられた! 外にいる連中はなぜか応答もしないし、放送室は使えないし、木乃香ちゃんもどこにもいない!」
 美砂が焦ったような声を上げながら、片手にマイクを持って数人の兵隊と占い研に入ってきた。
「マジでやばいよ! 何か言い訳考えとかないと、本屋ちゃんが「アレ」を使ったら、私たち手も足も出ないまま何されるか分から―――」
 アレと称されるもの―――ハルナがのどかの為にアーティファクトで創った強大な「武器」、美砂と円が二人がかりで挑んでも勝ち目は薄い反則技。
 しかし美砂の思考はすぐに止まってしまった。目の前の光景の意味が分からないからだ。
「………え? あれ……?」
 円も呆然として、ループ結界を易々と解除して立っているエヴァと茶々丸を見ている。
「どうやら、学園の結界が切られました」
「うむ、そのようだ……何かのトラブルか? まあいい」
 エヴァはばさりと蝙蝠で編んだマントを纏って裸体を隠し、どこか残念そうに「ふふふ」と笑った。
 結界の消失―――
 エヴァの魔力を極限まで押さえている結界、それが消えた。
 和泉亜子に大半を奪われて、残り僅かな魔力。それは普通の魔法使いレベルの力しかないが、しかし、結界がなくなった事でその力を存分に使える状態になったのである。

438 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 20:51 ID:1L4CvAyS
「え、えぇ!? なんで?」
 訳も分からないまま、エヴァと茶々丸に気圧された円がバットを構える。
「ふう、やれやれ、私としたことが…危うく向こうに行っても奴にバカにされるところだった……」
 目を軽く拭いながらエヴァは言った。


「とりあえず、和泉亜子のために貴様らは排除しておこう―――」


 茶々丸が銃口を、エヴァが片手を円と美砂に向ける。何かを叫ぼうとした美砂と円の声を、爆発音が吹き飛ばした。
 噴煙が晴れるとそこには円、美砂、そして美砂の兵隊たちが意識を失って転がっている。全員が完全に失神しており、円の学ランは胸の辺りが消失して乳房が見えている。
「………全員意識を失いましたが、数時間で目を覚ますかと思われます」
「よし、それまでに決着をつける―――では行くか、ジジイの孫のところに」
 マントを翻したエヴァの後に、巨大な銃を持った茶々丸が続く。
「ところで、今の状態の私とジジイの孫、どちらが強い?」
「おそらく木乃香さんがまだ勝っているかと。彼女がどのくらい消耗しているかにもよりますが」
「………そうか、まあいい」
 壊滅した占い研から、二つの影がゆっくりと消えていった。

          *

 学園の傍の木に立った黒装束の少女は、煙を上げる占い研部室を細い目で眺めていた。
「おいおい、本当に良かったのか? 学園の結界を切っちまって」
「まあ上出来でござる」
 近衛家から収集した情報の中には「エヴァは女子供は殺さない」というものがあった。黒装束の少女はそれが正しかった事に安堵しながら、次の策を練る。

439 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 20:52 ID:1L4CvAyS

「さて、従者は片付いたが、問題は誰から仮契約の方法を聞き出すかでござるな」

 黒装束は頭を掻いて苦笑し、携帯の相手と話している。
「しまった、あの時ネギ坊主を捕まえて聞き出すべきでござった……」
「おいおい、本当に仮契約の仕方をゲットできるのかよ……。 ま、後でガキや刹那に聞けば済む気もするが」
「いや、事件が解決してからでは、それは逆に危ない。下手すれば拙者たちが危険因子と見なされかねない。できれば、状況が混乱しているうちに何とか―――」
「そこらへんは長瀬に任せるよ。ああ、そうだなー、≪魔法少女アイドルちう≫かぁ……なかなかいいな。ま、まあ、女子寮を守ったのは私たちだし、それぐらいは、なあ?」
「そうでござるよ。魔法の力を安全に、そして有効に利用できるのは―――」
「その危険性を知り、そして撃退した経験もあり、知識もある私たちだけだ。クラスの能天気な連中じゃ、こんな力は使いこなせんよ。そう、私たちだけ……」
 深い闇の中で、携帯電話の向こうの少女と黒装束の少女は声を殺して嗤う。
「とりあえずは観戦でござる。≪近衛の姫≫と≪闇の福音≫―――お互い全力を出し合って戦い、そして潰し合わせる」
「そして最後に勝つのは私たちだ。ふふ、ふふふ――――」


 黒装束の少女は立っていた木の枝を軽く蹴り、そのまま跳躍して闇に消えた………。



440 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 20:53 ID:1L4CvAyS
 今、麻帆良学園を襲っている現象は、近づく者や関わる者を否応無しに巻き込み、拡大する混迷の渦である。その忌々しい渦を生んだのは真祖と呼ばれる吸血鬼の少女だった。
 その渦巻きに最悪の形で巻き込まれたのが、吸血鬼に変質し戻れなくなった一人の少女であるならば、以下に挙げる二人はさながら渦巻きに呑まれず、台風でいう目の位置に立っていたと言えるだろう。

 一人は見習い剣士、名は桜咲刹那。
 古都京都に本拠地を持った掛値なしの戦闘集団「神鳴流」の一員。魔法剣士。気を込めた剣は一振りで岩を砕いて魔を切り裂き、跳べばワイヤーアクションのように壁を越えるその能力は、常人を遥かに凌駕している。
 肌は白く端整な顔、目は刃物のように鋭い。背は小さいが四肢は鍛えられ引き締まっている。肉体はまだ熟れてはいないものの、硝子のような強さと脆さを内包した美しさに、男たちは思わず足を止めるだろう。

 もう一人は何も知らされずに育てられた才能、名は近衛木乃香。
 祖父は関東魔法協会の長、父は関西呪術協会の長。日本魔法界の中核「近衛家」、その血に秘められた強大な魔力を受け継ぐ令嬢である。その才能は関東を滅ぼせるとさえ謳われており、千の呪文の男をも超える。
 おっとりとした性格の大和撫子であり、長い黒髪が美しい。幼さが残る美顔からこぼれる笑みはホットケーキのように場を和ませる不思議な雰囲気を放っており、これも一種の彼女の才能だろう。


 二人は最初、お互いに大切な友達だった。立場も、家も、身分も関係ない、純白のティッシュペーパーのような関係である。しかしすぐに友達は護衛に変わり、また友達はお嬢様に変わっていった。
 時間は溝に、絆は闇に、願いは影に、想いは力に、
 欲は暴力に、愛は鎖に、自責は罪に、夢は現実に、
 近衛の姫は吸血鬼に、護衛の剣士は生きる傀儡に、
 変わりゆく全てを受け入れながら進む二人に、そして今―――


441 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 20:54 ID:1L4CvAyS


 学園・屋上―――


「せっちゃん」
「このちゃん」
 周囲に満ちていた夜の闇は二人の会話に反応するようにざわめきだし、煽るような強い風をどこからともなく運んできた。木乃香の長い髪とオレンジの着物が、風に流されてゆらゆらと靡く。
 母のお腹から産まれたままの姿の刹那は、片手に刀を、片手に呪符の束を持ち、冷たいコンクリートの上をひたひたと歩いて木乃香の方に近づいていく。その肉体には薔薇のような香りが纏わり付いていた。
 風に乗って漂ってきたその香りをくんくん、と嗅ぎながら、木乃香は眉を少し寄せた。
(この香りは………魔法薬?)
 刹那はそのまま木乃香の前で、目を愛らしく細めて頬を朱に染めながら「えへへ」と無邪気に微笑んでみせた。木乃香もそれに応えるように華のような笑みを浮かべる。
 刹那は嬉しそうに刀を前に翳して、刃に刹那と木乃香を歪めて映しながらまた「えへへ」と嗤う。
 しかし、女子寮で誘拐しようと時と同様、今の状態の木乃香には刀は通用しない。
 木乃香の纏うオレンジの着物がざわりと、風に逆らうように波打って動いた。
 しかし刹那はそのまま刃を水平に構えて、
 一気に突き、そして抜けた。
「え……」
 木乃香の思考が数秒停止した。
 木乃香の前で、背中から刃を生やした刹那は反動で回転しながら、しかし微笑みながら刀を握る手に力を込めて、そのまま刀を引き抜いた。
「えへへ…ごほっ!」
 刹那の口から、そして身体から流れ出す液体がぽたぽたと屋上のコンクリに染みていく。べっとりと濡れた刀が刹那の手から滑り落ち、からん、と乾いた音を立てて転がっていった。


442 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 20:54 ID:1L4CvAyS
「あ、あ……?」
 よろよろと木乃香が刹那に近づいていく。まだ思考は正常に戻っていない。刹那はそんな木乃香に、やはりにっこりと微笑みながらどろりと口から液体を垂れ流し、そして倒れた。
「き…きゃああああああああああああ――――――! せっちゃん!」
 木乃香が刹那に慌てて駆け寄る。素人目から見ても、刹那の傷は決して浅くない。早く回復魔法をかけなくては命に関わりかねない。
 木乃香は倒れた刹那の傷に手を置き、回復魔法を唱え始める。溢れる液体で指や爪がべたべたになったが気にしてはいられない。
 しかし刹那は突然目を開くと、刀を握っていた手で木乃香の手を掴み、もう片方に握っていた呪符を全て発動させた状態で木乃香の身体の、胸の辺りに押し付けた。
「きゃっ!? せ、せっちゃん、何するん?」
 木乃香の障壁と刹那の呪符がバチバチと反発し火花を散らした。どうやら呪符は攻撃用の代物らしい。それと連動して刹那の身体にも負荷がかかるのか、傷が広がりプシャ! と液体が勢いよく吹いた。
「せ、せっちゃん………」
 木乃香を捕えた刹那は蒼白な顔で、「えへへ」と邪気のない笑みを浮かべた。


 エヴァのかけた暗示、それはつまり、そうする事だった。
 木乃香を確実に追い詰めるための、トラップ。


443 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 20:54 ID:1L4CvAyS
 せっちゃんの傷がこれ以上広がると、手遅れになる。
 罠だろうが関係ない。
 せっちゃんが一番大切なのだから。
 せっちゃんの護衛はもう要らないと言い切ったのだから、自分は強くなったと言い切ったのだから。
 ウチがせっちゃんを守ると言い切ったのだから―――


 木乃香は躊躇いなく自分を守っている障壁を解除した。オレンジの着物は消えてなくなり、木乃香は刹那と同じく産まれたままの姿になった。
「きゃあああ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙―――――――っ!」
 反発は収まり刹那の傷が広がるのは止まったが、呪符から流れ込んでくる電撃のようなものが、無防備になった木乃香の身体を貫いた。身体が砕け、精神が焼き切れるかと思うほどの激痛が木乃香を襲う。
 髪を振り乱して泣き叫ぶ木乃香の腕を、刹那はしっかりと掴んで離さない。呪符を押し付けられた木乃香の胸は乳房が真っ赤に腫れ上がり、刺激で乳首が立ってぷるぷる震えている。
「いやあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ―――、せ、せっちゃ……ん―――、い、今あ、治して…あ゙あ゛あ゛っあげる、がらぁ、も、も゛う少し、だけぇ、あ゛あ゛あ゛あ゛っ! あ゛あ゛あ゛あ゛っ! がんばってな、ぁ……」
 激痛で集中できず、回復呪文の光はネオンのように点滅して上手く治療できない。
「うん、ウチがんばるね。ゴホッ、ゴホッ、だからこのちゃんもがんばってな」
 刹那は蒼い顔で口を赤く染めながらにっこりと嗤って、そう答えた。
 ……………………………………
 ………………………

          *


444 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 20:54 ID:1L4CvAyS
「果たして木乃香さんはどの程度消耗しているでしょうか?」
「枯れ果ててくれていると楽だがな」
 濃厚な闇の気配が辺りに満ち満ち、その中からぬるりと人影が屋上に現れる。
 生きた蝙蝠で編まれた漆黒のマントを纏うブロンドの少女と、巨大な銃を装備したメイド服のロボット―――従者二人を退けて「主人」の元に辿り着いたエヴァンジェリンと茶々丸である。
 二人の前では一糸纏わぬ姿の刹那と木乃香が絡み合うように抱き合い、冷たいコンクリに転がっていた。周囲にはどす黒い染みが飛び散り、少し離れた場所には汚れた刀が転がっている。
「せ、っちゃん……」
 ゆらりと立ちあがった木乃香が、闇にその身体を預けるような無防備な姿でぽつりと呟いた。刹那は安らかな顔で眠っており、微かに上下する乳房が呼吸をしている事を示している。
「ごめんな…ひくっ、ひっく、こんな辛い目に遭わせてもうて……油断しとったなんて、言い訳にはならへんよね……ごめん。ほんまにごめん……」
 ぼろぼろと零れ落ちる涙は、広がったドス黒い染みに吸い込まれるように消えていく。木乃香の乳房は真っ赤に腫れあがり、腹部は刹那から溢れた液でべとべとに汚れ、憔悴した顔は目だけがぎらぎら輝いている。

「あんたらか、せっちゃんに、変なことをしたんは」

 木乃香の首がぎこちなく回り、エヴァと茶々丸を無表情で見た。長い髪がふわりと舞い上がる。


445 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 20:55 ID:1L4CvAyS
「ちっ、まだ力は有り余っているようだな―――茶々丸!」
「攻撃開始します」

「氷の精霊17頭。集い来たりて敵を切り裂け。『魔法の射手・連弾・氷の17矢』―――!」

 エヴァの周囲で、闇から生じた氷が魔力で矢へと変わっていく。同時に茶々丸がチャージしていた銃から閃光を発射した。荒れ狂う魔法の矢と眩い光線が木乃香のいる場所で炸裂する。
 轟音と共にぱらぱらと氷の欠片が飛び散り、闇に白い雪の結晶が舞い落ちる。
「因果なものだ。ジジイは産まれてくるお前を将来守るために、わざわざ学園の警備員を探していたというのに、今ここで、その警備員がお前と戦っているとはな」
 爆発の余韻の霧が朦朦と立ち込める、その向こうから伝わってくるのは圧倒的な敵意。
「この麻帆良という巨大な揺り篭を与えられた貴様が今、自らの手で麻帆良を壊そうとしている。色恋に狂うなとは言わんが、反抗期もほどほどにしておくことだ」
「……魔力値が急上昇しています」
 エヴァの横で、茶々丸が無感動に報告した。霧の向こうからびりびりと伝わってくるプレッシャーは、どうやら気のせいではないらしい。
「ふん、これが一週間前には私の力を借りなければ何もできなかった小娘の力か。これが近衛の血を受け継ぎ、その力あれば関東を討てると言われた近衛の姫か―――面白い!」
 ぼん! と霧を吹き飛ばし現れたのは、美しい、姫と呼んでなんら遜色ない綺麗な少女だった。オレンジの着物を身に纏い、バチバチと周囲に青い放電現象を起こしながら身体は数センチ浮かんでいる。
 星明りしかない闇の中でも、着物はまるで輝いているように鮮やかなオレンジ色だった。生地は生物のようにばたばたと波打ち、木乃香の身体を覆っている。


446 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 20:55 ID:1L4CvAyS
「マスター、あの着物は」
「ふむ、身に纏うタイプの『護鬼』だな。ループ結界といいパートナーといい、どうやらジジイの孫は西洋魔術と陰陽術の両方を使えるらしい」
「オンアクヴァイラウンキャシャラクマンヴァン!」
「―――っ!」
 漆黒の翼を広げたエヴァと、ジェット噴射の茶々丸が上空に舞い上がる。衝撃波が屋上の表面をバリバリと削り取りながら通過したのはその直後だった。設置されていた避雷針が折れて飛んでいく。
「ふっふっふ。近衛木乃香よ。桜咲刹那の唇は柔らかいな!」
 上空のエヴァの言葉に、木乃香がぴくりと反応する。
「マスター?」
 茶々丸を無視して、エヴァは木乃香に叫ぶ。
「ああ、弄んでやったよ。無理矢理薬を飲ませてからも、ずっと泣いてお前の名を呼んでいたよ。助けてー、このちゃん助けてー、ってな。まあ、指を挿れてやったら大人しくなったが、くくく」
 木乃香の髪が、ざわざわと動いて逆立ち始める。間違えても風のせいではないだろう。
「………」
「ついでに流れた血を少し舐めてみたが……血は不味かったな」
「せっちゃんの、血を……? ウチがずっと飲むのを我慢していたのに……?」
 呆然とする木乃香が、すやすやと眠る刹那を見る。
「マスター、なぜそのような嘘を」
「少し怒らせて魔法を乱発させる。もう少し消耗させないと今の状態では勝負になら―――」
 小声で会話するエヴァと茶々丸。その時、屋上は猛烈な光に包まれて闇を照らした。

「光の精霊173柱。集い来たりて敵を射て。『魔法の射手・連弾・173矢』―――」

「何―――っ!?」
 屋上から発射された魔法は、まるで光のシャワーが夜空に降り注いでいるような幻想的な光景を作りながら、麻帆良学園上空の闇を一気に塗り潰した。

447 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 20:55 ID:1L4CvAyS
「くっ、この化物めっ! くだらん呪文をどこで覚えた?」
「マスターの狙い通りですね。木乃香さんはキレたようです」
「ええい、うるさいっ! とにかくこちらは力を温存せねばならん。防ぐのは必要最低限に止めろっ!」
 確かにエヴァと茶々丸に直接飛んでくるのは数十矢で、残りの矢は魔力の無駄な消費として夜空に消えていく。ホーミング弾でなかったのが幸いである。しかし……。
「こ、これは……ちょっと待てっ!」
 光の矢の大群に混じって数メートルはある巨大な光の玉や、目に見えない衝撃波が連射される。
 最初は凌いでいたエヴァたちだったが、シューティングゲームのふざけたボスキャラのような猛攻を仕掛けてくる木乃香に、だんだん逃げまわるだけになってくる。
「たまらん! 茶々丸、少し反撃しろ!」
「了解!」
 怒涛の勢いで魔法を乱射する屋上の木乃香に、上空から氷の矢と閃光が降り注いだ。しかし、木乃香の着物は攻撃を完全に遮断しており、魔法を発射するペースは衰えない。
 上昇する魔法と、降り注ぐ魔法の軌跡が空間で交差し爆発する。衝撃が伝わり学園が震え、窓ガラスが粉々に割れて滝のように学園校舎の壁を流れ落ちた。
 夜空をまるで昼のように明るくしながら、遠距離による魔法の撃ち合いが続く。
「マスター、このままではこちらが押し切られます!」
「ふうむ……いや、そんなことはないぞ。茶々丸よ、もう少し凌げ。攻めるのはそれからだ」
 エヴァが下降し、そのまま学園校舎の中に飛び込み見えなくなる。屋上から校舎の内部を狙うのは難しい。木乃香が魔法を発射しながら軽く舌打ちをした。

          *

「ふーむ、これは使えるでござるかな……?」

448 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 20:55 ID:1L4CvAyS
 「♪」を逆にしたようなマイクを片手に、黒装束の少女は首を傾げた。
 壊滅した占い研の部室には「うーん、うーん」と呻いている円と美砂、そしてその兵隊が転がっている。
「おい、どうだ? 私でも使えそうか? 柿崎のマイク!」
「うーむ、とりあえず試しに拙者が一曲披露したいところでござるが、聞かせる相手がいないでござる……」
「まあ保留だな」
 携帯で会話しながら、黒装束の少女は部屋を調べている。
「んー。隣の部屋は何でござるかな?」
 黒装束の少女はそのまま隣の部屋に移動する。その部屋はハルナが使っていたはずだった。
「………」
 黒装束の少女は警戒しながら歩を進める。部屋には沢山の本が積まれていた。奥にある机には、漫画家が使うトレース台やカッター、インクやトーンが散乱している。
 積まれた本は最新兵器の図鑑、刃物の写真集、式神術の教本、魔法アイテムの書物など。どうやらハルナがアーティファクトを使う時の資料にしたものらしい。そして、

「理科の教科書? こんなものがどうしてここに―――」

 それは少女たちが使っていた中学理科の教科書だった。
 その時、外がまるで昼のように明るくなり、爆発音が何回も響いてきた。校舎がガタガタと揺れて窓ガラスが割れて落ちていく。
「どうやら始まったようでござるが……いや、すごい」
 窓枠に残ったガラスを丁寧に取り除いてから、黒装束は窓から顔を出した。
「どれぐらいすごいんだ?」
「音と光のショーを見ているようでござる」
「遊園地かよ」
「ははは」
 屋上から発射される光の奔流に、黒装束の少女はしばし見惚れる。

449 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 20:56 ID:1L4CvAyS
 と、その時。
「何っ!?」
 黒装束の少女は慌てて窓から身を退き、そのまま隠れた。上空にいたはずのエヴァが飛んできて、黒装束の少女が覗いていた窓を通り過ぎて少し離れた部屋に突っ込んだ。
「こ、校舎の中に来られると、拙者も危ないでござるよ――」
 部屋から出ようとする黒装束の少女、しかし部屋の出口付近で足を止め、そのまま横の壁に張り付く。
「さあ、勝負はここからだぞ小娘ぇ―――っ!」
 黒装束の少女が飛び出そうとした廊下を、漆黒の翼を展開したエヴァが猛スピードで飛んでいった。
「ふうう、危ない危ない。いやいや、スリル満点でござるな。遊園地の5倍はすごい」
「遊園地の5倍? 客も5倍で行列も5倍か」
「並んでまでは……どうでござろう?」
 黒装束の少女は苦笑しながら、窓から顔を出して観戦を続けた。
「むう? 校舎側からの攻撃が止んだようでござるな―――」

          *

「はあ、はあ、はあ、はあ、はあ、はあ……」
 刹那を後ろに寝かせ、木乃香は大量の汗をかいて屋上にへたり込み、荒い呼気を何とか整えようとしていた。少なくとも魔法を乱射していた元気はなくなっている。
 その前にズシャ、と重量を感じさせる音を立てて茶々丸が着陸した。その手に構えた巨大な銃はエネルギーをチャージし、一直線に狙いを木乃香に定めている。

450 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 20:56 ID:1L4CvAyS
「貴女は魔力を無駄にし過ぎです。いくら膨大な魔力を有していても、あんな使い方をすれば枯渇するのは当然。マスターの睨んだ通り、戦闘に関しては素人のようで」
「そっちこそ、何でわざわざ降りてきたん? 実はエネルギー切れでもう飛んでる余裕もあらへんとか? だいぶエヴァちゃんを庇っとったみたいやし」
 刹那と茶々丸の間に身体を入れるようにして、涼しい顔で木乃香は立ち上がった。汗はかいているものの、その表情には焦りや疲れは全く見られない。
「もう魔力も少ないのにその表情。ご立派ですね。自分が弱っている事を敵に教えないのは基本だと、マスターも申していました」
「表情では、茶々丸さんには勝てへんえ。ほら、ウチを攻撃したら?」
「そちらこそ、自慢の魔力を使用したらどうですか?」
 お互いに睨み合うが、どちらも手は出さない。
「もしかして、もう残り一発分のエネルギーしかないんかな? 外したらお終いとか」
 にっこりと笑みを見せる木乃香に、茶々丸は無機質な声で言う。
「そちらこそ、さっさと魔法を使ったらどうですか? 使える状態なら、の話ですが」
「………」
「………」

 ―――桜咲刹那を狙うぞ。防げ。

「―――!」
「マスター!」
 どこからともなく響いてきたエヴァの声に、屋上の停滞した空気が弾け飛んだ。

451 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 20:57 ID:1L4CvAyS

「来たれ氷精、闇の精。闇に従え吹けよ常夜の氷雪。『闇の吹雪』―――!」


「くっ! せっちゃんを狙わんとウチを狙え―――っ!」
 刹那の元に木乃香が駆け寄っていく。同時に屋上を突き破って、木乃香を追いかけるように闇のエネルギーの奔流が渦を巻いて殺到した。下の階からエヴァが攻撃魔法を放ったのである。
 刹那は穏やかな顔で眠ったままだった。木乃香は背中に迫る魔法の力を感じながら、刹那の身体を庇うように抱き締めて着物で覆う。そしてこれからくる苦痛に耐えようと、ぎゅっと目を閉じた。
「せっちゃんは、ウチが守る―――」
 攻撃魔法が木乃香の背中に押し寄せ、そのまま呑み込んだ。鈍い爆発音が響いて屋上の3分の1が吹き飛び、宙に二人の少女が投げ出される。
 刹那は無傷で眠ったまま、まるで葉が風で舞っているように穏やかに虚空に投げ出された。木乃香は裂けてボロ雑巾のようになった着物を纏いながら、刹那を目で追い続けていた。
「せ、っちゃ、ん」
 木乃香が明らかに重力以外の外力を使って空中を移動し、そのまま刹那をがっしりと抱き締めた。そして屋上にいたエヴァと茶々丸に向けて何かを叫ぶ。
「――――――――――――――――っ!」
 それは呪文だった。既に存在しているものなのか、木乃香が無意識に創ったのかは分からない。
 判別不能な叫び声の呪文は、恐るべき量のエネルギーを集めて屋上に収束し大爆発を起こした。二人が抱き合って地面に落下していった後に、校舎の屋上と下の二階分を抉るように吹き飛ばしてエヴァと茶々丸を巻き込んだ。

452 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 20:57 ID:1L4CvAyS
 地面が接近する前に木乃香と刹那は光に包まれ、そのまま重力に逆らって速度はスローになっていく。屋上から地上に、ふわりと優雅に着地した。
「せっちゃん、無事で、よかった……」
 魔法の光が消えて現れた木乃香はボロボロだった。オレンジの着物は真っ黒に焦げて裂けており、魔法の直撃を食らった背中の着物は完全に焼失して、その肌に真っ赤な火傷が広がっていた。
 魔法を乱発し、また敵の魔法を連続してガードしていたが障壁は少し破られ、指の爪は全て割れている。全身がだるく、初めての本格戦闘による精神的疲労も激しい。
「ウチが、せっちゃんを、守る……から……」
 木乃香は傷ついた身体をそっと刹那に近づけ、ゆっくりとキスをする。まるで弱った鳥が羽を休めているような、穏やかな光景がそこにあった。

「まだ、終りだと思うな……」

「ま、まさか、そんな……エヴァちゃん?」
 驚愕の顔で振り返る木乃香の目に飛び込んできたのは、全裸でふらふらと迫って来るエヴァだった。その鬼のような表情に木乃香は戦慄する。
「機能停止、機能停止、復旧まで1200秒」という警報を鳴らして倒れている茶々丸が近くにいた。どうやらエヴァは茶々丸に庇われて助かり、茶々丸は機能停止に追い込まれたらしい。
「せっちゃん、ウチに、力を……」
 木乃香が震えながら立ちあがり、ふらふら向ってくるエヴァに血塗れの手を向ける。エヴァもエヴァで両手を構え、それを迎え撃とうとする。

453 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 20:57 ID:1L4CvAyS
 ―――!

 両者が渾身の力で呪文を放ち、両者はそのまま相手の呪文で吹き飛ばされた。エヴァは地面を転がっていき、倒れた木乃香の着物は限界を超えて呪符に戻っていった。
「う、ぐううう……後、少しというところで………」
 苦しそうに呻き声を上げるエヴァの前で、木乃香がずりずりと地面を這っていく。その先には着物の懐から落ちた仮契約カードの束が転がっていた。
「させるか……うぅ……」
 エヴァは攻撃魔法を使う魔力が残っておらず、木乃香が仮契約カードに近づくのを阻止できない。
 と、その時、
 パチパチパチと拍手しながら、
 その黒装束は現れた。

「いやいや、両者いい勝負でござった」

 携帯を肩と首に挟んで穏やかな微笑を浮かべながら、長瀬楓は闇の中から溶け出すように現れた。その細い目に木乃香とエヴァを交互に映し、にやりと口を三日月に歪める。
「楓ちゃん………? まさか、記憶が残ってたん……?」
「長瀬、楓か……いいところに来た! 早く! そいつにトドメをさせ!」
 仮契約カードに手を伸ばした木乃香がそのまま固まった。エヴァが期待の声を上げる。
「まあ、慌てない慌てない」
「……?」

454 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 20:58 ID:1L4CvAyS
 何を言っているのだ? とエヴァの表情が語っていた。楓はしかし視線を木乃香に移し、にっこりと人を安心させるような笑みを浮かべて言った。

「仮契約の方法を教えるでござる。そうすれば、この場から逃がしてさしあげよう―――近衛の姫君」

 十字架の巨大な刃を翳しながら、楓は木乃香を見下ろして目を細めた。
「つーか、聞き出した後で近衛もエヴァも両方ぶちのめせよ」
 楓にしか聞こえない大きさで携帯から女声が語りかけ、「あいあい」と楓は肯きながら表情は変えない。
「な、何を言っているのだ貴様! そいつは危険だ! 早くトドメを!」
「拙者の仲間が近くにいて、お主を逃がそうと待っているでござるよ」
「……ほ、ほんま?」
 木乃香の問いかけに、首肯する楓。
「…………これ、知ってる? 仮契約カードって言うんやけど?」
 ごく自然な、まるで楓に説明するためのように、木乃香はカードの束を拾う。そして呪文を唱え始めた。知らない者から見れば、仮契約の説明を始めようとしているようにしか、見えない。
「愚か者がぁ! 仮契約カードは従者を―――」

 呼び寄せる事ができる―――、というエヴァの言葉は、最後まで語られなかった。

「………!?」
 楓の前でハルナ・のどか・桜子のカードが鈍く発光し、にやりと嗤う木乃香の顔を照らし出した……。

455 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 20:59 ID:1L4CvAyS
 千本鳥居の奥、満開の桜の海に聳える関西呪術協会総本山―――
 木乃香の祖父や父、何十人もの巫女が並ぶ大広間に一人の女が運ばれてきた。手足を魔法で
拘束され、無地の地味な着物を纏っている。彼女は麻帆良学園女子寮で捕えられた反乱分子で
ある。対策会議で関西に来ていた学園長は、この女の尋問に同席する事になったのだ。
「天ヶ崎千草の意識が戻りました―――」
 近衛家の重鎮たちの前に女を運んできた巫女たちが、礼をして離れていく。
「ふむ、では聞かせてもらおうかのぉ。あの夜、女子寮で何が起こったのか」
 殺気を含んだ老人の声が響く。しかし千草はそれに反応を示さず、ぽつりと呟いた。
「このかお嬢様はお元気なんか?」
「それが分かっていたら、苦労はせぬ」
 老人の答えに、千草の顔が蒼白に転じた。
「に、逃がしたんか!? あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ! な、何てことや!」
 錯乱した千草を、巫女たちが取り押さえる。
「お嬢様はウチらに報復に来る! 絶対に来る! あああ、頼む! 頼むわ! 早く、早くお嬢様
を捕まえてえな! 関西でも関東でもええから! 手に負えんようになる前に!」
 口から泡を吹きながら、泣きながら千草は叫び続ける。
「手も足も出えへんだ! 侵入した四人組やって上位の術者やったのに! 戦力を全部集めて攻
めたのに! ああ、あああああああ、お嬢様を始末しようとしたウチを、絶対お嬢様は殺しに来る
わ! お、お願いや、お願いやから、ウチを守ってええええええええ―――ウキッ? ウッキー!」
「もう少し時間を置いて、尋問を再開しましょう」
 木乃香の父が冷静に言いながら、錯乱する千草を魔法で猿に変えた。 

456 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 20:59 ID:1L4CvAyS
 カードで従者を呼んで、木乃香は命じる。

 滅せよ。処刑せよ。沈黙させよ。排除せよ。滅殺せよ。全殺せよ。
 エヴァンジェリン、茶々丸、長瀬楓、近衛家、関東魔法協会。
 敵を滅ぼせ。討て。焼け。崩せ。壊せ。切れ。解け。
 そして、せっちゃんと二人きりの楽園を、天国を、夢を、世界を―――
 主人の最後の命令を、
 実行せよ………………

 …………………………………………
 ……………………………………………………
 ………………………………………………………………………
 ………………………………………………………………………………

 どん! と立ち昇った三本の光の柱から現れたのは三人の従者たちだった。椎名桜子、早乙女
ハルナ、宮崎のどかは危険な光を眼に宿らせながら堂々と、そして異様な殺気を放ちながら学園
に降り立つ。桜子は手に巨大なピコピコハンマ、のどかは手に一冊の本、ハルナは手にスケッチ
ブックを持っている。翼をリュックサックのように背負ったハルナが、素早く木乃香を救出した。
「ちっ、しくじったか―――」
 苦無を構えながらじりじりと距離を広げていく楓、流石の楓といえども三人の従者と同時に戦う
気にはなれない。魔力で強化されている上に強力なアーティファクトを持った強敵である。
 逃げる楓を見てハルナがにっこりと嗤い、スケッチブックから一冊の本を創りのどかに与えた。黒
いブックカバーで覆われた薄い本、手帳サイズの大きさでありページには何も書かれていない。

457 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 21:00 ID:1L4CvAyS
「ふふふ、のどか、せっかくだから楓ちゃんで、この本の威力を試してみなよ」
「うん、分かった―――」
 黒い本を片手にのどかが嗤いながらページを開いた。
「長瀬、楓」
 名前を呼ぶと白紙のページに楓の名が記され、同時にページの左上から横に無数の文字が浮
かび上がった。それは瞬く間に一行、二行、三行と改行していき、あっと言う間にそのページを覆
い尽くしてしまう。そこに書かれているのは紛れもなく楓の脳内情報だった。脳内情報がランダム
に読み込まれて日本語に変換され、その黒い本に綴られているのだ。
 楓の背に寒気が走る。まるで首筋に刃を突き付けられている感触を何百倍も濃縮した黒い恐怖
が、楓の心を絶対零度にまで冷やしてしまう。レベルの差ではなく次元の差を感じた。のどかの本
から放たれる禍禍しい殺気が、否応無しに自分を壊すものだということを、楓は本能的に悟ってし
まった。
「う、うわあああああああああああああああ――――っ!」
 楓が苦無を構えてのどかに向けて加速する。途中で16人に分身し、16人が16人とも異なる武
器を装備していた。鎖鎌、苦無、爆薬、手裏剣、戦輪、刀などを構え、四方八方からのどかを包囲
し、そのまま逃げ場がないように一斉に攻撃を仕掛ける。しかし攻撃されるのどかは澄ました顔で
筆ペンを取り出し、攻撃する楓の顔は逆に恐怖に歪んでいる。
 苦無が、鎖鎌が、手裏剣が、バチバチと音を立てて呪符に弾かれた。のどかの手の動きは止ま
らない。使うつもりはなかった爆薬を躊躇わずに使用し、ぼん! と間抜けな音が響いた。しかし
障壁に守られたのどかは無傷で煙の中から現れ、筆ペンでゆっくりと、「長瀬楓」という名前を塗り
潰していく。

458 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 21:00 ID:1L4CvAyS
 その、筆で名前を塗り潰す行為が自分に致命的な影響をもたらすであろう事が、楓には直感で分
かってしまった。筆は容赦無く、楓の名前を全て塗り潰す。
「あ゛―――――――」
 名前が塗り潰された瞬間、読み込まれた楓の個人情報は墨のワイパーをかけたように真っ黒に
塗り潰され、同時に楓の目の前も闇黒に包まれた。分身が消える。かくん、と楓の身体が右に傾
き、持っていた武器が手から滑り落ちた。光の失った目はのどかを映す事はなく、のどかの前にど
さりと崩れ落ちた。


「試作アイテム『ブラックリスト』―――ふふん、なかなかのモノだね」
 のどかの黒い本をアーティファクトで創ったハルナが、まるで自分の子供を誇る母親のような笑
みを浮かべて、誇らしげにそう言った。
 のどかの黒い本、美砂や円には恐怖と畏敬の念を込められて「アレ」とだけ呼ばれるその物体
は、ハルナが非戦闘員ののどかの為に創り与えた広域攻撃兵器だった。
 モデルにしたのはのどかのアーティファクト「魔法の日記帳」である。有効射程範囲は本から20
0メートル。その範囲内にいる対象の名前を唱えれば、ブラックリストは自動的に対象の脳内情報
を読み込み保存する。そこで対象の名前を墨で塗り潰すと、対象の意識は墨に染まったように暗
転して停止し、そのままのどかの命令を聞く傀儡に成り果てる。解除するには、ブラックリストから
該当するページを破り取らなければならない。
 即ち、攻めてくる敵の名前が分かっていれば、名前を言う→塗り潰すという数秒の動作によって
その敵を精神崩壊させて奴隷にできる。のどかの持った本はそういうモノなのである。

459 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 21:00 ID:1L4CvAyS
「さてと、私も好きなようにやらせてもらおうかな」
 ハルナはにやりと嗤いながらスケッチブックを開いた。スケッチブックが光り輝き、其処に描かれ
た絵が実体化していく。集中線の効果で接近してくる雰囲気を演出し、トーンで炎の演出をしたそ
の物体が出現すると辺りには熱風が吹き始め、夜空は燃えて明るくなった。


 不吉な、燃える夜空を眺めていたエヴァはハルナが具現化したモノの正体に気付いた。
「逃げるぞ茶々丸! はっ、茶々丸……」
 茶々丸はダメージが大きく、動けるようになるにはまだ数分を要したはずだった。しかし、恐らく
名前を利用する魔術にやられた楓はさておき、茶々丸は復活できる。
(まだ、パートナーを見捨てて逃げるほどには落魄れてはいないか―――)
 魔力は限りなくゼロに近い。しかしエヴァは精神を集中し力を振り絞る。
(百戦錬磨の吸血鬼、命まで燃やせば不可能ではないはず!) 
 エヴァの心の叫びに応えるように、漆黒の翼がばさりとを広がった。鬼気迫る顔でエヴァが逃げ
る準備を整える。そのまま茶々丸の方を向いた……そこには椎名桜子がいた。桜子は巨大なピコ
ピコハンマを振り上げて倒れた茶々丸を狙いながら、エヴァの方を見てにやりと嗤う。思考が沸騰
した。エヴァは翼を動かして全力で茶々丸の元に向かった。
「止めろおおおおおお―――――っ!」
 桜子のアーティファクト「破魔の小槌」は無生物を粉々に砕く能力を持っている。茶々丸との相性
は最悪だった。そのアーティファクトを持った手が、ゆっくりと振り下ろされていく。

460 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 21:00 ID:1L4CvAyS
 エヴァの目から熱い液体が溢れ出した。もう間に合わない。それは確実だ。逃げた方がいい。し
かしエヴァは止まらず、いや、止まれず、僅かな希望をガラにもなく信じて猛スピードで飛んだ。
「はい、残念でしたぁ〜」
 適度に力を抜いたクイズ番組の司会者のような声を出して、桜子がピコピコハンマを茶々丸に振
り降ろした。変化は一瞬だった。アーティファクトに触れた茶々丸がびくんと動き、そのままボディ
が風船のように弾けた。腕と脚と頭部が飛んでそれらも粉々になっていく。とぱらぱらぱら、と茶々
丸が散っていく。いつも猫に餌をやっていた茶々丸が、美味い茶をいれてくれた茶々丸が、自分に
尽くしてくれた茶々丸が、
「きゃはははははははははははははははははははははははははははははは―――っ!」
 桜子の高笑いが響き渡る中、風に飛ばされて消えていく。影も形もなく、まるで存在すらしていな
かったかのように、そこらの砂に混じって四散していった。
「貴様あああああ―――っ!」
 向こうでは近衛木乃香が美砂の兵隊たちの血を吸っていた。吸血鬼にとって血液は貴重かつ重
要なエネルギである。見た感じでは楓は再起不能、茶々丸は散った。近衛木乃香は復活する。あ
そこまで追い詰めた近衛の姫が復活する。この戦いは、全て無意味になる―――
 その時、ぶわぁ! と猛烈な熱気がエヴァの頬を撫ぜた。ハルナに具現化されて夜空を燃やす
その物体が、引き寄せられるように一直線にエヴァに突っ込んできたのだ。
 それは、燃え盛る巨大な隕石だった。
 エヴァはその隕石に見覚えがあった。それはエヴァたちが使っていた中学理科の教科書の、天
体分野の資料としてカラーで載っている小惑星のイラストである。教科書の改訂が行われてもそ
のイラストは削除されなかったのだ。その太陽や地球や月のオマケである紙上の小惑星を、ハル
ナはスケッチブックに書き写し、武器として使用してきたのだ。

461 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 21:01 ID:1L4CvAyS
「作品名―――『メテオ(大)』」
 ハルナの声が遠くから聞こえたような気がした。隕石の熱気がエヴァを包む。逃げられない。防
げない。どうしようもない。障壁も発生させられない今のエヴァに、何ができるだろうか。
「………ふふっ。首を洗って待っていろ! サウザンドマスタ――――――っ!」
 赤い炎が目の前に広がり、エヴァの意識はそのまま消えた。


 エヴァを呑み込んだ隕石の軌跡はそのまま学園の地表を抉りながら進み、麻帆良学園中央駅
の建物を吸い込まれていった。前で屯していたタクシーがばらばらと吹き飛び、ヨーロッパ調の駅
の外壁をぶち破り抜けていく。ワンテンポ遅れて駅は内側に沈むように崩壊し、周辺ではタクシー
が次々と火に包まれた。
 そして、インパクト。
 隕石の運動エネルギが爆発となって吹き荒れる。学園都市の建物がドミノのように薙ぎ倒され、
神や悪魔を思わせる巨大な火柱が起こった。爆炎、噴煙。音は衝撃波となって波状に広がり窓ガ
ラスを破壊し、巨人がジャンプをしたような振動がびりびりと学園都市全体を揺らした。
 直撃した位置にはクレーターができ、周辺は何も残っていない。
 学園都市の一部が、ハルナの攻撃で完全に消滅していた。
「折角だからさあ、このまま始めようか。関東魔法協会との戦争―――」
 顔を赤い炎で照らしながら、ハルナがにっこりとのどかと桜子に嗤いかけた。そして木乃香を、主
人たる近衛の姫を振り返る。美砂の兵隊の血を吸っていた木乃香は、回復魔法で美砂と円を復
活させていた。木乃香は無表情で肯くと、ゆっくりと呪文を唱え始めた。

462 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 21:01 ID:1L4CvAyS
「風の精霊よ。我が従者の歌声を遠方へと運べ―――」
 美砂が「傾国のマイク」で歌い始める。人を狂わす歌声が風に乗って、学園周辺の街に広がって
いく。燃える都市を背景にぞろぞろと亡者のように集まり始める群衆は、全員が意識を美砂に操ら
れていた。その数は優に1000人はいる。
「さーて、みんな。これから関東魔法協会って連中が私たちを捕まえようとわんさか押し寄せてくる
からね。ちょっとだけ協力してもらうよ」
 ハルナがスケッチブックからコピーと具現化を繰り返す。集まった学園都市の市民―――美砂
の奴隷たちにバラバラと、アーティファクトで創った銃器や魔法アイテムが雨のように降り注ぐ。
「あ、あんたはこっちに来て」
 学園で起こった戦闘に気付いたのか、操られた群衆の中に近衛家の黒服がいた。彼はそのまま
ふらふらと美砂たちの元まで歩いてきた。
「関東魔法協会の、主力の魔法使いの名前を教えてください―――」
 のどかの問いかけに黒服はぺらぺらと数十人の名前を唱え始め、円がそれをメモる。
「コピーできるだけコピーして、みんなに配って。それと、楓ちゃんにも働いてもらうからね」
 メモを渡された―――のどかの傀儡になった楓が肯いて、闇に消えた。
「よっしゃ―――っ! これで敵の魔法使い対策も万全! はっはっは―――」
 ハルナが精神崩壊の本『ブラックリスト』を量産し、ばらばらと雨のように群衆に与える。敵の名
前が書かれたリストも配られた。数秒で敵を精神崩壊させる兵器を持った軍勢から、美砂の歌に
合わせて歓声、いや、鬨の声が上がる。

463 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 21:01 ID:1L4CvAyS
「さあ、お祭りの開始だよ―――!」
 人を狂わす歌が広がる。兵隊が増える。武器が撒かれる。黒い本を持った一団は、壊れたテー
プレコーダのようにリストの名前を繰り返し唱えながら前進する。群衆が武器を構える。銃器に剣
に魔法アイテム。ピコピコハンマを持った桜子と、釘バットを持った円が群衆を率いる。歌う美砂。
木乃香の傍に付くのどか。
「もうちょっと味方を補強しとこうか」
 ハルナが次に創り出したのは、巨大な蜘蛛だった。式神術の教本に載っていた「鬼蜘蛛」と呼ば
れる式神である。固いボディに8つの黒い目、強力な牙に脚力、糸を吐く能力を持った怪物。何十
も量産されたその怪物の軍勢は、群衆の軍勢を守るように先行して敵を探す。
「みょおおぉぉぉぉ―――――」
 蜘蛛たちに混じって、潰れた大福のようなフォルムに白魔術師のローブを纏った、アニメキャラ
のようなデザインの木乃香が現れる。手にはトンカチ、数メートルの巨躯、常に木乃香の身を守る
オレンジ色の着物の姿をした「護鬼」と対をなす、接近戦用の「善鬼」である。
 道路の向こうから黒い車が数台やってきた。近衛家の車である。流石に騒ぎに気付いて急いで
やって来たらしいが、1000を超える武装した奴隷と式神の軍勢に立ち向かうにはあまりに儚い。
「せっちゃん、ちょっと予定より早いけれど、いよいよ始めるえ」
 軍勢を坂の上から見下ろす木乃香が、刹那にそっと声をかけた。
「うん。始めよう。このちゃん」
 無邪気な笑みを浮かべる刹那。
「『メテオ(小)』」
 ハルナが放った隕石がミサイルのように車群に向けて飛び、大爆発と共に車を舞い上げる。
 学園都市を火の海に変え、住民を兵隊に変え、近衛の姫と関東魔法協会の戦争が始まる。

464 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 21:02 ID:1L4CvAyS
 その時、眩い光が群衆の前で炸裂した。あまりの眩しさに桜子と円が悲鳴を上げて後退する。群
衆も突然前が見えなくなった事に戸惑いながらも、じりじりと前線を下げ始めた。代わりに木乃香
の善鬼や鬼蜘蛛の大群が光源に押し寄せていく。しかし式神たちは、光に近づくと蒸発するように
消えてしまった。
 周囲に満ち満ちた闇を裂くように、その人物は軍勢の前に現れた。
「ああ………そ、そんな………」
 木乃香がその人物を見て驚愕する。自分の目で見ている情報を信じられない、訳が分からない
といった表情である。木乃香の横の刹那が、怯えた顔で木乃香のオレンジの着物を掴んだ。
「せ、せっちゃんが、二人……?」
 軍勢の前に現れたもう一人の桜咲刹那は、木乃香を見てにっこりと微笑んだ。しかし軍勢が押し
寄せてくるのを見て表情を一変させ、鋭い目で敵を威圧しながら持っていた剣を前に構える。
 ぴしぴしぴし、と音が聞こえてくる。
 周囲に満ちた夜が、炎上する麻帆良学園都市の光景が、
 まるでガラスのようにヒビが入り、
 地平線からガラガラと崩壊していく。
 闇の世界が、壊れていく。
 偽物の世界が、消えていく。
「だ、誰だお前ぇ! こ、このちゃん騙されちゃダメ、あれは偽物だよおお!」
 木乃香の横の刹那が木乃香の袖を掴んで、必死の顔で喚き散らした。
「私が誰か? 古来より人を救い魔を討つ秘剣―――神鳴流見習い、桜咲刹那!」
 突然現れた刹那は剣先を、軍勢の中の木乃香ともう一人の刹那に向けて、よく通る声で言った。
「遅れて申し訳ありません、このかお嬢様。今、闇からお救いいたします!」

465 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 21:02 ID:1L4CvAyS

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「夢の妖精、女王メイヴよ、扉を開き夢へといざなえ―――」


 エヴァとの戦闘でボロボロになった木乃香と全裸の刹那が手を繋ぎ、額に同じ呪符を貼り眠ってい
る。木乃香の横ではエヴァと楓がいっしょに、魔法で木乃香の夢を覗いていた。
「―――ぐ、ダメだ。魔力の限界だ」
 エヴァと楓は木乃香の夢から帰ってくる。それは時間にして一秒にも満たない旅だったが、木乃香
が紡いだ麻帆良の未来の一つは膨大なイメージとなってエヴァや楓の脳に焼き付いた。
「やれやれ、これは厄介なことになったぞ―――ジジイの孫め。くだらん命令を残しよって」
 木乃香の近くに落ちていたハルナの仮契約カードを睨みながら、ぽつりとエヴァが呟いた。
「近衛の姫が覚醒し本気になれば、関東は滅ぶ―――関西のバカどもの妄想だと思っていたが……」
 楓は微動だにせず、後悔に彩られた瞳を虚空にさ迷わせている。


 ここで何が起こったのか?
 それは―――


466 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 21:03 ID:1L4CvAyS
 ―――その時、何が起こったのか?


 まずは木乃香が皆を出し抜いた。桜子・のどか・ハルナの仮契約カードを手に、木乃香は楓の隙
を付いて早口で呪文を唱え始めた。
 カードで従者を呼んで、木乃香は命じる。
 それに対し、最初に行動を起こしたのは、木乃香の後ろで横たわっていた刹那だった。
「―――!」
 それがエヴァの魔法薬の効果か、自らの身体を刀で貫いたショックか、それとも木乃香の回復
魔法が効き過ぎたのか、その結果に正確に答えられる者はいなかった。ただ事実として、その時
の刹那は正気に戻っており、そして間違いなく木乃香を止めるために行動していた。
 刹那はよろめきながらも、残り少ない力で木乃香の背中に体当たりをする。
「―――うぐっ!」
 背中に鈍い衝撃を感じて、木乃香の身体が大きく傾いた。その反動で、桜子とのどかのカードが
滑り落ちるように木乃香の指から離れていく。木乃香は呼吸ができないのか、口を金魚のように
パクパクしながら崩れ落ちていった。誰に攻撃されたかは分からなかっただろう。しかし、その目
はしっかりと、手元に残った最後のカードを捉えていた。
「そのカードを奪え―――っ!」
 次に叫んだのはエヴァだった。エヴァは情報を収集していた茶々丸から、残る3人の従者の能力
は大体ではあるが報告を受けている。実際に戦ってみないと強いか弱いかは分からないが、少な
くとも今のエヴァでは従者3人を相手に戦う力はない。魔法が完成する前に木乃香の妨害をする
のは正しい判断だったと言える。


467 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 21:03 ID:1L4CvAyS
「―――っ!」
 エヴァの声に反応したのは楓だった。楓は直感的に、状況が危機的であることが分かったのだろ
う。苦無を取り出して木乃香に踏み込み、持っていたハルナのカードを真っ二つに切り捨てた。
 刹那が、エヴァが、楓が、それで終ったと思った。
「う、ふ、ふふっ―――」
 しかし木乃香は愉快そうに嗤っていた。それは敵を嘲笑い、勝利を確信した歪んだものである。
同時に、木乃香の身体から魔力が噴き出したのを、エヴァと刹那は感じていた。木乃香は魔法使
いとして覚醒して約一週間、天賦の才能を完全に使いこなすには時間も経験も不足している。
その木乃香の余力は、限界に達した木乃香が絞り出した、まだ使いこなせていなかった才能の一
部だろう。
 そして木乃香は、半分になったハルナのカードに、その全ての力を注ぎ込んだ。
 エヴァが舌打ちをして木乃香に近づく。刹那が悲鳴に近い声を上げて木乃香に迫る。楓は訳が
分からないままその場に立ち尽くしていた。
 三人の目の前で、半分になったハルナのカードが爆発するような光を放った。
 従者の召喚は失敗した。
 しかし、命令は送り込まれた。


 滅せよ。処刑せよ。沈黙させよ。排除せよ。滅殺せよ。全殺せよ。
 エヴァンジェリン、茶々丸、長瀬楓、近衛家、関東魔法協会。
 敵を滅ぼせ。討て。焼け。崩せ。壊せ。切れ。解け。
 そして、せっちゃんと二人きりの楽園を、天国を、夢を、世界を―――
 主人の最後の命令を、
 実行せよ………………



468 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 21:03 ID:1L4CvAyS
 破滅をもたらす命令と渾身の力を遠方のハルナに送り、木乃香は満面の笑みで力尽きて倒れ
た。エヴァと刹那は背筋に寒いものを感じて立ち尽くす。サウザンドマスターを超える魔力を持っ
た近衛の姫は、呪いに近い執念で、麻帆良を壊滅へ導いていくレールを敷いたのである。
「…………! どうして! どうして!」
 刹那がよろめきながら涙目で、楓に掴みかかった。刹那の顔には、木乃香の凶行を止められな
かった自責の念と、楓の行動を非難する感情、そして何よりも、傀儡と化してしまった自分への情
けなさが入り乱れていおり、やり場のない怒りを楓にぶつけているようにも見えた。
「せ、拙者は、ただ……うぐうっ!」
 楓の言い分を無視して、刹那は大声で呪文を唱え始めた。陰陽術系の呪文である。楓の胸に手
を置いて、一気に力を送り込んで楓を吹き飛ばした。
「………身体能力を封じる呪いだ。一時間ほどで解ける」尻餅を付いた楓を、鬼のような形相で見
下ろして刹那は言った。「貴女にはしばらく、ここで「闇の福音」を見張っていてもらう」
 刹那は次にエヴァの方を向いて、楓を指差しながら言った。
「エヴァンジェリンさん……いや、闇の福音。貴女にはしばらく、ここで、この危険人物である甲賀
の忍びを見張っていてもらう。嫌と言うなら斬り捨てる」
 エヴァと楓は無言だったが、刹那はそれを肯定と解釈した。
「今から私はお嬢様の心の中に入り、その中に巣食った魔から直接お嬢様を助け出します」
 木乃香浄化の準備をする刹那、体力はまだ残っているようである。
「おい、近衛木乃香の従者はどう始末をつける気だ?」
「……できる事から、先に解決していきましょう。今の我々に、従者を止める手段はない」
 エヴァの質問に、刹那は無愛想な口調で答えた。その間にも呪符を作り、木乃香の心に侵入す
る準備を整える。木乃香の額に呪符を貼りながら、刹那はふと思い出したように言った。
「あ、そうだ。エヴァ……闇の福音、貴女に伝えておきたい事が一つある」


 刹那が語った事、それは事件勃発の原因となった、あの―――


469 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 21:04 ID:1L4CvAyS

 …………………………………………
 ……………………………………………………
 ………………………………………………………………………
 ………………………………………………………………………………


「遅れて申し訳ありません、このかお嬢様。今、闇からお救いいたします!」
 燃える麻帆良学園都市を背景に、白い巫女姿で軍勢の前に現れた刹那は宣戦布告すると、そ
のまま剣を群衆に向けて駆け出した。群衆の中から、背中に翼を背負ったハルナが上空に飛び
出して刹那を睨み、下にいる美砂に手で合図をした。
「ふん、たった一人で何ができるのかなあ―――?」
 美砂の歌に導かれて群衆は左右に分かれ、刹那を凹字の形で取り囲むようにぞろぞろと動き始
める。手に持っているのは刀剣の類の他に、銃器を持っている者も少なくない。
「私たちに、貴女一人で勝てると思っているんですかー? 桜咲さん」
 のどかが黒い本を持ってジャンプし、群衆の前線に軽やかに着地する。楓を壊した黒い本がぱ
らぱらと風に捲られた。刹那が射程距離に入るまで数十メートルである。
「確かに、現実だったら私だけではお前たちに勝てない―――」
 ハルナのスケッチブックが光り輝いてマシンガンを具現化する。ハルナはそれを片手で持ち、刹
那に向けて慣れた手つきで引き金を引いた。タタタタタタタタ、と火薬音が響き、無数の弾丸が刹
那に向けて発射される。群衆の中からは桜子と円が刹那の隙を伺っていた。
「桜咲刹那、さん―――」射程距離に入った刹那に対して精神を壊す黒い本が発動する。しかし刹
那の情報が読み込めない。「あ、あれ!?」

470 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 21:04 ID:1L4CvAyS
「現実では、な。―――ここでは話は別だっ!」
 マシンガンの弾丸の軌跡を、刹那が剣で遮断する。鈍い金音が連続して響き、撃墜された弾丸
ぱらぱらと地面に落ちた。刹那は刀で弾丸を叩き落しながら疾走し、前方に群れてきた美砂の兵
隊数十人を一振りで斬り飛ばした。バラバラと斬られた兵隊が後ろに飛ぶ。
「なっ!?」美砂が驚きの声を上げる。「そ、そんなのあり?」
「あううっ!?」のどかが美砂の兵隊に紛れて逃げた。
 刹那のスピードは衰えない。美砂の兵隊をまるでオモチャのように蹴散らし、のどかを兵隊ごと
横に斬り払った。黒い本が分解し、ページがバラバラになって宙を舞う。
「調子に―――」「乗るんじゃないよ―――っ!」
 左から円が釘バットを、右から桜子がピコピコハンマを振り下ろしてくる。刹那は地面を軽く蹴っ
て一回転しながら数メートル下がって着地した。桜子のピコピコハンマで叩かれた地面が粉々に
吹き飛んで穴ができる。円が体勢を整えてバットを片手に接近してきた。周囲に刹那を逃がすま
いと美砂の兵隊のバリケードができ、桜子がピコピコハンマを振り翳して高く跳び上がる。
 前後左右上から敵に迫られた刹那は剣を構え直し、
「神鳴流奥義…百烈桜華斬!!」
 円と桜子、そして美砂の兵隊を鮮やかな螺旋の軌跡を描いて切り裂いた。刹那を包囲していた
敵の陣が一気に崩れて散っていく。倒れた兵隊や従者は血を流さずに、そのまま煙のように消え
ていった。ハルナが険しい顔でスケッチブックを開き、『メテオ(大)』と連呼する。燃え盛る巨大な
隕石が現れて、夜空が紅く染まった。
「ぐう、う、うううう……」
 オレンジの着物を纏う木乃香が苦しそうに座り込み、横の刹那がおろおろしながら木乃香を助け
起こした。しかし木乃香の影が、モゴモゴと生物のように動き始めたのを見て顔色を変える。

471 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 21:04 ID:1L4CvAyS
「こ、こいつ! こっちに、出てくるなあ―――っ!」
「ぷはあっ!」
 木乃香の横の刹那が顔を歪めて怒鳴った。オレンジの着物を纏う木乃香の影に波紋が生じ、そ
の中から全裸の木乃香が苦しそうな顔をして飛び出す。その裸体には巨大な鎖が巻き付いてい
て拘束されていた。はあ、はあ、はあ、と縛られた木乃香は呼吸を整え、美砂の兵隊の陣を切り崩
す刹那に、大声で叫んだ。

「せっちゃ―――ん! ウチはここぉ――――――っ!」

「お嬢様!」
 刹那の顔がぱっと明るくなる。今だ敵の手の内にあるものの、呼びかけてきたのは女子寮で魔
に憑かれて以来、眠り続けていた本物の木乃香だった。木乃香の心の中で、助けにきた刹那の
呼びかけに本物の木乃香が目覚め、魔に抵抗して現れたのである。
「黙れええええっ!」
 偽の木乃香と刹那が二人がかりで、縛られている木乃香を押さえ付ける。
「せっちゃん、口塞いで!」
「うん!」
「ゔゔゔ、ゔ―――っ!」
 偽者の木乃香に鎖を締め付けられ、刹那に口を塞がれて、木乃香は苦しそうに顔を歪めた。
「木乃香ちゃんのところに行かせるなぁ! 全員でかかっちゃえ―――っ!」
 美砂がマイクを片手に叫ぶと群衆がうねり、おぞましい数で刹那に殺到する。その頭上ではハ
ルナが具現化した燃え盛る隕石が4つ、夜空を炎色に染め上げている。

472 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 21:04 ID:9bnXPDoe
駄文スレか?

473 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 21:04 ID:1L4CvAyS
「『メテオ(だ―――あ゛」
 ハルナの言葉が途中で止まる。美砂も真上を見上げたまま静止してしまう。たった今、襲いかか
る群衆の最前にいたはずの刹那が何時の間にか、美砂の真上を飛ぶハルナに斬り込んでいた。
「い、れ、ん……」
 群衆の中に落下するハルナ、続いて頭上で燃え盛る4つの隕石が指揮官を失い、そのまま真下
で群れる美砂とその奴隷たちに向けて落下する。衝撃が近衛の姫の軍勢を呑み込み、美砂とハ
ルナが煙のように消えた。複数の爆風は互いに衝突しながら波状に麻帆良に広がり、一帯を焦土
と化しながら拡散していく。
 焦土の世界にピシピシとにヒビが走り、そのままガラガラと崩れて消滅し始めた。偽者の木乃香
は本物の木乃香を連れて闇に融けるように逃げ、本物の刹那がそれを追いかける。その途中で
へらへら笑いながら偽者の刹那が立ち塞がった。
「ここは通さな、あ―――?」
 「い」を言う前に本物の刹那が偽者を斜めに叩き切る。偽者は煙のように消えていった。
 壊れていく世界の中を、木乃香を追って刹那は駆けていく。
「さあ、お嬢様を解放してもらうぞ!」
 燃える学園都市が消えた後に残されたのは狭い、球体の闇の世界だった。刹那が剣を向ける先
には縛られた木乃香と、オレンジの着物を纏う偽者の木乃香がいる。おそらく外見は単なるイメー
ジだろうが、実質は魔の元凶であるその「木乃香のカタチをした者」は、本物の木乃香を解放する
つもりはないらしい。
「ゔゔゔ、ゔ―――っ!」
 偽の木乃香は本物の木乃香の口を手で塞ぎ、余裕たっぷりの笑みを浮かべて刹那を黙って見
ていた。刹那の刀を握る手に汗が滲む。相手はあれだけ酷く女子寮で暴れた敵であり、先ほどの
従者たちのように簡単に排除できるとは思えない。実力差は歴然としており、現実では刹那は従
者一人にも勝てないだろう。

474 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 21:05 ID:1L4CvAyS
(ここからが問題だ―――)
 偽の木乃香から、本物の木乃香をどうやって取り返せば良いのか?
 それは、本物の木乃香が偽の木乃香に抵抗して打ち勝つしかない。
 実際問題として刹那は木乃香の心の魔を狩っているが、それは木乃香を救う手助けであって直
接救う事には繋がらない。場所が木乃香の心である以上、本物の木乃香が刹那に協力して、魔
に怯えず全力で抵抗しなくては勝利することはできない。逆に万が一、木乃香が諦めたりした場合
は刹那が逆に魔に殺されかねない。そうなれば現実の刹那は廃人である。
「ふふふっ、せっちゃん、あれほど可愛がってあげたのに、だま足りへんのかなあ―――」
 闇がざわりと蠢き、にゅるにゅるにゅると無数の黒い触手になって刹那に殺到した。
「くっ!」
 刹那が刀を振って触手を切り裂くが、1本斬ると10本の新たな触手が現れる。小さな島が波に
削られて消えてしまうように、刹那は圧倒的な物量に押し切られる。手首と足首を触手に掴まれ、
手から愛刀が転がり落ちた。本物の木乃香が涙目で見ている前でビリビリと巫女装束が裂かれ、
刹那は半裸で大の字に拘束されてしまう。
「ぷはっ! せ、せっちゃん!」
「お嬢様、気を確かにお持ちください! そいつはお嬢様が……う゛あっ…」
 喉が潰れたような悲鳴を残して刹那の顔が引き攣っていく。刹那の下半身では、イボ付きの太い
触手が陰唇を押し広げながらずぬりと挿入され、白い太ももに赤い血が流れ落ちていた。触手は
まるで先端に目があって、少し進むたびに膣壁をいちいち観察しているようなスローペースで、少
女剣士の性を貪っていく。木乃香も、刹那がされている行為の意味は理解できているようで、その
可愛らしい顔はみるみる蒼白になっていった。

475 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 21:05 ID:1L4CvAyS
 刹那の膨らみかけた乳房を押し潰すように触手が巻き付き、文字を書いているように肉質を捏
ね回した。触手に合わせて乳房は形を歪に変え、ピンク色の乳首が木乃香の見ている前で上下
左右に揺れ動く。刹那は歯を食いしばって悲鳴を堪えた。木乃香のためならどうなっても良いと思
っていようが、物理的または精神的な苦痛に完全に耐えられるわけではない。
「ああっ! ううっ……! くう……! ほ、んきで……逆らってくる……のを、恐れて……」
 刹那は拘束を解こうと手足に力を入れるが、固定された肉体を動かす事ができない。刹那の足
首に巻きついていた触手はぐるぐると刹那の脚に巻き付きながら上昇し、脹脛から太ももを締め
ながら股間に到達した。手首に巻き付いていた触手も刹那の肘から肩まで迫ってくる。腹にも何十
も触手の輪ができ、細い首にもぐるりと触手の首輪ができた。そして触手はぎちぎちと力を込めて
全身を締め始め、苦しむ顔が木乃香に見えるように位置を動かしながら刹那を嬲った。
「いる、だけ……ゴホッ、ゴホッ……あ、あ……あ、が、ぁ…………」
 性器からもぐり込んでくる触手の圧迫感、肉体を締め上げられ弄ばれる苦しみ、愛情の欠片もな
い物体に犯される悔しさ、想いをよせる本物の木乃香の前で汚される絶望。しかし、何よりも刹那
の心を抉るのは、この光景を凝視させられ続けている木乃香の姿だった。
 希望の類は裏返れば絶望になる。高く飛べば落ちた衝撃も大きい。刹那の呼びかけに応えて抵
抗を始めた木乃香に対し、どうすれば一番ダメージを与えて追い詰め、決意を揺さぶり、戦う力を
奪い、絶望させ、心を折り、諦めさせる事ができるかを、
 「木乃香のカタチをした者」は残酷なほどよく理解していた。

476 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 21:05 ID:1L4CvAyS
「うぐっ、うあっ、ああっ、あっ、ぐうっ、ああ゛っ、あ゛あ゛っ!」
 突然触手は狂暴化し、今までのスローペースが嘘のような猛烈なスピードで動き始めた。子宮を
ごつごつ突き上げられる腹に響く衝撃に、締められている喉からも悲鳴が漏れる。サイズをオー
バーした太さの触手は木乃香の前で勢いでぐちゅりぐちゅりと出入りを繰り返し、血と愛液を飛ば
しながら刹那の身体をガクガク揺らす。先端の尖った触手が伸びて刹那の乳首にそれぞれぷすり
と刺さり、痣だらけの乳房に赤い筋が伝った。
「あ゛、あ゛あ゛―――っ! あ゛あ゛っ!」
 手足を縛る触手がそれぞれの方向に刹那をひっぱり、突き上げに身体を揺らす刹那がさらに上
下左右に振れる。血塗れの乳房は指より多い本数の触手で押し潰され、挿入されていた触手が
どくん、と一回り大きくなって性器を広げながら突き上げる。両足の触手は刹那を開脚させ、股間
が一直線になるまで広げて力を緩めず、木乃香の前で股裂き状態になった。どす黒い触手が刹
那の陰唇を押し広げて結合している光景が、木乃香の目の前に近づけられる。
「い、嫌あああ! せっちゃんが……せっちゃんがああ――――――っ!」
「あーあ、あんたがウチに逆らわんと大人しゅうしとれば、せっちゃんはこんな惨めな事にはならん
かったやろうなあ。あんたのせいや。目の前の光景はぜーんぶ、あんたのせい」
 泣きながら叫ぶ本物の木乃香の耳元で、偽者の木乃香がぼそぼそと語りかける。その口調はと
ても優しくて穏やかなものだったが、温かみの欠片もない。
「ウチ、が、あんたの言うことを、聞いたら……?」
「あ゛あ゛っ! うっ、ぐっ、う゛っ! お、嬢様、耳を、貸してはいけませ……があ゛っ!」
「せっちゃんは、助けてあげるえ」
 本物の木乃香の言葉に、偽者の木乃香はにっこりと微笑み、その言葉を待っていたようにゆっく
りと肯いた。細い指がそっと、まるで本物の木乃香を誉めるように頬を撫ぜる。

477 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 21:05 ID:1L4CvAyS
「ウチに全て任せとき。あんたはゆぅーっくり、ずぅーっと、永遠に、眠っとればええんよ―――」
 偽者の木乃香は、震える本物の木乃香の頬にキスをして嗤う。
「おじょ、う、ざまぁ! あ゛あ゛っ! いけま、せん!」
 本物の木乃香は怯えた瞳で、涙を伝わせながら、口を開いた。
「…………ごめん、せっちゃん………。分かり……ました。言うこと、ききます」
「ふふふっ、ええ子やなあ」
「だから……だから……」
「うん?」
 本物木乃香の瞳から、更に涙が溢れ出した。
「うぐっ…ひっく……せっちゃんを……助けて……ひくっ……ください……」
 偽者の木乃香は、目を細めて嗤い、
「約束は―――守るえ」
 刹那を責めていた触手が、動きをぴたりと止める。
 偽者の木乃香は手でそっと、本物の木乃香の目を閉じた。
「ほな、おやすみ」
 刹那の前で、本物の木乃香は目を閉じたまま、
 ずぶずぶと、まるで底無し沼に沈んでいくように闇に消えていく。
 木乃香の脚が消え、
 腹が消え、
「お嬢様、諦めてはいけません!」
 刹那が叫ぶ。
 木乃香は抵抗もないまま。
 ただ、涙を残して。
 闇に呑まれていく。
「お嬢様! お嬢様!」
 狂ったように刹那が叫び散らす。
 木乃香の胸が消え、
 腕が消え、


478 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 21:05 ID:1L4CvAyS
「このちゃん! 諦めちゃダメ! 諦めたらアカンよ!」
 ぼろぼろと涙を零して。
 刹那は叫んだ。
 木乃香の首が消え、
「―――もう遅いわ」
 偽者の木乃香が、くすくす嘲笑う。
「このちゃん!」
 木乃香の頭が、消え―――


「ここから帰って、また、昔みたいに、いっしょに遊ぼう! だから、がんばって―――」


「ぷぷっ。ふん、何を今更―――」
 偽者の木乃香の嗤いが、途中で固まる。
「なっ……!?」
 闇に沈んだはずの木乃香が、刹那の前に立っていた。
 鎖はない。拘束からは解放された自由な姿で、泣きながら、刹那の瞳をじっと見つめている。
「このちゃん……」
「せっちゃん、嘘ちゃうよね? ホンマやよね?」
 木乃香は目に涙を溜めながら、にっこりと微笑んだ。
 そっと刹那に手を伸ばすと、刹那を嬲っていた触手は煙のように消えた。
「ふ、ふざけた真似を―――」
 偽者の木乃香が、本物の木乃香に襲いかかる。偽者がぶつぶつと陰陽術系の呪文を唱え始め
て手を本物に向ける。本物の木乃香も全く同じ呪文を唱えて偽者に向けた。

479 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 21:06 ID:1L4CvAyS
「ウチに逆らう気かああ――――っ!」
「せっちゃんに近づくな―――っ!」
 同種の呪文が両者の中間で激突した。偽者が悲鳴をあげて吹き飛ぶ。刹那たちを覆っていた闇
の世界にピシピシとヒビが入り、そこから光が差し込んできた。本物の木乃香もよろめき、刹那の
前で膝を折る。しかし、互角に思えたが、立ちあがったのは偽者の方だった。
「ふふふっ、ウチの、ウチの勝ちや―――」
 崩れていく闇の世界と連動するように、ぐにゃぐにゃと輪郭を歪ませながら偽者の木乃香が迫っ
てくる。オレンジの着物も顔も完全に闇に同化し、巨大な闇の塊になって木乃香に殺到した。
「―――!?」
 固まって動けない木乃香に、偽者の木乃香だったモノが襲いかかる。
 その時、木乃香は誰かの、大きな背中を眺めていた。
 木乃香と、闇の塊との間に滑り込んだ、少女。
 手には愛剣が握られていた。
 魔を討ち。
 人を救う。
 神鳴流の剣士。
「せっちゃん!」
 桜咲刹那はゆっくりと剣を構え、
 後ろに木乃香を守りながら、
 襲いかかる敵に立ち向かう。

「このちゃんに近づくな―――っ!」

 殺到する闇を、真っ二つに斬り捨てた。
 周囲を覆う闇が砕け散る。
「あ、ああ゙あ゙あ゙あ゙―――っ!」
 闇がオレンジ色の着物を纏う木乃香に戻り、鬼のような形相で刹那たちを睨む。
 しかし、すぐに形は崩れて闇に戻り、そのまま砕け散った。

480 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 21:06 ID:UPeS0egZ
                 / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                 | ちょ、ちょーと待って!今 ID:1L4CvAySが超大作貼ってるから邪魔しないで!!
     , ,-;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:,.  ヽ─y───────────────‐ ,-v-、──────────────
    /;:;:;:;:;:;:ミミ;:;:;:;:;:;:;:;:;:;`、                          / _ノ_ノ:^)
    /;:;:;:;:彡―ー-、_;:;:;:;:;:;:;:;|                           / _ノ_ノ_ノ /)
    |;:;:;:ノ、     `、;;:;:;:;:;:i                        / ノ ノノ//
    |;:/_ヽ ,,,,,,,,,,  |;:;:;:;:;:;!                      ____/  ______ ノ
    | ' ゚ ''/ ┌。-、  |;:;:;:;:/                     _.. r("  `ー" 、 ノ
    |` ノ(  ヽ  ソ  |ノ|/               _. -‐ '"´  l l-、    ゙ ノ
_,-ー| /_` ”'  \  ノ   __       . -‐ ' "´        l ヽ`ー''"ー'"
 | :  | )ヾ三ニヽ   /ヽ ' "´/`゙ ーァ' "´  ‐'"´         ヽ、`ー /ノ
 ヽ  `、___,.-ー' |   /   /                __.. -'-'"
  |    | \   / |   l   /            . -‐ '"´
  \   |___>< / ヽ

481 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 21:06 ID:1L4CvAyS
 刹那と木乃香の周辺に、光が差し込んでくる。
「せっちゃん!」
 木乃香が刹那に抱き付いてくる。
 刹那は顔を赤くしながら、そっと抱き締める。
 魔に憑かれた近衛の姫と、
 傀儡に堕ちたその護衛
 魔から解き放たれた近衛の姫と、
 心を取り戻したその護衛
 いや、
 ただ想い合う二人。
 長い時間をかけての、ようやくの再会
 そのまま、
 見詰め合い、
 口を近づけていく。
「このちゃん……」
 二人の距離が、
 ゼロになる。




 そして、光が満ちる―――




482 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 21:06 ID:1L4CvAyS

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 エヴァが楓を誘って、残る僅かな魔力を使って木乃香の夢を覗いたのは、もちろん「やれ……全
部壊してまえ……」などと呟いている木乃香の夢への興味もあるが、楓に、自身の行為がもたら
す結果を教えるためでもあった。
 木乃香がハルナに送った命令は救いの無いものであり、送った力は簡単にコントロールできるレ
ベルではなかった。99.9%ハルナは力を制御できずに暴走する、そうエヴァは読んでいる。ハル
ナのアーティファクトはその能力の応用性はもちろん、戦闘力をとっても従者の中で別格である。
あの燃え盛る隕石を麻帆良学園都市に発射し続ければ、おそらく30分ほどで麻帆良全体が木乃
香の夢と同じように炎上し、壊滅するだろう。そして、おそらく、何も残らない。
「拙者は……ただ……ちょっとだけ……魔法の力を使ってみたいと思っただけで……だって……
みんな使っていたではござらんか……拙者だって……ちょっとぐらい……ちょっとぐらい……」
 千雨に「双子を連れて麻帆良から逃げろ」と電話した楓は、虚ろな目でふらふらと歩いて、そのま
まエヴァの視界から消えていった。エヴァが楓に夢を覗かせたのは、状況を理解させて的確に動
き回らせる狙いもあったのだが、事態の原因となった楓は精神を押し潰されてしまった。
「ははっ。無敵の者などいないか」
 エヴァは自嘲するように、そう呟いた。口からは牙も失われて血も吸えない状態である。

483 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 21:06 ID:1L4CvAyS
 エヴァと楓が木乃香の夢から帰って一分ほど過ぎた。刹那が木乃香の心に潜入してからは二分
ほどである。そろそろ刹那と木乃香は決着しただろう。現実の二分も心の中では数時間に近い。
刹那が木乃香を浄化するか、闇に呑まれて廃人になるか、二択の結果はもう出るはずである。
「ん、どうやら浄化には成功したようだな」
 同じ呪文が書かれた呪符を額に貼った木乃香と刹那は手を繋ぎ、まるで二人で遊んでいるよう
ににっこりと微笑んで眠っていた。すやすやと安定した呼吸音も聞こえてくる。しかし、浄化が成功
すれば自分の意思で目覚める事ができる術者の刹那が、なかなか目を覚まさない。
「……いつまで夢の中にいる気だ? もうすぐ現実の麻帆良は火の海になるというのに」
 そこでエヴァはふと、気付いた。
「ふふっ。はははっ。 そうか……桜咲刹那……お前もまた、逃げてしまったのか……」
 浄化が成功した刹那は、夢の中で本物の木乃香と再会していることだろう。コミュニケーションと
して不完全な言葉などではなく心同士で触れ合い、誰にも邪魔されずに結ばれているのだろう。
 そして、麻帆良崩壊が始まる現実に戻ってこない。
 今の状態なら普通に目覚まし時計で起こすこともできる。叩き起こしてやろうとも考えたが、エヴ
ァはそれを実行しなかった。起こしたところでハルナ相手に刹那は役に立たないだろうし、記憶が
残っているかどうかも怪しい木乃香は、もう力も使い果たされて戦力外である。
「……………ふう」
 風が虚しく吹いて、ブロンドの髪を靡かせる。
 目から涙が伝い落ちた。

484 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 21:07 ID:1L4CvAyS
 刹那から聞いた事実は、エヴァにとって衝撃的だった。

 実は、サウザンドマスターは生きている。

 木乃香に囚われていた時、刹那とネギは一時期、同じ部屋で過ごしていたらしい。その時に雑
談していて、刹那はネギからサウザンドマスターのこと、そしてエヴァの目的を聞いていた。
「生きている……サウザンドマスターは生きている………」
 サウザンドマスターを生き返らせて、もう一度会いたい。
 その一心で始まった今回の事件は、はっきり言ってしまえば、
「無意味だった……な」
 停止しつつある思考は、これが悪い夢であることを祈ってしまった。
「全て無意味だった……これから麻帆良が壊滅しても、もう意味すらも存在しない……」
 麻帆良の、まるで嵐の前のような静かな夜景を見ながら、一人で嗚咽する。
 その時、脳裏に一人の、人間に戻れなくなった少女の顔が浮かんだ。
「そうだ……まだあいつがいたか。うむ、名前を使う魔術に対抗でき、使えないながらも真祖の魔
力を持ち、そして私の名を受け継いだ吸血鬼―――あいつがもし、勝てれば……」
 その考えを、エヴァはすぐに否定した。
「あいつが勝てれば? 奪った魔力もろくに使えない奴が、従者に勝てるわけがない……」
 そんなことは、当たり前なのに。
 しかし、それを否定している、いや、否定したい自分がいる。

485 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 21:07 ID:1L4CvAyS
 あの、和泉亜子が勝つのを望んでいる自分がいる。
「なんだ、この気持ちは……」
 そもそも亜子は、既に殺されているかもしれないのに。
 近衛の姫の夢は、もうすぐ現実のものとなるのに、それでも否定したい。
 サウザンドマスターが生きていると分かった時に生まれた、心の揺れ。
 15年暮らしてきた、麻帆良学園都市。
 平和ボケした連中にはうんざりしていた。
 平和な暮らしにもうんざりしていた。
 自分は夜の女王なのだから。
 闇の福音なのだから。
「ダメだ。私もどうやら、本格的に狂ってしまったらしい……」
 自由になりたかった。
 闇に戻りたかった。
 それなのに。
 サウザンドマスターが生きている。
 それが分かると、もうどうでもよくなった。

486 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 21:07 ID:1L4CvAyS
 バカな中学生といっしょに授業を受ける。まあ楽しかったではないか。
 バカな中学生といっしょに部活をしたり、まあまあ楽しかったではないか。
 学園都市で、のんびりと平和に暮らす。まあまあ、それなりに楽しかったではないか。
 それが今になって、本当に、分かる。
 今になって、消える前になって……。
 今更。
「――――――――――――――――――――――――――――――――――――っ!」
 半壊した学園で一人だけ残ったエヴァは、絶叫するように泣き喚いた。
 静かな現実の麻帆良学園都市。
 炎上し壊滅する夢の麻帆良学園都市。
 近衛の姫の夢。
 夢が重なる。
 現実になる。
 麻帆良は、
 終わる。


 闇の福音の横では、木乃香が幸せそうな寝顔で眠っている。
 木乃香が見ている夢は、温かく、愛に満ちた、
 想う人との、幸福な再会。


487 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 21:09 ID:1L4CvAyS
 麻帆良学園都市に出現した異常な領域の特徴は、人がその内部に侵入できないこと、そして内
部にいた人間を、半ば強制的に外に排除することである。それは日本の法、または麻帆良独自の
ルールによって行われた措置ではない。重力や遠心力、コリオリの力などの物理的な力によるも
のでも、また地震の直前に動物が逃走するような本能的な行動でもない。一般の考え方では、そ
の現象を正確に説明することは不可能だろう。
 普段と同じパターンで入浴していたり、コンビニに夜食を買いに行っていたり、テレビを見ていた
りしていた住民が突然、抵抗し難い不可視の力によって動かされ、街のある一定のラインまで押し
出されてしまう。日常生活を送るほぼ全員が、ある者は車で、ある者は徒歩で、ある者は自転車
で、また葉加瀬聡美はセグウェイに乗って、訳が分からないまま数百メートルから1キロメートル以
上の移動を余儀なくされた。
 そして今、住んでいた場所に帰れなくなった麻帆良の住民たちは、仲間同士で集まって他愛もな
い雑談に興じながら、事態が動くのを待っている状態である―――

「と、いうのが今、私たちが置かれている状況ネ」
 学年トップのチャオ・リンシェンは集まったクラスメイトたちに状況を解説しながら、目の前に広が
る無人の学園都市を観察していた。周囲には住民が溢れ返り、道路まで占領されている状態であ
る。先ほどから絶えず、一部の住民が自宅に戻ろうと試みているのだが、チャオがいる位置から1
0メートルほど先のポイントを越えることができず、首を傾げて引き返してくる。

488 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 21:09 ID:1L4CvAyS
「えええ〜。いったい、どうなってるのー?」
「あらあら、どうしたの夏美ちゃん。いつもにも増して取り乱しているわね」
 女子寮が半壊した事件から約一週間、寮の住民は6つの施設にランダムに振り分けられて、寮
が直るまで生活することになった。チャオ・夏美・千鶴・夕映は同じ施設で暮らしていたのだが、今
回の騒動で追い出されて1キロメートル先まで散歩することになった。
 おろおろしている村上夏美の相手をしていた那波千鶴は、にっこりと微笑んでチャオを見た。
「でも野宿は困るわね。今夜はあやかの部屋にお邪魔でもしようかしら」
「駄目。いいんちょも部屋から追い出されて今、ハカセといっしょに街を移動中。夕映の方はど
う?」
「えーと、駄目です。みんな、連絡がつきません」
 綾瀬夕映は携帯でハルナたちに連絡を取ろうとしていた。ハルナ、のどか、桜子、円、美砂は
同じ施設で生活しているはずである。しかし、誰も携帯には出なかった。
「こういう時は、長瀬さんの意見を求めたいのですが……」夕映が長瀬楓の携帯にかけてみると
鳴滝姉妹が出た。本人は携帯を置いて外出したらしい。長谷川千雨なら携帯で小声で話ながらパ
ソコンをしていると言う双子だったが、千雨が役に立つとは思えなかった。双子に状況を正確に説
明するのも面倒だったので、夕映は電話を切ってしまう。「どこ行っちゃったんでしょう……」
 楓が隠密行動時の千雨専用にもう一つ携帯を買ったのは、誰にも知らされていなかった。
「クーはどうネ?」
「とても楽しそうでした。無人都市への侵入を試みているようです。しかし、役に立つ意見は……」
「やっぱり?」
 苦笑するチャオの横で、夕映ははあ、と溜息をついた。
「あっ、アスナ、待ってよ―――」
 その時、夏美が声を上げた。

489 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 21:10 ID:1L4CvAyS
「どうしましたか?」夕映が夏美の方を向いた。
「今ね、アスナがいたの」夏美が暗闇を指差した。「声かけたら、逃げるように行っちゃった」
「明日菜さんが? 彼女はまだ入院しているはずですね。どうしてここに……」
「うーん、なんでだろ? なんか落ち付かない様子で、心配そうに無人の街を見てたよ」
 夕映は思考に浸かりながら状況を繋げようとするが、上手くいかない。
「お手上げですね」
「考えても分からないから、神様になって上から見てみるネ」
「何をする気です?」
 麻帆良の地図を広げたチャオが、ペンでチェックをし始めた。
「私たちがここ、いいんちょたちがここ、クーたちがここ、アキラたちがここ、和美がここ………」
 連絡がついた友人たちは、全員が「それ以上先に進めないポイント」の前にいる。それらの点を
線で結んでいくと、地図の上に巨大な円ができた。
「ああ……バリアでも張られているみたいですね」夕映が地図を覗き込む。「綺麗な円です」
「バリアか。確かにそんな感じネ。大きさは地図の縮尺からして……半径約1.2キロメートルの人
払いのバリアが、麻帆良のド真ん中に発生している……」
「……って、この状況は尋常ではないですよ、ここは安全ですか?」
「さあ、何とも言えないネ。ただ……」チャオが微笑む。「私と夕映がどちらも無事で済まないなら、
この辺りにいる人は全滅ネ」
「何を言っているんです?」夕映が表情を変えずに言った。「私はただの、本好きの学生ですよ」
「あらあら、みんな、なんだか大変そうねぇ―――」
 千鶴がまったく大変そうでない口調でそう言った。


          *



490 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 21:10 ID:9bnXPDoe
       ハハハ                             イキデキネーヨ
   ∧_∧   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ハライテ-       ゲラゲラ
.  ( ´∀`) <  超大作だってよ   ∧_∧      〃´⌒ヽ       モウ カンベン
.  (つ ⊂ )   \_______   (´∀` ,,)、     ( _ ;)       シテクダサイー
   .) ) )   ○   ∧_∧      ,, へ,, へ⊂),    _(∨ ∨ )_     ∧_∧ ○,
  (__)_) ⊂ ´⌒つ´∀`)つ    (_(__)_丿      し ̄ ̄し     ⊂(´∀`⊂ ⌒ヽつ
          タッテラレネーヨ
           ワハハハ



491 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 21:10 ID:1L4CvAyS
 麻帆良学園都市、人払いの結界の中心。
 桜子、亜子、のどか、そしてハルナがその場にいる。
 亜子の周囲はクレーター状に地面が凹んでいて、横には崩壊した歩道橋が道路にめり込んでい
る。桜子は全裸で失神しており、亜子の足下には桜子の仮契約カードが落ちている。のどかは失
神した桜子を見て少し怯えているようである。ハルナはリュックのように背負える白い翼を装備し
た状態で、亜子をじっと見つめていた。
「亜子ちゃんに何があったか気になるねー。名前を吐かせて情報を手に入れたい」
 ハルナはアーテクファクトのスケッチブックを翳し、にたりと嗤った。
 亜子は負傷した肩を押さえ、痛みが残る足をぺちぺち叩いて、ハルナを警戒しつつ荒い呼気を
整えていく。
「えーと……『魔法銃』、『びりびり』、『ブラックリスト』」
 スケッチブックがぱらぱらと捲れて光が溢れだし、3枚のページがひらりとハルナの前に舞い上
がった。その、厚さ数ミリメートルの紙から、ずぶずぶと質量が浮かび上がってくる。ハルナはそ
れらを、そのまま一気に紙から引きずり出した。
 一つは黒光りするロッド状の物体である。先端には電極のような金具が露出しており、握る位置
にはスイッチがいくつか付いていた。ハルナが指でスイッチを入れると、バチバチと青白い火花が
金具の間で散る。防犯グッズのスタンガンのようなものらしい。
 他に現れたのは、筒のような銃口を持ち、綺麗な装飾が施された銃と、手帳サイズの真っ黒なカ
バーが付いた本だった。この時の亜子は知らなかったが、銃は木乃香に脅されたカモが取り寄せ
た本に載っていた骨董品で、ネギも同じものを持っていた。
「消費した分を、最新のページにコピー」
 スケッチブックが数秒間青く輝き、そして普通の状態に戻った。
(あれが、ハルナのアーティファクト……)

492 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 21:10 ID:1L4CvAyS
 茶々丸から話は聞いていたハルナのアーティファクト「魔法のスケッチブック」、その能力は描い
た絵のストックと、その具現化が主であるらしい。しかし茶々丸は、描いた絵を別のページにコピ
ーできるという機能が、一番の脅威であると報告していた。
(それって、いくらでも武器を創れるってことやな……)
 亜子はそう解釈し、何が出てくるか分からないスケッチブックから一定の距離をとる。
「でも、確かに亜子ちゃんに何があったかは気になるけど、明日菜のところに行かせてくれたら、と
りあえずは見逃してあげてもいいよ。今の目的は明日菜だし。ね? のどか」
 のどかを見ながら、ハルナが言った。
「あ、それはもう無駄やで」亜子はハルナに言う。「ウチがアスナに、あんたらが攻めてくるって伝え
たから、とっくに逃げてるやろな。どこに逃げたかはウチにも分からへん」
「………」
「………」
「………」
「亜子ちゃんさあ」ハルナが微笑んだ。「喧嘩売りまくりだねえ。喧嘩は嫌いじゃなかったの?」
「ど、どうしてですかー」のどかが前に出る。「ネギせんせーの問題は、亜子さんには関係ありませ
ん! どうして、どうして邪魔するんですか? 私はただ……」
 のどかと亜子、ハルナと亜子、ハルナとのどか、
 視線が交差する。
「特別やからね」
 亜子は自嘲気味に笑った。

493 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 21:10 ID:1L4CvAyS
「特別?」
 のどかが繰り返す。
「まあ、あんたらに、ウチみたいに手遅れになって欲しくないのもあるけど、正直、ネギ先生とアス
ナはウチとっては特別やから……いろいろあったけど、ウチを助けようとしてくれたし……」
 亜子は乾いた笑みで、
「ウチ……もう終ったも同然やけど……」
 飢えたような目で、
 淡々と言った。


「あの二人がいてくれたら……まだ頑張れる気がする……生きていける気がする……」


「………」
「………え、えーと……」
 のどかがコメントに困ってハルナを見る。
「ふふふふ、今の亜子ちゃんて何だか重いよねー。何があったか知らないけどさー、なんかおかし
くなっちゃったって言うか、悟っちゃったって言うか―――」
 ハルナは愉快そうに、亜子を見て微笑んだ。
「実際、明日菜たちもさー、そんな変な重い荷物背負ってるやつに頼られるなんて―――」


「はっきり言って迷惑だと思うよ」


「……そ、そんな、こと……ない、わ……」
 亜子の顔に、少し動揺が浮かんだ。ハルナは亜子の反応を見てにやりと嗤う。

494 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 21:10 ID:1L4CvAyS
「迷惑だよ。絶対に、迷惑」
 ハルナは亜子に言う。
「結局、その荷物をネギ先生と明日菜にも持って欲しいってことでしょ? 否定しても駄目だよ、亜
子ちゃんの顔にそう書いてあるもの。ウチはとっても辛いから助けてください。慰めてください。支
えてください―――ってね。二人に優しく、傷口ぺろぺろ舐めてもらいたいんでしょ?」
 最後の言葉は亜子に向けたジョークのつもりらしいが、亜子は反応しない。
「そんなの無駄だと思うよ。最初は親身になってくれるかも知れないけどさー、そのうちに絶対ウザ
がられるって。うん、断言してもいいよ。で、そこで相談なんだけど、私たちの仲間にならない?」
 のどかが驚いてハルナを見る。
「木乃香と仮契約すればさ、そのやたら巨大な魔力も使いこなせるかも知れないよ? そうすれば
亜子ちゃんは―――」
「あんたらと仲間になる気はあらへん。いっしょにせんといて」
 微笑みながら、ハルナの笑顔が固まる。
「何とでも言ってええ。ただ、ウチにはもう、これ以外に道はないんよ―――」
 亜子はそれだけ言った。
「ふうん」
 ハルナは、今度は面白くなさそうな顔でそれだけ言った。そして。
「これぐらいなら、のどかでも使えるでしょ。一応持っとき」
 ハルナがスタンガンと銃と本を投げ、のどかの足下に次々と落ちる。のどかは少しだけ戸惑った
ような顔をしたが、すぐに武器を掻き集めて銃と本をポケットに入れ、スタンガンを両手で持った。
「拾ったら、次は……邪魔だから桜子ちゃんを遠くに運んで、後はどっかに隠れてな」
「え……」のどかの動きが少し止まった。「う、うん。そうするー。頑張ってね……」
 のどかは小走りで、桜子の方に走っていった。亜子は「邪魔だから」がどちらに向けられたのか
少し考えたが、答えは出るはずもない。
「さて、仮名の亜子ちゃん。安心してね。殺さない程度には手加減するから―――」
 ハルナは、微笑を浮かべながらゆっくりと眼鏡を外し、そのままケースに入れて懐に仕舞った。

495 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 21:11 ID:1L4CvAyS
 眼鏡を外すとハルナの印象はがらりと変わっていた。端整な顔は普段より大人びて見える。
 もっと活き活きとしていたイメージがあったが、目の前にいるハルナは静かで落ち付いている。
 冷たい双眸が、品定めをするように亜子の姿を映した。
 スケッチブックが風に靡いて、ぱらぱら捲られた。
「………!」亜子が身構える。
 氷がどろりと溶解するように、ハルナの唇が歪んで、笑みの形を作った。
「23ページ」ハルナが絵のタイトルではなく、ページ数を言った。
 スケッチブックのページが宙に舞い、光を放つ。
 一瞬だけ見えたその絵は、集中線というスピード感を出す表現が用いられていた。中央に収束
している線の先にあるのは、まるで遠くから接近してくるかのように描かれている「剣」だった。
「―――!」亜子が後ろに下がる。
 スケッチブックから尖った金属が顔を出した。次の瞬間、漫画で端役が使うような質素なデザイ
ンの剣が、しかし弾丸のような勢いで紙上から発射され、亜子に向けて真っ直ぐに飛ぶ。
「―――くっ!」転がるように亜子が横に避ける。黒いマントの端が剣に掠って裂けた。
「『魔法銃』!」
 ハルナが亜子に向けて魔法銃を連射し、ドンドンドンと重い音が響き渡った。亜子は止まらずに
走り続け、背後から亜子を追いかけるように小さな爆発が起こる。亜子は爆発の勢いを受け止め
るようにマントを広げ、そのまま一気に飛びあがって円弧を描くコースでハルナに向けて急接近し
た。蝙蝠で編まれたマントは、亜子が使える数少ないエヴァの能力だった。
「『シールド』5連作!」ハルナが叫ぶ。
 ハルナと亜子の間に、厚さ4センチ、縦横2メートルほどの曇りガラス状の壁が5枚現れた。それ
らは亜子とハルナの間に勝手に移動し、亜子からハルナを遮った。

496 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 21:11 ID:1L4CvAyS
「こんなもん!」亜子がスピードに乗って勢い良く蹴りつけ、鈍い音がした。亜子のキックを受けと
めた壁は蜘蛛の巣状のヒビが走り、真っ白になってそのまま砕け散る。亜子はそのまま体当たり
で次の壁を強引に破った。そのまま前に進もうとするが、3枚目の壁が破れずに止まってしまう。
「2枚も破られるとは、怖い、怖い。でも、残念だったね」濁った半透明の壁の向こうで、ハルナが
にやりと嗤う。「悪いけどさあ、私って殴り合いとかするタイプじゃないんだわ。だから―――」

 亜子の背後で、ずしん、と重量感のある音がした。

「やりたければ、鬼蜘蛛ちゃんと好きなだけどーぞ。木乃香の呼び出すオリジナルの式神にも勝っ
ちゃった自作の鬼蜘蛛だよ。鳴き声がとってもキュートだから聞いてあげてね」
 亜子が振り向くと、数メートルはある巨大な蜘蛛が、黒く濁った目に亜子を映し込んでいた。身体
は硬い装甲に覆われている。無数の脚がわきわきと蠢いて、その巨躯を亜子に向けて走らせた。
「くもっ!」
 間の抜けた鳴き声と共に、蜘蛛の巨体が亜子の視界を覆い尽くし、そのまま激突する。
「きゃあああっ!」
 亜子は弾き飛ばされてごろごろと転がり、民家のヨーロッパ調の壁に背中をぶつけて止まった。
「かはっ……あ゛……げほ、ごほっ……」
 激突した民家の壁にヒビが走る。衝撃を受けて肺の空気が一気に絞り出され、亜子の呼吸が一
瞬だけ止まった。自分に契約執行しているのでダメージは軽減されているが、それでも十分に痛
い。無意識に背中を丸めて、亜子は地面に頬を付けたまま苦痛が治まるのを待つ。
(……さっきの、何……く、くも?)
 亜子の口からどろりと唾液の塊が零れ落ちる。体当たりされただけなのに、まるで車に轢かれた
ような衝撃に襲われた。亜子は車に轢かれた経験はないが、おそらく似た感じだと思われる。
「くも。くもぉ? くっもー」
「………」
 亜子が見上げた先には、「大丈夫?」とでも言いたげな可愛い声を出して、先程の蜘蛛がいた。

497 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 21:11 ID:1L4CvAyS
「ひっ! あ、あっちに行きやっ! ち、ちょうあ゛っ! ぐう! い、いや…あ゛っ! うあ゛っ!」、
 鬼蜘蛛が巨大な脚を数本振り上げ、バシバシと倒れた亜子に叩き付けた。振り下ろされる重量
の一撃一撃が強い。連続する骨まで砕かれそうな衝撃に、肉体が軋むのが伝わってくる。
「ひぎいっ! あ゛っ、あ゛……ごほっ、はあ、はあ、あ゛っ! うあ゛っ!」
 大きな太鼓を叩いているようなリズムで、鈍い衝撃が亜子の身体を襲う。細い脚や腰を打たれる
度に、亜子から悲痛な声が漏れた。胸や腹を打たれると悲鳴も出せない。ガードしようとしたが、3
回ほど攻撃を防ぐと亜子に腕は内出血だらけになり、痺れて動かなくなった。しかし亜子は泣きな
がら、その動かない腕でガードし続けるしかなくなっていた。
「あ゛あ゛っ! ごほ、げほ、げほ、はあ゛っ! ぐっ! あ゛……いやああ、あ゛あ゛あ゛っ!」
 腹を何度も打たれ、身体が自然にくの字に曲がっていく。口内に唾液と胃液に加えて血の味が
広がり始めた。負傷した肩も何度も打たれ、傷口が少しずつ広がって血が溢れ出てくる。打たれる
と亜子の身体は、埃といっしょに少し浮かび上がる。しかし次の一撃で固い地面に叩き付けられ、
次の一撃で再び浮かぶ。障壁が反発しているせいだったが、最早扱いはサッカーボールと変わら
ない。泣き叫びながら蜘蛛に攻撃を止めるよう訴える亜子に対し、鬼蜘蛛は腹への強烈な一撃で
応える。亜子の口から胃の中身が飛び出した。
「げほっ! えほ、げほ、ごほ……はああっ!、はあ゛あ゛っ!、あ゛あ゛あ゛っ!」
 口から吐瀉物を垂れ流しながら悶える亜子の身体を、鬼蜘蛛が脚で押さえる。そして2本の脚で
亜子の首を挟んで、鬼蜘蛛が亜子の身体を持ち上げる。
「うう゛う゛う゛……う゛あ゛あっ! 止め……あ゛っ、あ゛ぐゔゔゔゔゔゔ、ゔゔゔ―――」
 首を巨大な脚で挟まれた亜子が、脚を掴んで必死に暴れる。喉を潰される苦しさに亜子の顔が
歪み、足がばたばたと空中を蹴るが、鬼蜘蛛は無視してさらに亜子を高く持ち上げ、別の脚で亜
子の顔を殴打した。

498 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 21:11 ID:1L4CvAyS
「や゛あ゛あ゛―――あ゛ぶっ……! ……あ゛……はぁ……ゔあ゛っ! ゔっ!」
 亜子の唇が切れて鼻血が少し飛んだ。脳まで揺さぶられる衝撃に意識がぶれる。二度、三度と
殴打が繰り返され、亜子の顔が左右に振れて悲鳴を撒き散らした。次は真上から脚が頭に振り下
ろされて、ガン、ガン、と鈍い衝撃に2回襲われる。髪の毛の間から血が顔に流れ落ちた。

「――――――っ!」

 世界が反転した。
 放り投げられたと分かった時には、道路のアスファルトがすぐそこまで迫ってきていた。こういうと
きに、受身をとれという話はよく聞くが、亜子は受身など知らない。どこから落下したのかはよく分
からなかったが、激突した音の後に亜子は道路にキスをし、そのまま勢いでごろごろと転がる。止
まった時には、生きているかどうかも分からなかった。
 仰向けで倒れた亜子の逆さまの視界に、ハルナがいた。

「準備運動は終ったの? 亜子ちゃん―――」

 ハルナは四階建ての建物の屋上に立っていた。ハルナの周囲には無数のスケッチブックのペー
ジが乱舞し、まるで餌をねだる鳥の大群のように、一種のおぞましさを伴って群れている。
「さっきの剣を最新200ページにコピーしてみたの。単純な絵だから数秒だったけど」
 真っ白い。雪のような紙。紙吹雪。
 幻想的。
 さっきの、飛んでくる剣。
 ハルナが笑みを浮かべて、亜子を見下している。
 冷酷が刃のように研ぎ澄まされている。
 悪魔が、理性の仮面を被っている。
「『飛剣』200連作―――」

499 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 21:12 ID:1L4CvAyS
 ハルナの周りの紙が、一斉に発光する。
 現れる無数の、鈍い光。
「……う、そ」
 現れたのは、雨のような200本の剣。
 そのまま、亜子に引き寄せられるように、
 近づいてくる。
「あ、あぁ―――っ!」
 周りにドスドスと突き刺さる剣を見て、亜子が慌てて起きあがる。しかし回避は間に合わない。亜
子は身体をマントで隠して顔を手で守りながら、剣の雨に対して背中を向けて丸める。
 ガキィン! ガキガキガキガキン! と背中から障壁が反発する音が聞こえた。
「あ゛っ、あ゛、あ゛、ぐ、あ゛、うあ゛、はあ゛、あ゛、あ゛ぐ、あ゛っ……」
 痛みが連続して亜子を襲った。亜子の障壁に当たり、反発した剣が転がり落ちては消えていく。
剣の嵐は止まず、足の周りが刺さった剣で埋まる。少しずつ標準が合ってきて剣が亜子に集中し
出した。ピンポイントで同じ場所を何度も突かれ、障壁がだんだん弱くなってくる。連続する叩くよう
な痛みに混じって、焼けた鉄を当てられるような痛みが少しずつ増えてきた。反発した剣の先に、
赤い液体が付着し始める。
「あ゛……あ゛う……」
「んっふー。200連発なら、流石に障壁も抜けたかな?」
 最後の一本が転がっていく。亜子はそのまま千鳥足でハルナから離れようと動き始めた。マント
は穴だらけで雑巾のようになり、着ていたボンテージは背中がズタズタになって血がじわりと滲ん
できている。蜘蛛にやられて蒼く腫れた脚にも裂傷だらけで、赤い筋が何本も伝っていた。剣は深
く刺さりはしなかったが、ダメージは酷い。
「あら、鬼蜘蛛の方が好みだったかな? じゃあ、最新ページ30に『鬼蜘蛛』をコピー」
 ハルナがいやらしく嗤いながらそう唱えると、スケッチブックが10秒ほど蒼く光り、その後に蜘蛛
の大群30匹を吐き出した。

500 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 21:12 ID:WQq6ckDC
そんなことより次読んだらその次が3週空くってのは辛いな。
どうせなら旅行おわしてからにすりゃいいのに。

501 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 21:14 ID:1L4CvAyS
「んー。ちょっと少ないかな? 最新ページ20に『鬼蜘蛛』をコピー」
 スケッチブックが6秒ほど蒼く光り、その後に蜘蛛の大群20匹をさらに吐き出した。
 あっと言う間に50匹の蜘蛛の大群を、ハルナは創ってしまう。
「そ、そんなん……はんそく……やん……」
 ハルナの周辺を埋め尽くした蜘蛛の大群を呆然と眺めながら、亜子は小声で呟いた。
「なんで? 少年漫画みたいに一対一で殴り合いするとでも思ったの? 亜子ちゃんに合わせる必
要なんて何もないんだよ? ていうか、信じないかもしれないけど、私って本気出せば麻帆良ごと
消せちゃうの。これでも手加減してるんだから、感謝ならともかく反則なんて心外すぎー」
「あ……ああ……」
 亜子がふらふらしながら、後ろに一歩、また一歩下がっていく。
 逃げてはいけないと分かっていても、足は止まらなかった。茶々丸に殺されるかもしれないと忠
告されても、覚悟はできていたつもりだった。自暴自棄だとエヴァに言われても笑って肯定した。
 みんなを助けたかった。
 自分のように手遅れの人をもう生みたくはなかった。
 もう、酷い事を繰り返したくはなかった。
 そして、
 もう何も残されていないから、
 捨て身で、最後の希望に縋りつこうと……。
 ネギ先生と明日菜に、
 助けを求めようと、
 もしかしたら、助けてくれるかもしれないと……。
 心の中で、ほんの少しだけ思っていた。
 でも、
 もう、ダメだった。
 強くなったと思ったのに
 身体的な苦痛で、簡単に屈してしまう。
 止まれない。
 下がる足はだんだん速くなり、やがて走り出した。


502 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 21:15 ID:1L4CvAyS
「うぐっ! うぅ……あ、足が……」
 両足がずきりと痛んでよろめき、亜子はそのまま倒れてしまう。怪我が酷く、立ったり歩いたりは
できても、最早思ったようには走れなかった。亜子の心がぶるりと震える。自覚はしていないが、
いつも友達からは運動ができると言われてきた亜子である。それが、走ることもできない。これは
思った以上の窮地かもしれない。
「ちょっとちょっと」ハルナが嗤う。「戦意喪失が早すぎない?」
 亜子は気にせずに蝙蝠で編んだマントを広げて逃げようとする。
「あ゛うっ!」
 しかし、亜子は再び無様に地面に転がった。倒れて動けなくなった亜子の、穴だらけでボロボロ
のマントが、風に煽られて虚しく揺れた。
「………うっ、うぅ……ううう……いやっ……いやや……」
 亜子が痣だらけの両腕を伸ばし、ずるずると虫のように這って逃げていく。傷だらけの身体を必
死に動かして、何とかこの場から逃れようと足掻く。


          *


「なんて言うかさ、死にかけたゴキブリみたいだねえ……私の可愛い鬼蜘蛛ちゃんとは大違い」
 ハルナは哀れみのこもった目で亜子を見下し、命令を下した。
「さあ鬼蜘蛛ちゃん。亜子ちゃんを適当に可愛がってあげてちょーだい」
「くも! くも! くもぉぉ!」
 ハルナの近くにいた鬼蜘蛛が、何かをねだるように顔をハルナに近づけた。
「ふふふっ。甘えんぼなんだからー。えっ? 戦うのが不安なの? ……大丈夫よ」
 鬼蜘蛛の固い顔に、ハルナはそっと柔らかい唇を付けた。
 ハルナは気持ちの全てを込め、鬼蜘蛛の口をゆっくりと満たしていく。
 自分の描いた絵と触れ合える幸せが、ハルナの心も満たしていった。
 描いた絵は、みんな絵師の分身である。

503 :ちゃこぺん ◆hOdQ/VJSok :04/04/25 21:15 ID:tGg6A5BE
オナニーは一人でしてくれ

504 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 21:15 ID:1L4CvAyS
「みんなも、できればコピーなんかじゃなくて、一枚一枚描いてあげたんだけど……」
 ハルナは泣きそうな顔で蜘蛛の大群を見渡した。
「今の私じゃあ、まだ無理なの。まだまだ未熟だからね。でもいつか、コピーなんて使わなく
ていいように、みんなを、きっちり描き上げて見せるから―――今は、ごめん」
 鬼蜘蛛たちが奮い立ち、一斉に亜子に襲いかかった。


          *


「のどかー、のどかー、どこよ?」
 向こうで蜘蛛の大群が亜子に押し寄せていて、泣き声に近い悲鳴が断続的に聞こえてくる。ハ
ルナはそれをしばらく見物しており、たまに10匹ぐらい蜘蛛を増やしたりしていたが、視線を
逸らしてのどかを呼んだ。
「な、何ぃ?」恐る恐る、建物の影から顔を出すのどか。「もう、終ったの?」
「何びびってるのよ、あんた」ハルナは呆れたように笑う。「あんな弱いの、怖がることないって」
「……うん。そう、だね……」俯いて低い声でのどかは言う。
「別に、亜子さんが怖いわけじゃないんだけど……」
 怯えた声は、ハルナに届く前に消えていった。
「あー、のどか。これ」ハルナの指した先には、バットや剣などの武器が山積みにされていた。「さ
っき渡したやつでもいいけど、好きなの使っていいから、あんたも亜子ちゃんと戦ってきなよ」
「え、ええっ!?」のどかは驚きの声を上げた。「む、無理だよー」
「大丈夫だって、もう亜子ちゃん戦意なんかないんだから。殴ってでも蹴ってでも亜子ちゃんの名
前を聞き出せばいいの。怖がることないよ。危なかったら助けてあげるし、鬼蜘蛛ちゃんもいるし」

505 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 21:15 ID:9bnXPDoe
>ID:1L4CvAyS
あぼーんするからコテハン付けてくれ。

506 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 21:15 ID:1L4CvAyS
 ノリ気ではなさそうなのどかを亜子の方に行かせて、ハルナはふう、と溜息をついた。
「あんなんだから、いつまでたってもネギ君をモノにできないのよ……」
 スケッチブックを開いてペンを取り出し、ハルナは案を練る。
 名前の不明な敵と戦うための、のどか専用の武器を創る予定だった。
 ところが、いざ創ろうとすると何が良いのか分からない。刀剣、銃器、それとも他の何かか……。
「あー、何か早く創ってあげないと……それで、自信を付けさせてあげなきゃ駄目だよね。うーむ」
 頭の中で無数の線がぐにゃぐにゃと動く。
 それらは形にならない。漠然としたもの。イメージ。浮かんでは消える。
「あー、駄目だ。思い付かない。やっぱ、もう少し亜子ちゃんと遊ぼうかな」
 次はスケッチブックの、どの絵を使おうか考えながら、ハルナはにたりと嗤う。


          *


「ちっくしょー、どこまで行っても侵入できないっ! 何かスゴいスクープが転がっている予感がす
るのに! あー、もどかしいなあ!」
 朝倉和美は「まほら新聞」という腕章を巻いて、麻帆良の住民たちが作る巨大なドーナツの輪の
外側を、自転車で移動しながら無人都市への侵入を試みていた。まるで見えない壁があるように
前進を阻まれてしまう異常事態、果たしてその先では何が起こっているのだろうか?
「このままじゃあ、報道記者の名がすたるってもんよねぇ……」
 悔しそうに唇を噛んだその時、向こうから気合いの篭った声が聞こえてきた。

「うにゃあああああああああ―――っ! 進めないアルかあああああああああ―――っ!」

「………」


507 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 21:15 ID:1L4CvAyS
 そこでは必死になって走っているが、その場から一歩も進めていないクーフェイが汗を流してい
た。どうやら無人都市へ侵入を試みているらしいが、見事に失敗していた。遠くから見るとルーム
ランナーでトレーニングをしているように見える。バカに見えるのは秘密である。
「頑張るんだから……」
 春日美空が苦笑しながらそれを眺めている。止めてやれよ、と和美は思ったが、美空も退屈な
のかもしれない。クーを見ていると面白いのだろう。
「やれやれ、ここも侵入できずかー」
「あ、朝倉」美空が和美の方に寄ってきた。
「ん、何か情報あり?」
 取材メモを取り出して和美は言う。
「ううん、そうじゃないけど……ここ最近、何が起こってるの? この騒ぎだってなんか、怖い……」
 美空は首にかけた十字架を握り締めて言った。
「無人の都市を見てたら、なんかいきなりお化けとかでてきそうで……」
 和美も言葉に詰まる。女子寮の半壊に続き、クラスメイトの刹那・木乃香・亜子・エヴァンジェリ
ン・茶々丸と担任のネギが行方不明になっている。確かに一連の事件に関連がある可能性は大
きい。しかし、何も分からないのが現状である。

「大丈夫! 私がついてるアル! 何か変なヤツが出てきてもやっつけてやるアルよ!」

 ばてたクーがぜいぜい息を吐きながら、Vサインをして美空と和美を見ている。

508 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 21:16 ID:1L4CvAyS
「……」
 もしかしたらクーは、美空の気を紛らわせてやろうとして、ずっとあんな事をしていたのだろうか。
和美は少し考えたが、報道記者が追求するような問題でもない。
「……ふふふ、そーだね。そりゃいいや」
「頼りにしてるよー。くーふぇ」
 和美と美空にも、自然と笑顔が戻ってきた。



 人々が見守る中、沈黙を続ける無人都市。
 災厄を包み込み、沈黙を続ける無人都市。
 内に秘めるは地獄。
 外に存在するのは、当たり前の平和。



509 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 21:18 ID:1L4CvAyS
 殴られ続けると、恐怖も麻痺してくる。
「あ゛う゛――っ!」
 鉄の塊がひしゃげる鈍い音に続いて、ガラスに蜘蛛の巣のようなヒビが走る。
 道路に停車していたワゴンに思いきり叩き付けられた和泉亜子は、自分が人間ではなくなったこ
とを再認識していた。


 なぜなら、普通の中学生であれば、とうの昔にこの世から存在が消えているだろうから。


「ごほ……ごほっ、えほ……はあ、はあ、はあ」
 べっこりと凹んだワゴンの前に亜子はずるずると崩れ落ちる。背中は怪我が酷く、凹んだワゴン
のボディには赤黒い痕が伝い落ちている。
 殴られ続けた腹や胸には痛みが残っている。足は切り傷だらけで、乾きかけた血がべとべとと汚
らしくへばり付いていた。身体中の大切な部分が壊れかけている気がする。
 周囲からは、無数の気配が近づいてくるのを感じた。ハルナがスケッチブックから具現化した怪
物たちは数を増やしながら、体当たりで吹き飛ばした亜子を探して周囲を徘徊している。
「ごほっ、ごふっ……はあ、はあ……参ったなぁ……あんなん、反則やわ……」
 亜子は身体を起こそうと、手足に力を集中させる。色々な所からぽたぽたと、真新しい血が落下
して大小の点々を作っていった。しかし亜子は気にしないで、身体を少しずつ浮かせていく。
 この戦場から逃げることは最早不可能だった。
 ハルナたちは、亜子の名前を吐かせて心を読もうとしている。
 亜子は直接的な明日菜の居場所は本当に知らないが、エヴァにネギ救出を頼んでいるし、明日
菜には手紙でネギと合流するように指示していた。
 それを読み取られると、ハルナたちはネギと明日菜の逃亡を阻止しようと行動を起こすに違いな
い。そうなれば、亜子を助けてくれる最後の望みも断たれてしまう。
 それに亜子が陥落すれば、ハルナたちは間違いなく明日菜を追って結界から街に侵攻するだろ
う。結界の外は住民で溢れかえっており、その時の被害は計り知れない。

510 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 21:18 ID:1L4CvAyS
 詰まるところ、亜子がハルナたちに嬲られ続けている間だけは、結界周辺の安全は保障される
ということである。切れかけた糸のような亜子の抵抗だったが、それには大きな意味があった。
 亜子が暴行に耐えて時間を稼げば、その分みんなは助かる。
 明日菜たちが助かれば亜子にも望みがあった。
 逃げるだけの力が残っていない今の亜子には、耐えることが最善の策に思えた。
 ただ……。


(でも、いくら明日菜やネギ先生でも、吸血鬼になったウチを受けいれてくれるんやろうか……?)


 自分の中の比較的冷静な部分が、最悪の展開をリアルに想像する。
 むしろ攻撃してくるのではないか? 亜子はそんな不安すら抱いてしまった。
 女子寮の事件があった日、親友の裕奈とまき絵に嬲られたトラウマがぐちぐちと疼く。
 行方不明になっても、みんな木乃香ばかりで、誰も亜子を探そうとしなかった現実が重い。


(いや、そんなことないっ! ……そんなこと……あらへん……)


「うぐっ! うっ……くうぅ……」
 全身に走る痛みに耐え、亜子はボロボロの身体で何とか立ち上がった。
「大丈夫……大丈夫や……」
 壊れかけた心が、身体が、壊れていく世界に僅かな救いを求めて、動き出す。
 その時、どこからともなく、スローな声が聞こえた。

511 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 21:18 ID:1L4CvAyS


          *


 亜子さん、見つけましたぁ―――。


「!?」
 その時、上空から巨大な質量が、亜子がもたれているワゴンを直撃した。
「きゃあああっ!」
 反動で吹き飛ばされた亜子が、ごろごろと前に転がっていく。ワゴンを踏み潰した巨大な蜘蛛
は、ハルナがアーティファクトで創った作品「鬼蜘蛛」だった。オリジナルである木乃香の式神より
強いという、生みの親直々のありがたくない紹介もされている。


 ふふふっ、ふふ―――。


 そして一人の少女がいた。
 蜘蛛の丸々とした巨躯の上に立ち、風にスカートを靡かせている宮崎のどかは、まるで「蜘蛛の
上の少女」という一枚の絵のように、堂々とそこに存在していた。目立たず静々とした、野草の花
ような素朴な華が、前髪の奥でゆっくりと咲いていく。
 そして咲いた華がぐにゃりと歪んだ。口が三日月になり、鋭い牙を覗かせてにたりと嗤った。
 風に揺れる前髪の隙間から見える瞳は、獲物を嬲り、追い詰めていく愉悦に濁っていく。
 最初こそ亜子と戦う気のなかったのどかだが、本当に亜子が鬼蜘蛛に手も足も出ないことが分
かってくると、時間が経つにつれて、いい感じにノってきたようである。

512 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 21:19 ID:1L4CvAyS
「の、のどか……」


 貴女の名前は何ですか―――? そして明日菜さんの居場所を、本当に知らないですか――?


 倒れた亜子に、蜘蛛から降りたのどかが黒いロッドを片手に近づいていく。先端に電極が付いて
いるそれは、カシ、カシ、カシ、とアンテナのように伸びて剣のようになる。
 ハルナが創り、のどかに与えた物騒な武器は、スタンガンのような性質のモノらしい。
「うっ!?」
 のどかに気をとられた一瞬に、四方から寄ってきた蜘蛛たちに手足を捉まれてしまう。そのまま
地面に押さえ付けられた亜子に、パチパチと火花を散らす電極がキスをしようと迫ってくる。
「く、うぅ…………そ、そんなもので、ウチを……」
「えへへ」
 のどかは嬉しそうにスタンガンを亜子の顔から逸らし、そのまま杖のように胸に押し付けた。
「きゃあ、あ、ああ、あああ―――っ! あっ! ああっ! あぁ―――っ! ―――っ!」
 バチチッ、バチ、バチチィ! と、胸から乾いた音が響き渡る。胸に与えられた電撃は服を越え、
その下のピンクの突起から肉山の中で暴れまわり、そのまま亜子の身体を一気に貫いた。
「ひやああ、ああっ、あっ、あ―――っ! ほ、ほんまに、知ら、へ、んねん! あぁ―――っ!」
 押さえられた手足がばたばたと振動し、神経が焼き切れそうな電流が身体中を駆け巡る。髪が
ふわりと立ち上がり、逃れられない拷問に亜子の顔が悲痛に歪んだ。
「じゃあ、亜子さんの名前を教えてください―――。それを知らないとは言わせません―――」
 電極を離して、のどかが嗤いながら亜子の顔を覗きこむ。

513 :特厨非FAN ◆AntiT24WoA :04/04/25 21:19 ID:pL1lwGSc
また行殺かよ

514 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 21:19 ID:1L4CvAyS
「はあ、はあ、はあ、はあ、はあ……はあ…………………あああっ! きゃあああ―――っ!」
 黙った亜子に再び電極が押し付けられ、電流が身体に一気に流れ込んでくる。髪を振り乱して
悲鳴を漏らし続ける亜子の目の前では、大小の光がちかちかと点滅していた。
「貴女に黙秘権はありません―――」
「甘いってのどか、亜子ちゃんは自分に契約執行してるんだから、これぐらいやらないと」
 建物の影からわさわさと大小の鬼蜘蛛が溢れ出して、辺りを瞬く間に埋め尽くした。絨毯のよう
に波打つ怪物の群れは、子供大の大きさから乗用車大のものまで様々である。
 現れた「作者」にして「生みの親」である早乙女ハルナは、モーゼのように蜘蛛の大群を割って亜
子の前に立ち、にっこりと嗤ってスケッチブックから絵を具現化させる。
 現れたのは鉄球が付いた鎖、一般にモーニングスターと呼ばれる武器だった。
「う、うぐうう……うう……ふ、あ……」
 両脇の鬼蜘蛛が、電気ショックで弛緩した亜子を器用に立たせた。足に力が入らず、手を吊り
上げられて固定されたその姿は、かの有名な「人間に捕まった宇宙人」の構図に似ている。


(都合のいい漫画みたいに……こ、こういう時に、力を使いこなせて、必殺技とか出せたり……)


 エヴァの力を奪ったのに、ほとんど使いこなせないのが悲しい。
 ひゅぃん、と鎖が風を切る音を聞いて、意識が朦朧とした亜子の視線がその方向をさ迷う。


(……せーへんよね……は、はは、ははは……)


515 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 21:19 ID:1L4CvAyS
「―――っ! がは、ぁ……」
 鈍い音を立てて鉄球が腹にめり込み、押し出されるように亜子は口から半透明な胃液を噴く。
「ふ、う……う……うう……おえ、ぇ……え……えっ……げほっ……」
 衝撃に意識が遠くなったが、吊るし上げられている状態では亜子は倒れることもできない。器用
に2本の脚で亜子の手を吊るす鬼蜘蛛たちは強固で、それを振り払って逃げることができない。


(もう……ダメ……や……)


 絶望の色を浮かべる亜子の胸や肩に、遠慮なく鉄球が叩き付けられる。腹や負傷した背中や肩
を鉄球で抉られ、亜子は痛みに声にならない悲鳴を撒き散らした。


(エヴァンジェリンって名前を言えば……でも、ここで吐いたら……何もかも……台無しに……)


「……はあ……はあ……はあ、はあ……ああ……そんな……」
 ハルナがのどかに、同じモーニングスターを与えている。その時、鬼蜘蛛たちが亜子の手足を掴
んで、そのまま違う方向に引っ張り始めた。4方向のベクトルの始点になった亜子の身体が、だん
だんと不自然なポーズになって、そのまま手足が独立して運動しようとする。
「……ああっ! いやあああっ! やめて! やめてえっ! う、腕が! うでがぁ!」
 引き千切られそうな力に、関節や筋肉がぎちぎちと悲鳴を上げる。八つ裂きではなく四つ裂きだ
った。引き伸ばされて限界まで張り詰めた四肢、更に亜子のボロボロの肉体に鉄球が交互に叩き
付けられた。

516 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 21:19 ID:1L4CvAyS


(いやああ゙あ゛あ゛あ゛あ゛、あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ―――――――――――――――っ!)


 終りが見えない暴行の中で、磨耗していく精神。
 自分が屈すまで続く地獄。
 それが拷問というものなのだろう。
 亜子は肉体を嬲られ尽くされる苦痛の前に、ただ悲鳴をあげるだけだった。


          *


 ……………………
 ………………………………………
 ………………………………………………………………


「う、うぐ、ぅ……う、ウチ、生きてるん?」
 全身がずきりと痛かった。目覚めた亜子はぼんやりした頭で、意識を失う前のことを思い出す。
過酷な拷問に意識が潰え、一瞬の解放を求めて眠りに引き込まれてしまった。
「あ、何やこれ、動けへん……服は……?」
 亜子はマントも何も纏ってはおらず、剥かれた状態で寝転がっていた。拷問でできた蒼痣や切り
傷が、まるで皮膚病のように全身に広がっていて、糸がコイルのように巻き付いている。
 小さな膨らみや淫裂までが全て露になっている格好だと気付いて、亜子は何とか自由を得よう
と、痛みを我慢してもがいてみる。しかし、滑らかなラインの体躯は糸でぐるぐるに絡みとられ、
細い手足も糸で縛られていた。

517 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 21:20 ID:1L4CvAyS
 周辺には歪な多角形を紡いだ糸がびっしりと何重にも、背景を埋め尽くすように濃密に張り巡ら
されていた。学園都市の建物に糸がぐしゃぐしゃに絡み付いて綿飴のようになっている。その変貌
した学園都市の光景は亜子に、まるで巨大な蜘蛛の巣に捕らわれた蝶になった気分にさせた。
「……って、これ、蜘蛛の巣!?」
 ようやく理性が戻ってきた亜子は、自分が危険な状況にいると悟った。
「御名答、亜子ちゃんがあんまりにも白状しないから、責め方を変えることにしたの」
 後ろからハルナの声が聞こえた。のどかの気配も感じる。
「あれを見てよ。ほら、蜘蛛の巣の所々に張ってある呪符、あれがねー、なかなかスゴイんだわ」
 よく見ると、周囲の蜘蛛の巣には無数の赤い呪符が貼ってあった。
「このかの特製の呪符だよ。まあ、空間をまんべんなく包むように配置しなくちゃいけないから、私
の可愛くて、強くて、働き者の鬼蜘蛛ちゃんが沢山いないと使えなんだけどね。それは」


「1分を30分に変える魔法」


「この呪符だらけの蜘蛛の巣での30分は、外での1分だよ。そろそろ関東魔法協会が動いてくる
かも知れないけど、これならまだ、ゆっくり、ゆっくり、亜子ちゃんのお話を聞いてあげられるね」
 つまり、仮にあと10分で救援が来るとしても、それは5時間後ということになる。
「う、ウチをどうする気なん……? うひゃ!?」
 怯えたような声で尋ねた亜子の前に、人間大の鬼蜘蛛が姿を現した。
 鬼蜘蛛は8本の脚で身体を持ち上げて器用に立ち上がっている。そして、その腹部にはハルナ
の悪趣味としか表現のしようがない、どす黒い肉の塊が盛り上がっていた。太く、醜悪な外見のそ
れは、育ち方を間違えたキノコのように見えるが、亜子がそれを見間違えるはずがない。
「ああ……」
 亜子の牙がカチカチと鳴り始めた。

518 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 21:20 ID:1L4CvAyS
 あの悪夢を忘れるはずがない。
 公園で、体育倉庫で、屋上で、一人の女として嬲られ尽くされたあの日を。
 目の前に聳えている肉棒は、亜子を嬲っていた茶々丸よりも巨大だった。亀裂からとろとろと透
明な汁を垂れ流しているその怪物は、亜子には料理を前に涎を垂らしているように見えた。
「い、嫌やっ! 蜘蛛なんかに犯られるやなんて……! じょ、冗談やない!」
 なんとか拘束を解こうとする亜子だったが、縛っている糸は思ったよりも強靭で、吸血鬼の力でも
びくともしなかった。鬼蜘蛛が少しずつ、亜子に近づいてくる。
「くっ! うっ、くう、ぅ……! この糸、切れへん……! な、なんで切れへんの!」
 糸を切ろうと力をふり絞る亜子の顔に、だんだんと諦観の色が濃くなっていく。潤んだ赤い瞳に、
凶悪な肉の塔が堂々と映り込んだ。
「い、いやっ!」
 亜子が顔を背けて拒絶の意志を示した。縛られた身体で這うように、蜘蛛に背中を向けるように
動いていく。
「あああっ!」
 しかし鬼蜘蛛は前脚で、お好み焼きをひっくり返すように亜子の身体を回転させると、己の欲望
の塊を亜子の鼻先に突き付けた。
「ううっ、臭い! 近づけやんといて……」
 猛烈な臭気に亜子の顔が歪んだ。ハルナの嫌がらせなのか、その肉棒はまったく洗われていな
いような異常な匂いを放ち、黒い亀頭にはカスのようなものがびっしりとこびり付いている。生ゴミ
としか思えないその肉塊を近づけただけで、亜子の身体はそれを拒絶していた。
「まあ、明日菜の陵辱用に生やしたモノだからね、そんなに上等なブツじゃないよ」
 ハルナがくすくすと嗤って、鬼蜘蛛の頭をそっと撫ぜる。
「亜子ちゃんには最後の考える時間を与えてあげる。タイムリミットは、この鬼蜘蛛ちゃんが射精す
るまでかな。いい返事を信じてるからね―――」

519 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 21:20 ID:1L4CvAyS
「な、なにを……う、うむぅ!?」
 異臭を放つ肉の塊が、亜子の舌の上に滑り込んできた。鬼蜘蛛は8本の脚を器用に使い、4本
の脚で己の身体を支え、2本の脚で亜子の身体を支え、残る2本の脚で亜子の後頭部を押して、
亜子の口に肉棒をねじり込んだ。悪臭に亜子は思わず呻く。
「う、うぶ―――ん、んん―――う、うう、うん―――う、うぅ―――」
 縛られて抵抗もできない亜子の頭が前後して、口と舌で肉棒をしごかされる。舌に肉棒を擦り付
けられるたびに、亜子の舌の表面のざらざらがカスを拭いとっていく。
 唾液を潤滑油にして舌の上の肉棒が、亜子の口から喉までを激しく犯していった。それが新しい
刺激になって唾液がさらに分泌され、口の中をどろどろにしながら肉棒に絡み付いていく。


(……うううっ、うえっ! こんな汚いもん、口でさせられるやなんて……口が腐ってまう……!)


 口の中に広がる肉の異臭と、喉奥まで犯される苦しみから、加速度的に吐き気が高まっていく。
しかし口はしっかりと塞がれて、込み上げてくるモノですら肉棒に押し返される気がした。
「う、ぐうう、ん―――ぷはっ!」
 鬼蜘蛛の動きにタイミングを合わせて、亜子が頭を力いっぱいに動かして肉棒を吐き出した。亜
子の口から解放された肉の塊は少しキレイになった姿で、亜子の前にぴんと直立する。
「うえっ! おええっ! ごほっ! はあ、はあ、はあ」
 嘔吐する亜子の小さな唇から、ペニスの味が溶けた唾液がだらだらと垂れ落ちる。口の中に染
み付いた肉棒の残滓を吐き出す亜子のほっぺに、硬直した肉棒がべちゃりと押し付けられた。
「ちょっとちょっと」ハルナが笑いながら、亜子に言った。「吐き出しちゃダメだよ」

520 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 21:20 ID:1L4CvAyS
「き、汚い、うっ、く、ぅ……」
 固く閉ざされた亜子のピンク色の唇に、巨大な亀頭が割って入ろうとする。亜子は顔を動かして
唇をずらしながら、侵入を防ごうと必死に肉棒と格闘した。
 しかし鬼蜘蛛は亜子で遊んでいるように、カウパーや唾液が混じった汁をほっぺや鼻、目の周り
や顎ににじり付けながら、ゆっくりと唇を追いかけている。


(ウチ、遊ばれてる……この蜘蛛、やろうと思えば簡単やのに……ウチが嫌がるのを……)


 綺麗な顔をべとべとに汚しながら、鬼蜘蛛はたまにほっぺを亀頭で突ついたり、嗅がせるように
鼻先に近づけたりしながら亜子を嬲る。そしてしばらくして、今までのが遊びだったと言わんばかり
に、簡単に唇を捉えて、亀頭をそのまま前進させていった。
「ん、うぐぐ、い、やぁ……ぐうう、ん―――」
 唇の防壁を突破され、再び肉の塊が口の中に侵入してくる。一度吐き出したモノを再び口に入
れられ、再び喉まで深く犯されていく。
「う、んん―――んぐ、ぅ―――ぐう―――ん、んんっ―――」
 口内で大きさを増していく肉の塊に抵抗しようと、亜子は牙を思いきり立てた。しかし固いゴムの
ような感触が伝わってきただけで、文字通りに歯が立たない。
 まるでヘドロ塗れの分厚いホースをしゃぶらせれているような錯覚に陥りつつある亜子に、鬼蜘
蛛は気持ち良いのか、さらに勢い良く腰(?)を亜子の顔に打ち付けていった。
 何回か犯された経験のある亜子は、そろそろ射精が近いことを察知していた。再び吐き出そうと
するがしかし、今度は蜘蛛も警戒していて叶わなかった。


どびゅるるる、どぷっ、どぷぷ、びゅるびゅるびゅる、どぴゅ―――っ!


「―――っ!」


521 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 21:21 ID:1L4CvAyS
 どくどくと脈打つ肉塊から、まるで水道の蛇口を捻ったように大量の欲望が吐き出され、亜子の
口という受け皿にぶちまけられた。人間ではない、限度と言う概念を知らない勢いと量だった。
 どろどろとした濃い精液が口の中に溜まっていき、その苦さと生臭さ、そして息苦しさが亜子を苦
しめる。しかし、口が塞がれている以上、亜子は悔しさを押し殺して、口にいっぱいになった精液を
ごくり、ごくり、と喉の奥に流しこんでいくしかない。
「う、うぶ……うんん! う、ううっ! うっ! ごほっ!」
 ようやく口から肉棒が抜かれると、亜子の口からどろどろと粘っこい欲望が溢れ出した。気管に
精液が入って激しく咽込み、赤い瞳に苦しさと悔しさの涙が浮かぶ。
 しかし、呆れたことに蜘蛛はまだ射精を終えておらず、咽込む亜子のホワイトブルーの髪に精液
を降らせていて、亜子の髪の毛の中には大小無数の精液の塊ができていた。重力に引っ張られ
てゆっくりと、ナメクジのように亜子の頭から垂れ落ち、髪から地面に滴り落ちる。
 さらに鬼蜘蛛は、口を精液塗れにして苦しんでいる亜子を脚で掴み上げると、さきほど汚した顔
にさらに残りの白濁液をびちゃびちゃとかける。
「あ、あああっ……こ、こんな……あぶ、うぶぶ……」
 顔中を生臭い精液塗れにされた亜子が、どさりと地面に放り投げられる。鬼蜘蛛はとりあえず満
足といった感じに「くもおおっ!」と叫ぶと、作者であるハルナに場所を譲った。
 亜子は身体的な拷問とはまた違った、敗北感に近い感情に打ちのめされていた。
「鬼蜘蛛ちゃんけっこうスゴイでしょー。で、返事はどう?」
「………」
 亜子は何も答えない。ハルナはその沈黙から、拒絶の意志を感じていた。
「まっ、そうこなくっちゃ面白くないよねぇ。亜子ちゃん。ねえ、みんなもそう思うでしょ?」
 ハルナがそう言うと、周囲の蜘蛛の巣からわらわらと大量の蜘蛛が現れる。見た感じでは、百匹
はいそうな数である。どうやら、亜子が眠っている間にさらに増産したらしい。

522 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 21:21 ID:1L4CvAyS
「100Pとかって、なかなか愉しそうだよね」
 ハルナの声に、亜子はびくりと身体を震わせた。これから始まるであろう亜子を嬲り尽くす宴に
対し、亜子には覚悟を決める時間も与えられていないらしい。
「す、すごいねー。ハルナ」
 アーティファクトをカードに戻していたのどかが、ハルナに話しかけている。
「ふっふっふー。まあ、このミニストラ・コノカ最強のパル様はもう、無敵って感じかな?」
 にやりと嗤ってハルナは応えた。


「この『魔法のスケッチブック』に、勝てるやつなんていないのよ。うっふっふ―――」


          *


 人を排し、沈黙を守る無人都市。
 囲む人々から少し離れた場所に、チリンと鈴の音がした。
 そこに立つのは一人の少女、名を神楽坂明日菜という。
 病院に入院しているはずの彼女は、今、無人都市の境界にいた。
 右手に亜子からの手紙を握り締め、その顔は心配そうに無人都市を眺めている。
 その、色の異なる瞳が見つめる先は―――




523 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 21:21 ID:1L4CvAyS
「さーて、みんな、楽しいパーティの始まりだけど、喧嘩しないで仲良く順番を守ってねっ」
 ハルナの一言で鬼蜘蛛たちは動き出した。既に姿を現していた蜘蛛に加え、周囲を覆う蜘蛛の
巣の影から一匹、また一匹と顔を見せて溢れ返り、縛られて動けない亜子を包囲してその半径を
縮めていく。
「うひゃひゃ、ここまでくると壮観、壮観」
「壮観だけど……で、でも……ちょっと、多すぎない―――?」
 百匹以上の巨大な蜘蛛が蠢く、悪夢のような光景が街を浸食していく。その中でも、まるで戦車
のように巨大な鬼蜘蛛に乗ったハルナとのどかは悠々として、蜘蛛の海に呑まれようとしている亜
子を眺めていた。
「ひぃ……こ……こんなにおるん!?」
 想像ではなく、実際に蜘蛛の大群に囲まれた亜子の赤い瞳が驚愕に見開かれた。耳で聞いた
百匹と、目で見る百匹は全く違っており、その大群の欲望が全て自分の肉体に注がれると思うと
目の前が暗くなってくる。
「あ、ああ……っ」
 逃げようとしても逃げられない、まさに脱出不可能の地獄だった。
 亜子のしなやかな体躯には戦闘と拷問による傷が痛々しく刻まれており、喧嘩のけの字も知ら
なかった肉体に与えられた暴力の凄まじさを物語っている。柔らかな肌は泥で汚れ、糸に絞り出さ
れた乳房は腫れて表面から出血していたが、それでもピンク色の突起が健気に、女性のシンボル
としての美しさを辛うじて保っていた。電撃の拷問で痺れの残った四肢は蜘蛛の糸でさらに拘束さ
れており、逃走はもちろん抵抗する権利すらも奪われている。
 口から喉にかけて汚いペニスに犯されてしまい、肉棒と精液の味と匂いで汚染されてしまった。
異臭を放つ肉棒から噴き出した欲望を飲まされ、有り余る量を顔や髪にかけられたせいで、亜子
の頭からは白い欲望がぽたぽたと落ちている。生臭い牡の匂いが顔に染み付いてくる嫌悪感に、
亜子はどうすることもできず耐えるしかない。顔を拭くこともできない現状で、亜子の綺麗な顔と髪
には白い欲の塊がどろどろと、まるで蛆虫の群れのように這っていた。

524 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 21:21 ID:1L4CvAyS

(……こんな数に襲われたら、ウチ、どうなってまうか……でも、名前とか喋ってしもたら―――)


 後にはもう何もない。亜子は明日菜たちを売るか、地獄を見るかの瀬戸際に立たされていた。
 そして、亜子の心を揺さぶるように、鬼蜘蛛の大群はその凶器を勃起させて接近する。黒々とし
た異形の肉塊たちは咽かえる臭気を纏いながら、とろとろと透明な粘液を滴らせて亜子の穴を狙
っていた。
「い、嫌やっ……どっちも嫌やあっ!」
 亜子は赤い瞳で蜘蛛たちを睨んだが、精液塗れの顔にその目は蜘蛛を刺激してしまうだけであ
る。そんな亜子を蜘蛛たちは、しかし無反応で取り囲んでいる。


「みんな、もう一度言うけれど、順番を守ってね」


 ハルナの声が合図になった。蜘蛛たちは一斉に亜子に飛びかかり、亜子の視界を蜘蛛の大群
が覆い尽くした。
「い、いやああああ―――っ」
 もう囲んでしまえば意味はないと言うのか、亜子を縛っていた糸をぶちぶちと切断しながら、無
数の蜘蛛の脚が亜子の脚の間や腰、腹や首、肩の下に潜り込んでくる。亜子を御神輿のように持
ち上げると、真下に一匹の蜘蛛が器用にも仰向けに潜り込んできた。
「ああっ!」
 巨大な蜘蛛の胸(?)に落ちた亜子の周囲に何匹もの蜘蛛が犇めき合った。それぞれが腐った
ような匂いのする肉塊に欲望を漲らせており、獲物に挿入するのを心待ちにしている。

525 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 21:22 ID:1L4CvAyS
「んあっ! や、やめ、て……う、あっ……ひ、ひうぅ……」
 左右から蜘蛛の不気味な形の口が、亜子の小ぶりの胸山にしゃぶり付いてくる。腫れて血で汚
れていたが蜘蛛たちは気にもせずに、亜子のピンク色の乳首に吸い付いて舐め始めた。
「え、えっ!? あっ、こんな、あ!?」
 左右から違う蜘蛛に胸を貪られ、それぞれ異なる感覚が亜子の身体に響いてくる。右の蜘蛛は
舌(?)で亜子の突起を、まるで表面にだけ熱を伝えるように優しく転がしてくる。左の蜘蛛は突起
を舌でべろべろと舐め、時には甘噛みして刺激してくる。片方が薄皮を一枚一枚剥いていく丁寧さ
を持っているならば、もう片方は一気に全ての皮を剥いてしまうような勢いがあった。


(お、おかしい……こんなん、ゼッタイにおかしい……寝てる間に、何か―――)


「ああっ、はああ、あっ! くぅ、ぅ……」
 亜子の乳首は蜘蛛の舌に弄ばれて反応し、蜘蛛の口の中で熱を帯びてぴんと立ち上がってい
る。火山が噴火してマグマが流れていくように、亜子の肉山からどろどろと蜘蛛の唾液が流れ落ち
て、胸の間に溜まっていった。そして胸に加えられた圧力は別の感覚に変質して、亜子の肉体を
震わせていく。それは異様に研ぎ澄まされていた、官能の悦びに違いなかった。
「ふっふっふ。やっと気付いたのかなぁ」
 ハルナがにやりと笑って、試験管に入った黄色い液体をちらつかせる。
「木乃香が作った媚薬だよ。亜子ちゃんが気持ちよく眠っている時に、用量の10倍を投薬してお
いたから、はっきり言って狂えるよ。どうやら、効いてきたみたいだね」
「………!」

526 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 21:22 ID:1L4CvAyS
 亜子の顔に戸惑いの表情が浮かぶ。てっきり無理矢理に犯されると思っていた亜子は、間違え
てもそこに大きな快感が存在するとは思っていなかった。おそらくは暴力の延長の陵辱だろうと考
えていて、痛みに耐えることばかり考えていたのだが、変な意味で裏をかかれた気分だった。
 ちなみに、この頃、エヴァも同じ媚薬を円に飲まされていたが、そんなことは亜子は知る由もな
い。
「そ、そんにゃもんで……、あふっ!? そ、そんなところ舐めやんといて、あっ! ああっ!」
 寒気のような電流が全身を駆け巡る。蜘蛛の舌が伸びたのは亜子の胸だけではなかった。亜子
のベッド代わりになっている蜘蛛の口は、亜子の股間から少し昇ったところの、大きな肉の割れ目
の隙間にあった。
 そこにある窄んだ穴を、蜘蛛の舌がぴちゃぴちゃと音を立てながら舐めている。周囲の毛をべっ
たりと唾液で濡らして、舌の先端がその穴に入り込む。すると亜子はびくりと震えて、その穴はきゅ
う、と縮んで舌を締め出そうとし、身体には微弱な電流が走った。


(お、お尻の穴……舐められて……気持ち悪いのに、こんなに……っ!)


「あ、はぁ―――っ! ひい! あっ、ああっ! なんやこれ……や、止めてえ―――っ!」
 お尻の穴を舌で責められる悦びを、亜子は必死に否定しようとする。そんな亜子の抵抗を嘲笑う
ように、蜘蛛たちは舌を使って亜子の胸やお尻の穴、脇や太ももの内側、首や耳などを責めてい
き、ぴちゃぴちゃという音が身体中から聞こえてくる。開発すらされていなかった場所から引き出さ
れていく性感が、亜子の精神を苛ませていった。

527 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 21:22 ID:1L4CvAyS

(こ、このままじゃ、ほ、本当に狂わされる……でも、身体が言うことをきかへん―――ああっ!)


「あっ、あかん、だめ、やっ! あっ! あんっ! ふううう……ふあっ! あっ! ああっ!」
 精液でどろどろの顔が仄かに紅潮してきて、赤い瞳は恐怖とは別の感情で潤みつつある。
 淫裂からはとろりと愛液が滲んでいたが、蜘蛛たちは決してそこを責めようとはしなかった。
 まるでピアノのドレミファソラシドのように、違う所を責められる度に僅かに違う悲鳴を上げなが
ら、亜子は身体中を舐めまわしてくる舌たちに戦いを挑む。手足を振りまわして何とか責めから逃
れようとするが、蜘蛛たちはその抵抗も楽しんでいるように亜子を責めていった。
「ふ、ああっ! あっ! ああっ! ああん! も、もう、許し……ひあっ!? あっ! あ!」
 それは虫は違えど、獲物をゆっくりと弱らせていく蟻地獄のようであった。
 亜子の抵抗が疲労と官能で潰えていくのを、蜘蛛たちはじっ、と観察している。


          *


「ふふふ、亜子ちゃん、本番はまだまだこれからだよ―――っ」
「ねえ、ハルナ」
 にやりと嗤うハルナの後ろから、のどかが話しかけてくる。
「ん? 何よ?」
「まだ、これ続けるの……?」
 ハルナはのどかを見て笑った。
「ふふふ、なーに言ってるのよ、のどか。調教はこれからじゃない」
「う、うん、それはいいんだけど、でもなんか……手段と目的が入れ替わってない―――? 私た
ちの目的はあくまで、ネギせんせーを明日菜さんの呪縛から解き放つために、明日菜さんをやっ
つけに行くことだったよね? じわじわ亜子さんを責めるんじゃなくて、さっさと明日菜さんの情報を
吐かせて追跡しようよ―――。亜子さんの調教より、明日菜さんを―――」

528 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 21:23 ID:1L4CvAyS
「んなこと言ったって、亜子ちゃんは名前を吐かないし。それにせっかくノってきたんだしさー、もう
ちょっとぐらい愉しませてよ。あんただってさっきまでスタンガンで遊んでたじゃん。今更そんな…」
「で、でも、ハルナ約束したよね……。明日菜さんをやっつけるの手伝ってくれるって―――」
「そりゃしたけど、私だってやりたい事とかあるし。ここで止めたら鬼蜘蛛ちゃんも可哀想でしょ?」
「……わ、私とこんな蜘蛛のどっちが大事なの……? はぶっ!?」
 ハルナの張り手がのどかの頬を強かに打ち、のどかは尻餅を付いた。


 こんな蜘蛛? 私の描いた鬼蜘蛛ちゃんに何てこと言うのよっ!


「……は、ハルナ」
 信じられないと言った顔で、のどかは大声で叫んだハルナを見る。
「何よ?」
「ハルナ、最近おかしいよ……何ていうか、性格が変わったって言うか、病的って言うか……」


 スケッチブックに絵を描かされてるみたい……


「なんか、何よりもアーティファクトが大切みたい。アーティファクトを貰った日だって、ハルナって木
乃香さんの話も聞かずに帰ろうとしたし、ハルナがアーティファクトの能力に酔うのは別にいいと思
うけれど、そればっかりってのは、その―――」
「うるさいなぁ。それなら一人で明日菜を探しに行けばいいじゃない!」
 のどかは無言で俯いてしまった。

529 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 21:23 ID:1L4CvAyS
「一人で明日菜のところに行って、一人で喧嘩して、一人でやっつけてくればいいでしょ! ほら、
さっさと行けばいいじゃない! できるならやってみなよ! 戦闘能力の欠片もない、しかも敵の名
前が分からないとまったく役に立たない自慢のアーティファクトで、警備されてる病院に突撃してき
なよっ! あんたなんか誰かの後ろにいなきゃただの役立たずじゃん! デカイ口叩かない!」
「は、ハルナ……」
「あー、はいはい。もう決定ね。もう少し調教して遊ぶ。文句なし。いいね。おっ、いいぞいいぞ!」
 亜子の調教の方を向いたハルナの後ろで、のどかはぼそりと呟いた。


「最初っから『心を読めるアイテム』を創ってくれればいいのに………からできないんだよね」


 ハルナはぴくりと耳を大きくし、鬼気迫る顔でのどかを見る。
「今、なんて言った?」
「最初っから『心を読めるアイテム』を創ってくれればいいのに………


 画力とアイデアが足りないからできないんだよね―――


「だってそうでしょ? ハルナが創ったアイテムですごいのはみんな、他の絵や武器を写しただけ
だもん。「精神を壊す黒い本」は私のアーティファクトを絵にして改造しただけだし、あの「背負う
翼」はなんかの漫画のパクリだし、「鬼蜘蛛」だって式神の教本の挿絵を格好よく写しただけだし、
「メテオ」なんか理科の教科書写して炎に似せたトーン貼っただけだし―――」
「な、なんだって……」
 ハルナは怒っているというより、傷ついた顔でのどかを見る。
「普段、半ズボンの子供やホモの漫画ばっか描いてるから、脳味噌が特化しちゃって、アイデアが
枯渇して、完全にオリジナルの「心を読めるアイテム」が創れないんでしょ? 結局、ハルナはその
スケッチブックを全然使いこなせてな……あ゛あ゛あ゛―――っ!?」

530 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 21:23 ID:1L4CvAyS

 がぶっ!


「……は、ハルナ、ぁ……? あ゛……あ゛、あ゛あ゛―――」
 のどかが言葉を言い終わる前に、ハルナの牙がのどかの首筋に食い込んでいた。じゅるじゅる
と音を立てながら、のどかの血液がハルナの口に満ち満ちていく。
「ふぅ―――っ。ふぅ―――っ。ふぅ―――っ」
 ハルナは涙目になりながら、のどかの声を噛み潰していく。のどかの手がばたばた暴れながら
ハルナの背中を叩き、服を掴んで引き離そうとしていた。
 しかしハルナはのどかに食らい付いて離れず、のどかの顔はみるみる貧血で蒼くなっていく。
「ぁ、る、な……や、め゛、てよ、ぉ……あ……あ……あ゛あ゛あ゛……」
「ふぅ―――っ。ふぅ―――っ。ふぅ―――っ。ふぅ―――っ」
「は、る、な、ぁ……どうして……こんな……ひ、ど、ぃよ……」
「ふぅ―――っ。ふぅ―――っ。ふぅ―――っ。ふぅ―――っ。ふぅ―――っ。ふぅ―――っ」
 涙目で睨んでくるハルナに、のどかが口をぱくぱくさせながら話しかける。
「……め、がぁ……かすむ…………あ、やまる、から………………あ゛…………」
 のどかの手から力が抜けて、だらりと垂れ下がった。
「ふぅ―――っ。ふぅ―――っ。ふぅ―――っ。ふぅ―――っ。ふぅ―――っ。ふぅ―――っ。ふぅ―
――っ。ふぅ―――っ。ふぅ―――っ」
「……ご……めん………・・・…ご……めん…………いうこと………き……く、から……………
や、めて………なんか……」
「ふぅ――――――っ。ふぅ――――――っ!」
 ハルナに血を吸われるのどかの声が、段々か細くなっていった。

531 :名無しさんの次レスにご期待下さい:04/04/25 21:23 ID:1L4CvAyS
「…………………………………………………………………………あ゛あ゛………………………
……………………………………きゅう、けつ、きなのに………よるが、くらい…………………
…………………………はる、なの…………………かおも、なにも………………………………
………………み、えな、ぃ……………………………………………………………………………」
 ハルナがのどかから牙を抜くと、のどかはそのままよろめいて、鬼蜘蛛の上から転がり落ちてい
った。のどかは胸が上下しているので、死んだりはしていないようである。
「げぷ……」
 口をのどかの血で汚したハルナは、呆然として倒れたのどかを眺めていた。
 倒れている親友を見下ろしながら、
 牙にかけた親友を味わいながら、
 後悔の念を瞳に宿しながら、
「私のせいじゃない」
 ポツリと呟いて視線を逸らす。


「これは全部、亜子ちゃんのせいだよ。もう思いっきり、徹底的にやらないとね―――」


 桜子が消えて、のどかも消えて、
 一人残ったハルナは蜘蛛の大群に囲まれて、ただ虚ろな視線で亜子を見る。
 自分の中で納得させているような時間が過ぎると、亜子に異常な感情が向かっていく。



 絵師と司書の狂騒祭。
 祭りの後に残るもの。
 そんなものは無いのかもしれない。
 濁った瞳で倒れているのどかの周りでは、鬼蜘蛛たちが困って顔を見合わせていた。


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