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IFSS〜ダム世界が平和だったら〜

1 :通常の名無しさんの3倍:04/02/01 00:03 ID:???
もしガンダム世界が平和だったら・・・という、女子大生セイラさんが主役の
リレーSSがスレタイを改めて復活です。

たくさんの方の参加をお待ちしています。
ただし、参加にあたっては次の事項>>2をお守りください。



2 :2:04/02/01 00:04 ID:???
2

3 :おぬこ:04/02/01 00:04 ID:???
(;@Д@)<お、お、お、お、おぬこで

4 :通常の名無しさんの3倍:04/02/01 00:05 ID:???
       へ ヘ        へ ヘ        へ ヘ
      \| /       \| /       \| /
      ';: ":;.       ';: ":;.       ';: ":;.
  ∧∧⊂.;'、 :つ  ∧∧⊂.;'、 :つ  ∧∧⊂.;'、 :つ
 ;'゚Д゚、":、.: :;:'   ;'゚Д゚、":、.: :;:'   ;'゚Д゚、":、.: :;:'
 '、;: ...: ,:. :.、.: '    '、;: ...: ,:. :.、.: '   '、;: ...: ,:. :.、.: '
  `"∪∪''`゙    `"∪∪''`゙    `"∪∪''`゙

Q ↑これはエビフライだと思うのですが・・・?
A テンプラです。

  ,.、,、,..,、、.,、,、、..,_       /i
 ;'`;、、:、. .:、:, :,.: ::`゙:.:゙:`''':,'.´ -‐i
 '、;: ...: ,:. :.、.:',.: .:: _;.;;..; :..‐'゙  ̄  ̄
  `"゙' ''`゙ `´゙`´´´

Q ↑これはさすがにエビフライですよね?
A テンプラ以外のなにものでもありません。

Q:これはエビが顔を出しているのでエビフライでしょう!
    ,.、,、,..,、、.,、,、、..,_       /i
   ;'・д・、、:、.:、:, :,.: ::`゙:.:゙:`''':,'.´ -‐i
   '、;: ...: ,:. :.、.:',.: .:: _;.;;..; :..‐'゙  ̄  ̄
    `"゙' ''`゙ `´゙`´´
A:あなたもしつこい人ですね。
  天ぷらったら天ぷらです。

5 :通常の名無しさんの3倍:04/02/01 00:06 ID:???
■参加にあたっての注意■

□かなり長く続いております。
 初めてSSに参加される方はご面倒でも過去スレに目を通し、これまでの
 流れをつかんでください。

□NG事項
・むやみに登場人物を殺す。
・脈絡のないエッチシーンを書く

□登場人物は出来るだけUC限定にてお願いします。


みんなで楽しいSSを作っていきましょう!




6 :通常の名無しさんの3倍:04/02/01 00:07 ID:???
IFSS  国際犬ぞり連盟

7 :通常の名無しさんの3倍:04/02/01 00:07 ID:???
■過去スレ■

セイラタン・・・・(;´Д`)ハァハァ
1本目
http://ex.2ch.net/shar/kako/1001/10015/1001517256.html
2本目
http://ex.2ch.net/test/read.cgi/shar/1023520230/
3本目
http://ex.2ch.net/test/read.cgi/shar/1028442354/
4本目
http://comic.2ch.net/test/read.cgi/shar/1031825177/
5本目
http://comic.2ch.net/test/read.cgi/shar/1039961618/
6本目
http://comic3.2ch.net/test/read.cgi/x3/1043512505/l50
7本目
http://comic3.2ch.net/test/read.cgi/x3/1067103905/l50




8 :通常の名無しさんの3倍:04/02/01 00:08 ID:???
■セイラタン・・・・(;´Д`)ハァハァ リレー小説保存庫■
スレのSS部分だけを纏めてくださっているサイト
http://www.page.sannet.ne.jp/a5taka/

■お絵かきの掲示板■
セイラさん関係のお絵かき掲示板を提供くださっているサイト
http://dog.oekakist.com/sleggar/



9 :通常の名無しさんの3倍:04/02/01 00:08 ID:???
界面せん断強度(Interfacial shear strength:IFSS)

10 :通常の名無しさんの3倍:04/02/01 00:09 ID:???
■ここまでのあらすじ■

あれから幾年かが過ぎ、セイラは大学生になっていた。
ララァは不慮の事故で行方不明になり、傷ついたシャアは音楽プロデューサーを辞めて
アクシズに留学する。
ガルマとは良好な恋人関係が続いているセイラだが、ある時、ミュージシャンになった
スレッガーと再会し心が揺れる。
同じ頃、イセリナが留学生としてガルマの大学にやって来た。今も深くガルマを愛する
イセリナは二人の仲を裂こうと画策して・・。


随分長く続いているストーリーですので、詳しくは過去スレ>>3を読んでください。



11 :通常の名無しさんの3倍:04/02/01 00:10 ID:???
メガテンIF SS版

12 :通常の名無しさんの3倍:04/02/01 00:10 ID:???
□アルテイシア・ダイクン(セイラ):主役。ブラコン気味の女子大生
□キャスバル・ダイクン:セイラの兄、アクシズに留学中
  かつてシャア・アズナブルの異名で音楽プロデューサーとして活躍した
□ジオン・ダイクン:セイラとシャアの父。サイド3の首相
□ガルマ・ザビ:副首相デギンの末子、シャアの親友。セイラとは恋人。
□ギレン・ザビ:ザビ家長男、ジオン内閣首脳の一人
□サスロ・ザビ:ザビ家次男、トップモデルで売れっ子カメラマン
□キシリア・ザビ:ザビ家長女、大学院生?
□ドズル・ザビ:ザビ家三男。妻ゼナ、長女ミネバがいる
□デギン・ザビ:ザビ家の長。サイド3の副首相
□ハマーン・カーン:ザビ家の遠縁の娘。かつては無邪気にシャアを慕う少女
だったが、アクシズから戻りガラリと雰囲気が変った。
□マハラジャ・カーン:ハマーンの父
□ジンバ・ラル:ジオンの腹心
□ランバ・ラル:ジンバの息子で同じくジオンに仕えている
□クラウレ・ハモン:ランバ・ラルの部下?
□マ・クベ:サイド3の若手議員。キシリアと付き合っている



13 :通常の名無しさんの3倍:04/02/01 00:12 ID:???
□ゴップ提督:地球連邦政府の高官
□ゴップ提督の令嬢:かつてシャアの見合い相手だった
□ララァ・スン:大ブレイクしたシンガー。シャアの愛人だったが行方不明に
□アムロ・レイ:駆け出し中のシンガーだったが、ララァの事件以来芸能界を引退。
□カミーユ・ビダン:フラナガン研究所のホープ
□ナナイ・ミゲル:レコード会社「レウルーラ」社員で、プロデューサー時代の
シャアの秘書兼愛人
□マリガン:ララァのマネージャーだった
□ドレン:アムロのマネージャーだった
□シムス:シャアの指示でスレッガーやアムロをスカウトした人
□ウォン・リー:ララァのコンサートのスポンサー
□パプティマス・シロッコ:「ティターンズ」のプロデューサー
  シャアと陥れる為、コンサート初日のララァを拉致した
□イセリナ・エッシェンバッハ:セイラの友人だったが、ガルマの事で決別
□ミライ・ヤシマ:セイラの友人、妊娠中
□クェス・パラヤ:セイラの友人
□ブライト・ノア:ミライをついに妻にする
□マチルダ・アジャン:セイラの所属するブラスクラブの顧問だった
□ハサン:セイラの学校の校医
□アナベル・ガトー:シャアとガルマの先輩
□ケリィ・レズナー:シャアとガルマの先輩
□ニナ・パープルトン:ガトーとケリィの女友達
□ラトーラ・チャプラ:ガトーとケリィの女友達
□マツナガ:シャアの友人
□マルガレーテ・リング・ブレア:シャアの担当教授の秘書。シャアの愛人の一人
□レコア・ロンド:シャアの後輩で元愛人
  シャアを恨んでおり今はシロッコと付き合っている。ララァ拉致の実行犯



14 :通常の名無しさんの3倍:04/02/01 00:13 ID:???
  ∧_∧   ∧_∧ .  ∧_∧   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 (´Д⊂ヽ  (´Д⊂ヽ  (´Д⊂ヽ< 明朝トリオ参上!!
⊂明朝 ノ ⊂明朝 ノ ⊂明朝 ノ  \_______
  人  Y  .  人  Y  .  人  Y
 し (_)   し (_)   し (_)


15 :通常の名無しさんの3倍:04/02/01 00:14 ID:???
□スレッガー・ロウ:セイラの先輩で元恋人。木星に留学していたが・・・
□リュウ・ホセイ:スレッガーと共に木星へ留学していた
□ジョブ・ジョン: スレッガーのバンド「ソロモン」の元メンバー
□ウッディ:スレッガーのバンド「ソロモン」の元メンバー。マチルダの恋人
□ベルトーチカ・イルマ:元カレのスレッガーを追って木星へ
□タムラ:喫茶店兼レストラン「木馬亭」のマスター
□フラウ・ボウ:「木馬亭」のアルバイト。アムロに淡い恋心
□ハヤト・コバヤシ:フラウの同級生
□カイ・シデン:ライブハウス “Pegasus” の客
□ブーン:週刊誌マッド・アングラーの編集長
□赤鼻:上記のカメラマン。かつて、ガルマとセイラのスキャンダルをでっちあげた
□ミハル・ラトキエ:上記の新人カメラマン。カイのご近所さん
□ジュドー・アーシタ:ジャンク屋の少年。ララァ救出の時セイラに力を貸した
□カムラン:ミライの親の決めた婚約者だった
□ギュネイ・ガス:上級生、クェスの彼氏!?(設定のみ)


以上ほとんど前スレからコピーです。
リレーSSなので皆さん参加してください。



16 :通常の名無しさんの3倍:04/02/01 00:15 ID:???
>1
乙です!ありがとうございます!!

17 :通常の名無しさんの3倍:04/02/01 00:15 ID:???
前スレの最後のSS


「アムロ・・・」
両腕に伏せていた顔は涙でぐしょぐしょだった。
「ど、どうしたんです!?」
驚いて問うとベルトーチカは気まずそうに顔を背けたが、やがて自嘲するように
言う。
「スレッガーに抱いてって言って、断られたの。それだけ」
「・・・・・・」
「いいのよ、分かってたことだから。じゃ、おやすみなさい」
テラスにもたれかかるようにしてよろよろと立ち上がる。
その姿を見ながらアムロは今日リュウから聞かされたばかりの彼女とスレッガーの
話を思い出していた。
「・・・君を見てると、ある人を思い出すよ」
ぽつりともらされた言葉にベルトーチカは足を止めて振り返る。
「彼女も思いの届かない人を愛して・・・愛し続けていて・・・」
アムロの脳裏にエメラルドの海が広がる。
「たとえ報われなくても、その人の傍にいるだけで幸せなんだって言っていた」
「そんなの、負け犬の言うことよ! 私は違うから! 私は絶対スレッガーを
もう一度振り向かせてみせるんだから!」
声を荒げるベルトーチカをアムロは痛々しく思う。
「そう、君と彼女では全くの正反対だ。でも・・・」
・・・でも、同じ不幸をたどる気がしてならない・・・。
アムロは自分の上着をベルトーチカにかけてやりながら続けた。
「一人の人を思い続けることは素晴らしいことだと思う・・・でも、それに
とらわれていたら、幸せになる道を自ら閉ざすことになる」
「・・・・・」
「愛し愛される、そんな恋が君にもきっとやってくるんじゃないかな」
そんな幸せを知ることもなく、彼女は宇宙に消えてしまった・・・。
「幸せになって欲しいよ、ベル。僕が言うのもなんだけど」
「アムロ」
「じゃ、おやすみ」
アムロは微笑むと、屋上を後にした。


18 :通常の名無しさんの3倍:04/02/01 00:38 ID:???
>>1
乙です!嬉しいなぁ

19 :通常の名無しさんの3倍:04/02/01 02:06 ID:???
「・・・」
セイラは窓辺に吊るされたプランターを眺めながら、小さく溜息をついた。
「アルテイシアったらさっきから何回目?」
「あ、・・・ごめん、ミライ」
ガルマとのことで悩むセイラはその日、なんとなく友人宅を訪ねていたのだ。
しかし付き合っていることすら自分の口からは話したこともなく、また恋愛相談など自分の柄ではないと承知しているだけに、口から出るのはたわいのない雑談と溜息ばかりだった。
そんなセイラの心情を知ってか知らずかミライは、優しく微笑んだ。
「いいわ、お茶替えるわね」
ポットに手を伸ばそうと半分腰を浮かしたその体は、もういつ生まれてもおかしくないほどお腹が膨らんでいる。
「予定日、再来週だっけ」
「ええ、だけど初産でしょ、いつ・・・」
リンリンリンリン!!!
突然けたたましく玄関のベルが鳴る。
「誰かしら」
ミライがドアを開けると同時に飛び込んで来たのは、かつてのクラスメイト、クェス・パラヤだった。
「ニュース、ニュースよ、ミライッ! なんとついにイセリナがガルマ・ザビと付き合い始めたって!・・・・って、え、ア、アルテイシア!?」
そこで初めてセイラの存在に気づき、クェスは飛び上がった。


20 :通常の名無しさんの3倍:04/02/01 02:08 ID:???
「まぁ、おかけなさいな、クェス」
真っ青になった友人をなぐさめるようにミライは椅子をすすめる。
「う、うん・・・」
しょんぼりと項垂れながらクェスはちらりとセイラを見た。セイラは無表情のまま、指先でティーカップに描かれたバラの絵をなぞっている。
クェスだって、高校時代セイラとイセリナの間に何があったのか、うすうすは気づいていた。もちろんガルマとセイラの今の関係にも。
「で? その話、誰に聞いたの?」
「・・・・イセリナ」
「そう」
ミライがわずかに眉を顰める。
「ごめんっ、アルテイシア! でも、多分それって嘘だと思う。・・・嘘っていうか、イセリナの願望っていうか、だからっ」
「分かってる」
やっとカップから目をあげるとセイラは寂しそうに微笑んだ。
クェスに吹き込めば自分に伝わる。イセリナの計算だ。
「気にしないでいいわ、クェス。 ミライ、今日はありがとう。楽しかった」
「アルテイシア!」
バッグを手に立ち上がるセイラをミライは追いかける。
「心配しないで。さようなら」
なおも心配げに自分を見つめる友人たちに片手をあげて別れを告げると、セイラはアパートを後にした。


21 :通常の名無しさんの3倍:04/02/01 02:11 ID:???
夕方の並木道を家路に向かって歩きながら、セイラの心はどんどん重く冷たくなってゆくのだった。
手段を選ばないイセリナ。自分を愛しているといいながらイセリナを拒絶しきれないガルマ。
イセリナ、昔はあんな人ではなかった。自らを貶めるような、あんな嘘をつく人ではなかったのに。
でも、問題の本質はきっとイセリナではないのだろう。
かつてはあんなに好きだと思ったガルマの優しさが、今はずるさに思える。昔から誰に対しても、
どんな相手に対しても徹底的に冷淡にはなれないが故に、ガルマの周りはいつも言い寄る女性でいっぱいだった。時にはそれに小さな嫉妬を燃やしたこともあったけれど・・・今は逆に冷えてゆくのを感じるだけだ。
「ふ、勝手なものね、自分のことは棚にあげて」
気づいて自嘲する。ずるいのは自分だって同じではないか。もう終った恋の相手に、もう愛してはいない男に、手を差し伸べられたとはいえ縋ってしまった。
あの時どんなに辛かったとしても、先輩の気持ちを知っていたのだから、バイクに乗るべきではなかった。 先輩を利用し、ガルマを傷つけた。そんな自分はなんとずるく、醜いのだろう。
「・・・・もう、駄目ね、きっと・・・ガルマ・・・!」
やっと結論が出た・・・身も心も疲弊したセイラは、溢れる涙を止める事が出来なかった。


22 :通常の名無しさんの3倍:04/02/01 02:14 ID:???
はーい!さっそく入れさせて頂きました!
色々あって疲れてしまって、気持ち喪凹んできて、もういいや、って感じでしょうか。
続きよろしくお願いします。


23 :通常の名無しさんの3倍:04/02/01 08:19 ID:???
ワーイ、さっそく続きが!面白いです。
優しさがガルの長所でもあり短所だね。別れてしまうのかな?
今後の展開が楽しみだ!

24 :通常の名無しさんの3倍:04/02/01 20:58 ID:???
辛いなぁ…
ガルマも決して優柔不断なわけではないんだけどね。
ちゃんとイセリナ断ってるし。
でもセイラにしてみたら、そこは見えないわけで。

もう別れてしまうのでしょうか?

25 :通常の名無しさんの3倍:04/02/04 08:16 ID:???
続き希望です

26 :通常の名無しさんの3倍:04/02/05 00:17 ID:???
別れるでしょう

27 :通常の名無しさんの3倍:04/02/05 19:09 ID:???
そ、そうなのかな?だとしたら悲しい。続きが待ち遠しいです。

ガル 「戻る気になりゃいつでもおいでよ」
セイラ 「・・・」


28 :通常の名無しさんの3倍:04/02/05 19:55 ID:???
うーん、ちょっと進めてみます。
あとよろしくです!

29 :通常の名無しさんの3倍:04/02/05 19:57 ID:???
その次の日。セイラはガルマと二人、夜のドライブに出た。
もう長いこと二人きりで会っていなかったような、そんな錯覚が二人を襲う。
何から話していいのか分からず、しばらく無言でハイウェイを飛ばした後、
ガルマは夜景の美しい港に車を止めた。
遠くには何十もの殖民コロニーと、往来する船のネオンが輝いている。
「良かったよ、君から話し合いたいと言ってもらえて」
サイドブレーキをかけ、一呼吸置いてからガルマが切り出した。
「あの時も、あの時も、冷静じゃなかった。…まったく僕としたことがね。
でも今なら…」
今なら君に分かってもらえるように、話すことができる。
君の気持ちだって、もっと理解してあげることが出来るだろう…。
そう続けようとして、ふと隣に目をやった、その瞬間ガルマの胃に鋭い痛みが走る。
無言でネオンを見つめたままのセイラの表情に、まさかの悪い予感がしたからだ。
まさか、アルテイシア…?
「ガルマ、私…」
「いや! 僕の話を先にさせてくれないか」
意を決したように切り出したセイラの言葉を慌てて遮る。
(落ち着け、ここはとにかくアルテイシアの誤解を解いて、それから…)
動揺を押し隠し、ガルマは言葉を続けた。


30 :通常の名無しさんの3倍:04/02/05 20:06 ID:???
ガルマ、ピ〜ンチ!!
ここは乗り切るんだぁ。

31 :通常の名無しさんの3倍:04/02/07 18:46 ID:???
ガル、ガンガレ!!

32 :通常の名無しさんの3倍:04/02/08 16:26 ID:???
「あの日、僕の部屋に彼女がいたのは、ゼミの飲み会で、彼女がひどく酔って
気分が悪いというから休ませてたんだ。本当にそれだけだよ、神に誓ってもいい!」
気持ちとは裏腹に、声が上ずっている。
ガルマは言葉を切って一つ深呼吸をした。沈黙の気まずさに耐えられず、
カーステレオのスイッチを入れると、ラジオからは今流行のポピュラーソングが
流れて来た。
「・・・もう昔の想いにとらわれていない、なんていう彼女の嘘を見抜けなかった
僕が甘かったんだと思うよ。まさか彼女がここまでするとは想像もしなかった。
おまけにこのまま行けば、君達が昔みたいに戻れるんじゃないか・・・と本気で
考えてさえいたよ。自分のおめでたさには呆れるばかりだ」
セイラの美しい横顔を見ながらガルマは、だんだんと気持ちが落ち着いて
くるのを感じていた。
「イセリナとの共同研究からは手を引くよ。公私混同はしたくないけど、
もうこれ以上彼女に掻き回されるのはごめんだ」
「・・・・・・」
「・・・だから・・・許して欲しい、アルテイシア。 愛している・・・君を失いたくない」
ガルマはそう言うと、祈るような気持ちで目を閉じた。
歌手の甘く切ない歌声だけが車内に小さく聞こえていた。


33 :通常の名無しさんの3倍:04/02/08 16:27 ID:???
みなさま、続きはどちらをご所望でしょうか。


34 :通常の名無しさんの3倍:04/02/08 17:00 ID:???
うわ。難しい選択ですね!別れて欲しくないような新展開も読みたいような・・・

35 :通常の名無しさんの3倍:04/02/08 17:54 ID:???
い〜や〜〜っ!! 恐ろしい展開になりそうで怖いっ!
だけど別れて深まる愛ってのもありますからね〜、どうしたもんか。

36 :通常の名無しさんの3倍:04/02/08 21:01 ID:???
「・・・ごめんなさい」
「!」
一番聞きたくなかった言葉に、ガルマは激しいショックを受ける。
「私、あなたを愛しているのか分からなくなってしまったの」
「・・・僕が信じられない?」
かぶりを振るセイラ。
「あなたの言ってることは信じるわ。信じたいと思う。でももう以前のような
気持ちは持てなくなってしまった」
「・・・それは奴が・・スレッガーが現れたからかい?」
「・・・・・」
「ちゃんと話してくれないか、僕のことは気にしなくていいから」
「分からないわ。・・いいえ、先輩のことは確かに好きだけれど、でもそれは
もう恋ではないんじゃないかって」
「じゃあ、どうしてっ!」
思わず声が荒くなる。
イセリナとのことでもなく、スレッガーでもない。
それでは彼女の心変わりの理由は一体なんだと言うのか。
「・・・・・・理由は、僕自身か・・・」
自分で答えを口に出し、さすがにガルマは落ち込んだ。
横恋慕してきた女性に翻弄される自分は、恋人からしたらさぞ情けない
男に映ったことだろう。
自分ではいつだってベストを選択して行動してきたつもりだったが・・。

37 :通常の名無しさんの3倍:04/02/08 21:05 ID:???
「・・・それだけじゃないわ。私、今のままでは自分のことも好きじゃ
なくなってしまう・・・」
スレッガーとの再会に心が騒いだこと、かつての友人を憎まずには
いられないこと。とつとつと語るセイラが痛々しく、ガルマは
「・・・もう、いいから」
言葉を遮り彼女を抱き寄せた。
「そんなの、人間なら誰だって持ってる感情だ。そんなことで君が
自分を嫌ったり恥じたりすることは無いんだ」
「・・・でも苦しいわ」
ぽろりとセイラの瞳からしずくがこぼれる。
「今のままじゃ、私、苦しい」
目を潤ませ、しかしセイラはガルマの胸から体を離した。
「もう、自由になりたいの。いろんな感情から」
「それは、別れたいということ、だね?」
声が震えそうなのを必至に押し隠して問うガルマに、セイラは
頷くことで答えた。
「・・・分かった」
本当は何も分かってなどいなかった。
二人が別れることで、セイラの言う「自由」を得たところで一体何の
解決になるというのだろう。負の感情などこれからの人生、どこへ
行っても湧き上がるものだ。逃げて解決するものではない。

38 :通常の名無しさんの3倍:04/02/08 21:11 ID:???
しかしガルマにはもう伝えるべき言葉が無かった。
愛されてもいない、彼女を苦しめるだけの存在に堕ちた自分には、
何を言う権利も無い。言ったところで彼女には疎ましいだけだろう。
せめて引き際くらいは潔くありたいと思うガルマだった。
「ありがとう・・・本当に今まで・・・」
もうセイラの瞳に涙はない。ただ、短く告げられたその言葉に万感の
思いを感じガルマはしばし呆然とした。
「・・・じゃあ」
「え、送っていくよ」
「大丈夫よ、タクシーを拾うから」
そう言ってさっさと車を降りるセイラに、慌ててガルマも外に出る。
「き、気をつけて」
「ガルマも。それじゃ、ね」
くるりと背を向け去ってゆくセイラ。
引き止めたい。だがもうそれは許されない。
未練なことはするな!お前はフラれたんだから!
強い意志の力で思いを断ち切り、ガルマもまた踵を返し車に向かった。

39 :通常の名無しさんの3倍:04/02/08 22:38 ID:???
続きが!ふたりは本当に駄目なのか?それとも・・・?

で、ちょっと脱線ですがあげさせてもらいます。

40 :通常の名無しさんの3倍:04/02/08 22:40 ID:???
 ある薄暗い部屋。生活感の感じられない無機質な雰囲気の中、デスクの上に置
かれたモニターに美しい顔立ちの青年が映し出されていた。優しい微笑みに合っ
た甘い声が発せられる。
「やぁ、キャスバル。元気かい?最近は便りもよこさないみたいだな。それにし
ても一度位は帰ってこられないのか?口には出さないが、アルテイシアも君の父
上も寂しがっているぞ」
 それは遠く離れた親友に一方通行ではあるが定期的に近状を伝えるものであっ
た。信頼する友人に任せたとはいえ、やはり可愛い妹の事は気掛かりである。
今のシャアにとって彼の厚意は有り難いものだった。
「僕達は変わりが無いよ。・・と、云いたいところだが僕もここのところ、研究が
忙しくて彼女には寂しい想いをさせてしまっているようだ。――けれど、彼女へ
の気持ちは変わっていない。いや、むしろ以前よりも愛しているよ・・。じゃあ、
またな。アルテイシアに手紙のひとつでもだしてやれよ」
 切れたモニターをしばらく眺めたまま、シャアはガルマが苦悩しているのでは
無いかと懸念した。
『何かあったのか?ガルマ・・・』 
 今迄とは様子が違うガルマを案じつつシャアは、もうひとり気掛かりな人物に想い
を馳せていた。シャアは逞しい腕を延ばすとデスクにある写真立てを手に
取るのだった。そこには、自分の選んだ蒼い振り袖を纏う金髪の少女が自分に寄
り添い微笑んでいる姿があった。
「アルテイシア・・」
 ポツリとその名前を口にした途端、シャアの心は激しく揺れ始めるのだった。
何かあったのならば飛んでいって抱き締めてやりたい衝動に駆られるがそれは
もう、自分の役目では無いのだ。遣る瀬無さに空いた片手の拳を強くデスクに
叩き付ける。
『アルテイシア、こんな兄ですまない。――ガルマ、アルテイシアを頼む・・・』
 シャアは冷えた心で手に取った写真立てを伏せるのだった。


41 :通常の名無しさんの3倍:04/02/10 18:57 ID:???
シャア、久々の登場ですね!
そろそろ彼も本舞台登場・・・かな?

42 :通常の名無しさんの3倍:04/02/10 20:01 ID:???
車のドアに手をかた時、見るまいと思っていたセイラの姿が目に入る。
往来の、車の激しく行き来する大通りに向かい、車を止めるでもなくセイラはぽつんと立っていた。
その後姿の心もとなさにガルマはたまらず走り寄る。
「アルテイシア!」
後ろから手首を掴み、振り向かせたセイラを見てガルマは驚く。
セイラは泣いていた。
(本当にもう駄目なのか!やり直そう、もう一度!)
そう叫んで抱きしめたい衝動をぐっとこらえる。
彼女の涙は決して別離の後悔ではなく、心ならずも自分を傷つけた、
そのことに対する悲しみの涙に過ぎないと知っていたからだ。
「夜はもう冷える、これを・・・」
シャツの襟元から覗かせていたスカーフをシュルリと抜き取るとガルマはセイラの首元に巻いてやる。
そしてそのまま無言で手を挙げ走ってきたタクシーを止めた。
「さあ」
うなずき車に乗り込むセイラ。
ガルマはその車が走り出し、見えなくなるまでその場でじっとたたずむのだった


43 :通常の名無しさんの3倍:04/02/10 20:40 ID:???
ガルマ、可哀想だ。互いにまだ好きなのにお別れ…だよね?
いつか復縁してホスィ。
ところで、兄さんの帰国があるのかな?だと、嬉しい〜!ここの兄さんは大好きなのです

44 :通常の名無しさんの3倍:04/02/10 21:05 ID:???
うん、今は別れちゃったみたいだけど、この先はどうなるかは
分らないですよね。
ガルがんばれ〜!
そして兄さんの復活も是非お願いしたいです。
私もここの兄さん大好きです!


45 :通常の名無しさんの3倍:04/02/12 00:12 ID:???
ガルマはだるい体を鞭打ちながら研究室に向かった。
セイラに別れを告げられ、数日は自暴自棄になってみたものの、
根が真面目なガルマである。
「ガルマさま!」
まだ朝も早い時刻というのに、ただ一人イセリナが教室にいた。
「おはようございます! 良かった、今日もご欠席だったら・・・」
嬉しそうに近寄るイセリナとは目をあわさず、ガルマはまっすぐ自分の
ロッカーに向かうと上着をかける。
バン!
扉を閉める時、うっかり大きな音を立ててしまった。
ビクッとイセリナが身じろぎするのが目の端に入る。
(あ、失礼)
そう言い掛けてやめ、ガルマは棚からファイルを取り出すと自分の
椅子に腰掛けた。
背中にイセリナの視線を感じる。
いつもと様子の違うガルマに戸惑っているのだろう。
(いやな感じだ・・・まるで弱いものイジメをしていているみたいだ・・)
罪悪感を感じながらもガルマはイセリナの方を振り向けないでいた。
(早く誰か来てくれ・・・)
そう願いながらガルマは手元のファイルをめくり続けた。

46 :通常の名無しさんの3倍:04/02/12 00:21 ID:???
「お先に〜」
「おー、おつかれさん!」
長い一日が終わった。ゼミの仲間が次々と帰宅してゆく。
朝と同じく、教室にはガルマとイセリナ、二人だけになった。
結局今日一日、ガルマはイセリナに最小限必要な言葉しかかけないで
過ごした。イセリナの悲しげな表情に心が痛むが、これから話すことを
彼女に受け入れてもらうにはこうするしかないと自分に言い聞かせ
ながら・・。
目をやると、イセリナはしょんぼりと荷物を片付けているところだった。
「イセリナ、話があるんだ」
ガルマは深呼吸して切り出した。
「は、はい!」
はじかれたようにイセリナが立ち上がる。緊張しているのが分かった。
「・・・アルテイシアと別れた」
「え?」
「これに関しては全く僕達二人の問題だ。君には何の関係も無いこと
だと断っておこう」
「・・・・?」

47 :通常の名無しさんの3倍:04/02/12 00:25 ID:???
「つまり君は、君が僕たちにしたことに罪悪感を感じる必要はない。
と同時に、君の気持ちに僕が応えることも金輪際無いということだ」
「・・・・ひどいですわ」
イセリナの瞳がみるみる涙でいっぱいになる。
ガルマは目をそらした。
(ひるむな、ここで決断しなくては、ますます彼女を傷つけることになるぞ)
「応えることが出来ない以上、君の傍にいることは互いの為にならない
だろう。悪いが共同研究からは外れさせてもらう。教授にはもう話したよ」
「あんまりです!ガルマさま! あなたがいなければ完成しません!」
ショックのあまりイセリナは泣き伏した。
さすがにガルマは申し訳ない気持ちでいっぱいになり、膝をついて
幾分声音をやわらげて言った。
「大丈夫、後任には優秀な奴を推しておいたから。・・それに君の力だって
相当なものだ。自信を持って・・・」
しかしイセリナは激しくかぶりを振るばかりだ。
ガルマは心を鬼にして立ち上がる。
「研究の成功を祈っています、イセリナ」
そう告げるとまだ床に伏すイセリナを残しガルマは部屋を後にした。

48 :通常の名無しさんの3倍:04/02/12 00:29 ID:???
イセリナちょっと可愛そうだったかな?

49 :通常の名無しさんの3倍:04/02/12 06:49 ID:???
乙です。
イセリナにはこれぐらいでちょうど良いでしょう。
しかしこんな状況になってさえガルマは紳士的で(w

50 :通常の名無しさんの3倍:04/02/12 19:45 ID:???
セイラの方はスレッガーとのことどうするんだろう。
出来ればちゃんとケリを付けて欲しいもんだが。
(このままなし崩しにまたスレッガーが遠征とかはイヤン)

51 :通常の名無しさんの3倍:04/02/12 19:59 ID:???
うん、この位でイセリナは挫けないでしょう。
ガルマも、もっと早くに手を打っておけば別れずにすんだかもね。
続き、お待ちしてます〜!

52 :通常の名無しさんの3倍:04/02/15 21:01 ID:???
これからどうなるのか…楽しみです!

53 :通常の名無しさんの3倍:04/02/16 06:36 ID:???
続き期待age!

54 :通常の名無しさんの3倍:04/02/22 08:21 ID:???
難しい局面で職人の皆様は思案中ですかね?
続きを楽しみにしてますので頑張ってください。

できれば近い内にシャアのフカーツを! といってみるテスト

55 :通常の名無しさんの3倍:04/02/22 20:33 ID:???
続き入れさせて頂きます!

56 :通常の名無しさんの3倍:04/02/22 20:35 ID:???
ガルマとの別れから数週間が経ち、ようやく気持ちも落ち着いて来たころ、
セイラはミライの誘いで街へ出ていた。
「ごめんなさいね、つき合わせて」
「いいけど、本当に大丈夫なの?」
目の前でおいしそうに飲茶を頬張る友を、セイラは半ば呆れつつ気遣う。
「予定日はとっくに過ぎたのに全然生まれる気配が無いのよ。
それよりこの半額券今日までなんだもの、無駄にしちゃもったいないでしょ」
どこまでも気楽なミライにセイラは笑った。
そういえば人と出かけるなんて久しぶりだ。ここずっと、セイラは何かを
忘れるように学業に没頭し、寮に帰るのも夜遅くなることが続いていたのだから。
…もしかして、だからミライは今日?
ふとそう思い至ったセイラに、相変わらず満面笑みのミライが言う。
「まぁ、このニラ饅頭、最高に美味しいわよ!食べてみなさいよ!」
「ええ、いただくわ」
セイラも微笑んだ。


57 :通常の名無しさんの3倍:04/02/22 20:37 ID:???
「食べたわねぇ、お腹いっぱいで苦しいくらい」
レストランを出たセイラは歩きながら伸びをする。
「でも本当に美味しかった・・」
友人を振り返ってセイラは驚く。ミライが脂汗を流してうずくまって
いたのだ。
「どうしたの、ミライ!!」
「セ、セイラ・・・う、生まれそう・・」
「えええっ!??」
大変だ。急に産気づいたらしい。
「と、とにかく急いで病院に行かなきゃ、待ってて今車を・・」
「いや、一人にしないで・・」
走り出そうとしたセイラの手をつかんでミライは離さない。
普段の彼女ならありえない取り乱しようだ。
「何言ってるの!」
「・・セイラ、怖いのよ・・」
「しっかりして!」
パニック状態の友人を叱るセイラの肩を、誰かがトントンと叩く。
「どうした?」
「先輩!」
それはスレッガーだった。


58 :通常の名無しさんの3倍:04/02/22 20:38 ID:???
夕方。
セイラとスレッガーは並んで病院の中庭のベンチに腰掛けた。
あの時、たまたま通り掛かったスレッガーがセイラとミライを見つけ、
そのまま車でここまで運んでくれたのだ。
病院に運ばれたミライはその30分後超安産で男児を出産した。
しばらく付き添った後、知らせを聞いて駆けつけたブライトと
バトンタッチして二人は病室を出てきたのだった。
「今日は本当に助かったわ」
「しかしあんたとはいつも意外なところで会うなぁ」
スレッガーは苦笑いしながらタバコに火を付けた。
「ホントね」
セイラも笑う。
「あの後さ、彼氏とは仲直りしたのかい?」
さりげなく、しかし核心を突いた問いにセイラはギクリとする。
だがいわば彼も無関係ではないのだ、ちゃんと報告する義務が
あるだろうとセイラは思う。
「・・・彼とは別れました」
「ふーん・・・俺のせい?」
夕方の風がしずかに二人の間を通り過ぎた。


59 :通常の名無しさんの3倍:04/02/22 20:40 ID:???
「なーんてな、それは自惚れすぎか」
すぐにスレッガーは自分の言葉を笑いに変える。
だからこそセイラも自分の心を正直に伝えることが出来た。
「今は一人になりたいの。一人になっていろいろ考えてみたい」
「そうか・・」
「・・・ええ」
言葉が途切れる。
見舞い客だろうか、子供の元気な笑い声が遠くから聞こえる。
やがて沈黙を破ってスレッガーは静かに言う。
「俺はさ、やっぱりあんたが好きだよ。だがあんたが一人でいたいって
思ってるうちはもうあんたの前に姿は見せねえ。いつかあんたの方から
俺に会いに来てくれるのを待つことにするさ」
「・・・先輩」
「そんな顔しなさんな」
「・・ごめんなさい。ありがとう」
スレッガーは立ち上がるとセイラに右手を差し出した。
「とりあえずはさ、けじめつけとかねーとな」
セイラも立ち上がり二人は握手する。さようならの握手。
みつめあう二人の瞳に昔の楽しかった日々がよみがえる。
しかしそれも一瞬だった。
「じゃな」
スレッガーは踵を返すと一度も振り返らないまま去って行った。
その背を見送りながらセイラは、自分の初恋が今ようやく終わりを
告げたのだと感じていた。


60 :通常の名無しさんの3倍:04/02/22 20:43 ID:???
スレッガーとの恋もとりあえず清算させてみました。
ゼロからの再スタート・・になるといいなと思います。

61 :通常の名無しさんの3倍:04/02/23 19:18 ID:???
セイラにはきっとまた素敵な人が現れるでしょう。
それにしてもスレッガ−、切ないなぁ。考え様によってはリベンジもありなのか?

ひとりになった事だし久々に兄さんに甘えるセイラさんも読みたいかも…。

62 :通常の名無しさんの3倍:04/02/29 18:42 ID:???
兄さん復活を目論んでみました。
以下続きを書かせていただきます。

63 :通常の名無しさんの3倍:04/02/29 18:43 ID:???
夕方の研究室でガルマが一人レポートを書いていると、ケリィ・レズナーが
入ってきた。彼はガルマと同じゼミの先輩である。
「よ!進んでるか?」
「ええ、順調です。それより先輩にはご迷惑をかけて・・・」
「あー、そのことなんだがな、お前さんに話しておこうと思って」
ケリィは近くにあった椅子を引き寄せガルマの前に陣取る。
「彼女、この先の研究は一人で大丈夫だって、俺は断られたよ」
「イセリナが!?」
共同研究の相方を、ガルマは自分の代わりにケリィに依頼していた
のだった。
「すいません・・」
「いやいや」
気を悪くする風でもなくケリィは首を振った。
「ただなぁ、お前さんから聞いた話だと、まだ一人で大丈夫って
段階じゃないように思うんだが・・」
「・・その通りです」
イセリナは一体何を考えているのか・・。自分に断られたことで
やけばちになっているのだろうか。まさか・・。
ガルマはあれ以来顔を合わせていないイセリナが心配になる。


64 :通常の名無しさんの3倍:04/02/29 18:44 ID:???
「まぁお前さんたちに何があったか知らないが、そんなわけだから。
力になれなくてすまんな」
「いえ、こちらこそ申し訳ありませんでした」
その時ドアが開き、もう一人の先輩、アナベル・ガトーが教室に
入ってきた。
「よ、お疲れさん! 教授の還暦パーティの世話役も大変だな」
ケリィがすかさず声をかける。
「あぁ、もう来月ですねぇ」
ガルマの言葉に小さく頷きながら、アナベルも二人の近くに
腰を下ろす。
「うむ、後はほとんど出席者の確認程度なのだが・・そうだ、
君はキャスバル・ダイクンの親友だったな」
「ええ」
「彼からまだ出欠の返事が来ていないのだ。話す機会があれば
君からも聞いてもらえるとありがたいのだが」
「しかし奴は今アクシズだろう?」
「恩師の大事な節目だ。教授の下で学んだ者には全員招待状を
出した。出来れば多くの出席を期待している」
キャスバルが帰国するかも知れない・・思ってもみなかった
展開にガルマは心が騒いだ。
懐かしい親友との再会を喜ぶ気持ちと、そして・・・
「そうそうキャスバル・ダイクンといえばさ、ラトーラが奴の妹が
男と二人でいるところを病院で見たって言うんだぜ」
「!」


65 :通常の名無しさんの3倍:04/02/29 18:45 ID:???
「それがよ、その相手の男っていうのが、今超話題のスレッガー・
ロウだって言うからさ、お前そりゃ見間違いだろって」
「やめんか」
調子に乗って話すケリィと諌めるガトー。
ガルマは自分の笑顔が不自然になっていないことを祈りつつ立ち上がる。
「分かりました、ガトー先輩。キャスバルには早く返事を出すよう
僕からも伝えます」
「あ、あぁ、頼む」
「ではお先に失礼します」
ガルマは一礼すると二人を残して教室を出た。

外はもう星が光っていた。
アルテイシア・・・やっぱり奴と・・?
ガルマは一人駐車場までの道を歩きながら、考える。
アルテイシアはスレッガーとのことは、もう恋ではないと言って
いたが、あれは自分を傷つけない為の嘘だったのだろうか。
やはり彼女は今でもスレッガーを愛しているのか・・?
かつて、まだ自分たちが恋人になる前にセイラから聞かされた
彼への想い。セイラの初恋。
今こそ何の邪魔もなく、愛し合う二人は・・・
「くそっ!」
バキッ!
激しい嫉妬でガルマはいつの間にか目の前にあった自分の
車のボンネットを、握りこぶしで殴りつけていた。


66 :通常の名無しさんの3倍:04/02/29 18:46 ID:???
続きよろしくお願いします!

67 :通常の名無しさんの3倍:04/02/29 20:31 ID:???
ああ〜、ガルマってば誤解した〜(…んだよね?)
しかし教授の還暦パーティ…ナイスです!

68 :通常の名無しさんの3倍:04/02/29 23:25 ID:???
嫉妬に燃えるガルマ、萌え〜

いよいよ『復活のシャア』でつか?う、嬉しいーー!

69 :通常の名無しさんの3倍:04/03/03 21:15 ID:???
ガルマは辛いね。
リンベジな展開もアリと思うので頑張って欲しい。
個人的にはベルトーチカの恋の行方も気になってます。

70 :通常の名無しさんの3倍:04/03/03 22:14 ID:???
ベルはなんとなくアムロにひかれてゆくのではないかな?
原作に沿って。で、カミーユとの対立とかがあったら面白そうw

71 :通常の名無しさんの3倍:04/03/07 00:48 ID:???
兄さんの帰国で久々にラブラブな兄妹もヨシ、
新しい恋が始まるもヨシ!続き期待しています。

72 :通常の名無しさんの3倍:04/03/07 15:41 ID:???
ソロモンのメンバーはミーティングのために会議室に集合していた。
ライブの終った後ではあったが、誰の顔にも疲れは見えない。久々の新曲が今日スレッガーから発表される予定なのだ。
「待たせたな、みんな」
やがてスレッガーが手に紙の束を握り締めて部屋に入ってきた。
「これが今度の曲だ」
「え、これ・・・」
みんなから少し離れて座っていたアムロが驚いてスレッガーを見る。それは間違いなく自分が作った曲だった。
「だから今日はお前にも来てもらったんだ。どうだ?みんな、やってみないか?」
「ああ、いいんじゃないか?いい曲だと思うぜ」
リュウをはじめメンバーたちは口々にメロディを口ずさみながら譜面に見入っている。
その様子をスレッガーは満足げに眺めるとアムロに言った。
「前に渡された時にピンと来た。これはいけるってな」
「・・・でも、まさか本当に使ってもらえるなんて・・」
恥ずかしさと嬉しさがない交ぜになり、アムロの頬は紅潮した。
「で、お前さんにはこれだ」
スレッガーはニヤリと笑いながら手に持っていた最後の一枚をアムロに渡す。
「俺が勝手につけた。唄うのはお前だ」


73 :通常の名無しさんの3倍:04/03/07 15:44 ID:???
その、歌詞の綴られた紙を凝視し、しかしアムロは首を横に振った。
「さすがですね、スレッガーさん。とってもいい詞だ。でも、僕はもう唄いません。唄いたくないんです。・・・すいません」
「そうやっていつまで逃げてるつもりだ?」
「!」
「だってそうだろ?確かにお前には作曲の才能があるよ、それは認めるがな、本当にしたいことはそれじゃないだろ?」
いつの間にか会議室の全員がスレッガーとアムロのやりとりを聞いていた。
「そうだな、俺もそう思うぜアムロ」
リュウが立ち上がり静かに言う。
「お前はインストゥルメンタルの曲としてこれを書いたんだろうが・・・だがな、俺達にはわかるんだよ、お前の頭の中にいるとき、こいつにはきっと詞がついていたんだろう、ってな」
ベルトーチカが立ち上がり、何か言おうとしてやめた。
「みなさんのお気持ちは嬉しいです。でも、本当に僕にはその気は無いんです。僕の作った曲をみなさんに演奏してもらえるだけで満足してますから」
ぺこりと頭を下げ部屋を出て行くアムロ。
スレッガーは溜息をつく。すると偶然べルトーチカと目があった。
「さて、お開きとするか。明日とりあえず初合わせするから、それまでに各自パートをさらっておいてくれよ。んじゃ、解散!」
その声を最後まで聞くか否やでベルトーチカは部屋を飛び出す。
その様子にスレッガーは人知れずニヤリとした。


74 :通常の名無しさんの3倍:04/03/07 18:46 ID:???
「アムロ、待って!」
「しつこいな!もう放っておいてくれよ!」
「そうじゃないの、話を・・・」
しかしアムロは無言でベルトーチカを押しのけると、さっさとビルから出て行ってしまった。
何故アムロはあんなにも唄うことを拒絶するのだろう。
昔スレッガーたちのライブで歌っていたところを有名なフラナガン研究所に見出され、そこからデビュー、新進歌手としてこれから、というところで突然芸能界から消えてしまったアムロ・レイ。
ソロモンから一時遠ざかったり木星に行ったりで、ベルトートカはその頃のアムロを直接は知らない。ただ記録に残された彼の唄は今聞いても素晴らしいものがあるし、復帰すればきっと成功するだろう。それに全く音楽が嫌いになったわけでもなさそうだ。
なのに、何が彼をあれほどまでに頑なにしているのか。
スレッガーたちと分かれてから3年、その間にアムロに何があったのか・・・。
(・・彼のことをもっと知りたい・・・)
今までは単にソロモンの為だけにアムロを勧誘し続けていたベルトーチカに、今新たな感情が湧き上がりつつあるのだった。


75 :通常の名無しさんの3倍:04/03/07 18:47 ID:???
ガルマのもとに一通のメールが届いた。
差出人はシャア。内容は、先日ガルマが送ったメールへの返信で、恩師の還暦パーティのため一時帰国するとのことだった。
「そうか、やっと帰ってくるか!そうだ、アルテイシアに・・・」
知らせないと!そう思って立ち上がり、我に返る。
もう以前のように気安く連絡をとりあえる仲ではなくなったのに、何かあるごとにセイラのことを考えてしまうのは、それが習慣になってしまったからだろうか。
ふう・・・
軽い自己嫌悪に陥りながらガルマはベッドに仰向けに倒れこんだ。
(そうだよな・・僕がわざわざ知らせなくても、当然彼女にも連絡は行ってるんだから・・)
目を閉じるとセイラの顔が浮かんでくるので、閉じないことにする。
自分達が別れたことをキャスバルは知っているのだろうか。メールには何も書かれていないだけにガルマには判りかねた。
知ったら彼は何と言うだろう。
必ず幸せにすると誓ったのにと、怒るだろうか。
(殴られるかもしれないな・・・)
不意に視界が滲み、ガルマは片腕で目隠しをする。
「キャスバル・・・なぁ、聞いてくれよ・・・」
・・・アルテイシアは僕より奴の方が好きなんだってさ。
・・・僕はそんなに駄目な男かい?
・・・優柔不断は分かってる、でも僕なりにいつもベストな道を選んでるつもりだよ。
・・・じゃあ、僕はどうしたら良かったって言うんだ!?
実際にはとても口に出しては言えないだろう弱音を、ガルマはシャアの幻に語りかける。自分でも思ってもみなかったことに、涙が後から後から溢れてきた。
そうして今初めてガルマは自分がとても傷ついていることに気がついたのだった。
誰かに、いや、唯一の親友シャアに、この気持ちを分かって欲しかったのだと・・。


76 :通常の名無しさんの3倍:04/03/07 22:14 ID:???
・゚・(ノД`)・゚・

77 :通常の名無しさんの3倍:04/03/08 00:21 ID:???
穏やかな光が差し込む硝子張りのキャンパスのカフェ。その窓際の席でセイラは
ひとり紅茶を飲みながら、外の景色を眺めていた。
(いつもだったら・・・)
沢山の学生達が行き交う中にセイラはガルマの姿を自然と探していた。
特に約束をしたわけでもなかったが、ふたりはよくここで会い、お茶と他愛無い
話を楽しんでいたのだった。今となって、ささやかだが幸せな時間だったと
痛感する。
(身勝手なものね・・・)
空になったティーカップの縁を指でなぞると静かにテーブルに置く。正直、ガル
マに会いたいのか、会いたく無いのか自分でも分からない。しかし、自分が決断
したとはいえ、失ったものの大きさは思い知らされていた。そして、それに当然
の様に甘えていた自分の情けなさにも・・・。セイラは深い溜息を吐く。
でも、あのまま別れなくても、きっとお互いを疑い傷つけるだけだった・・・。
セイラはもっと強くならなければ・・と思う。自己満足かもしれないが、それが
ガルマに報いる為の自分なりの答えなのだ。セイラは何かを見据えるように深く
澄んだ蒼の瞳を見開くと自分を奮い立たせるのだった。そして席を立とうとした
瞬間。
「アルテイシア!」
背後から掛けられたその優しい声音にセイラは豊かな金髪を揺らしながら振り
返った。
『ガルマ!』
セイラは心の中でしか名前を呼ぶ事が出来なかった。見慣れたはずのガルマの
笑顔が眩しく、そして懐かしささえも感じていた。
「少し、いいかな?」
努めて明るく振る舞いながら、ガルマはセイラの前の席へ腰を下ろす。
「そんな、幽霊でも見た様な顔はしないでくれよ。それとも、まだ会いたくは
無かったかな?」
セイラは無言で左右に頭を振ると、ストンと席に着く。それを見たガルマは安堵
の表情を浮かべるのだった。
「君にどうしても言っておきたいことがあって・・・。僕達は恋人同士では無く
なってしまったけれど困った事があれば今迄どおりに何でも相談して欲しいんだ。
それにキャスバルにも君のことを任されているし・・・」
ガルマは途中で言葉を切るとキャスバルの名前を持ち出した事を後悔した。彼の
名前で彼女を説き伏せようとする自分を嫌悪した。今言った事は嘘では無いが、
何らかの形でセイラと繋がっていたいという気持ちは否めない。


78 :通常の名無しさんの3倍:04/03/08 00:22 ID:???
「そんな事、出来ないわ・・・」
セイラはガルマから視線を外すと淋し気に俯く。もっと強くならなければ・・。
そう決心したばかりなのに、今にもガルマの優しさに甘えそうになる自分は
なんと弱くてずるいのだろう。セイラもまた自己嫌悪するのだった。
「どうしてだい?」
「私なら大丈夫よ。あなたの気遣いは嬉しいけれどガルマが負い目や責任を
感じる必要はなくてよ」
セイラはわざと冷たい口調で言い放つ。震える両手を固く握りしめることで必死
に溢れ出そうになる感情を押さえていた。
「・・そうじゃない。付き合う前から恋愛感情抜きで君は大切な存在だった。
だから、別れてもそれに変わりは無いんだ。これからもずっとそうだ。それに、
今回の件で今迄の僕達が築いてきた関係が全部壊れるなんて思いたくは無い。
いや、思わない・・。アルテイシアは違うのかい?」
セイラはガルマの言葉に胸を突かれる。ガルマはいつもこうして頑なな自分を
大きく包み込む様に守っていてくれたのだ。
「違わない、わ・・・。――ありがとう、ガルマ」
「それを聞いて安心したよ。僕も戻る早々、今のキャスバルのあの太い腕で
殴られたんじゃあ堪らない!」
ガルマは、おどけた表情で肩を竦めてみせる。
「えっ?今、何て・・・」
ガルマはセイラの放心した表情にシャアの帰国をまだ知らないことに気付く。
「キャスバルが帰ってくるんだよ。知らなかったのかい?」
ガルマは何故、キャスバルがアルテイシアに連絡を入れていないのが不思議に
思いつつ、教授の還暦パーティの話をセイラに聞かせた。
「本当なのね・・・。ガルマ!!」
――キャスバル兄さんに会える!!セイラの表情が一瞬にして明るく輝き出す。
「そういえば、ガルマの言う通り本当に今の兄さんはかなり強そうよね・・」
セイラはビデオレターの兄の姿を思い出していた。
「だろう?今から鍛えてもとても対抗できないよ」
ふたりは同時に噴き出し、互いの顔をみながら笑い合った。セイラはもうこんな
時間は二度と持てないと思っていただけにガルマの申し出に深く感謝した。
キャスバルの事となると心底、嬉しそうに微笑むセイラの顔にガルマは嬉しみを
感じつつも、こんなにも彼女の心を占めるシャアを羨むのだった。


79 :通常の名無しさんの3倍:04/03/08 01:19 ID:???
ガル、ほんといい奴だ…男らしいよ。
部屋で涙の場面は、私も泣けた。

シャアの帰りが待ち遠しいですね。
それからベルとアムロの話が出てて嬉しかったです。
続き楽しみにしています。

80 :通常の名無しさんの3倍:04/03/08 06:47 ID:???
怒濤の更新だ。嬉しい!
ガルマはホントいい人だ。たまには自分を曝け出してみてもいいのに・・・。
がんがれ、ガルマ!!

81 :通常の名無しさんの3倍:04/03/08 16:19 ID:???
シャアが帰ってくる!でも、一時帰国なのね。
なんとかそのまま残りますように・・・。

82 :通常の名無しさんの3倍:04/03/13 15:12 ID:???
続き期待してます!

83 :通常の名無しさんの3倍:04/03/20 20:36 ID:???
保守

84 :通常の名無しさんの3倍:04/03/23 00:26 ID:???
これからも楽しみにしていますよ!

85 :sage:04/03/27 18:35 ID:GcezbnWa
期待干す

86 :通常の名無しさんの3倍:04/03/31 19:52 ID:???
うーん、続きどうしましょうかね〜


87 :通常の名無しさんの3倍:04/04/02 21:03 ID:???
続き、お待ちしてますよ。

88 :通常の名無しさんの3倍:04/04/02 23:26 ID:???
4/3 22:30くらいから集まってチャットしませんか?
リレーに参加してた人も、ロムってた人も、セイラさんの今後や
その他マターリ雑談しましょう。

詳しくは以下のスレ用お絵かき掲示板にて
http://dog.oekakist.com/sleggar/

おまちしております。

89 :通常の名無しさんの3倍:04/04/04 20:49 ID:???
期待ほしゅ

90 :通常の名無しさんの3倍:04/04/06 21:19 ID:fTFTRwfW
シャアの帰還。
それは恩師の還暦祝いの為、だけではなかった。
音楽業界を去り、遠くアクシズへと離れたはずのシャアの耳に
気になる噂が届いていていたのである。
ティターンズ・プロの台頭。
ティターンズ・プロ社長であるジャミトフとシャアには
浅からぬ因縁があった。
しかし、何も知らぬセイラにとっては
ただただ兄の帰るその日が待ち遠しかった。

スミマセン、早くシャアに帰ってきてほしくて
初書き込みです。
つながらなかったらスルーして下さい。

91 :通常の名無しさんの3倍:04/04/06 22:20 ID:fTFTRwfW
「ガルマ、遅くてよ!」
「ごめん、これでも早く出たつもりだったんだけど・・・待たせてしまったようだね」
「ふふ・・私が早すぎただけよ。やっと兄さんに会えるんですもの。今朝は随分早起きしてしまったわ」
心底済まなそうに謝るガルマに、セイラは悪戯っぽく微笑みかけた。
「早起きって・・・シャトルの到着は17:00だよ。遅れることは多くても早く着く事は・・・」
「全く無いとはいえないでしょ?さ、早く車をだしてーーでないと私が運転するわよ?」
言葉を遮られたガルマは、降参、というように肩をすくめ、助手席のドアをうやうやしく開ける。
『キャスバルが帰るという大事な日に、ペーパードライバーのアルテイシアに運転などさせられるはずが無い』
そんなガルマの胸中など知らず、無邪気にはしゃぐセイラ。車中、2人は久しぶりに会話を楽しんだ。
「やはり早すぎたようだね・・・そこのカフェに入ろうか?」
「ええ、話しつかれて喉がカラカラだわ!」


92 :通常の名無しさんの3倍:04/04/10 19:54 ID:???
お待ちしてました!
いよいよ兄さんご帰還か!!

93 :通常の名無しさんの3倍:04/04/11 21:30 ID:???
「あの窓際の席がいいわ」
「じゃあ先に座ってて。僕は飲み物を取ってくるよ。カフェオレで良かったかい?」
「ええ、お願い」
セイラと別れ、トレーを手にガルマはカウンターに向かう。
『こうしていると、恋人同士のままみたいだ・・・』
久しく忘れていた暖かな気持ちが、ガルマの頬を自然と緩ませる。
飲み物を受け取りレジで支払いを済ませ、さてセイラの待つテーブルへ向かおうと
して、ガルマは足を止めた。混雑したカフェの中で、とっさにセイラを見つけられない。
「えーと、確か窓際・・・」
ぐるっと見渡せばすぐにセイラは見つかった。
こちらに横顔を見せて座る彼女は、携帯を使って電話をしていた。
『誰と話してるのかな』
深く気に留めずガルマは席に近寄る。
セイラは楽しげに何か話していたが、ガルマが戻ってきたのに気づくと、こちらに
手を上げて合図を送りつつ電話を終らせたようだった。
「ありがとう、ガルマ」
「・・・い、いや」
ぎこちない仕草でガルマはトレーから飲み物を置く。
目の前に座るセイラは変らずにこやかで美しかった。
だが、ガルマには聞こえてしまったのだ。ガヤガヤと賑わしいこのカフェの中で、
途切れ途切れではあるが、電話で話すセイラの最後の言葉が。
「・・・ごめんなさい、・・・それじゃまた・・・。ええ・・・ありがとう、先輩」
・・・先輩・・・
『・・・では電話の相手は・・・スレッガーだったのか・・・?』

94 :通常の名無しさんの3倍:04/04/11 21:33 ID:???
浮かれていた自分を戒めるかのように、突如つきつけられた現実。
以前ケリィから聞いた、セイラとスレッガーが会っているという話はやはり本当
だったのだろうか。信じたくはないと思っていたが・・。
「どうかして?コーヒーが冷めるわ?」
手をつけないガルマを不審に思ってかセイラが聞く。
「あ、いや・・、しかしここは人が多いな」
「そうね、あんまり長居出来そうにないわね。でも兄さんのシャトルまでは
まだ時間あるし・・」
「残念ながら予定より早く着くってこともなさそうだしね」
「いじわるね!」
今朝の会話の揚げ足をとってからかうガルマをセイラは優しく睨んだ。
「飲み終わったらショップでも覗いて時間つぶそうか」
「いいわね」
たわいのない会話。まるで恋人同士のように・・。
だが、もう自分達は恋人ではないのだ。その証拠にガルマはどうしても
口にすることが出来なかったのだ。簡単な一言。
「さっきの電話は誰からだい?」・・・と。

95 :通常の名無しさんの3倍:04/04/11 21:35 ID:???
今日ほど時間の過ぎるのが遅い日はない・・もう薄暗くなった外をガラス越しに
見上げながらセイラは心から思う。
いや、シャアの帰国の知らせを聞いてから今日まで、毎日同じことを思っていた。
愛して止まない兄。誰よりも素敵で優しくて強い、私の兄さん!
あと数時間でその胸に抱擁される自分を想像すると、セイラは涙ぐみそうになる。
兄さんに「ただいま」と言って抱きしめられたら、今まであった辛いこと悲しいことも
きっと一瞬にして吹き飛んでしまうだろう。
「アルテイシア、見てごらん、"大阪名物たこ焼き"だって」
振り返ると、みやげ物屋の前でガルマが手招きをしている。
「おおさか?」
「ああ、地球の、日本の都市名だよ。おいしそうだな、食べてみようか」
いたずらっぽい笑顔でそう言うと、セイラの返事も聞かずにガルマはたこ焼きを
求める人の列に並んでしまった。
セイラは肩をすくめて見送るとロビーのベンチで待つことにする。
『ガルマ、変わってない・・・』
あの日、別れても昔のままの友人でいようと言ったガルマ。
別れを切り出した自分の気持ちを慮っての申し出だということはすぐに分かった。
「僕は傷ついてなんかいない。だから君は君の決断に罪悪感を持つことなんて
少しもないんだよ」・・・と。
その気持ちが嬉しくて受けてしまったものの、実際そんなに簡単にゆくわけがない
と思っていた。
・・・それがどうだろう。
今日一日、ガルマと自分はごく自然に笑い、会話し、一緒にいる。
お互いまだ特別な感情も持たず、キャスバル兄さんと三人、従兄弟のような
幼馴染だったころと同じように。
『そう、兄さんが帰ってきたら・・・きっと昔のような私たちになれるわね・・・』
セイラはガルマがどんな想いで友人を振舞っているのかを知らない。
シャアの帰還という大きな喜びを前にして、彼女はただ無邪気に見えるままを
信じた。いや、信じようとしていたのだった。

96 :通常の名無しさんの3倍:04/04/11 21:37 ID:???
「・・・気持ちは分かるけど、回りの人が変に思うよ?」
「え?」
いつの間にかたこ焼きを片手にガルマが横に立っていた。
「顔が笑ってる」
「!」
知らず知らずににやにやしていたのだろうか。セイラは真っ赤になって両手で
頬を押さえた。
「冗談だよ、さあ食べよう」
くすっと笑って横に腰掛けようとしたガルマをセイラは持っていたバッグで殴った。
「いてて、そんなにしたらたこ焼きが落ちちゃうよ・・」
ひとしきり揉めたあと、二人は並んでたこ焼きを食べる。
「美味しいわ、これ」
「お好み焼と似てる感じがするなぁ」
「ソースとかつお節ってところは同じだけど・・」
ふぅふぅ冷ましながら、舟形の器に盛られたたこ焼きをすべて食べ終える。
「でも、テイクアウトは無理よね」
「あっちにお土産用の冷凍のがあったけど?」
「ほんと!?じゃあ是非食べさせたい人がいるの、買ってくるわ!」
売店へ向かうセイラの後姿をガルマは黙って見送った。
『是非食べさせたい人か・・・スレッガーかな・・・』
切ない気持ちで、ガルマはそっと溜息をついた。

『久しぶりに先輩から電話が掛かってきた日に"たこ焼き"を見つけるなんて
なんて偶然なの!』
先ほどカフェにかかってきた電話。それは以前ズムシティーのジャパニーズ
マナー教室で知り合った上級生の女性だった。
二人は日本文化という共通の興味から、教室終了後も時々連絡を取り合って
いたのだ。
「あ、宅急便で送っていただけます?」
セイラは売店のおばさんににっこり微笑んだ。

97 :通常の名無しさんの3倍:04/04/11 21:38 ID:???
すみません、肝心のシャアの帰還までは辿りつけませんでした〜!!
次の方、よろしくお願いします!

98 :通常の名無しさんの3倍:04/04/11 22:22 ID:???
>96
『今日は何て良い日なのかしら。兄さんとは会えるし、先輩とも話せたし』
レジを済ませたセイラは上機嫌でガルマの元に戻ろうとした。
しかし、先ほどサイド4からのシャトルが入港したせいか、更に人ごみが増し
ていてガルマが見当たらない。
きょろきょろと辺りを見回していると、一際目立つ金髪が目に入った。
「兄さん!」
思わず叫んでしまい、周囲の視線が集った。
『やだ、私ったら・・・』
ハッと我に返りすぐにその場を立ち去るセイラ。
時計を確認すると16時半を少し回った所だった。
「金髪というだけで兄さんにみえるなんて・・・」
一瞬目に入ったその人は、顔半分を覆う様なサングラスを掛けていた。
それに身長も少し兄より高かったように思える。
「後30分位が待てないなんて、私ってクエスの言う通りブラコンなのかしら」


99 :通常の名無しさんの3倍:04/04/11 22:59 ID:???
おーっ、続きが!待ってました!
ガルマとセイラの和やかムード、いいですね〜。
ガルマが内心、嫉妬に燃えているのがなんとも、いいです!

で、デカいサングラスをかけた金髪の男はやっぱり・・・?

100 :通常の名無しさんの3倍:04/04/11 23:02 ID:???
「良かったね」
セイラが近づくなりガルマが笑いかける。
「?」
「あ、いや・・・キャスバルのシャトル、定刻通りに着くそうだよ。
さっきアナウンスしてたろ?」
「そうだったの?聞き逃していたわ。ガルマと来ていて本当に良かった。」
無邪気に話すセイラの顔はほんのりと赤く染まっている。
『スレッガーの事、本当に好きなんだな。アルテイシア・・・』
セイラの顔が赤いのは先程の失態の為なのだが、何も知らないガルマの思考はますます
あらぬ方へと傾いてゆく。
『情けない。キャスバルに会ったら一発気合を入れてもらった方がいいかもしれないな』
クスリと苦笑する自分をセイラが覗き込んだ。
「・・・あなたも私をブラコンだと思ってるの?」
「え?そんな事・・・自覚なかったのかい?!」
「もうっ、ガルマッ!」
ガルマは鞄を持ち上げたセイラからサッと逃れると、笑いながら歩き始めた。
「一日に二度もぶたれるなんてゴメンだよ。さ、行こう。ブラコンかどうかは直接本人に会って確かめるんだね!」
その言葉に従い、セイラも歩き出した。最愛の兄、キャスバルを出迎えるために。


101 :通常の名無しさんの3倍:04/04/11 23:08 ID:???
すみません。海外にすら行った事のない無い私には
シャトル入港時の描写がわかりません。
どなたか続きをお願いします。

102 :通常の名無しさんの3倍:04/04/11 23:26 ID:???
>>101
職人さん、乙です。
申し訳ないのですが、なるだけこのスレはsage進行でおねがいしまつ。

103 :通常の名無しさんの3倍:04/04/12 12:01 ID:???
帰国を決意してからのシャアの行動は実に迅速だった。
まずはシャトルの予約。アステロイドベルトの果てにあるアクシズからサイド3迄は遠い。
各サイドへの直通便もあるが、週に一便程度である。しかし、通称・「ドンコウ」と呼ばれる
各サイドに立ち寄る便では余りにも時間がかかる。シャアは迷わずサイド3への直通便を調べた。
「これなら余裕だな。」
パーティーの10日前に到着予定の便を見つけ予約を入れる。これなら多少遅れても十分間に合うし、
最悪欠航になった場合でも次の便で間に合うだろう。
予備の予約も入れてすぐ、シャアはガルマにメールを打った。
「アルテイシアには・・・ガルマから話が行くだろう・・・それでいい・・・」

次に、やりかけの論文に着手した。実験は一段落したものの、このところティターンズの動きが
気になり、遅々として進まなかったのである。だが、一旦こうと決めた時のシャアの動きは凄まじく、
人一倍どころか通常の3倍はあろう速さでそれをまとめ上げた。
「ふむ。」
自分でも納得のいく出来に満足する。これまでの遅れが嘘のようだ。
一息入れ、シャトルの運行状況を確かめる。サイド3直通便の変更は無い。
「どうしたものかな」
予想外に早く論文が仕上がった為、3日も時間ができてしまった。
シャアの性分として、ただのんびりと時間を過ごすことは苦手だった。
特にララァを失って以来、無意識に暇な時間を作らなかったのである。

「ララァ・・・」
そう呟くとあの日の痛みが甦ってくる。それは未だシャアが挫折を知らぬ頃、
若さゆえの過ちであったろう。しかしシャアはその為にララァを失ってしまったのだ。
いや、それ以前にあれは本当に事故だったのだろうか?だがそこにティターンズ、
ジャミトフ・ハイマンが絡んでいたという証拠は何も無い・・・
思い出すたび、砂を噛むように苦い思いがシャアの心を苛む。
しばし逡巡したシャアは、ふと思いつき、もう一度シャトルの運行予定を調べなおした。
するとサイド4直通便の出航が人的ミスで遅れていることに気付いたキャンセルも幾つかでている。
「サイド4にはキグナンが居たな。」
サイド4とサイド3は友好国である為往復するシャトルも多く距離的にもたいしたことは無い。

シャアはすぐに荷造りすると、書き上げた論文を片手に部屋を出た。


104 :通常の名無しさんの3倍:04/04/12 12:11 ID:???
兄さんを常駐させるため、勝手に伏線入れてみました。
その上sage進行の仕方がよくわからず失敗。勉強してきます。

105 :通常の名無しさんの3倍:04/04/17 15:16 ID:???
>104さん、sage進行は、メール欄に半角英数で「sage」と
入れると大丈夫ですよ〜。

それでは、続きを入れさせていただきますね!

106 :通常の名無しさんの3倍:04/04/17 15:17 ID:???
いよいよ17時になり、アクシズからのシャトルが予定通り入港してきた。
セイラとガルマは出迎えのロビーで、入国審査室からぞくぞくと出てくる乗客の中に
シャアの姿を探したが、30分、40分と過ぎてもシャアは出てこなかった。
「・・・ガルマ、兄さんがいないわ・・」
人の流れを凝視しつづけながらも、セイラの声はかぼそく震える。
「混んでいるのかな、もう少し待とう」
励ますようにそう言い、つい肩を抱き寄せようとして慌てて思いとどまる。
セイラが気づいていないことにほっとしながらも、ガルマもこの状況に『おかしい』
と感じていた。
今やロビーに出てくる人々のほとんどが軽装だ。はるか遠方のアクシズから
やってきた人たちとはとても思えない。とすると入国審査はもう次の入港便で
やってきた一団に移っているのだろう。
(もしやキャスバルはあの便に乗っていなかったのか? それとも何かあった
のだろうか・・・)
きっちり一時間待って、ガルマはセイラに言う。
「まさかとは思うけど、念のため乗客名簿に奴の名前があるか、航空会社に
確認してくるよ。君はこのままここにいてくれるかい?」
「ええ」
セイラを残しガルマはロビーを出た。

107 :通常の名無しさんの3倍:04/04/17 15:19 ID:???
(兄さん、一体どうしたっていうの・・・)
セイラは焦りと不安でいっぱいだった。
ロビーではそこここで家族や恋人たちが再会に抱擁し、友人同士は肩を叩き
あって歓声をあげている。また異国から到着した人たちはこれからの楽しい旅に
胸を躍らせ一様に明るい表情だ。
幸せに満ちたその空間でセイラだけが異質だった。
「お願い、兄さん、帰って来て・・・!」
祈るようにつぶやいたその時。
「・・・アルテイシア!」
背後から名前を呼ばれセイラは反応する。
間違いない、この声は・・・
セイラはゆっくりと振り向いた。
「・・やぁ」
思ったとおり、そこには夢にまで見た愛しい兄の姿があった。
声が出ない。
息が出来ない。
まばたきも出来ず、次第に涙でかすむ兄の姿を、それでももっとよく見ようと
目を見開くセイラに、シャアは優しく微笑むとそっと抱きしめた。

108 :通常の名無しさんの3倍:04/04/17 15:20 ID:???
「に、兄さん・・・兄さん!」
幼い子供のように自分の胸にすがって泣き出すセイラを、シャアは何もいわず
ゆっくりと髪をなでてやるのだった。
しばらくそうしていると、
「・・・キャスバル!」
息を弾ませ戻ってきたガルマが二人をみつけ驚きの声をあげる。
「久しぶりだな、ガルマ。この通り帰って来たよ」
「・・・一体どこで油を売ってた、心配したじゃないか!」
言葉とは裏腹にガルマの声は喜びに満ちている。二人は固く握手を交わした。
「あぁ、すまなかった。予定を変えてサイド4に寄って来たからな。
君に連絡していた時間より早く空港に到着したんだが、ちょっと問題があって
遅くなってしまった」
「問題?」
ガルマがたずね、セイラもやっとシャアの胸から顔をあげる。
「ああ、来た来た、あれだ」
シャアの視線の先を追うと、中年の男が一人、小さな子供を二人連れてこちらに
向かってくるところだった。すると、子供のうちアフリカ系らしい男の子がシャアを
見つけ手を振りながら駆け寄ってくる。
「おじちゃーーん!」

109 :通常の名無しさんの3倍:04/04/17 15:23 ID:???
男の子と、もう少し幼いアジア系の顔立ちに金髪の女の子が、シャアにまとわりつく。シャアも「おじちゃんはやめなさい」などと言いながら、二人の頭をなでてやったり
している。
セイラもガルマも度肝を抜かれ、呆然とその光景を眺めるだけだった。
「それでは、私は二人を連れて先に行っております。どうぞご心配なく」
「ああ、キグナン、頼む。明日の午前中には私も顔を出す」
「は!」
キグナンと呼ばれた、中背のがっしりしたその中年男は、二人の子供を促すと
ガルマとセイラにも会釈してロビーを去って行った。
「おい、あの子供達は何だ!?」
「うん、孤児でな、訳があって連れて来たんだが、移民手続きが思った以上に
複雑で参ったよ」
さらりと言うシャアにガルマはあっけにとられる。
「詳しいことはおいおい話すよ。それより久々の再会を楽しもうじゃないか。
まずは腹ごしらえをしたい」
「そうね、どこか落ち着いて話せるところに行きましょう」
「あー、ごめん。僕はちょっと大学に戻らないといけないんだ。今日はアルテイシアを
君に送り届けることが目的だったから・・」
「冷たいやつだな」
口をへの字に曲げてシャアは親友を見る。ガルマは苦笑した。
「しばくはこっちにいるんだろう、今日は兄妹二人きりで楽しむのもいいじゃないか。
そういえば、どこに滞在するんだ?」
「そのことだが、君のところに泊めてもらえないだろうか、ガルマ」
「エエッ!?」

110 :通常の名無しさんの3倍:04/04/17 15:25 ID:???
「君のマンション、部屋が余っていたと記憶しているが?」
「そうだけど、しかし・・・」
ちらりとセイラの顔を見る。セイラも困った顔をしていた。
それはそうだろう。こちらに滞在中ずっと兄と一緒にいたいセイラにとって、
たとえ『友人』として友好な関係にあるとはいえ、『元恋人』の顔をしばしば見なくては
いけないのでは複雑だ。
「おい!まさか・・・」
ぐいっとガルマの手をひくと、シャアは耳元で小声で言う。
「アルテイシアが泊まりに来られなくなるから渋っているわけではあるまい?」
「ち、違うよっ!」
慌てて否定するガルマをシャアは満足そうに笑った。
「なら問題ないな。今日はホテルに泊まるから、明日から頼む」
「・・・分かった・・」
まだシャアは何も知らないのだ。
いずれ真実を知ればさすがに配慮してくれるだろう。
アルテイシアは今夜話すだろうか・・・・。
「じゃあ、僕はこれで」
「ああ」
「・・・今日はどうもありがとう・・・ガルマ」
「いや・・・それじゃ・・・」
ガルマの後姿とそれ見送る妹の姿に、シャアはかすかな違和感を覚えたが
「私たちも出ましょう、兄さん」
かわいい妹に腕を回されるとそれもすぐに消し飛ぶのだった。
「そうだな、まずはレンタカーを借りに行こう」

111 :通常の名無しさんの3倍:04/04/17 16:28 ID:???
<祝・にシャア帰還>
早速シスコン発動ですね!
しかし、シンタとクムが登場するとは!次はアポリー、ロベルトかな?


112 :通常の名無しさんの3倍:04/04/17 16:58 ID:???
レンタカーに乗り込んだシャアはそれまで来ていた上着を脱いだ。
ハイネックの白いシャツには袖がなく、シャアのきれいに鍛えられた
腕がむき出しになっている。
そういえばさっき抱きついた時に分かったのだが、背も昔より伸びたようだ。
緩やかなウエーブを描く金髪も、裾の方は随分長くしている。
自分の知らない3年で、兄はより男くさく、魅力を増してきたのではないかと
ハンドルを握る兄を横で見つめながらセイラは思う。
「アルテイシアは・・・」
「え?」
「随分きれいになった。最初お前を見たときは驚いた」
(兄さん・・!)
シャアが自分と同じことを思っていたと知ってセイラは微笑んだ。
「大学はどうだ? 勉強はついていけてるのか?」
「失礼ね、この間のレポートでは教授に褒められた程よ」
「ほう」
嬉しそうなシャアの声。セイラは少し照れくさくなって付け加える。
「でも必須の物理はちょっと苦手なの」
「そうか、じゃあこっちにいる間に勉強をみてやろう」
「本当!?」
「あぁ。こっちには2週間ほどいるつもりだが、教授のパーティと、あと2,3
やぼ用を除けば完全にフリーだからな。なるべくアルテイシアと過ごしたいと
思っている。父さんのところにも顔を見せに行かねばならんが、一緒に行けるか?」
「もちろんよ!」
思っていた以上に滞在期間が短いことはショックだったが、それでもその間は
ほとんど一緒に過ごせそうなので、セイラは我慢しようと思う。
「まぁガルマには悪いが、あいつは年中お前といるんだから、許してもらわんとな」
そう言ってシャアが笑ったので、セイラはついに来るべき時が来たと覚悟する。
「兄さん、そのことなんだけど・・・」
「なんだ?」
「・・・ううん、やっぱりお店についてから話すわ」
言いにくそうに言葉を濁す妹にシャアは空港での違和感を思い出していた。

113 :通常の名無しさんの3倍:04/04/17 18:05 ID:???
ガルマが空港から大学に戻って来たのは夜8時を回ったころだった。
普段ならまだ大勢学生が残っているはずだが、研究室は妙に閑散としている。
「ああ、そうか」
壁にかけられたホワイトボードの月間予定表を見てガルマは納得した。
10日後に行われる教授の還暦パーティの事前打ち上げと称した飲み会に
講師も生徒も皆出ているのだ。
「やれやれ、これは集中できそうだな」
苦笑しながら上着をロッカーにかけようとして、ふと窓から隣の教室の明かりが
もれていることに気づく。
「誰か残っているのかな?」
何気なく隣のドアを開け、ガルマはどきりとした。
そこにはイセリナが一人パソコンに向かっていたからだ。
「し、失礼!」
慌ててドアを閉めようとして、ガルマはイセリナの顔色がひどく悪いことに気が
付いた。
迷ったがやはり放ってはおけない。ガルマは決心してイセリナに近づいた。
「大丈夫かい?具合でも・・?」
「いえ、大丈夫です。お気遣いはいりませんわ」
少し微笑ん会釈したものの、すぐに目をパソコンに向け作業を続けようとする
イセリナ。その声はカサカサで、ガルマは驚いて近寄る。
よく見ると、イセリナの目の下には隈が出来、目も真っ赤に充血していた。
熱があるのはまぶたが異常に赤いのですぐに分かった。
「大丈夫そうには見えないよ、休んだほうがいい」
「いえ、本当に平気です。3日くらいの徹夜なんて、いままでだって何度も
経験していますから」
「なんだって!? 3日間も!? 駄目だ、今すぐ保健室に・・・」
慌てて立たせようとして腕をとると、イセリナに激しく振り払われた。
「期限は明日なんです!どうしても今夜中に完成させなくては、これまでが
すべて無駄になってしまいます!お願いですから出て行ってください!」
イセリナの鬼気迫る様子、しかしガルマに驚く間も与えず、次の瞬間彼女は
その場に倒れ気を失った。

114 :通常の名無しさんの3倍:04/04/17 18:07 ID:???
(・・・ここは・・・?)
目を覚ました場所が大学の医務室だと気づいた瞬間、イセリナは飛び起きた。
「おや、起きてしまったかね?まだ寝ていなさい」
「先生、今何時ですか?私どれくらい眠っていたんですか、教えてください!」
「2時間くらいだよ、今日は保健室に泊まっていきなさい。まったく若い女の子が
3日間も徹夜だなんて・・、っておい、君!」
校医のハサンの言葉を振り切ってイセリナは研究室に向かって駆け出した
ガルマが抜けたあと、代わりの協力者も断って、イセリナは一人で研究を続けて
いた。しかしはやり一人では思うように進まず、なんども失敗しながらやっと
形になったとき、論文の提出期限はもう目の前に迫っていたのだ。
ここで逃してしまうと、また一年待たなくてはいけない。
文字通り決死の覚悟でイセリナは追い込みに臨んでいた。
「ぜったい負けない・・一人でだって・・・」
ふらつく足を引きずりながら教室のドアをあける。
「ガルマさま・・・」
自分のパソコンの前にガルマが座っていた。
「事情は分かったよ、イセリナ。このスケジュールだと、明日の朝10時に速達で
ディスクを発送すれば締め切りに間に合う。そうだろう?」
試験要領を記した紙を手にガルマは言う。
「しかし今見せてもらったが、君の研究は完成してはいるが、これだけの量を
明日の朝までに一人で論文に書き上げるのは、物理的に不可能だよ」
「そんなこと・・・!」
「でも、二人でなら可能かも知れない」
「!?」

115 :通常の名無しさんの3倍:04/04/17 18:08 ID:???
「ハサン先生、お聞きの通りです。彼女の人生はこれからの12時間にかかって
います。どうかご理解ください」
いつの間にかハサンも教室の入り口に立っていた。
「仕方がない、私は今夜はずっと保健室にいることにするから、限界だと思ったら
いつでも来なさい。いいね」
やれやれという風にハサンは溜息をつくと、こんなこともあろうかと持参してきた
往診バッグから栄養剤を一本イセリナの腕に注射した。
「ありがとうございます」
深々と頭をさげるガルマ、「若いっていいねぇ」とつぶやきながら教室を出て
行くハサン。
イセリナは信じられない気持ちでそれを見ていた。
その間にもガルマはてきぱきと進めてゆく。
「まずは手分けしよう。僕は内容のチェックと文章の校正をするから、君は
さっきの続きからタイプしてゆくんだ」
「あ、あの、でもガルマさま・・」
「今はこだわってる時じゃない。さあ!」
「はい!」
イセリナは涙をぬぐうと再びパソコンに向かった。

116 :通常の名無しさんの3倍:04/04/17 20:19 ID:???
職人さんGJ!

ガル お前って奴は・・・・
良い人ではあるが、良い男ではないな。今のところ・・・

117 :通常の名無しさんの3倍:04/04/17 22:43 ID:???
兄さん、お帰りなさい!!
妹にサラッと「綺麗だ」といえる相変わらずの兄馬鹿ぶりに萌ますた。

>>116
禿同。でも、そんなガルマが好きだ・・・

118 :通常の名無しさんの3倍:04/04/18 09:05 ID:???
久しぶりのシャアとセイラ二人の場面ですが、やっぱり
書いてて楽しいです!

さらに続けさせて頂きます。

119 :通常の名無しさんの3倍:04/04/18 09:06 ID:???
深夜。
シャアは寝付けずにベッドを抜け出すと、備え付けのミニバーからミネラル
ウォーターのボトルを取り出した。
そのままソファに腰掛け水を飲んだあと、もう一つのベッドで静かな寝息を
たてる妹をそっと伺う。
「やっぱり私も一緒に泊まる。ねえ、いいでしょう兄さん」
明日の学校はどうするんだと叱りながら、それでも妹の懇願にシャアは
部屋をツインに変更してやったのだった。明日、いやもう今日だが、かなり
早起きして大学まで送ってやらねばならない。
だがそんな面倒も、今のシャアには嬉しいと思えてしまうのだ。
どこまでも妹に甘い兄であった。
(しかし、まさかアルテイシアとガルマが破局していたとはな・・・)
聞いたばかりの話をもう一度思い出しながら、シャアは苦い気持ちになる。
『ガルマは好きだけれども、愛せなくなった。ガルマにとっても自分は
ふさわしい存在ではないと思う。いろんな負の感情から解き放たれたくて
別れを決意した』
要約するとセイラの話はこのようなものだったが、具体的に聞こうとすると
口を閉ざすのでシャアには今ひとつ要領が得なかった。
どちらかに他に恋人が出来たから・・などという理由でないらしいことが
救いと言えば救いだが、それならなおさら原因が気になる。
それに今日も二人で空港まで迎えに来ていたり、『恋人ではないが
いままでどおり友人として付き合う』などと二人で話し合ったと聞かされ
れば、これはもうシャアの理解を超えていた。
シャアの恋愛は、いつだって終ってしまえばそれっきり、会うことはおろか、
思い出すことさえなかったから。
「・・・とりあえずガルマに話を聞かなくてはな」
ソファから立ち上がり、もう一度セイラの顔を眺めてからシャアは
自分のベッドに戻った。

120 :通常の名無しさんの3倍:04/04/18 09:07 ID:???
翌朝、シャアは車にセイラを乗せてホテルを出た。
「兄さん、今日の予定は?」
「うん、とりあえず顔を出すところが2,3あるので、まずそれを終らせて
くるつもりだ。アルテイシアは明日の夜は空いているか?よければ
買い物につきあって欲しいのだが」
「ええ、いいわよ。授業は15時には終るから」
「じゃあその頃に電話するよ。・・・ん、あれは・・」
それは、ちょうど信号待ちをしている時だった。対向車線に止まった車の
中にいる人物。それはガルマとイセリナだったのだ。
思わずセイラを見るとセイラも二人に気づいたようだった。
しかしガルマたちの方は、こちらに気づかずやがて信号が変るとそのまま
行ってしまった。
「あれはイセリナ嬢だろう? なぜ・・」
なぜガルマと一緒にいるんだ?と言いかけてシャアは口をつぐんだ。
こんな早朝に男女が一緒にいる、それの意味することは一つしか
ないように思えたからだ。
「なぜここに? 確か彼女は地球にいるはずでは・・?」
とっさに質問を変えたものの、とってつけたようになってしまった。
「数ヶ月前から留学でガルマの研究室にいるのよ。あの二人がどうして
こんな時間に一緒にいるのかは知らないわ」
「アルテイシア・・?」
「だってもう私には関係ないもの」
なんでもない風に言い切るセイラ。
しかしシャアには妹の内心の動揺などお見通しだった。
別れたとはいえ、かつての恋人が他の女性と意味ありげにいる場面を
目撃して、何も感じないほど、この妹は擦れていない。
(・・・まぁ私なら全く何の感情も沸かないところだがな・・)
すべては今夜ガルマと話をしてからか。
そう思いなおし、それきりこの話題には触れずシャアは大学までの
道を急いだ。

121 :通常の名無しさんの3倍:04/04/18 21:05 ID:???
ガルマって要領も悪いけど、結構運も悪いよね。
でもそんな彼が私も大好きだー!(w

ところで帰って来たシャアは、「クワトロ」になるんですかね?

122 :通常の名無しさんの3倍:04/04/18 22:04 ID:???
あまりにZに忠実なのはイヤ〜
何か理由があったらクワトロになるのかな?
でもここではシャアも異名だからなあ

123 :通常の名無しさんの3倍:04/04/19 12:33 ID:???
規制解除まだかな

124 :通常の名無しさんの3倍:04/04/19 12:36 ID:???
↑失礼しました
>>118さんに触発され書き込もうとしたのですが、アクセス規制が!
初めてのことでわけが解らずパニクッてしまいました。
そんなときに限って妄想膨らんでしまい・・・
以下、駄文・長文うpさせて頂きます。
題して「シャアの憂鬱」です


125 :通常の名無しさんの3倍:04/04/19 12:39 ID:???
セイラを送り届けた後シャアは、一人ホテルのラウンジでコーヒーを飲みながら
昨日のことを思い出していた。

「兄さんにはやっぱり赤が似合うわ」
セイラの一言でシャアは真っ赤なスポーツカーをレンタルした。
目立ちすぎて気恥ずかしい気もするが、この妹が喜んでくれるならどうということはない。
3年ぶりに会う妹に対し、シャアは改めて愛しさを噛み締めていた。
「で、何にする?」
「あら、久しぶりに帰ってきたのだから、兄さんの好きなものにしましょうよ」
「そう言われても、この3年で街も随分変わったろうし・・・ああ、あの店はどうかな、
ほらあの、父さんのお気に入りの寿司バー・・」
「百式ね!確かにあの店ならまだまだ健在よ」
「何せ百年先まで語り継がれる寿司を出す、という店だからな」

先にチェックインを済ませると、車を置き徒歩で店に向かった。
寿司バー・百式はテーブルを回転させていない、今では希少な本格的寿司バーである。
地球のジャパニーズ地域に思い入れのある父・ジオンに連れられ、二人も幼い頃から馴染の店だった。
店の暖簾をくぐると威勢のいい掛け声で出迎えられる。職人気質の大将が二人を見て相好を崩した。
「お二人でお越しとは。坊ちゃん、いつお帰りで?」
「坊ちゃんはよして欲しいな。もういい年なのだから」
苦笑するシャアにセイラが追い討ちをかけるように付け加える。
「そうね、なにせ“おじちゃん”だものね」
こいつめっ、とばかりに睨みつけるものの、どうしても顔が笑ってしまうのだ。
奥座敷に通されると、お猪口をあげて乾杯をした。
「お帰りなさい、兄さん」
「ただいま、アルテイシア」


126 :通常の名無しさんの3倍:04/04/19 12:41 ID:???
いつもの様に大将のお任せコースを頼む。魚介類の他アボカド、スパムといった握りに舌鼓を打ちながら、シャアはセイラからの矢継ぎ早の質問に答えなければならなかった。
「早く着くなら途中で連絡してくれたらよかったのに」
「スマン、本当に偶然だったんだ。レポートが予定より早く終わって、運行状況を確認してみたら出航の遅れているサイド4便に気が付いたんだ。直通便よりこちらの方が早く着いた。ついでに用事も済ませたしな」
「サイド4にどんな用事が?それにあの子供達は?」
「久しぶりに戻ってきたのだから、色々挨拶する所もあるさ。あの子達はその途中でちょっと」
「もう、家族に会うより挨拶を優先させるの?それにちょっとでは解からないわ」
そう言いながらもお酌をしてくれる。この3年で少しは大人びたようだ。
「どうせ経由するんだ。先に済ませた方が後々ゆっくり出来るだろう?それに、突然現れて驚いた顔を見たかった。・・・子供達には複雑な事情があってね。力になってやりたかった」
その辺の事は少しはぐらかしてみる。久しぶりの再会で余計な心配を掛けることもなかろう。
「私が見かけたのは、やっぱり兄さんだったのね。会いたい余り、幻覚でも見たのかと思ったくらいよ」
「・・・そんなに寂しい思いをさせてしまったのか。済まなかったな」
他人には殆ど見せない誠実さで、真っ直にセイラの瞳をみつめて詫びる。
それに答える様、セイラは穏やかに微笑んで言葉を続けた。
「ううん、そんな・・・いいのよ。それから・・兄さん、少し背が伸びたのね」
「ああ、私も驚いているんだよ。まさか二十歳過ぎてから伸びるとはな。
運動不足解消にと、バスケをしたのがよかったのかもしれん」
「まあ、にいさんがバスケ?観てみたいわ!」
「研究の合間のレクリエーション程度だよ。他に水泳やスカッシュやフェンシングも・・・
それと食事が不規則になりがちだったので、栄養補給にと思って牛乳を毎日飲んでいた」
「随分忙しくしていたのね、道理でろくに連絡が無いわけだわ」
そう言って少し口を尖らせるのは、幼い頃から変わらぬ拗ねたふりである。そんな仕草すらシャアにはたまらなく愛らしく映るのだ。
ふと、自分のいない間の事が気になって、今度はセイラに近況を尋ねてみる。
ガルマとののろけ話を覚悟していたのだが、セイラが話すのは父や大学生活などだった。
「そうそう、ミライとブライトの事覚えていて?二人は学生結婚したのだけど、ミライはついこの間
男の子を出産したのよ。私が一緒に居る時に産気づいてしまって大変だったわ。でも、皆あんな風に産まれてくるのねぇ」
その時の事を思い出したのか、うっとりと遠くを見るような目をするセイラ。
・・・ここまでは良かったのだ。
次の自分の一言が、妹に悲しい告白をさせる事になってしまった。
「女の子は早いな・・・お前とガルマも卒業したら直ぐだろう。まさかおまえ達まで学生結婚という事はないだろうな?」
悪戯っぽく牽制したつもりが、返ってきた答えにシャアは軽い眩暈すら覚えた。


127 :通常の名無しさんの3倍:04/04/19 12:43 ID:???
「・・・別れたの、ガルマとは」
空港での違和感がやっと解った。解ったのだが理解できない。
・・・ガルマだからこそ許したのだ、ガルマだからこそ委ねたのだ・・・それを・・・
絶句するシャアに、セイラは言葉を選ぶようにゆっくりと経緯を語った。
しかし、どう訊ねてもシャアの納得いく答えは聞けず、その場は妹を傷つけぬ様それ以上の言及は避けたのだった。

店を出た二人は互いに無口になった。
気まずい雰囲気を変えようとシャアが話し掛けかけた時、人混の喧騒にまぎれて歌声が聞こえてきた。
少年らしい、高くも低くもない伸びやかで澄んだ歌声。
「綺麗・・・」
アルテイシアも気付き、二人は声のする方へ歩き出した。が、声の主の許に来たとき、状況は一変していた。
「なんだと!」
「何度でも言ってやる。そんな下手糞なギターなんてただの騒音なんだよ!」
確かに、先程の歌は見事だったが、弾き語りにしてはお粗末なギターだった。だが、それを差し引きいて尚、人を魅きつけるだけの・・・・無意識に歌い手の評価をしていたシャアの思考を少女の叫び声が遮った。
「止めてっ!駄目よカミーユっ」
見ると、青い髪の少年が金髪のリーゼントと掴み合いになっており、黒髪の少女が必死で止めようとしているのだ。
「カミーユだと。顔だけじゃなく名前まで女か!」
リーゼントが鼻で笑う。
「!!・・俺はっっ・・・男だよおっ!」
叫ぶと同時に、遂に殴り合が始まってしまった。
『やれやれ、若いな』等と呑気に見ていたシャアだが、傍らのセイラから
「兄さん、止めて!」
と言われるとほっておく訳にもいかず、サングラスで顔を隠すと仲裁に入った。


128 :通常の名無しさんの3倍:04/04/19 12:45 ID:???
先制こそ少年の方が決めたもののリーゼントには仲間がおり、更には体格差はいかんともし難い
ものがあり、あっという間に少年はタコ殴り状態だった。
「止めたまえ」
声を掛け、リーゼントの右腕を掴む。
「何だてめえはっ!」
振り返りながらリーゼントは粋がった。興奮し、目が充血している。
「その辺にしておきたまえ。2対1でいくら勝っても、自慢にはならんだろう」
ありきたりの言葉だが、シャアが言うと何とも言えぬ凄みがある。威圧されたリーゼントに
「君もギターを弾くのだろう、こんな事で腕を痛めていいのかい?」
と耳元で言うと、掴んだ手に少し力を込める。苦痛に顔を歪めたリーゼントが
「ちっ」と、舌打ちをするのを聞いてシャアは手を離した。
「気がそがれたぜ」
仲間を促し雑踏に消えて行く。
「全く以って悪役そのものだな。『覚えてろよ』がないだけまだマシか」
「兄さんたら呑気ね。でも、さすがだわ」
そういいながら近づいてきたセイラは、取り残された少年少女に声を掛ける
「大丈夫?歩けるかしら?」
ハンカチを差し出すセイラに少女は何度も礼を述べたが、少年は憮然としたまま傷を押さえ座り込んで居た。
「!・・・まずいなっ」
シャアは突然少年を担ぎ上げると傍らのギターを拾い、セイラと少女を促し急ぎその場を離れた。
騒ぎを聞いた警察が、今更の如くやって来たのだ。


129 :通常の名無しさんの3倍:04/04/19 12:47 ID:???
「本当に何から何までありがとうございました」
ファ=ユイリーと名乗った少女は、深々と頭を下げた。カミーユ少年の方は相変わらず憮然としていたが、ホテルの一室で怪我の手当てまでして貰ってはさすがに気が引けたらしく、帰りがけに一言
「ご迷惑をおかけしました」
とだけ言った。その態度が気に入らないのか、ファはカミーユの脇を肘で突いている。
そんな姿を好ましく思ったセイラは
「仲が良いのね。恋人同士?」
「「違いますよっ!」「た、ただの幼馴染ですっ」」
聞くが早いか、二人同時に否定をされてしまった。瞬間、『幼馴染』という言葉にセイラはガルマと自分を重ねる。そのわずかな動揺をシャアが見逃すわけもなかった。本来ならこの無鉄砲で礼儀知らずな少年に、説教の一つもしてやりたいところだが
「もう、遅い時間だ。早く家に帰りなさい」
等と、尤もらしい事を言い二人を帰そうとした。
「はい、ではこれで・・・・あ、そういえばまだお名前を伺ってません。失礼ですが、お名前は?」
聞かれて少し躊躇した。巻き添えとはいえ警察から逃げるような真似をしたのだ。万が一のことを考えダイクンの名を出す事は憚られた。
「私は・・・」
言いかけて、ふと一枚のポスターが目に入った。[バジーナ交響楽団―――四重奏―――]
「・・・バジーナという。クワトロ=バジーナだ。それから妹の・・」
「セイラよ。気をつけて帰ってね」
察したセイラも兄に合わせる。
「お世話になりました、クワトロさん、セイラさん」
ファがもう一度頭を下げると、二人はホテルを後にした。が、最後にチラリと振り返って自分を見た(様な気がした)カミーユのことが僅かにシャアの気に触った。
『あの少年、何処かで・・・?』
気にはなったが、何はともあれアルテイシアだった。二人を見送る目が哀しく見えるのは気のせいではないだろう。
結局その後、「やっぱり私も一緒に泊まる。ねえ、いいでしょう兄さん」という言葉に逆らえず、
むしろ自分に甘える妹を嬉しくさえ思い、その我侭を聞き入れたのだった。
 
「そのせいで、あんな所を見てしまうとはな」
アルテイシアを思い、シャアは深い溜息をついた。


130 :通常の名無しさんの3倍:04/04/19 12:52 ID:???
うpしてみたら、ものすごく読みづらいですね。
以後気をつけます。
>>122さん 済みません
カキコ見る前に書きあがっていたため
名乗らせてしまいました。

131 :通常の名無しさんの3倍:04/04/20 00:56 ID:???
講義が終わり、寮に戻ったセイラの手元に一通の手紙が速達で届いていた。昨日
は不在だったので寮長が預かってくれていたのだ。セイラは寮長に礼をいうと
自室に向いながら、誰かしら?と、見覚えのない癖のある字体に首を傾げつつ、
差出人の名前を確かめてみる。
(ベルトーチカ・イルマ・・・)
彼女とのつながりといえば、スレッガーのことしか思い浮かばない。何だろう?
まさか、先輩の身に何かあったのでは・・・。胸騒ぎを感じつつ、セイラは机の
引き出しからペーパーナイフを取り出すと手紙の封を切った。中味は小さなメッ
セージカードとライブチケットだった。

『今度、新曲の発表をします。必ず来て!』

たった一行、書き添えられていた。どうして今更、私に?セイラはベルトーチカ
の意図するものが把握できない。戸惑いながらチケットをよくみると日時が今日
になっているではないか。
「嘘でしょう?そんな、急にいわれても無理よ」
セイラは一方的なベルトーチカに対する反発心から思わず声に出していた。
(私が受け取るのが遅くなっていたらどうするつもりなの?それにひとの予定を
聞きもしないなんて・・・)
セイラはライブに行かない為の理由をあれこれと考えながら、チケットを机の上
に放り出すと、シャワー室へと姿を消した。つい先程まで兄との再会で浮かれて
いたのが嘘のようだ。こうなると思い出したく無い事まで思い出してしまう。
今朝見かけたガルマとイセリナの姿がちらつく。セイラは嫌な気分を洗い流す
かのようにシャワーを全開にして浴びた。
シャワーを浴び終わり、バスローブ姿のままベッドに身を投げ出すとぼんやりと
天井を眺めた。時計の針が進む音がやけに大きく聞こえる。ふと、窓に眼をやる
と外はすっかり暗くなっていた。
(このままでいいの?)セイラはチラリと時計に目をやると決心したように起き
上がった。手早く身繕いを済ますと机の隅に追いやられていたチケットを握り部
屋を飛び出していった。


132 :通常の名無しさんの3倍:04/04/20 00:57 ID:???
どうにか開演時間ギリギリにライブハウスに到着したものの入り口に立ったまま
あと一歩が踏み出せない。他の観客はすでに入場しているのだろう、辺りに人影
はなかった。やっぱり引き返そうか・・。セイラは逡巡していたその時――。
「来ないかと思ったわ」
背後からの声にセイラは振り返った。
「どうして私を?」
「さぁ?自分にもよく分からないわ。でも、あなたにはアイツの演奏を聴く義務
があるんじゃないかしらって・・・」
「義務?」
「そうよ。彼、あんな風だから表には出さないけど、ソロモンも色々あったの。
決して順風満帆じゃなかった。どうしてあんなに強くなれるんだろうって考えた
ら、音楽に対する情熱はもちろんだけど、悔しいけどあなたの存在があるからだ
ろうって分かったの。メンバーに聞いちゃったのよ、あなたとの約束・・・。
フラレたっていうのにね。悔しい程あなたに妬けたわ」
昔の事を慈しむように笑顔で話すベルトーチカにセイラは不快感を持つ事無く、
ただ黙って話を聞いていた。
「別にあなたにどうこうしろっていうんじゃないの。男と女なんてどうなるか
判らないもの。とにかく今度の曲はみんなもすごく気に入っていて今迄で1.2を争う出来だって!
来た以上は楽しまなきゃ損よ。さぁ、入って入って」
ベルトーチカに背中を押されセイラはライブハウスの扉を開いた。ベルはセイラ
が入室したのを見届けると控え室へと向かった。
「遅いぞ!どこへいっていたんだよ?もう、時間だぜ」
姿を現したベルにソロモンのメンバーが畳み掛ける。ベルは顔の前で手を合わし
て謝罪のポーズをとってみせる。
「ごめん、ごめん。今日はリハどおり変更なしでお願いします。みんな、頑張っ
てよ」
「オッケー!了解だ。さぁ、いくか!」
気合いを入れたメンバーがステージに向かう。スレッガーがベルとすれ違い様に
ベルの頭をポンと叩いた。
「頼むぜ?マネージャー。今日は大事な日なんだからな」
「判っているわ。今日はあなたが一番、聴いてもらいたい人が来ているかもよ?」
「なんだぁ?どういう事だよ」
まさかセイラがいようとはスレッガーには思いもよらない。
「いいから。もう、時間よ!さぁ、頑張って!」
「ん、あ、あぁ・・」
ベルはウインクすると訝し気なスレッガーの大きな背中を後押しした。


133 :通常の名無しさんの3倍:04/04/20 00:58 ID:???
開演前から場内は熱気に包まれていた。場の雰囲気に馴染めないセイラは一番
後方にひっそりと佇んでいた。しばらくしてメンバーがステージに上がると観客
の歓声が場内に轟く。そして次々に演奏される曲にセイラは息を飲んだ。
(凄いわ・・・)
数年前とはレベルが違う。テクニックもさることながら魅了させられてしまう
何かを感じずにいられない。セイラは彼等が本当にプロになったのだと感服した。

「今日は来てくれてありがとうな!もったいぶったけど、最後に新曲の発表だ。
この曲を書いてくれた奴にメンバー一同、感謝する!」
手を挙げてスレッガーがさり気なく誰かに視線を送ったのをセイラは見逃さなか
った。そして、その視線の方向を窺った。
『アムロ?』
心もとなかったセイラは、顔見知りのアムロを見つけ内心ホッとする。彼の傍に
近付こうと観客の間を掻い潜りながらふと、脚が止まった。
(唄っている?)
演奏に合わせ、アムロの唇が僅かに動いている。声にこそ出していないが、その
曲を唄っているのだとセイラは確信していた。そしてアムロの怖いくらいに
真剣な表情に声を掛けるのを躊躇うのだった。
やがて曲が終わり、アンコールが始まった。ライブは大成功に終わり、観客達は
興奮も覚めやらぬまま、ライブハウスから次々と消えていった。たった数分の内
にさっきまでの熱狂が嘘のように場内は閑散としていた。アムロに声を掛けるきっかけを
逃していたセイラは、ようやく今がよいタイミングだと彼に歩み寄った。
「アムロ、お久し振りね」
アムロは聞き覚えのある凛とした涼しい声が聞こえる方に振り向いた。
「セイラさん?どうしてここに・・?」
アムロは変わらない彼女の美貌に見とれながらも、スレッガーと結局は復縁した
のかと頭の中で想像を膨らませていた。
「事情はいろいろとね。せっかく会えたけれど私、もう帰らなくては・・・」
セイラの返答に、アムロは自分の想像が外れていると直感した。
「あ、僕も帰ります。車があるんでよかったら送りますよ?」
アムロは長居をしてベルに捕まってしまうのを避けようとしていた。そして多分
彼女も早くここから立ち去りたいのだろうと推測した。
「そう?じゃあ、お言葉に甘えてお願いしようかしら」
「じゃあ、行きましょうか」


134 :通常の名無しさんの3倍:04/04/20 01:01 ID:???
アムロはライブハウスの前まで車を廻す。寮までの帰り道、ふたりはさっきの
ライブの話で盛り上がっていた。会話を楽しむ一方で、そういえばアムロと
こんなに話をしたのは初めてだな、とセイラは漠然と考えていた。
「ね、アムロはもう唄う気はないのかしら?」
セイラは何気なく疑問をぶつけてみる。すると、今まで笑顔だったアムロの表情
が暗く沈んでしまった事にセイラは立ち入ったことを聞いたのかと当惑した。
「僕は・・。僕はもう唄いたくないんです」
訥々と話すアムロにセイラは、ライブハウスで唄っていた彼の姿を思い出し、
その言葉が真意ではないのだと察する。
「そうかしら・・・。でもアムロ、ライブハウスで唄っていたでしょう?本当は
唄いたいのではなくて?」
アムロは否定するでもなく、ただ力なく笑っているだけだった。
「着きましたよ」
車を寮の前に停めると、アムロはこれ以上、干渉しないでくれといわんばかりに
ぶっきらぼうに、助手席のドアを開けた。
「あなたがボーカルのソロモンの演奏を聴いてみたいものね」
セイラは微笑しながら、優雅な身のこなしで車から降りるのだった。
「送って頂いてありがとう。おやすみなさい、アムロ」
「は、はい。おやすみなさい」
アムロはセイラに執拗に問いただされるものだと思い込んでいただけに、彼女の
引き際の良さに拍子抜けしていた。そして、セイラが寮に入ったのを見届けると
アムロは清々しい気持ちで車を走らせた。


135 :通常の名無しさんの3倍:04/04/20 22:28 ID:???
アムロ、どうする?
まだまだスレッガーにも登場して欲しいのでライブのお話の続きいかせてもらいます!

136 :通常の名無しさんの3倍:04/04/20 22:29 ID:???
スレッガーは落ち着かない気分だった。もちろん、演奏に入るとそちらに集中して雑念はなくなる。
しかし曲間のMCの時、楽器を換えるときなど、フロアのある一点にいってしまいそうな
視線を抑えるのに意識しなくてはならなかった。
客席にセイラの姿を認めたからだ。フロアは照明も落とされ、大勢の人でひしめいていたが、
彼女の姿はどんなに遠くからでも探し出すことができた。間違えるはずがなかった。
ステージが引けたあとすぐにに降りてみるが、セイラの姿も、そしてアムロも見当たらない。
「スレッガー」
ベルトーチカが背後から声をかけてくる。振り向くと、ビールの入ったグラスを手渡された。
「アムロのやつ、帰ったみたいだな」
「そうね。そしてあの人も」
「あんたが呼んだのか」
ベルトーチカは否定しなかった。スレッガーはようやく納得がいった。
呼ばれないかぎり、彼女自ら足を運んでくれることなんてありえないだろう。
でも、彼女の姿を見かけて、少しだけ期待したのも事実だ。期待。いったい何を?
スレッガーはやりきれない気持ちを流すように、グラスのビールを飲み干した。
「新曲の感想、聞きたかったのにね」
ベルトーチカが、しんみりとこぼす。
「……そうだな」

137 :通常の名無しさんの3倍:04/04/20 22:30 ID:???
セイラのこともそうだが、アムロがあの曲を聴いてどう思ったのかが非常に気になった。
まだ、あの曲は未完成だとスレッガーは思っている。あの曲にアムロの声で自分がつけた歌詞がのり、
初めて完成するのだ。
「どうしたら、アムロが歌う気になるのかな」
つとめて明るく言うベルトーチカだが、彼女がアムロをこの世界に呼びもどすためにどれだけ心砕いているのかが
スレッガーには良くわかる。セイラを呼んだのもアムロに何かいい刺激があることを期待したのかもしれないと、ふと思う。
「あんたの熱意はきっと伝わるよ。あいつだってきっかけが掴めないだけかもしれない」
ベルトーチカはちょっと意外そうにスレッガーを見つめ、微笑む。
「私、頑張るわ。絶対アムロを歌わせてみせる。バンドの為に、ね」
「バンドのために、か」
「な、何よ」
ベルトーチカがちょっと戸惑ったのがおかしくて、スレッガーは苦笑する。
「スレッガー。あの人、ライブに来てくれたわ。私の誘いを無視する事だってできたのに」
スレッガーに苦笑されたのがよっぽど悔しかったからかどうなのかはわからないが、彼女はまるで子どものようにやり返してくる。
答えにつまったスレッガーを見て、ちょっと悪戯っぽく笑うと、ベルトーチカは去っていった。
ベルトーチカは痛いところをついてくる。
飲み干したグラスをテーブルに置き、スレッガーはスタッフが慌しく楽器を片付けているステージを眺める。
セイラはあの曲をここで聴いてどう感じただろうか。
彼女には自分の気持ちを伝え、はっきりさせたのだ。でもどうなのだろう。
思いもかけないところで彼女に遭遇する。表面上は普通に接することができると自信を持って言えるが、
やはり胸を走るやるせない痛みは無視できない。
──簡単に気持ちを割り切れるのなら苦労はしない。しかしセイラとのことで、自分ができることはもう何もないのだ。

138 :通常の名無しさんの3倍:04/04/20 23:20 ID:???
アムロ→セイラ(憧れ)を希望します。
アムロの前では原作っぽい凛としたお姉さんセイラがイイ!

139 :通常の名無しさんの3倍:04/04/20 23:54 ID:???
すごい更新だ!ガルマもスレッガーにも、まだまだ、活躍して欲しい〜
もちろん、シャアとアムロも!

>>138
メール欄に半角sageでヨロ


140 :通常の名無しさんの3倍:04/04/21 00:37 ID:???
>>139
気をつけます。済みません。

141 :通常の名無しさんの3倍:04/04/21 20:41 ID:???
シャアとスレッガーの絡みネタが読みたいなぁ。
結構、面白いと思うのですが・・・

142 :通常の名無しさんの3倍:04/04/21 21:55 ID:???
「しまった、もうこんな時間か・・!」
ガルマは慌てて机の上を片付けると、パソコンの電源を切り研究室を
飛び出した。
昼間シャアから連絡があり、一緒に夕食をとる約束をしていたというのに、
実験に夢中で時間を忘れていたのだ。
駐車場まで走って運転席に乗り込む。と、ふいに今朝のことが思い出された。
二人で手分けして、必死で一晩中取り組んだ甲斐があり、イセリナの論文は
何とか時間までに完成させることが出来た。
しかし喜びも束の間、難関を目の前にしている時と違い、すべてが終わって
しまえば二人の間に漂う気まずさは相変わらずだった。
「・・・寒くはありませんか?」
イセリナを家まで送り届ける車中、居心地の悪さにガルマはそう話しかけて
みたが、返事がない。見るとイセリナは眠っていた。
無理もない、丸3日間も眠っていなかったのだから。
(たった一人で・・・よくもあそこまで頑張れたものだ・・)
論文は、ガルマから見ても感心するほどよく出来たものだった。
よほどの情熱と根性がなければああは仕上がらない。
ジュエル・デザイナーになって自分のブランドを持つのが夢だとかつて言って
いたが、それは真実彼女の夢なのだろう。
「純粋に研究者同士として出会っていたなら、僕たちはすばらしいパートナーに
なっただろうに・・」
心から残念に思いガルマはつぶやいた。
その時ガルマは気がつかなかった。
眠っているはずのイセリナの睫が少しだけ涙で光ったことを・・。


143 :通常の名無しさんの3倍:04/04/21 21:55 ID:???
待ち合わせのパブのそばに車を止め、少し歩いて店に向かう。
タイミング悪く、ちょうど近所のライブハウスで公演が終わったところらしく、
道は人で溢れかえっていた。
「すごい人だな・・・」
人をよけて先を急ぐガルマは、ふと見覚えのある金髪を見かけて足を止めた。
後姿だが見間違うはずがない、・・・セイラだった。
だがすぐに彼女すぐに迎えに来た車に乗ってどこかへ去ってしまう。
「まさか・・・」
嫌な予感と同時にライブハウスに掲げられた看板を見る。
思ったとおりそこには「ソロモン」の名前があった。
(アルテイシア、スレッガーのライブを見に来たのか・・)
まさかまさかと思っていたことが、決定的になった気がしてガルマは
しばらくそこに立ち尽くした。


144 :通常の名無しさんの3倍:04/04/21 21:56 ID:???
「おい、遅いじゃないか」
「ごめんごめん」
大幅に遅刻したことを詫びながらガルマは、カウンターのシャアの
隣に腰掛ける。
ここは昔から二人の気に入りのパブだった。
流れるオールディーズが心地よい。
「いや、本当を言うと私も今来たところだ。思ったより用事が
長引いたものでな」
「それは、昨日の子供たちに関係することかい?」
とりあえずビールと軽食をオーダーしながらガルマはたずねる。
「あいかわらず察しがいいな」
「そうさ。君がまだシャア・アズナブルという名前に未練を
持っているらしいということもね」
ここで飲み物が出てきたので軽く乾杯する。
「まぁその話は後だ。・・分かっているだろう?」
もちろん分かっていた。セイラとのことだ。
「その前にちょっと聞きたいんだけど・・・今日アルテイシアは
どうしてる?」


145 :通常の名無しさんの3倍:04/04/21 21:57 ID:???
「? 今朝の話では授業が終わったあと寮の女子会に出なきゃならんと
言っていたが・・?」
女子会とは、寮生たちの定例会議のことである。
なんでそんなことを聞くんだ?と言いたげなシャアの視線を浴びながら
ガルマは思っていた。
アルテイシアはスレッガーのことを兄に話していないのだ。
かつてシャアは強硬に二人の交際を反対していたが、過去のことは清算し
単にライブを楽しみにいくだけなら、隠すようなことじゃない。
隠すのはやはり後ろめたいことがあるからか・・・。
まさか今日突然チケットを受け取ったと知らないガルマは、苦悩した。
アルテイシアが隠しているなら、自分からもスレッガーのことは話す
わけにはいかないと。


146 :通常の名無しさんの3倍:04/04/22 00:17 ID:???
ガルマ、君はなんてタイミングが悪いんだ。
目撃しただけではなく、されてるし・・・

久々のシャアとガルマの会話ですかね?好きなので楽しみ!

147 :通常の名無しさんの3倍:04/04/23 20:10 ID:???
私もガルマとシャアが一緒にいる場面は大好き!
親友って感じがしてとってもイイですよね〜。
しかし、ガルマはともかくシャアって他に友達いなさそう・・?

148 :通常の名無しさんの3倍:04/04/23 21:31 ID:???
乙です!
ものすごい勢いで更新されてますね〜、嬉しいです。

ところでカミーユって昔フラナガン機関のホープだったから
シャアのことも知ってるよね?違ったっけ?

149 :通常の名無しさんの3倍:04/04/24 00:41 ID:???
>>148
同じ事を考えてました。
あまりのDQNさに研究所から追い出されたのかな?

150 :通常の名無しさんの3倍:04/04/24 13:20 ID:???
こっちが本物のカミーユ希望。
てか、プロデューサーシァアは面白いんだけど
SSっつってもIFなんだから、あんまりキャラの設定勝手に変えて欲しくない。
例えば、本音言うとクェスとかカミーユがアムロと同い年なのは萎える。
それに、戦争前からの高級軍人が音楽業界にいるのもなぁ。
兵士は徴兵されたんだろうから納得するけど。

アルテイシアの恋模様も気になるが
反地球連邦キャンペーンの象徴が事故死したんだから、
そろそろ政治ネタも絡めてほすいところ。
泣き寝入りする男じゃないだろ、シァアは、と思う。

以上個人的感想。

151 :通常の名無しさんの3倍:04/04/24 14:02 ID:???
>150
ごめん、戦争前からの高級軍人というのが誰のことかは分からないんだけど、
キャラの年齢に関してはここでは カミーユ<アムロ<クェス=セイラ 
になってると思う。
クェスが入るからおかしくなるんだけど、彼女はかなり初期段階でセイラの
クラスメートとして登場しちゃってたんで、もうどうしようもないんだよね・・。

政治ネタに関しては同感かな。
ジオンとデギンの関係が悪化してきて、シャア・セイラ・ガルマの関係が
微妙に・・・などとかつて妄想したことあったけど。
あと、シャアが泣き寝入りする男じゃないってのも同感です。

他の方の意見も聞きたいところだ。

152 :通常の名無しさんの3倍:04/04/24 14:20 ID:???
ダム世界が平和だったら〜が前提であり、ジオンが生きているのだから
シャアが軍人になる必要性は無いのでは?

政治ネタについては同意見です。
まあ、音楽に限らずメディアは政治に対する影響力があるのですから
その辺で使えるのではないかと・・・
ザビ家とは友好のままで連邦と険悪になったらどうなるかな〜?
とは思っています。

153 :150:04/04/24 14:49 ID:???
勝手な感想でしたが、レスどうも。
「戦前からの高級軍人」はティターンズ・プロ社長ジャミトフです。
なんかの陰謀のダミーカンパニー、でもないかぎり、
彼がそんな事する人間には思えなくて。

アムロとカミーユの年齢差は史実だと7才ですけど、
以前出たとき2・3才差位の描写だったので
できれば今度のカミーユとは別人にして欲しいな、と。

154 :151:04/04/24 15:14 ID:???
>152
ふむふむ。ダイクン家とザビ家は友好関係のままのがやっぱり
いいですよね〜。
デギンを含めたザビ家の面々はみんないい味出してたので
また登場して欲しいですね!

>153
なるほど、ジャミトフでしたか。
ティターンズは前にも出てきてましたが、そこのプロデューサーが
シロッコでしたよね。ララァ誘拐したりしてた。
ジャミトフは名ばかりの社長で、実態は地球連邦側の黒幕、って
ことにするとかどう?

問題のカミーユですが、どうしましょう。
前のカミーユ(フラナガンのホープ)と今回のカミーユ(路上演奏者)を
別人・・・てのはちょっと無理ないですかね?
かと言って同人物とすると(シャアはともかく)、カミーユがシャアを
知らなかったのが不思議ではありますが・・。

ちなみに史実ではアムロとカミーユの年齢さは5歳だとオモ。


155 :通常の名無しさんの3倍:04/04/24 17:12 ID:???
とりあえずガルマとシャアの会話を続けさせてもらいます。

156 :通常の名無しさんの3倍:04/04/24 17:13 ID:???
「君は呆れているだろうな、20歳を過ぎた妹の恋愛話に首を突っ込む
などと・・」
ガルマがいつまでも黙っているのをどう受け取ったのか、シャアが気まず
そうに言う。
「君達ふたりのことをどうこうしようと思っているわけではないのだ。ただ・・」
「分かっているよ、君の気持ちは」
昔からこの兄妹の関係は、世間一般のそれとは大きく違う。
母は亡く、父親も不在の幼少時代を過ごしてきた二人だからこそ、互いを
思い愛する気持ちは人一倍強いのだ。特にシャアの方は、血のつながりさえ
なければ他の誰にも・・・などと倒錯めいた気持ちにかつて揺れていたことも
ガルマは知っている。
そのシャアが、唯一「君になら」と託した相手が自分なのだ。
だからこそ、どんなに情けなくても、どんなに責められようとも、今日は真実を
話すつもりだった。
・・・しかしセイラがスレッガーとの関係を密かに再燃させているとしたら、
今ここでそれを言うわけにはいかない。
たとえガルマ自身、どれほどそれを壊してしまいたいと思っていても。
苦しい決断の末、ガルマはスレッガーに関することのみ省略して説明した。
シャアは終始黙って聞いていたが、イセリナとセイラがガルマのマンションで
鉢合わせしたところでは目を閉じ、イセリナに想いを告白されたくだりでは
ついに頭を抱えた。
「・・・ガルマ、君はいい人間だが、女にとっていい男ではないようだな」
すべて聞き終わってシャアが最初に言った一言はこれだった。

157 :通常の名無しさんの3倍:04/04/24 17:13 ID:???
ガルマはムッとしたが反論できないところが悲しかった。
「マスター、水割りを二つ頼む」
シャアはカウンターの離れたところで他の客と雑談しているバーテンに
そう告げてから、手元のグラスに残る最後の一口を飲み干した。
「優しさは美徳だが、相手と場合によっては残酷にもなることを、いい加減
学んだ方がいい」
「・・・君の言うとおりだよ」
ガルマは力なく頷いた。
良かれと思ってしたことが、思わぬしっぺ返しとなり取り返しのつかない
事態を招いた。あまりに痛い学習だった。なのに懲りずにまた今日・・・。
後悔しているわけではないが、イセリナの論文のことは出来れば隠して
おきたいガルマだった。
落ち込みの激しい友人に、さすがに気の毒に思ったのかシャアは
出された水割りのグラスを手渡しながら続けた。
「しかしアルテイシアも情けない。もっと広い心で・・」
「彼女を悪く言うのはやめてくれ。非はすべて僕にある。彼女を不安にさせ辛い
思いをさせた。嫌われて当然だ」
一息にまくしたててからガルマはぐいっと酒をあおる。
「・・・・だからといって、友達の関係に戻ろうなどと考えるとはな。君はマゾか?」
「なんだって?」
「アルテイシアをまだ愛しているんだろう。これから先、アルテイシアに
他に恋人が出来て、結婚しても、君は友人として笑って祝福するつもりかい」
「・・・マゾでもなんでもいいよ。あの時はアルテイシアに僕は平気だって
思って欲しかったんだ。彼女に変な負い目や罪悪感を持って欲しくなかった」

158 :通常の名無しさんの3倍:04/04/24 17:15 ID:???
「ガルマ・・・」
シャアは心の底から感動していた。
今までにも何度もかなわない思ったことがある。思いやりのこころを、どうして
この友人はこんなにも自然に実行出来てしまうのか・・。
それを愛する者だけでなく、万人に与えてしまえるのがガルマの良さであり、
欠点でもあるわけだが。
「だけど・・・彼女に恋人が、か。・・・辛いな・・」
カウンターに肘を付き、両手で持ったグラスに額を押し付ける。
聞き取れないほどの小さなうめき声にシャアはガルマが泣いているのかと
思った。しかし半分隠された顔に表情は読み取れない。
シャアは何も言うことが出来ず、無言で水割りを口にするだけだった。
旧世紀の男性歌手の、甘く優しい歌声だけが二人の間を流れる。

どれほどそうしていたか、やがてガルマが顔をあげる。
「すまない」
「いや」
それきりまた無言が続くかと思われたが、やがてガルマは少し伸びを
するようなしぐさをとり、そしてはっきりと言った。
「アルテイシアに恋人が出来ても僕は祝福するよ。いや、しようと努力
する。彼女が幸せなら・・・」
「無理をするな」
「君に出来て僕に出来ないはずがない。そうだろ?」
少しちゃかすように言うガルマにシャアは一瞬驚いて、そして笑った。
血の繋がった兄である私と君とでは違うだろう、と言いたかったが、
ガルマの気持ちは痛いほどよく分かるのだった。

159 :通常の名無しさんの3倍:04/04/24 17:16 ID:???
少し話しやすい雰囲気になったと見て、シャアはさっきからずっと気に
なっていたことを切り出した。
昨夜セイラは自分にこう言ったのだ。
『ガルマにとっても自分はふさわしい存在ではないと思う』と。
だからシャアは漠然と、セイラの側にも何かあったのだと思っていたのだ。
しかしガルマから聞かされるのはガルマ側の話ばかりだった。
「ガルマ、アルテイシアには何か君に顔向け出来ないようなことが
あったのではないかと思うのだが」
「え?いや、そんなことは・・・何故だい?」
シャアから説明されてそれは、まさしくスレッガーと再会して心が揺らいだ
ことだと思い当ったが、それは言えない話だった。
「アルテイシアは潔癖なところがあるから・・。嫉妬や猜疑心を持って
しまったことを恥じてそう言ってるんじゃないかな」
「・・・・そうか・・・そうだな」
なんとなく違和感が残るが、そう説明されるとそんな気もしてくる。
ちょっとほっとした気持ちになってシャア嘆息した。
ガルマは椅子に座りなおし、姿勢を正すとシャアに頭を下げた。
「とにかく君にはくれぐれもと頼まれていたのに・・・キャスバル、改めて
謝罪するよ。すまない」
「やめてくれ。君には感謝している。それに、今でもあれを任せられるのは
君だけだと思う気持ちに変わりはないよ」
「僕はもう駄目だよ・・」
「どうかな? まぁ君達二人の問題だから口を出すつもりはないが、だが
ガルマ、これ以上誤解を招くような行動は慎んだ方がいい。友人として
忠告しておく」

160 :通常の名無しさんの3倍:04/04/24 17:17 ID:???
「どういう意味だ?」
「今朝イセリナ嬢と二人で車に乗ってるところを見た」
「!」
「まぁ何でもないのはさっきの君の話からも推測出来るがね。妹はどう
思ったかな」
「アルテイシアも!? な、何か言ってたかい!?」
「私には関係ない」
ガルマは頭を抱えた。
「まぁ実際、フリーになったお前が誰と付き合おうと、あれにとやかく言う
権利などありはしないが・・・しかし、誤解されたままというのは君の本意
ではあるまい?」
「当然だよ!」
ガルマは手短に事情を話す。
「時期を見てさりげなくアルテイシアには話しておいてやろう」
「・・・でも・・本当にアルテイシアにはどうでもいいことなんだろうな・・」
そうでもなさそうだが・・
今朝の様子を思い出しシャアはそう言いかけて、やめた。
今のガルマには気休めにしかならないだろうし、何よりもっと反省しろ!
という気持ちがあった。
「出ようか」
シャアは頭を抱えたままのガルマの肩をぽんと叩くと立ち上がった。

161 :通常の名無しさんの3倍:04/04/24 17:20 ID:???
なんだかそれぞれの持つ感情が、誤解・正解とりまぜて
複雑になってきているので、難しい・・。
シャアとガルマ、この二人は書いてて楽しいですね。

162 :通常の名無しさんの3倍:04/04/24 18:03 ID:???
シャア−ッ、ここではガルと仲良くねw
ところで、ここの前スレ(女子大生版)ってどこで読めるのでしょう?
高校生版をまとめたものを読んで以来ファンになったのですが
いつの間に再開されたんですか?
どなたか教えてください

163 :通常の名無しさんの3倍:04/04/24 19:09 ID:???
「やだ、故障かしら?」
突然の休講で空いてしまった時間、セイラは図書館でレポートを作成していた。
PCのフリーズに、自分も固まってしまう。こういった対処は余り得意ではないのだ。
とりあえず再起動させてみたが、今度はOSが立ち上がらず、
訳の解らないエラーメッセージが羅列されている。
こんな時はいつも、兄かガルマに見てもらっていたのだが、
兄は出かけているはずだし、まさかガルマに頼むわけにはいかない。
「急ぐものではないのだけど・・・」
そうも思ったが、どうせ中途半端に空いてしまった時間である。
セイラはPCの電源を切るとそれを持ってキャンパスを後にした。

大学の裏手にあるメンテナンスショップは便利な店だ。
『腕時計からシャトルまで、持ち込まれた機械は何でも修理します』と銘打っており、
シャトルはともかく、看板に恥じぬ仕事が評判でセイラも時折利用していた。
「スミマセン」
店先には誰も居らず、奥の作業場に向かって声を掛けた。
「・・・いらっしゃいマセ・・」
帽子を目深にかぶった男が無愛想に応え出てきた。
「あの・・・PCがフリーズしてしまって、再起動もできないんです」
そういって差し出したPCを、男は返事もせずに受け取るとそのまま無言で作業を始めた。
「今日は店長さんは?」
「外出中です。バイトじゃいけませんか?」
「そんなつりじゃ・・・・」
『なんて態度の悪い店員だろう』
むっとしたセイラは、顔を見てやろうと帽子の下を覗き込んでみた。
口元や頬に派手に絆創膏を貼ってはいるが、存外に整った顔立ちだ。
更によく見ると、どこか見覚えがあるような気がする。
「あなた、確か・・・カミーユ君?」
いきなり名を呼ばれ、驚いたように男が顔を上げた。
「ああ、やっぱりそう。カミーユ・ビダン君、だったわよね?」
「えと・・・?、あ・・・セイラ・・さん?でしたっけ?」


164 :通常の名無しさんの3倍:04/04/24 19:16 ID:???
話してみると、カミーユは以外に礼儀正しい少年だった。
「頭に血が上り易いんですよね。自分でも解ってはいるんですけど・・・」
出掛けにファと口喧嘩になってしまった為イラついていたのだという。
「だめよ、彼女を大切にしてあげなくちゃ」
「!、彼女なんかじゃありませんよっ。この間もそういったでしょう?」
「ほら、またそれ。私は“彼女”っていったのよ。“恋人”とは違うでしょ?」
「ずるいな・・・そんな言い方・・・」
そう言いながら、目を逸らすように作業に戻る。
「でも・・・そうよね。思っていても上手くいかない事って多いものよね」
「セイラさんにもそういう事あるんですか?」
「もちろんよ。上手くいかない事だらけ。さっきまで絶好調かと思ったら、突然嫌な事は起こるの。
その上PCの故障でしょ?泣きっ面に蜂ってこの事ね・・」
言ってから、やはり自分はガルマとイセリナの事を気にしているのだと悟った。

ふいに沈黙したセイラを見ると、彼女は長い睫毛を伏せ、どこか愁いた表情をしていた。
その顔をじっと見つめるカミーユ。透けるように白い肌、頬にかかる見事な金髪。
その伏せた瞳は深く青い、ホログラムで見た地球のようだ。
『こんなに綺麗な人だったんだ』
今更のように気付き、その顔をもっと見たいという衝動にかられた。
「・・・じゃ、とりあえず蜂は僕が追い払いましたよ」
「え?直ったの?あなったって凄いのね」
ぱっと表情が変わり、頬に朱が注したように見えた。
「そんな、大袈裟ですよ。大した事じゃありません」
「あら、歌が上手い上に機械にも強いなんて。素敵だわ」
女性に、それも飛び切りの美人に“素敵”と言われて悪い気などしない。
自然、いつに無く饒舌になった。
「趣味なんです、機械いじり。自分で組み立てたりプログラミングしたり」
「まあ、そんな事まで!」
今度は感嘆の表情を見せるセイラ。
『表情のよく変わる人だな。年上のはずなのに。何か可愛らしいっていうか・・・』
「って言っても簡単なものですよ。自分で作った曲を打ち込んだりして・・・」
「作曲までできるの?!本当に多才なのねぇ。
じゃあ、この間の曲もあなたが作ったものなのかしら」
そういうとセイラは、先日耳にした曲をハミングした。


165 :通常の名無しさんの3倍:04/04/24 19:22 ID:???
「・・・それは規制の曲を僕なりにアレンジしたものです。
作曲の方は最近始めたばかりで・・・オリジナルはまだ完成前なんですよ」
いい気になって大袈裟に言った事を少し後悔し訂正を加える。
「そうなの?でも、あなたの歌が素晴らしい事に変わりは無いわ。
一度聞いただけで耳に残っているんですもの。プロ顔負けね」
そう言って微笑むセイラ。しかし、それを聞いたカミーユは複雑だった。
「どうしたの?」
「いえ・・・あ!、お帰りなさい店長。どこ行ってたんですか?」
買い物袋をぶら下げた、鼻の大きい男が入ってきた。
「スマンスマン。急に今夜、彼女と食事することになったんで、買出しにいってたんだよ。
お客さん、待たせちゃいました?」
「いえ、もう・・・」
「この人は僕の友人なんです。お客さんじゃありませんよ」
「そっか。じゃ、もうしばらく店番頼むよ。俺は飯の支度で忙しいんでな」
「店長が作るんですか〜?」
「何だその言い草は。お前、アストナージ特性サラダを知らないな?」
そういうと、さっさと店の奥に行ってしまった。
「腕は良いんですけどね、あの人」
「ふふ・・、長居しすぎたみたいね。お幾らかしら?」
「いいんですよ、あれくらい。直した内に入りませんから」
「そんな、悪いわ・・・」
「この間のお礼です。それに・・・楽しかったから・・・」
「私も楽しかったわ。ありがとう。
それから、歌、また聴きたいわ。この間の所にいけば聞けるのかしら?」
「えと・・・それは・・・ですね」
まさか、しょっちゅうトラブルを起こしては河岸を替えているとは言えない。
「あそこは騒ぎを起こしちゃいましたから。別の場所が決まったらお教えしますよ。
僕、当分ここでバイトしてますから気が向いたら寄ってください」
携帯かアドレスを訊こうかとも思ったが、図々しいと思われたくない。
「そう。じゃあまたね、カミーユ」
セイラの後姿を、カミーユは幸せな気持ちで見送った。

166 :通常の名無しさんの3倍:04/04/24 19:39 ID:???
>163-165
面白いんだけど、時間の流れがちょっと不明だよ。
さっき(スレッガーのコンサ、シャア・ガル場面)までは、
帰国の翌日夜の話だったと思っていたが。
あと、結局カミーユの扱いをどうするのかも決まっとらんのに・・。

167 :通常の名無しさんの3倍:04/04/24 19:49 ID:???
「『またね、カミーユ』だってさ。よ、色男」
からかう様にいいながら、アストナージが顔をだした。
「何ですそれ。サラダ作ってんじゃなかったんですか?」
「サラダは出来立てが美味いに決まってるだろ。気を利かせてやったんじゃないか。
で、どうなんだ?」
「?。ああ、電子ピアノなら調子良いですよ。約束通り、修理代分はきっちり働きますから」
「そうじゃなくて、さっきの美人。年上だろ?まったくいつのまに」
「そんなんじゃありませんよ」
「隠すな隠すな。ま、見かけによらず短気なお前には、年上がちょうどいいんだろうな」
「ち・が・い・ま・す。何一人で盛り上がってんです」
「心配してやってんだろ。お前ときたらカッと成り易くて、すうぐ喧嘩してさ。
巻き添え食って壊された楽器が可哀相ってもんだ」
それを言われるとぐうの音も出ない。しかも、そのせいで慣れないギターで弾き語りをし、
更に喧嘩になって危うく警察沙汰になるところだったのは一昨日のことだ。
まあ、そのお陰でセイラとも知り合えたのだが・・・
「自重しろよ。その性格のせいで決まっていたプロデビュー、棒に振っちまったんだろ?」
「・・・!!違っ・・それはっ」
「ファから聞いた。ハメラレタって言いたいんだろうが・・・
原因の一端はお前にもあるんじゃないか?少しは大人のなれって事だよ・・・」
『ファの奴、余計なことをペラペラとをっ!』
人に言われるまでも無く解っていた。確かに自分が迂闊だったのだ。
ティターンズから引き抜き話を持ちかけられたとき、カミーユはけんもほろろに断った。
音楽性が異なる事が主な理由だったが、ティターンズが時に
“連邦寄り”と言える事業性を見せるのが気に入らなかったからだ。
また、デビューに際し細々とした制約を付けられるのもうんざりだった。
『売れる為の歌を歌う?一昨日来やがれってんだ!』
そう啖呵を切って断った翌年、カミーユはCMのタイアップ曲でデビューを決めた。
が、直前、街で喧嘩騒ぎをおこし、それを雑誌にすっぱ抜かれてしまったのだ。
当然スポンサーはかんかんに怒った。
カミーユは必死に弁解したが、それが余計に相手の怒りを買ってしまったらしい。
『何故素直にごめんなさいと言えない!』
大口スポンサーのウォンから殴られ、それ以来フラナガン研究所には行っていない。
半年程前の事だ。その後マネージャーから、一連の事態にティターンズが絡んでいるらしい
と聞いたのだがそれも後の祭り、頑ななカミーユは周囲に謝ることができなかった。
以来、行き場を失い、それでも歌うことを諦められないカミーユは一人街で歌ったが、
ささくれ立った心は僅かな野次にすら過剰に反応し、結果、騒ぎを起こしてしまうのだった。

「・・・美人の年上女房か、いいねぇ。あれ?そうするとファはどうなるんだ?」
「どっちも、どうにもなってませんよ最初から。じゃ、今日はこれで」
まだ何か言いたげなアストナージを無視し、カミーユは店を出た。
「おう、またな。今度は学校終わってから来い。サボってんじゃないぞ」
『でも、今日はサボって良かったなw』
そう思いほくそ笑んだカミーユだが、
同時に、あの晩セイラと共に居たサングラスの男の事が頭を過ぎった。


168 :通常の名無しさんの3倍:04/04/24 20:02 ID:???

>165
規制→既成 の間違いでした。
それからカミーユについては人物紹介のままに設定していたため
特に疑問も持たず進めてしまいました。
申し訳ありませんm(__)m


169 :通常の名無しさんの3倍:04/04/24 20:28 ID:???
シャアとガルの場面はもう終わりかい?
もっと読みたいぞい。

170 :通常の名無しさんの3倍:04/04/24 20:46 ID:???
>>168
『人物紹介のままに〜』って?
書いたものを上げたいのは分かりますが、上げてから弁明するよりその前に
リロードするとかした方がいいのでは?修正するという方法もあるのだし。

説教くさくてスマソ

171 :通常の名無しさんの3倍:04/04/24 21:28 ID:???
リロード→読み返す という事でしょうか?
一応読み返して繋がると踏んだうえで上たのですが、独りで脳内暴走していたようですね。

この後カミーユはセイラに付き纏った挙句、シャアに対して逆切れさせようかと思っていたのですが、
見直して見ます。ダラダラ文も改めたいので・・・・

172 :通常の名無しさんの3倍:04/04/24 21:53 ID:???
乙です!

うーん、こう来たか・・
じゃあもうカミーユは同一人物ということで、もう決定ですかね。
私もそれでいいと思いますよ。
なんでシャアを忘れていたか?については、>171さんにアイディアが
あると見ました。どうかな?

>171さん、それ面白そうです>シャアに逆切れするカミーユ。
是非書いてくださいませw
出来れば、前の話のつながりで、うpのタイミングなども計ってくださると
嬉しいかも。
文章お上手なので、これからもよろしくお願いしますね。

173 :通常の名無しさんの3倍:04/04/24 22:37 ID:???
>>169
ですね〜。この二人はいいですな。
シャアはガルマのマンションに泊まるみたいですから
期待していてもいいのでは?

174 :通常の名無しさんの3倍:04/04/24 22:37 ID:???
カミーユか!いいね〜セイラ@Zを思い出したヨ。
あれ好きだったんだよな

175 :通常の名無しさんの3倍:04/04/24 23:06 ID:???
>174
懐かしいなぁ。自分も好きだったよ。
Ζにもっと、出ていたらなぁ〜と思いました。




176 :通常の名無しさんの3倍:04/04/25 00:26 ID:???
>169,173
ご要望にお応えしてシャア・ガルマの場面を追加してみました。

以下に続きをあげさせてもらいます。

177 :通常の名無しさんの3倍:04/04/25 00:27 ID:???
「おい、いい加減起きろよ、ガルマ」
「う・・・ん・・・」
午後もすっかりまわったというのに、いつまでも寝ているガルマに
シャアはあきれて声をかけた。
昨夜はあのまま2軒、3軒とはしごし、マンションに二人してたどり
着いた時にはもう陽も高くなっていた。
その前日も徹夜していたガルマが、正体不明なほど眠り込んで
しまうのも無理はないかもしれないが、それにしてももう午後1時だ。
「しょうがないな、私は出かけるぞ」
「・・・ん・・出かける・・・?今夜は帰ってくるのか?」
まだ眠いからだを起こしてガルマはシャアを見上げた。
シャアは黒の革パンツにオフホワイトのざっくりとしたセーターを
着ていた。カジュアルだが品がよくシャアに似合っている。
「ああ。大学に顔を見せて、その後アルテイシアと買い物をするだけ
だから」
「そうか・・」
セイラと別れたと聞いて、もうここに泊まるのはやめると言い出す
かと思っていが、シャアは気にしていないようだった。
もう好きにしたらいいと、少しふっきれたガルマは思う。
「僕も大学に行くよ。昨日放り出してきたやつ、仕上げてしまわないと。
一緒に出よう」
ベッドから出ると、ガルマもまた出かける支度を始めた。

178 :通常の名無しさんの3倍:04/04/25 00:28 ID:???
教授や教室の仲間達に帰国の挨拶をすませ、一人教室を後にする。
そろそろセイラとの待ち合わせの時間だった。
(しかし、変わっていないな、懐かしい・・・)
教室はもちろん、この廊下も窓から見える景色も、3年前自分が
いた時となんら変わらない。
感慨に耽りながらゆっくりと歩くシャアの背後から、
「キャスバル・ダイクン・・」
呼ばれて振り向けばそこには、たった今外出からもどったのだろう、
両手にたくさんの荷物を抱えた、背の高い美女が立っていた。
「やあ、マルガレーテ」
教授の秘書であり、かつてはシャアの恋人の一人でもあったマルガレーテ・
リング・ブレアは、にっこりと微笑むと静かに歩み寄ってきた。
「あぁ、君も変わらないな」
「あいかわらず上手なのね。・・・嬉しいわ、また会えて」
つま先立ちすると、耳たぶにくっつくくらい唇を寄せそっと囁く。
「でも、女が変わったか変ってないか・・・見た目だけじゃ分からなくてよ」
「ふっ、それじゃ、確かめねばならんかな・・」
微妙な誘惑。それをYesともNoとも、どちらともとれるような返事でかわし、
マルガレーテの手にキスを一つ落とすとシャアはその場を立ち去った。

179 :通常の名無しさんの3倍:04/04/25 00:28 ID:???
15時の約束に間に合うよう、待ち合わせ場所である学生駐車場に戻る。
時間的にこれから帰宅する学生たちで駐車場は賑わっていた。
「あ、キャスバルさま!?お久しぶりです!」
突然大声で声をかけられシャアは面食らう。おまけにその主の若い女性に
シャアは見覚えがない。
「私、クェス・パラヤです。アルテイシアのクラスメートの!」
「ああ、君・・」
そういえば、そんな娘もいたかな・・とおぼろげながら思い出す。
「お帰りになられたんですね!アルテイシアと待ち合わせですか?
あ、でも彼女ちょっと遅くなるかも・・」
「何かありましたか?」
「アルテイシアったら、罰当番で一人で寮の掃除させられてるんですよ。
昨日女子会サボっちゃったから・・・」
「サボった?」
「珍しいですよねぇ、あのマジメなアルテイシアが。おまけに女子会なんて
サボったらお姉さま方の制裁すっごく厳しいのに。私なんて授業サボっても
女子会だけはサボりませんもん!」
「クェスーーー!何してるの、行くわよーー!」
「あ、友達が呼んでる、行かなきゃ。それじゃキャスバルさま、失礼します!」
あっけにとられるシャアを残してクェスは駆け出して行った。

180 :通常の名無しさんの3倍:04/04/25 00:29 ID:???
結局セイラは約束より15分遅れて駐車場に到着した。
(本当にどうかしてたわ、女子会をすっぽかすなんて!)
昨夜思いもかけずベルトーチカから届けられたスレッガーのライブチケット。
そのせいですっかり忘れていたのだ、大事な会合のあることを。
結果セイラに課せられた罰は、今日から一週間、放課後に寮のロビーを
掃除することだった。
「兄さん!ごめんなさい、遅くなって!」
息を切らしシャアに詫びる。兄は笑って許してくれるだろうと思っていた。
だがシャアは笑わなかった。眉を寄せて怖い顔をしていた。
「アルテイシア、昨夜は何をしていた?」
「え?」
「昨日の朝は女子会の話をしていたな。それなのにサボってどこへ
行ってたんだ?」
「そ、それは・・・」
突然の問いに、答えるべきか否か、セイラは迷った。

181 :通常の名無しさんの3倍:04/04/25 00:31 ID:???
少し前に、シャアとスレッガーの絡みがあったらいいな、という
意見がありましたので、ここでシャアがスレッガーのことを
知ったら面白いかな、、と思いまして。
どうでしょう?
セイラに本当のこと言わせちゃう?

182 :通常の名無しさんの3倍:04/04/25 01:10 ID:???
1.何でもないのよ、とばかりに全てを話すセイラさん
2.しどろもどろに弁明するセイラさん
3.何とか隠そうとするものの結局シャアに悟られてしまうセイラさん
どれも捨て難いが、どうあがいてもあの兄には隠せないのでしょうねw
1.だと案外スレッガーとシャアに友情芽生えたりして。
無理でしょうか?シャア、友達少なそうだからなぁ。

183 :通常の名無しさんの3倍:04/04/25 07:20 ID:???
うーん、2.かなぁ。
もう隠す必要は無いけど、昔が昔だから、真実を語るのも
しどろもどろ・・・とか?

スレッガーとの友情ですか。。
なんか無理なような気がw
最初っからシャアのスレッガーに対する印象最悪だしね。
わだかまりが少し解けるくらいで、友情までは・・・
でも、会話はさせてみたい!

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